2012年08月26日(日) |
FASHION STORY、アウトレイジ2、ヴァンパイア、ロラックスおじさん、One Night One Love、最終目的地、ゾンビ革命、ハーバー・クライシス |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『FASHION STORY〜Model〜』 人気ファッションモデルの本田翼、加賀美セイラ、河北麻友 子らの出演で、ファッション業界で働く女性たちの姿を描い た作品。 物語の主な舞台はファッション雑誌の撮影現場。駆け出しモ デルの雛子は表紙モデルを務めるミホに憧れている。そんな 雛子は、故郷の母親からは先の見えない仕事は辞めて大学受 験をするように言われているが…。ある日、彼女に仕事上の 転機が訪れる。 一方、ミホは常に彼女の撮影を担当してきたカメラマンの男 性と愛人関係にあったが、突然男性から長期の海外取材に行 くと告げられる。そしてミホからのメールに、カメラマンは 応えてくれなくなる。それでも撮影の現場では顔を合わせる 2人だったが。 レナは、恋愛に奥手の女性。今は恋愛より仕事と言い切る彼 女だったが、ある日泥酔してしまったところをメンズモデル の青年に助けられる。しかしようやく交換したメールアドレ スで、彼から頻繁に送られてくるメールに、彼女は何と答え て良いか判らない。 そんな3人のモデルを中心に、雑誌を作り上げて行くまでの 4日間の撮影風景と、それを支えるスタッフたちの動きなど も絡めて、ファッション業界の裏側が描かれて行く。と言っ てもそんなにドロドロとしたものではなく、多くの女性の憧 れの職場という感じで描かれた作品だ。 出演の本田、加賀美は、映画初出演、初主演とは言っても、 すでにテレビドラマなどへの出演は経験済みのようだ。また 河北は映画やドラマの出演歴も多数の女優でもある。従って 演技などはあまり問題もなく、却って普段の職場である撮影 現場の雰囲気を違和感なく演じていた。 共演は、小柳友、須賀貴匡、伊藤洋三郎、手塚理美。他に、 長渕文音、森田彩華、高田美穂。また「no more 映画泥棒」 のキャンペーンに出演のティアラらが同僚モデル役で出演し ている。 監督は、佐々部清監督の許で2011年5月紹介『日輪の遺産』 などの助監督を務めていた中村さやかの長編デビュー作。脚 本は、2007年3月紹介『きみにしか聞こえない』などの金杉 弘子が担当した。 多分、現実はこんな甘いものではなくて、ここに描かれたの はかなりドリーミーな話だとは思うが、最新のファッション もふんだんに登場して、それはそれで夢物語としての価値は ありそうな作品だ。
『アウトレイジ ビヨンド』 北野武監督の最新作で、2010年6月に紹介した作品の続編。 前作と同様に作品のコンセプトは、「登場人物は全員悪人」 というもので、前作の時はヤクザの抗争を描いて、それは正 しく全員悪人だったが、今回はそこに警察や政界も絡んでく る。従って全員悪人とは行かずほんの少しだけ善人?も登場 してしまっている。 物語の背景は前作から5年後。関東を仕切る巨大暴力団組織 [山王会]の頂点に立つのは、前作の抗争を征した加藤だっ た。その加藤は、前作の抗争で取り潰された大友組の金庫番 ・石原を若頭に抜擢し、新進気鋭の石原は、海外や政界にも その手を伸ばそうとしている。 しかしその動きは、前作に繋がる富田、城山、五味ら古参の 幹部たちにとっては本来のヤクザの姿ではなく、彼らの中に は憤懣が鬱積していた。そこに目を付けた組織犯罪対策部= マル暴の刑事・片岡は、古参の幹部たちを焚きつけ、加藤の 追い落としを画策する。 そして片岡は古参の幹部たちの前で、関西を代表する暴力団 組織[花菱会]の名前を口にする。それは彼らを結託させ、 一気に東西両組織の壊滅を狙う作戦というのだが…。そこに はもう1人の前作に繋がる重要人物の存在もあった。 出演は、三浦友和、加瀬亮、中尾彬、名高達男、光石研、小 日向文世らの前作の生き残り組に加え、神山繁、西田敏行、 塩見三省、高橋克典、松重豊。さらに桐谷健太、新井浩文ら が登場する。いずれも現在日本映画で主役を務める面々が、 ヤクザ社会のアンサンブル劇を演じるものだ。 前作は、北野監督がヴァイオレンスに帰ってきたということ でも話題になった作品だが、本作もその点はたっぷりと描か れている。ただそこに走ったためか、殺人があまりに安易に 行われて、その点は少し気になった。 しかし安易に人が殺されるのは、現代社会にも通じている感 じかな。脚本・編集も兼る北野監督のメッセージは、そんな ところにもあるのかもしれない。でも本作では、そこにもう 少し人間的なドラマがあっても良いかなという気分はした。 片岡の動きにしても、そこにもう一つ裏があっても良かった のではないか。そのもう一つ歯車があれば、さらに面白く描 けたのではないか。そんな感じもしたものだ。
