井口健二のOn the Production
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2015年04月26日(日) ブラックハット

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※
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『ブラックハット』“Blackhat”
2009年9月紹介『パブリック・エネミーズ』などのマイクル
・マン監督が、同作以来6年ぶりに劇場映画のメガフォンを
取った作品。
中国香港の原子力発電所の制御システムとアメリカ先物市場
の情報システムが連続してハッキングされ、人的及び経済的
に甚大な被害が発生する。しかしサイバーテロとみられるこ
の事件で、政治的な声明や要求は一切なされなかった。
この事態に中国情報部はMITを卒業した捜査官を担当者に
任命。2つの事件が同じスパイウェアによって起こされたこ
とを突き止めた捜査官はFBIに共同捜査を申し入れ、シス
テムエンジニアの妹と共に渡米する。
そこで捜査官はとんでもない要求を行う。それはIT犯罪で
服役中のハッカーの男を捜査班に招くことだった。その男は
捜査官のMIT時代の学友で、事件に使用されたスパイウェ
アは2人が学生時代に開発したものだったのだ。
こうして仮釈放された男は足首に発信機を付けられ、連邦保
安官の監視付きで捜査に加わる。ところがインターネットを
巧みに利用する犯人は容易に尻尾を掴ませない。しかも通信
の傍受が判明し、主人公らは独自の捜査を強いられる。
果たして犯人の真の狙いは? そして事件は東南アジアへと
繋がって行く。この様な物語が、ハッキングのヴィジュアル
化や崩壊した原発などのCGI−VFXと現地ロケ、さらに
主人公らが巻き込まれるアクションと共に展開される。

出演は、2007年『ラスト、コーション』のワン・リーホンと
タン・ウェイ。それに2011年5月紹介『マイティ・ソー』な
どのクリス・ヘムスワース。さらに2008年12月紹介『ダウト
−あるカトリック学校で−』などのヴィオラ・デイヴィスら
が脇を固めている。
評論家の中には、ハッカーvsハッカーの頭脳戦を期待した
人もいたようだが、主人公たちがアクションに巻き込まれて
行く過程に無理はなく、リーホンとヘムスワースのアクショ
ンも問題なく楽しめた。
大体マン監督というのは、2006年7月紹介『マイアミ・バイ
ス』を企画監督したような人なのだから、物語がアクション
に流れるのは当然の成り行きとも言える。そしてそのアクシ
ョンが本作でも華麗に決められている。

脚本は、2013年Variety紙の10人の脚本家に選ばれたという
モーガン・デイヴィス・フォール。編集に、2012年2月紹介
『SHAME-シェイム-』などのジョー・ウォーカーと、『PO
TC』シリーズを手掛けるスティーヴン・リスキンの2人が
当っているのも肝と言えそうだ。
公開は5月8日から、全国ロードショウが予定されている。



2015年04月19日(日) サムライ・ロック、チャッピー/デッド・シティ2055

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『サムライ・ロック』
名古屋を中心に活動しているアイドルグループBoys & Menが
主演するSF風の設定を含むドラマ作品。
西暦1551年。戦国時代の尾張の国。父・織田信秀の葬儀の場
を飛び出した信長には自らの行く末を決められないでいた。
そんな時、突如生じた日食が信長と従者の羽柴秀吉を新たな
世界へと導く。
彼らが辿り着いたのは現代の名古屋。そこでは1人の若者が
音楽で天下を取ることを目指していた。そんな演奏の場に突
然現れた信長と秀吉は、何も判らないままに警備員を倒し、
演奏を観ていた男の機転でその場を逃走する。
その男は演奏していたバンドのマネージャーで、信長と秀吉
が行ったアクションに注目した男は、2人をバンドに加えて
アイドルとして売り出すことを提案する。その提案に純粋に
音楽で頂点を目指したい若者は反発するが…。
ということで2人を迎えたバンドは、さらにもう1人の戦国
武将も加えて、新たにサムライロックとして音楽界の頂点を
目指すことになる。しかしそこには幾多の障害が…。そして
彼らには元の時代に帰る日も近づいていた。

