君の誕生日 床から離れて お祝いと 心振り絞り 心軽やかに 祝膳 ほころぶ笑みで 頬張りて 四十路前 男(おのこ)幼顔 祝いをと 楽しく振る舞う 吾ゆえに 病の重み 棚に置けたや ***** ***
土留め闇(どどめやみ) 胸(むな)に滴る(したたる) 血のやうに 刃(やいば)の言を 心無く突つ(つつ) ***** ***
秋霧の 床にしと入り 寒凍みて 鮮やか色も 終ゆ(ついゆ)楽し無ず 刈田にて 殻米啄む(からごめついばむ) 白鷺(しらさぎ)に 故郷の冬 懐かし涙(るい)す 病身(やまいみ)を 枯れ葉のやうに 散りたくて 腐り葉なりて まだ枝(え)にしがむ ***** ***
床中に 一生殆ど 過ごすだけ 悲しみだけに 心占められ 必死に 一時たりとも 必死に 病と向きて 疲れて病う(やまう) 闘病を 「休んでいいよ!」と、言われたい 誰(たれ)にと問われ ただ苦し泣く 横臥して 療養せしは 怠け者 我を追い詰め 生くる苦しや ***** ***
切なくて ただ悲しくて 汝の言葉 「うざい!」なんて TV見たいだけで 冷ややかな 何気な仕種 真意なく 何故?突き刺さる 何故?落ちて行く 傷ついて 悲劇を演ず 我の不幸 不幸に染まろと 罪深き我 悲しみを 演じる余裕 あるもなし 悲しみの底に 病あるだけ ***** ***
死に急ぐ 病の我れに 圧し見える アフガン兵の “生”への執着 他人の“死” 戦争故(ゆえ)に 日常化 それこそ“生”の 生々しきこと アフガンの 死体の脇で 生きる民 今日の“生”こそ より「ありがたく」かな? 安穏の 日本人より アフガンは 生きてる実感 光の如くか? いかにせよ! “生”の喜び 多くとも 他人(ひと)の死の上 跨ぎ(またぎ)たくなし 対岸の 犠牲の上の 幸福も 死に急ぎたい 心止らず ***** ***
秋雨の そぼ降る冷たさ 憎らしい 夫の落ち込み 更に深めて 紅葉(もみじ)谷 深紅の想い 血の如く 苦渋に歪む 君の唇 苦悶顔 銀杏の下で アフタヌーンティー 捻じれた心 少しホドヒテ 秋の夜の カフェ・オ・レ一杯 膝合わせ 「大変な一日だったね!」と 少し微笑め ***** ***
時に追われ 我を失い プロテクト 脱ぎ捨てる瞬間(とき) 未だ訪れぬ 心の鎧 汝(な)の言霊に 外されて 素の恥じらい 思い起こせし はづかし 素の時を 一日限りと 楽々日 世に戻り 再び心にプロテクト ***** ***
外界の 忙しき音すら 届かずに 思いは浮つき 我はここにいるだけ 「生きるだけ」 ただ「生きるだけ」の 我ゆえに 意味を欲する 涙するほど 誰か 誰か お茶を勧めて 声優しく 涙果てるまで 行く先見えるまで ***** ***
文化の日 開化の花の 乙女かな 我が婆の誕 かなたに想う 病ゆえ 親に疎(うと)まれ 帰れぬ故郷 記念日ごと 懐かし潤む 寒々と 秋雨落ちる 窓の外 病の床に 祝日悲し 病月(やまいづき) 秋を感じる 間もなくて 今宵こそはと 眺めど月なし 明日こそは 病床(やまいどこ)離れ 近所まで 幼に戻り お菓子買いに行こ ***** ***
フレッツで 半年ぶりの ネット三昧 病の身重く 楽し苦しみ 先月(さきつき)の 病の床を 抜け出して 遣い(つかい)に歩く 秋のおやつ時 秋の午後 坂を登りて 振り返り 遠きに蒼い 海色に笑むわれ ***** ***
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