『ヴァンパイア』“Vampire” 2009年12月紹介『ニューヨーク、アイラブユー』ではオーラ ンド・ブルーム、クリスティーナ・リッチ共演の一編を監督 した岩井俊二監督が、カナダで撮影した最新作。 題名の通り吸血鬼を描いた現代を背景にした作品だが、登場 するのは伝説のような不死の存在ではなく、単に吸血の性癖 を持つ男の物語。彼は自殺勧誘サイトで自殺希望者を探し、 そのような人物を巧みに誘っては四肢の血管にチューブを繋 いで、その全血液を抜き取っていた。 そんな男は高校の生物教師で、ヴァンパイアを信奉する集団 のパーティなどにも参加はするが、今ひとつメムバーの行動 には違和感を感じている。そして彼が目を付けた集団自殺グ ループに参加した日、彼の教え子で日本からの留学生が自殺 を図ったことから彼の人生が動き出す。 出演は、2006年3月紹介『トランスアメリカ』などのケヴィ ン・ゼガーズ。2002年『クジラの島の少女』で史上最年少の オスカー主演女優賞ノミネーターになったケイシャ・キャッ スル=ヒューズ。そして蒼井優。 さらに2009年『ウルヴァリン』のアデレイド・クレメンス、 2003年8月紹介『死ぬまでにしたい10のこと』などのアマ ンダ・プラマー、2009年2月紹介『ストリートファイター/ レジェンド・オブ・チュンリー』でチュンリーを演じたクリ スティン・クルックらが脇を固めている。 映画では、前半が自殺テーマのようにも感じられて多少苛つ いたが、全体のテーマは人間の孤独を描いたもので、そこか らの展開には前向きなものも感じられた。そしてそんな物語 が、岩井美学とも言われる静かな映像の中で描かれてゆく作 品だ。 因に脚本も兼ねる岩井監督は、当初は自殺者と殺人者という 単純な図式の作品を構想していたそうだが、ちょうど企画を スタートした頃にその通りの事件が現実に起き、企画のオリ ジナリティが疑われて頓挫したとのこと。しかしそこに吸血 というテーマを加えて実現したとのことだ。 しかもそれが、現在ブームになっているヴァンパイアものに 一石を投じる作品にもなったことは愉快なところだ。
『ロラックスおじさんの秘密の種』“The Lorax” 2000年にジム・キャリー主演で映画化された『グリンチ』な どのドクター・スース原作絵本の映画化。 物語の主人公は、スニードヴィルという壁で囲まれた町に住 むテッドという少年。彼の住む町にはカラフルな家などが立 ち並ぶが、どこか変だ。それもそのはず、その街には草木の 代わりにプラスティックの造花が植えられ、空気はボトルで 配達されるのだ。 それでも彼は、今までは何の疑問も感じずに暮らしていた。 ところがある日、テッドは憧れの女性から「本物の木が見た い」と相談される。そして本物の木を探しに出かけたテッド は、町の成立に隠された秘密を知ってしまうのだが…。果た してテッドは本物の木を復活させることができるのか? 監督は、2010年『怪盗グルーの月泥棒』を全米年間第10位の ヒットに導いたクリス・ルノー、脚本は、『怪盗グルー』と 2011年7月紹介『イースターラビットのキャンディ工場』も 手掛けたケン・ダリオとシンコ・ポールのコンビ。 「本物の木」と言われても、映像に現れるのは日本人の感覚 とはかなり違うものだ。しかしこれは木という存在を、もっ と大きなものも含めた象徴として描いているもので、この違 和感はそれを考えさせるためのものでもありそうだ。 そしてそんな想いが、映画の最後に登場するドクター・スー スの言葉で締めくくられる。これは間違いなくもっと大きな テーマを感じさせるものだ。因に原作は1971年に発表されて いる。 声優は、僕の見たオリジナル版ではザック・エフロン、テイ ラー・スウィフト、ベティ・ホワイト、ロブ・リックル、エ ド・ヘルム、それにダニー・デヴィートだったが、日本版で は、志村けん、山寺宏一、トータス松本らが担当しているよ うだ。 公開は10月8日から、3D・2D同時で行われる。映像には アトラクションムーヴィ的なところも何ヶ所かあり、鑑賞は 3Dの方が向いていると言える作品だ。もちろんお子様向け の作品だが、テーマ的には大人にも考えさせるものがあり、 その辺はしっかりした作品と言える。 その点では、『怪盗グルー』『イースターラビット』の気分 で観に来た人はちょっと驚かされてもいたようだ。