出演は、Boys & Menのメムバーからすでに『仮面ライダー鎧
武』への出演も果たしている小林豊。2014年12月紹介『クレ
ヴァニ、愛のトンネル』で主人公の若き日を演じた水野勝。
2013年9月紹介『僕たちの高原ホテル』などの本田剛文。
他に、石黒賢、藤吉久美子らが脇を固めている。
脚本は、テレビで『浅見光彦』シリーズや『天てれ』などを
手掛ける早野円と、『マッサン』のノヴェライズを手掛けた
という中川千英子。監督は、2011年『スイッチを押すとき』
などの中島良が担当した。
作品は、名古屋では「ボイ・メン」と呼ばれて知名度も増し
ているとされる彼らの活動そのままのようで、特にSFとし
てどうこう言えるものではない。とは言え例えば後から来た
武将だけが過去に帰りたがるなどは、ニヤリかな。
ただしその武将の年齢が史実に合わないのは、出発の年代が
異なるとすれば言い訳は立つが、名乗り名が幼名なのは…。
それとあと数日で日食という時の月の満ち欠けも、これが明
け方の東の空なら良いのだが…。
いろいろな考証がちょっと足りないかな。でもまあ、やりた
いことは理解できるので、こらはこれで良しとしておこう。

公開は、名古屋地区で5月9日から先行上映の後、東京では
ヒューマントラストシネマ渋谷ほか全国で、6月6日からの
上映となる。

『チャッピー』“Chappie”
『デッド・シティ2055』“Vice”
広義でのロボット物と言える2作品で、片や2010年3月紹介
『第9地区』の監督によるソニー・ピクチャーズ製作の超大
作、片や近年顕著なアクション映画のブランド=エメット/
ファーラ製作によるB級作品だが、どちらも過去の同旨の作
品との関係が面白く、いろいろ書いてみたくなった。
前者は警察配備という設定から、単純には昨年リメイクもさ
れた『ロボコップ』(2014年3月紹介)からの発想と捉えら
れそうだが、僕的には軍事用という前提から1986年と89年に
続編も公開された『ショート・サーキット』が思い浮ぶ。
実際にAIが自我を持つという設定や本を読んで世間を知る
という展開も、そちらの方がより近いと思える。そんな自我
を持ったAIが悪い連中に騙されるというのが『ピノキオ』
なのは明らかだが。
一方、AIが自分の消滅の期限までに解決法を探すというの
は、テレビドラマが放送中の『アルジャーノンに花束を』な
のかな? いずれにしても、こんないろいろなSF的要素が
組み合わされて物語が展開される。
そこにさらにインド人研究者との絡みや、ガンファイトなど
様々な要素が付け加えられ、それらが以前にはできなかった
VFXを駆使して描かれているものだ。
ついでに言うと、『ショート・サーキット』でも登場人物の
1人はインド人だったが、これが今世紀のIT大国インドを
予想していたのだとすれば大したものだ。今回の作品ではそ
れが当然のような感じなのだから。
と言うことで、実はサイボーグのロボコップ以上にいろいろ
悩める存在となるチャッピーだが、正直に言うと最後にAI
が到達する解決法には多少問題がある。特にコンピュータと
人間の脳構造が同じというのはちょっと無理がある。
前作『エリジウム』(2013年8月紹介)もそうだったが、こ
の監督にはもう少し科学考証をしっかりして欲しいとも感じ
てしまうものだ。

出演は、2009年1月紹介『スラムドッグ$ミリオネア』など
のデブ・パテルと『第9地区』などのシャルト・コプリー。
他に、ヒュー・ジャックマン、シガニー・ウィーバー。さら
に南アフリカで活動するラップ・アーティストのニンジャと
ヨーランダらが脇を固めている。
そして後者は、「レプリカント」という言葉がどのくらい市
民権を得ているのか判らないが、そのレプリカント=生物学
的な人造人間が来場者を楽しませるというアミューズメント
パークを背景としたもの。
こちらに対しては、1973年と77年に続編も公開された『ウエ
ストワールド』が想起される。この作品はベストセラー作家
マイクル・クライトンの映画監督デビュー作ともされるもの
だが、やはり過激な欲望が目当ての遊園地だった。
ただしこの作品では、人間とロボットの判別を体温で行うと
されており、観たときには「ガンファイトはいいけれど、低
体温の娼婦はなあ」と、幼心に思ったものだ。その点に関し
本作では改良が観られ、それは納得したところだ。
とは言うものの、メンテナンスで毎朝消去されるレプリカン
トの記憶が消えなかったら…という設定は良いが、その設定
が充分に活かされているか否か。所詮アクション作品だから
とやかくは言わないが、その辺が勿体なくも感じた。
この設定を生かし切れば、もっと本格的なSFドラマも作り
出せそうで、これは脚本家たちには是非とも再挑戦して欲し
いとも思えたものだ。これだけで終わらせるのは本当に勿体
ないと思える。

出演は、2009年12月紹介『ミュータント・クロニクルズ』な
どのトーマス・ジェーン、2012年12月紹介『ザ・マスター』
などのアンピル・チルダース、それにブルース・ウィリス。
そこそこの顔触れが揃った作品だ。
公開は、両者共に5月23日より全国一斉ロードショウが予定
されている。



