オトナの恋愛考
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2月と同じく、というか2月と3月は日と曜日が同じなので まったく同じ日にちの金曜日に同じく伊豆の日帰り温泉にひろと行った。
毎年この3月はひろは多忙を極め、毎日終電間近まで仕事をしている。 今までは3月は逢えないことが多かった。 「忙しいようだから無理しなくていいよ」と言ってあったが 今年は無理を押して逢いに来てくれた。
「うさちゃんに癒されたい」のだそうだ。 だから今回はランチ付き温泉で食事が美味しいオーベルジュを予約した。 観光地だけれど幹線沿いからちょっと山に入った隠れやのような フランスの片田舎風の食事が美味しい宿で日帰り温泉も楽しめた。
宿の主人は有名なフレンチで修行をしたシェフで 奥様とお二人で経営している宿だった。
昼間のデイユースだから宿泊客もまだおらず 宿はしんと静まり返っていた。
宿に到着して部屋に入ると ラルフローレンのシックな壁紙と 大きな鏡のあるアンティークなドレッサーが自慢の部屋らしく 本当にフランスの片田舎の宿のようで私たちは旅人の気分になれた。 ベッドに座るとすぐにひろが抱きしめてきた。 しばらくされるがままになっていたが すぐにランチの支度ができたと奥様からのコールがあり 「支度が早すぎるよ」と笑いながら ひろが身支度をしているのが可笑しかった。
食事の後は昼下がりの木漏れ日の中でゆっくりと抱き合い それから岩風呂や露天のジャグジーでのんびり温まり私も十分に癒された。
帰りには白と黒のブチの猫が3匹ドアまで来て見送ってくれた。
今回は海鮮の和食ではなくフレンチにしたことが気になり 行きの車の中で聞いてみた。 「ひろは一番何が好物なの?」 「ん?うさちゃん」 「じゃあなくて何か一番好きかって聞いてるの」 「だからうさちゃん」 「もう食べ物だよ」 「いつもうさちゃんを食べるからうさちゃんだよ」
疲れているわりにはご機嫌でおバカなことばかり言っている 嬉しそうな彼をみて私もなんだか嬉しくなってしまった。 本当は政府から受注したあるプロジェクトの最終段階で 土日も休まず日々の睡眠時間も3時間ほどしかとれず すごく忙しく疲れているはずなのに 私と一緒の時のひろはまるで子供のように無邪気だから 本当に彼の笑顔を見るだけで嬉しくなる。
去年より、いや足掛け8年も付き合ってきて 今までよりいっそうひろといるのが楽しく思える。
でもそれはいつか突然逢えなくなってしまう運命だから 今この一瞬を大切にしたいからだと きっとお互いに想っているからだろう。
逢えなくても気にならない。 逢えない時間も気にならない。 もしかしたら今度いつ逢えるかわからない。
でもひろはまた毎月それが当たり前のように 私に逢いに来てくれる。
もうそれだけが今の私のプライドなのだと思う。
かなり以前にもこのタイトルで日記を書いた。 今回は母親のような立場でこの卒業写真を記することにしよう。
実子ではなく、今から10年以上前に私は彼のママになってもいいと思った。 彼のパパを愛してしまっていたからだ。 彼の世話をしているうちにすでに子育てを終わっていた私は もう一度彼のママになって成長を見届けたいと思った。 彼のパパとずっと一緒にいるにはそれ以外に方法はないと 下心がなかったと言えば嘘になる。
今日ソーシャルネットワークにアップされていた写真。 長身のはずの彼のパパをあと10センチで追い越しそうな成長した彼の姿。 あの頃の倒錯した想いはとうに忘れていたが その隣で微笑む彼のパパの嬉しそうな笑顔を見て ああ、私たちはあの時別々の道を無理やりにでも選び 別れたことは正解だったと思った。
彼のパパと別れたことで何年もふわふわといい加減な生活を送ってしまった。 そんな私をすくい上げてくれたのはひろだと思う。 もちろん、ひろはそんなことは知らない。
でもこれで良かったのだと思う反面 私はいまだにふわふわと春の声を聞きながら生きている。
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