『One Night One Love』“You Instead” イギリス最大級のT in the Park ロック・フェスティヴァル を舞台にしたかなり捻ったラヴストーリー。 主人公は、そこそこ人気のあるらしい男性シンガーと、駆け 出しの女性シンガー。そこに女性のヴィデオ・リポーターも 登場するが、直接関係はない。そして男女のシンガーがふと したことで手錠で繋がれ、2人はそのままステージにも上が らなくてはならなくなる。 さらに2人にはそれぞれの付き合っている相手が登場して、 合計4人で一夜を過ごさなければならなくなってしまう。そ んな彼らの一夜の行動が、巨大なロック・フェスティヴァル の会場を背景に描かれる。 実際のロック・フェスティヴァルを舞台にした作品というこ とでは、2010年4月紹介の『BECK』も確かフジロック・ フェスティヴァルで撮影されていたが、フェスの前後に一部 を借りて撮影するのではなく、フェスティヴァルのそのもの の中で撮影が敢行されているのは見事な作品だ。 テーマ的な捻りの面白さもあるし、これはなかなか巧みに作 られた作品と言える。ただし、上にも書いた女性ヴィデオ・ リポーターの存在は、結局その後は主人公たちにも絡まない ものだが、それが途中でも何度も登場するは果たして意味が あったか否か。 とは言え、これがあっても全体の上映時間は80分と短いもの で、これを削ったらどうなってしまうかだが。ここではもう 少し主人公たちのエピソードを掘り下げるなどして、彼らの 姿を充分に描いて欲しかった感じもしたところだ。恐らくは 撮影の状況がそれを許さなかったのだろうが。 監督は、2011年11月紹介『パーフェクト・センス』などのデ ヴィッド・マッケンジー。脚本は、トーマス・レヴェリット のオリジナル。監督の前作と同様、ちょっと変ったテイスト のある作品だ。 出演は、今年1月紹介『最高の人生をあなたと』などのルー ク・トレダウェイ。彼は、2005年のデビュー作ではロック・ ミュージシャン役だったとか。それと『ハリー・ポッター』 でトンクス役のナタリア・テナ。彼女は、女優の傍らロック バンドのリード・ヴォーカルを務めているそうだ。 そんな2人の熱唱シーンは、なかなかのものに仕上げられて いる。 他に、2010年11月紹介『ヒア・アフター』などに出演のマシ ュー・ベントン、『パーフェクト・センス』にも出演のアラ ステア・マッケンジー、2010年10月紹介『キック★アス』に 出演のソフィー・ウーらが脇を固めている。
『最終目的地』“The City of Your Final Destination” 1994年『日の名残り』などで3度のオスカーノミネートを果 たしているジェームズ・アイヴォリー監督が、2005年に盟友 の製作者イスマイル・マーチャントを亡くして以降、最初に 撮った2009年の作品。 たった1冊の著作を残して自殺した作家の伝記をめぐって、 作家が隠遁していたウルグアイの邸宅を訪れた大学講師の伝 記執筆者と、彼を迎える作家の未亡人、愛人、作家の兄とそ のゲイの愛人らが繰り広げる人間模様。そこで未亡人は伝記 の執筆を拒絶し、兄は条件付きでそれを認めるのだが。 そんな中、いろいろな状況から邸宅に居候することになった 伝記執筆者と作家の遺族、さらに近所の住人や途中でアメリ カから駆け付ける伝記執筆者の恋人なども加わって、不思議 な雰囲気の物語が展開されてゆく。 出演は、アンソニー・ホプキンス、ローラ・リニー、シャル ロット・ゲンズブール。 さらに、2005年『ミュンヘン』などのオマー・メトワリー、 2009年6月紹介『バーダー・マインホフ』などのアレクサン ドラ・マリア・ララ、2011年11月紹介『瞳は静かに』などの ノーマ・アレアンドロ。そして真田広之が、ホプキンス演じ る作家の兄の愛人を演じている。 因にホプキンスはアイヴォリー作品には4回目の主演、真田 はアイヴォリー監督の前作『上海の伯爵夫人』に続いての出 演となるものだ。また、ピアニストも目指したことがあると いうホプキンスは、劇中の上映会で演奏されるピアノ曲の作 曲と演奏も務めているそうだ。 1994年『ウィークエンド』の原作者でもあるピーター・キャ メロンの原作から、こちらも監督の長年の盟友である1986年 『眺めのいい部屋』でオスカー受賞のルース・プラワー・ジ ャブヴァーラが脚色。 南米ウルグアイというのも、何とはなしの雰囲気があるが、 そこで繰り広げられる人間ドラマにも南米特有の雰囲気が漂 っている感がした。それは何処か物憂く、それでいて情熱的 で、その雰囲気は何か欧米ともアジアとも異なるものだ。 そんな物語が、世界中から集まった俳優たちによって演じら れる。それも不思議な雰囲気の作品だった。
『ゾンビ革命』“Juan de los Muertos” キューバ革命から50年。キューバ映画史上で初めて作られた ゾンビ映画。 舞台はキューバのハバナ。その街で暮らすフアンは、アンゴ ラ出兵にも参加した男だが、現在は仕事もせずにグダグダと 生活している。そんなフアンは、ビルの屋上から街を眺める ことが日課だったが、ある日、只ならぬ事態が進行している ことに気づく。 それは街の住人たちが突如凶暴になり、お互いを殺し始めて いたのだ。しかし政府の発表でそれはアメリカに援助された 反政府分子の反乱で、まもなく制圧されたというのだが…。 街では革命委員会の幹部までもが凶暴化していた。そこでフ アンが考え出したのは…。 こうして、何度も窮地に陥りながらも生き延びたフアンは、 愛する娘と仲間たちの安全を確保するために最後の作戦に出 ることを考える。