2015年04月12日(日) ウィークエンド・チャンピオン モンテカルロ1971、樹氷侍/樹氷侍2

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
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『ウィークエンド・チャンピオン モンテカルロ1971』
              “Weekend of a Champion”
3度の年間ワールドチャンピオンにも輝いたF1レーサーの
ジャッキー・スチュワートが、友人である映画監督ロマン・
ポランスキーと共に、自身も3度優勝したモナコGPを背景
にF1レースについて語るドキュメンタリー。
元々はポランスキーの企画で1971年に製作され、翌年のベル
リン国際映画祭では特別賞にも輝いた作品だったが、ポラン
スキーの言葉によると「当時はドキュメンタリーは不遇で、
イギリスで1回テレビ放送され、フランスでも放送されたか
もしれないが、その後は忘れられた」とのことだ。
そんな作品の原板が数年前にイギリスの現像所で発見され、
レーサーの息子でドキュメンタリー製作者のマークの製作総
指揮の許、そのフィルムのリストアや資料映像を取り入れた
再編集、音響のリミックス、さらに追加撮影も行われて新た
に完成された作品になっている。
その見どころは、何と言っても当時では画期的と言えるオン
ボード・カメラによるサーキットの紹介。ドライバーは勿論
ジャッキー・スチュワートで、彼自身の解説付きで1971年の
モナコGPのコースと、現在のコースが2度に亙って紹介さ
れている。
そこでは、1971年当時は本当に真っ暗になって恐怖も感じさ
せるトンネルの様子や、寄り過ぎると車体が破損する恐れも
あった路肩の段差など、正しく時代を感じさせる映像も次々
に紹介される。それはノスタルジーであると共に、ここまで
F1が歩んできた歴史も描いているものだ。
そして後半にはレーサーと映画監督が語り合う現在の情景が
追加され、そこでは「5年生き延びるのは3分の1」と言わ
れる危険な環境だった当時に、次々に去って行った仲間たち
の思い出や、悲惨な事故の様子なども資料映像として綴り込
まれている。
そんな中で、ジャッキー・スチュワートが死亡事故の撲滅の
ために立ち上がり、要求し、実現してきた車体やサーキット
の改善の話は、先に逝ってしまった友やその遺された家族へ
の思いとも重なって、深い感動を描き尽したものにもなって
いる。
F1関連のドキュメンタリーでは、2010年9月『アイルトン
・セナ−音速の彼方へ−』なども紹介しているが、それとは
違った意味でF1の魅力を語った作品と言える。それに何よ
り、あのジャッキー・スチュワートの運転で巡るモナコGP
のサーキット。この映像は宝物だ。

公開は初夏。東京は渋谷シアター・イメージフォーラムにて
モーニング&レイトショウとなる。

『樹氷侍/樹氷侍2』
先日、ベルマーレの応援で山形に行った際に、この2作品の
上映イヴェントに遭遇した。従って試写を観たものではない
が、本作の情報は他の映画サイトにも出てこないようだし、
僕自身が内容的にも気になったので、ここに紹介する。
作品は13分程度の短編と、70分弱の中編の2本立てとなって
いるが、それぞれは独立した作品で物語が繋がっているもの
でもない。単に主人公となるキャラクターが共通していると
いうものだ。
そのキャラクターは「樹氷家族」。山形県山形市にある蔵王
温泉スキー場で、樹氷をイメージして平成24年に誕生したと
いう「じゅっきーくん」と、その両親の「たいきくん」「む
ひょこちゃん」の3人が悪漢相手に死闘を繰り広げる。
その1作目の短編は2014年に発表されたもので、山奥に潜む
悪の集団キツネと「樹氷家族」が戦うというもの。その戦い
振りにはいろいろ仕掛けもあって楽しませてくれるが、如何
せん上映時間が短くて敵の背景などが不明で気になった。
その不満を解消してくれるのが、この日が初公開の第2作。
こちらでは物語にも時間を掛け、主人公や副主人公の様々な
経緯なども描かれ、さらには戦い振りやその流れの中での変
化球などもあって、たっぷりと楽しませてくれた。
そこには突然のホラー風の味付けがあったり、「樹氷家族」
以外の山形県各地のゆるキャラも登場して、正しくヴァラエ
ティに富んだ仕掛けが施されており、その旺盛なサーヴィス
精神にも感激した。
しかも全体のバランスが良く、この種の作品に多く見られる
作者の思い入れの部分が突出して鑑賞していて違和感を生じ
るようなこともなかった。つまり作品として存分に楽しめる
作品だったということだ。
その一方でこの2作は題名に『侍』とある通りのチャンバラ
が主眼。こちらは俳優向けの剣道場とされる魂刀流志伎会の
流れを汲む魂刀流山形殺陣剣術乃会という団体が協力して、
かなり本格的なチャンバラが展開される。
それは勿論、大手映画会社の作品のようにVFXなどが豪華
絢爛というものではないが、作品の全体を通して郷土愛や映
画愛などいろいろな意味での愛情が感じられ、心地良い気分
で作品を鑑賞することができた。