それはキューバ人にとっては究極の選択と いえるものだった。 脚本・監督はアレハンドロ・ブルゲス。2007年『恋人たちの ハバナ』という作品が各国で評価されたというアルゼンチン 出身、キューバの映画学校で学んだ監督だが、本作は元々が サム・ライミの大ファンと自称する監督による子供時代から の夢を実現した監督第2作だそうだ。 主演は、ハバナ高等芸術学院演劇科教授で、現在キューバで 最も人気が有り尊敬されている俳優の1人とされるアレクシ ス・ディアス・デ・ビジェガス。 他に、ハバナ国際映画テレビ学校教授を務めるホルヘ・モリ ナ。スペイン女優のアンドレア・デューロ。さらにアンドロ ス・ペルゴリーア、イャス・ビラー、エリエセル・ラミレス らが脇を固めている。 ゾンビというとヴードゥー教のハイチが本場だが、同じカリ ブ海に浮かぶ島国でもさすが社会主義国のキューバは違った ようだ。そんなキューバ初のゾンビ映画は、社会風刺も織り 込みながら、キューバの現状も伝える作品になっていた。 とは言うものの、本当にこんなこと描いちゃっていいの…? と言いたくなるようなシーンも続出する作品で、それは日本 人にもたっぷりと笑えるもの。その一方で愛国心もしっかり と描かれている辺が、さすがお国柄と言えるのだろうか。そ れにしてもかなり皮肉な描き方だったが。
『ハーバー・クライシス』“痞子英雄 首部曲 全面開戦” 2009年から放送され本国台湾で大人気を博したというテレビ ドラマからの映画版。ただし物語はテレビシリーズの3年前 という設定のものだ。 主人公は、ハーバー・シティ南署特捜科に赴任したばかりの 新米刑事。しかし名前はウー・インション(呉英雄)で、そ の名が体を表すような熱血漢。今も強盗団を身体を張って取 り押さえマスコミからは英雄を呼ばれるのだが。署内の上司 には難癖を付けられて、停職処分にされてしまう。 しかし事件が彼を追いかけるのか、街で車のトランクに詰め 込まれた死体を発見し、さらにその死体が飲み込んでいた携 帯電話は、新たな事件を彼にもたらしそうだ。 一方、ハーバー・シティを仕切るヤクザ三連会の幹部シュー ・ダーフーは、一時的に預かった組の金で一儲けを企む。と ころが資金を倍にするはずの宝石の密輸では取引現場が謎の 軍隊に襲われ、しかも現場で携帯電話の情報でやってきた刑 事と出食わしたダーフーは…。 とまあ文章で書くと普通の刑事ドラマだが、ここに登場する 謎の軍隊というのが、高速ヘリからロケット砲も装備した飛 んでもない連中で、高々2人のためにそれをぶっぱなす。そ れでも窮地を脱出してしまう刑事たちだが…。そこから後も 途轍もない大アクションが連続する。 因にテレビシリーズでの英雄の相棒はプレイボーイ刑事だそ うだが、映画はその2人が出会う前の話。本作ではヤクザの 幹部が相棒となり、それぞれの立場を踏まえた活動で、国家 を揺るがす大事件を解決するものだ。 出演は、本作のテレビシリーズで大ブレイクしたというマー ク・チャオ。2006年7月紹介『クレージー・ストーン』など のホァン・ポー。 他に、2004年9月紹介『ターンレフト・ターンライト』など のテリー・クァン、2010年11月2日付「東京国際映画祭」で 紹介『ホット・サマー・デイズ』などのAngelababy、台湾の 映画監督でもあるレオン・ライ、2009年2月紹介『新宿イン シデント』などのカオ・ジエ、2007年1月9日付「東京国際 映画祭」で紹介『八月的故事』などのディーン・フジモトら が脇を固めている。 映画後半の大アクションをどこまで紹介していいか迷うとこ ろだが、そのアクション監督には、フランスから『トランス ポーター』シリーズなどのシリル・ラファエリと、香港から もジャッキー・チェンスタントチームのリー・チュンチーが 招かれ、さらにハリウッドから『ファイナル・デスティネー ション』の美術チームが呼ばれるなど、正に国際的な陣容で 製作されている作品だ。 それにしても久々に大アクションを観られた、という感じの 作品だった。
2012年08月19日(日) |
桃さんのしあわせ、高地戦、秋瑾〜競雄女侠〜、のぼうの城、ザ・レイド、ウォリスとエドワード+Avengers, Justice League, Jumanji |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『桃さんのしあわせ』“桃姐” 香港の女性監督アン・ホイによる1人の女性の半生を描いた 実話に基づく作品。 桃さんは13歳の時から60年間に亙りその一家に仕えてきた。 そして一家の大半は海外に移住したが、その内の1人で映画 製作者のロジャーが帰国してからは、その世話をするのが彼 女の仕事になる。 それは主人の好き嫌いや健康も考えた料理を供すること。他 にも家の中は塵一つなく掃除が行き届いている。その仕事ぶ りは、ロジャーが他人には義母と紹介するほどの愛情の籠っ たものだ。 