この様な作品に遭遇できたことに感謝したい。
なお公開はこの日1回だけだったようだが、今後は5月10日
に、酒田市にある酒田hopeにて昼夜2回の上映なども予定さ
れているようだ。



2015年04月05日(日) ドラゴンボールZ 復活の「F」、新選組オブ・ザ・デッド/Zアイランド/遺言/ニート・オブ・ザ・デッド

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『ドラゴンボールZ 復活の「F」』
2013年3月紹介『ドラゴンボールZ 神と神』に続く往年の
人気テレビアニメの劇場版。前作からかなり積極的にアニメ
化にタッチしている原作者の鳥山明が、本作では自ら脚本も
手掛けたものだ。
題名に掲げられた「F」とは、1990年代の『ドラゴンボール
Z』に登場した宇宙最凶の敵フリーザのこと。以前の『ドラ
ゴンボール』では、悟空が戦った相手は基本的にわだかまり
を捨てて友となるが、フリーザは別の末路を迎えていた。
そんなフリーザの復活が旧フリーザ軍の残党らによって画策
される。そして神龍の力を借りて遂に復活したフリーザは、
悟空たちへの復讐を誓い、1000人の超人兵士たちと共に地球
に襲い掛かるのだが…。
その頃、悟空とベジータは前作で戦った破壊神ビルスの許で
修行を続けていて不在。このためピッコロ、悟飯、クリリン
たちが苦戦を強いられる中、悟空とベジータが戻ってくる。
しかしフリーザはさらなる変身を遂げていた。
ということで、前作にも増した激烈な戦闘シーンがIMAXを含
む映画館の大スクリーンで繰り広げられる。まあ正直に言っ
てしまえばそれだけの作品なのだけれど、昔から見てきた者
にとっては懐かしさもあり、それで良いと思える作品だ。

声の出演は、野沢雅子、中尾隆聖、山寺宏一、森田成一、堀
川りょう。さらに佐藤正治、鶴ひろみ、田中真弓、古川登志
夫。また中川翔子も前作に続いて声優を務めている。監督は
前作で作画監督を担当した山室直儀。
日本のアニメはほとんど観ていないので、正直あまり語るこ
とはできないのだが、最近に試写で観た作品でも何と言うか
世界観が不明で、さっぱりストーリーが理解できなかったも
のもある。でもまあそれが受けているようなのだが。
その点で言うと本作の場合は、その世界観は原作とテレビシ
リーズでしっかりと構築されている訳で、それがこちらにも
判っているから、観ていて判り易いことはこの上ない。それ
が多少無茶苦茶でも了解できてしまうところだ。
まあそれくらいに他の作品も理解してあげればというところ
だが、そこまで行けないのは自分にも責任を感じてしまうも
のでもある。そんなことで本作だけ取り上げて紹介すること
をお許し願いたい。

公開は4月18日から、2D/3D及びIMAX 3Dで全国超拡大
ロードショウとなる。
なお試写は2Dで行われたので、3Dの効果に関しては未知
のままだ。

『新選組オブ・ザ・デッド』
『Zアイランド』
『遺言』
『ニート・オブ・ザ・デッド』
ゾンビをテーマにした作品の試写が立て続けに行われたので
纏めて紹介しておこう。
1本目は、お笑いコンビ「バナナマン」の日村勇紀が長編映
画初主演、というのが宣伝コピーの最初にある作品。これが
主演か?という疑問は湧くが、オスカーの主演賞の基準も曖
昧で、製作者が主演といえばそれが主演ということだ。
それでお話は、題名の通り新選組が活躍する幕末の世を背景
に、怪しげな武器商人が武器と一緒にゾンビを密輸入する。
しかもそのゾンビが逃亡。それが新選組の番所に現れ…、と
いう展開だ。
時代劇とゾンビというアイデアは判らないでもないが、そこ
から先が何ら普通のゾンビ物と変わらない。ただゾンビと意
思疎通を図ろうとするなどは、それなりの展開だが、これも
1985年“Day of the Dead”で既にあるものだ。
作品のレーティングはR15+だが、期待したほどの描写がある
ものでもなく、もっと何か時代劇ならではの時代背景の中で
のゾンビの活躍を描いて欲しかった。これではアイデア倒れ
と言わざるを得ない。