ところがその桃さんが脳卒中を起こし、幸い症状は軽かった が、もはや仕事は無理と告げられる。こうして老人ホームに 入居することになった桃さんだったが、そこには様々な老人 たちが暮らしていた。 そんな老人ホームで暮らす中で徐々に老いて行く桃さんの姿 と、映画業界で生きるロジャーの生活ぶりを描きながら、映 画は老いを迎えることの現実とそれに向かって行く人たちの 姿を愛情を込めて描いている。 出演は、本作で11年ぶりの映画界復帰を果たしたベテラン女 優のディニー・イップ。今年4月紹介『王朝の陰謀』などの アンディ・ラウ。他に、チン・ハイルー、ワン・フーリー、 チョン・プイ、アンソニー・ウォンらが脇を固めている。 またサモ・ハン、ツイ・ハークら多数の映画人がロジャーの 関係者として登場している。因にラウは、本作の製作にも関 与し、出演はノーギャラだそうだ。 原作は、本作も手掛ける映画製作者ロジャー・リーの実話に 基づくもので、ハウスメイドは香港でも廃れゆく職業のよう だが、そんな中での伝統的な主従関係などが愛情を持って描 かれている。 それは必ずしも暗いイメージではなく、愛情や信頼など素晴 らしい人間関係を描いている。そしてそこにはある種のノス タルジーも感じさせるものだった。
『高地戦』“고지전” 2009年1月『映画は映画だ』と2010年8月『義兄弟』を紹介 しているチャン・フン監督が、朝鮮戦争における最大の激戦 に焦点を当てて描いた作品。 1953年7月27日10時に発効した朝鮮戦争停戦協定を巡って、 その第5条63項で除外事項とされた第2条12項の記載に関連 した物語。その附則によると、戦闘は協定が発効した時点か ら12時間後まで認められ、その間に最後の戦いが行われたと いうのだが。 物語は、国連軍と北朝鮮軍及び中共軍との間で行われている 停戦協議の場から始まる。その協議は開戦から1年も経ずに 始まったが、2年が過ぎても未だ纏まる様子はなかった。そ れはめまぐるしく変わる高地戦の戦況によるものが大きく、 そこでは日々支配地域が変化していたのだ。 そんな中、高地で戦う一部隊の異変が伝えられる。それは北 の兵士の手紙が、南の軍郵便で配達されているというもの。 そして諜報部に務める主人公は、その調査を命じられて激戦 の続く高地に向かうことになるが…その部隊はまだ若い将校 によって指揮されていた。 同じ民族の者同士が戦っている朝鮮戦争。そこでは異民族と の戦いとは違う特別なドラマが展開されていたようだ。そん な中での究極の人間ドラマが展開される。 出演は、2006年8月紹介『トンマッコルへようこそ』などの シン・ハギュン、今年1月紹介『超能力者』などのコ・ス。 さらに若手のイ・ジェフン、イ・デビット、2008年8月紹介 『ファン・ジニ』などのリュ・スンリョン、2007年1月9日 付「東京国際映画祭」で紹介した『多細胞少女』などのキム ・オクビンらが脇を固めている。 脚本は、2000年のヒット作『JSA』の原作者としても知ら れるパク・サンヨン。南北兵士の特別な状況を描いた作品と して2000年作品と本作とは共通する点も多いが、それは人間 ドラマとしても興味の惹かれるものだ。 ただ本作の場合、発効した停戦協定には、すでに停戦ライン は地図と共に明記されているものだし、最後の12時間の戦い というのが現実にあったのかどうか。その辺には多少の疑問 も感じた。特に映画の舞台とされる白馬高地は、現在の停戦 ラインの北側になっているものだ。 しかし物語が描くのはそのような問題ではなく、戦争の理不 尽さやその中で生き抜く人間の姿であって、その人間ドラマ が韓国での大ヒットを生み出したものと言える作品だ。
『秋瑾〜競雄女侠〜』“競雄女侠・秋瑾” 2011年10月紹介『1911』と並ぶ「辛亥革命100周年記念 映画」の1本。 1907年7月15日、斬首刑に処せられた「中国革命のジャンヌ ・ダルク」とも呼ばれる女性闘士の生涯を描く。 物語はその秋瑾の裁判の模様から始まり、回想の中で幼少期 に纏足を拒んだり、金持ちの息子に嫁いだものの夫の不甲斐 なさに家族を捨てて日本に留学するなど、自主独立の生涯を 選んで行った経緯が描かれる。 そして帰国後は、日本で知り合った紹興府の徐錫麟の許で、 人民開放を目指す大通学堂を開校するが、1907年7月6日の 徐錫麟による武装蜂起の際、決起日の錯誤から動きを察知し た清軍に不意を衝かれ、逮捕、処刑されてしまう。 映画では、この徐錫麟の武装蜂起の模様や、秋瑾逮捕の様子 などが、激烈なカンフーアクションと詩人でもあった秋瑾の 詩作と共に描かれている。 監督は、今年2月紹介『イップ・マン誕生』も手掛けたハー マン・ヤウ。主演は、その『イップ・マン』に出演のクリス タル・ホワンとデニス・トー、ローズ・チェン。さらにショ ン・シンシン、ラム・シュー、アンソニー・ウォンらが脇を 固めている。 因にこの作品は、日本では劇場公開はなくDVDなどで紹介 されるもので、この記事もDVDを鑑賞して書いているもの だが、このため作品紹介用のプレス資料がほとんど提供され なかった。 そこで秋瑾についてネットで検索したところ、歴史的な偉業 の紹介は別として、最近、杭州・西湖畔に建つ秋瑾像のそば では、「誰これ?」と話す若者の声が多く聞かれるとの報道 ニュースも伝えられていた。 それは、日本の各地に建つ偉人像のそばなどでもよく聞かれ るものだが、革命で国家が成立した中国でも同様というのは 多少意外な感じもする。しかし「80後」と呼ばれる中国の 若者の実態はこうなのだそうで、若者の無教養化というのは 何処も同じのようだ。 そのためにこの映画も作られているのだろう。 また作品は、結果的に7月末紹介『声をかくす人』にも似た 内容になっているが、そこには軍隊の狂気も描き出されてい るものだ。
『のぼうの城』 オリジナル脚本が2003年の城戸賞を受賞、2007年に自ら小説 化した書籍がベストセラーとなり、直木賞候補、本屋大賞の 第2位を獲得した和田竜原作の映画化。 元々城戸賞は映画脚本の賞であるから受賞の直後から映画化 の企画はあったが、そのスケール故に製作の見送られていた 作品を、2005年6月紹介『メゾン・ド・ヒミコ』などの犬童 一心と2006年『日本沈没』などの樋口真嗣のW監督で実現し た。 物語の背景は天正18年(西暦1590年)。豊臣秀吉は全国統一 の最後の戦いとして小田原城に拠点を置く関東の覇者北条氏 を攻める。その総兵力21万。 一方、北条氏は関東一円に支城網を張りそれを迎え撃つが、 その本隊5万の兵は小田原城に集められていた。そのため各 支城は、手薄な陣容で豊臣軍を迎え撃つしかなかった。 そんな中、現在の埼玉県行田市に築城された忍城では、当主 成田氏長と兵500を小田原城に取られ、城を守るのは約500。 対するは、石田三成率いる2万5千の軍勢だったが… 2007年3月紹介『300』のスパルタ軍は、300人で10万の ペルシャ軍を迎え撃ったが、銃器や大砲も繰り出される近代 戦ではその様相も全く異なる。その状況の許で忍城軍は知力 を尽くして圧倒的な敵との戦いに挑むのだ。 さらにそこには、全長28kmの堤をわずか5日で築いたとされ る石田三成の水攻めなど、大スケールの戦略も登場する。因 に、忍城は明治期に取り壊されたが、堤の一部は石田堤の名 で現存しているようだ。 出演は、8年ぶりの映画主演となった狂言師の野村萬斎。他 に榮倉奈々、成宮寛貴、山口智充、佐藤浩市。さらに上地雄 輔、山田孝之、市村正親、鈴木保奈美、前田吟、芦田愛菜ら が脇を固めている。 物語はさすがに本屋大賞第2位の実力を示すもので、当時の 状況説明なども巧みに解り易く描かれている。ただしそれを 肉付けする人間ドラマがあまりにステレオタイプで、単純な アクションドラマならそれでも良いが、本作では多少物足り なかった。 その割には上映時間が2時間半近くあるもので、ここはやは り原作本と同じく上下2部作にするくらいの気持ちでよかっ たのではないかな。そんな無い物ねだりもしたくなった。
『ザ・レイド』“Serbuan Maut” 昨年のトロント国際映画祭でミッドナイト・マッドネス部門 の観客賞を受賞。評論家たちの高い評価も受けて全米公開が 実現。続編やハリウッド・リメイクの計画も発表されている インドネシア製アクション映画。 物語の舞台は、ジャカルタに建つ古いアパート。そこは悪の 巣窟として知られ、中には麻薬工場も作られ、住民の多くは 最上階から睨みを効かすボスの言いなりだ。そんな建物に警 官隊が突入する。その目的はボスの逮捕だったが…。 何故か動員されたのは車両1台分の、しかも隊員は新人ばか りだった。その作戦の真の目的は? 果たして彼らはボスを 逮捕し、無事建物から脱出することはできるのか? 彼らの 前には史上最悪の地獄が待ち構えていた。 出演は、本作のアクション・コレオグラファーも務めるイコ ・ウワイスとヤヤン・ルヒアン、それにドニ・アラムシャ。 彼らはいずれもインドネシア古来の武術プンチャット・シラ ットのプロパフォーマーで、本作には彼らの技が存分に描か れている。 他に、柔道の国内チャンピオンでモデルや俳優も行うジョー ・タスリム、インドネシア映画界のベテラン俳優レイ・サヘ タピーらが脇を固めている。 監督は、ウェールズ出身のギャレス・エヴァンス。エヴァン スは2007年にドキュメンタリー映画の製作でインドネシアを 訪れ、その際に出会ったウワイス、ルヒアンの技に魅せられ て長編映画の製作を発案、本作はその第2作となっている。 さらに第3作として本作の続編も決定しているようだ。 物語の舞台はほぼ建物の内部に限定されて、それはある種の ソリッドシチュエーションのような興味も引き出す。そして そこには抜け道などの仕掛けも施され、それはゲーム感覚の 面白さにもなっている。 