共演は、山本千尋、竹石悟朗、水樹たま、上杉周大。他に、
2005年9月『探偵事務所5』で出演と一部監督も務めた渡辺
一志、2013年11月紹介『ネオ・ウルトラQ』のPart 2に出演
の尚玄らが脇を固めている。
因に、山本千尋は昨年公開の『太秦ライムライト』にも主演
していて、同作でも見事なチャンバラを披露していた。実際
に剣道の腕前も確かなようで、今後にも期待したい。
2本目は、哀川翔芸能生活30周年記念作品と称された作品。
2014年1月紹介『サンブンノイチ』などの品川ヒロシ脚本・
監督による第4作で、今年1月紹介『ら』などの西村喜廣が
特殊造形監修を担当している。
物語の舞台は銭荷島という名前の離れ小島。そこでは愛人と
共に組を抜けた1人のチンピラやくざが、組から持ち出した
ドラッグを捌いて金を稼ごうとしていた。しかしその事実が
発覚し、敵対する2つの組の幹部が島にやってくる。
その頃、島の診療所では奇妙な症状の患者が増え始め、やが
て患者はゾンビに変身。さらに患者が人に噛みつくと被害者
もゾンビになっていた。しかもそこにドラッグが加わると…
それはとんでもない効果を生じることに。
一方、やくざ稼業に疲れて組を解散した元親分らが、やくざ
の父を嫌って家出した娘の後を追ってその島にやってくる。
そしてゾンビとやくざの抗争に遭遇した彼らは否応なくその
戦いに巻き込まれることになるが。

共演は、鈴木砂羽、鶴見辰吾、木村祐一、宮川大輔。さらに
風間俊介、窪塚洋介、中野英雄。他に吉本興業の芸人らが脇
を固めている。
品川の脚本は過去のゾンビ映画をそれなりに研究はしたよう
で、いろいろと薀蓄があったり、まあ観客を面白がらせよう
とはしているようだ。ただこの作品も、もう少し何か捻りが
欲しかったかな。全体に物足りない感じが残った。

3本目と4本目は、実はそれぞれ短編作品で公開も2本立て
で行われる。その前者は『トカレフ2010 運命の撃鉄』とい
うVシネを監督したことのある木部公亮の作品。
ゾンビ禍が終息したもののまだ後遺症の残る社会を背景に、
ゾンビの処分を委託された民間組織と、ゾンビになった家族
を隠し続けようとする人々との葛藤が描かれる。テーマ的に
はかなりへヴィな作品だ。
ただし、監督の興味がこのへヴィなテーマにあるかどうかは
多少疑問には感じたところで、映画ではかなり安易に銃器を
振り回す民間組織の姿が描かれている。それを監督の前作の
題名と重ねると、少し気になったところだ。

これに対して後者は、2013年『いのちのコール』などの脚本
家の南木顕生による監督デビュー作。
登場するのは、寝たきりの父親と引きこもりの息子を抱える
夫婦。世間はゾンビ禍で騒いでいるが、家族が家から出る心
配の夫婦は安泰と考えていた。ところが…。
ゾンビの描き方自体は在り来たりだが、引きこもりのはずの
息子が何故かゾンビになっているという展開が面白く、今回
紹介した作品の中では一番気に入っている作品だ。

出演は、筒井真理子と木下ほうか。他に金子修介監督の息子
の金子鈴幸、『昭和残侠伝』などの製作者の吉田健。さらに
今年3月紹介『戦慄怪奇ファイル コワすぎ!』などの白石
晃士、カルト俳優のホリケン。らが脇を固めている。
現在のゾンビという映画ジャンルはジョージ・A・ロメロが
確立したと言って過言ではないが、そのロメロはゾンビ映画
について、「死者をリスペクトしないといけない」と述べて
いる。
その観点で言うと、今回の4作品にはあまりそれが感じられ
ないというのが正直なところだ。もちろんこれはロメロ個人
の意見だが、ゾンビに限らず最近の日本映画では、登場人物
にリスペクトを感じられない作品が多いように思える。
僕にはそれが映画をつまらなくしているようにも思えるもの
だ。

公開は1本目が4月11日より、東京は新宿バルト9他で全国
ロードショウ。2本目は5月16日より全国ロードショウ。そ
して3本目と4本目は6月13日より、東京は渋谷ユーロスペ
ースで2本同時上映となる。


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井口健二