そんな中で、世界50カ国の軍隊などで採用されているという 武術プンチャット・シラットの妙技が披露されるものだが、 それは必要に応じて拳銃や短剣などの武器も繰り出す実践的 なもので、日本公開はR15+指定になるほどの、かなり強烈な ものにもなっていた。 ただプロパフォーマーたちによる組手自体は、かなり様式化 されている感じもしてしまったもので、特にクライマックス の3人での闘いは、リアルさより華麗さが目立つ感じになっ ていた。もちろん映像的にはそれで良いのだが。 なお、原題はインドネシア語のものを表記したが、国際英題 は“The Raid: Redemption”となっている。因にトロントで は“The Raid”のみで上映されたが、この題名には先に登録 があったことと、将来のシリーズ化も考慮して変更されたそ うだ。
『ウォリスとエドワード』“W./E.” 2011年1月紹介『英国王のスピーチ』でも紹介された英国王 エドワード8世とアメリカ女性シンプソン夫人との英国王冠 をかけた恋を、夫人の側から描く2008年10月紹介『ワンダー ラスト』のマドンナ脚本、監督による作品。 英国皇太子エドワードとウォリス・シンプソンとの恋愛は、 エドワードが英国王の座を放棄するという最大の犠牲を払う ことで成就されるが、果たして犠牲を払ったのはエドワード だけだったのか、シンプソン夫人の方にこそさらに大きな犠 牲が強いられていたのではないか… そんな長年の疑問に取り付かれたマドンナが、2年の歳月を かけて執筆した脚本を、自らの監督で描いた作品。それはた だ単に歴史的な事実を解明するだけでなく、ニューヨークに 暮らす現代女性の姿にも焦点を当て、女性の生き方を問いか ける作品にもなっている。 その現代の主人公は、人気の精神分析医と結婚して周囲から も羨まれる生活を送っているが…。以前の勤め先だったサザ ビーズで開かれるオークションにエドワードとウォリス縁の 品が出品され、その内覧会を見に行ったときから様々な想い が彼女に押し寄せ始める。 それはいつしかウォリスの想いとも繋がりを持ち、彼女が手 に取った品を通じて2人の心が通じ合う。そしてそこには、 シンプソン夫人の辛く切ない想いも浮かび上がってくる。 その物語が、ファッションブランド・ヴィオネの協力で4着 が複製され、アカデミー賞衣装デザイン賞の候補にもなった 華麗な衣装と、カルティエが協力した数々の宝飾品などに彩 られて展開される。 出演は、2011年4月紹介『エンジェル・ウォーズ』などに出 演のアビー・コーニッシュと、2010年12月紹介『わたしを離 さないで』などに出演のアンドレア・ライズブロー。それに 2004年3月紹介『ドット・ジ・アイ』などのジェームズ・ダ ーシー、『エンジェル・ウォーズ』のオスカー・アイザック らが共演している。 映画の中でも、自身で「私は美貌の持ち主ではない」と語る シンプソン夫人が、なぜエドワードに王位を捨てさせるほど の恋心を植えつけたのか、それが男性の観客にも容易に解る ように巧みに描かれた作品。他にも女性ならではと思わせる シーンもあり、マドンナの只ものでない資質も伺えた。 現在と過去をシンクロさせるなど、かなりトリッキーな作品 だが、それでも解り易くテーマが描かれていることにも感心 した。 * * 今回はお盆で試写会も少なかったので、製作ニュースを少 しまとめて紹介しておこう。 まずは、すでに今週から先行上映が始まっているが、公式 には来週末に日本公開の始まる『アベンジャーズ』で、続編 “The Avengers 2”の計画が発表されている。その計画は、 前作を手掛けたジョス・ウェドンが再度脚本と監督を担当す るというもので、全米公開日等は発表されていないが、実は ウェドンとマーヴェルの契約が2015年6月末に切れるとのこ とで、従ってそれまでには作られるだろうとのことだ。 因にマーヴェルからは“Iron Man 3”が2013年5月3日、 “Thor: The Dark World”が11月8日、“Captain America: The Winter Soldier”が2014年4月4日、未来を背景にした “Guardians of the Galaxy”が8月1日とそれぞれ年2作 ずつの全米公開日が発表されているが、まだ2015年の計画は 発表がされていないもので、その枠に“The Avengers 2”の 入る可能性は高い。そうなると5月1日の線もあるようだ。 ただし、アイアンマンのロバート・ダウニーJr.、ソーの クリス・へムスワース、キャプテン・アメリカのクリス・エ ヴァンスの出演は可能として、ホークアイ=ジェレミー・レ ナーとブラック・ウィドー=スカーレット・ヨハンセンの再 演は叶うものか否か。もっとも“Thor: The Dark World”に ナタリー・ポートマンは出ているようだから、その辺はしっ かり契約されているのかな。 一方、ハルクに関しては、再びテレビシリーズで活躍させ るという計画も進んでいるようだ。元々ハルクは、1980年前 後にビル・ビクスビー、ルー・フェリーノ主演によるテレビ シリーズが5シーズンも続く人気だったこともあり、今回の テレビシリーズの案は理解できないものではない。 ところが今回『アベンジャーズ』でブルース・バナー役を 演じたマーク・ラファロは、「マーヴェル社との間で6本の 出演契約を結んでいる」との発言をしていて、その内の2本 は『アベンジャーズ』と“The Avengers 2”だが、残る4本 がテレビシリーズと関わるものかどうか。さらにマーヴェル では、ギレルモ・デル=トロの監督で“Incredible Hulk” のrebootを狙っているという情報もあり、これからの動きが 注目される。 それともう1本、マーヴェルが映画製作に乗り出す以前の 契約で、外部で映画化されている内の“Daredevil”に関し て、フォックスの所有している権利が10月10日に期限切れと なる。これに対してフォックスでは、それまでに続編の製作 をスタートさせるべくジョー・カーナハンに脚本を依頼して いたものだが、最近その脚本が不調に終わったことが判明、 このままでは権利がマーヴェルに返却されることになる。 そうなるとマーヴェルで新たな“Daredevil”の展開も可 能になり、その動きも楽しみなものだ。 * * さて以上はマーヴェル=ディズニーの動きだったが、対す るDC=ワーナーからも負けじの計画が報告されている。そ れはスーパーマン、バットマンらが一堂に会する“Justice League”の計画だ。 この計画に関しては2007年3月1日付第130回以降、当時 は何度か紹介していたものだが、その計画が最近は『ダーク ナイト』に並行してクリストファー・ノーランの脚本、監督 でも検討されていた。しかしその計画は頓挫という発表にな り、なかなか難しい計画と考えられていた。 ところがそこにベン・アフレックを監督に招請するという 報告が公表された。さらに脚本には“Gangster Squad”など のウィル・ビールが昨年の夏に契約され、すでに初稿は完成 されているとのことだ。そして脚本をワーナーから手渡され たのは、アフレックただ1人との情報も伝えられている。 アフレックは、2010年11月紹介『ザ・タウン』や今秋には 新作の『アルゴ』も公開予定で、監督としての評価も充分だ が、2007年3月紹介『ハリウッドランド』ではスーパーマン 役者を演じたアフレックが、どのようなスーパーヒーローを 描くか、それも楽しみになる計画だ。 なお“Justice League”は上記の2人の他、グリーン・ラ ンタン、ワンダーウーマン、ザ・フラッシュらで構成される ものだ。 * * もう1本最後にソニーの話題で、前々回紹介『トータル・ リコール』に続いて今度は1995年の“Jumanji”をリメイク する計画が報告された。 計画しているのは、『アメイジング・スパイダーマン』を 手掛けた製作者のマット・トルマックで、その他のスタッフ ・キャストなどは未定だが、ソニーとしては夏休み向けの大 作規模で、家庭向けのシリーズ化も狙う意向だそうだ。 因に『ジュマンジ』の関連では、2005年11月紹介『ザスー ラ』も作られているものだが、シリーズ化というのはさらに いろいろなゲームが登場することになるのか、その辺も楽し みになりそうだ。
2012年08月12日(日) |
B・レガシー、フタバから遠く…、ビラルの世界、情熱のピアニズム、リヴィッド、恋と映画とウッディ・アレン、UVERworld、中国映画の全貌 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ボーン・レガシー』“The Bourne Legacy” 2002年11月紹介『ボーン・アイデンティティー』に始まった ロバート・ラドラム原作「ジェイスン・ボーン」シリーズが 3部作で完結し、そのシリーズからインスパイアされた新た な主人公による作品。元々ラドラムの原作は3冊しかなかっ たもので、本作はハリウッドによる続編だ。 因に先の3部作では、最終的にボーンは身体能力を高める医 療実験の被験者とされていたものだが、本作ではそれと並行 して進められていた別の実験の被験者が主人公となる。その 男アーロン・クロスは、北部カナダの極寒の地で日々を過酷 な鍛錬に明け暮れていた。 ところが支給されていた薬剤が乏しくなり、彼は生身の人間 には不可能とされる山越えをして前線基地に向かうのだが、 そこで新たな事態に巻き込まれる。そしてCIAの陰謀に気 付いたアーロンは、ミッションに従事していた女性研究者と 共に薬剤の保管場所を目指す。 物語の推移は至って単純だが、それを華麗かつ過激なアクシ ョンで彩って行くのが本作の見所だ。とは言うものの、正に つるべ打ちの格闘技からバイクアクションまでの展開は、観 客にもかなりの体力が要求されるもので、観終わると多少の 疲労感もあるほどの刺激的なものだった。 主演は今年6月紹介『アベンジャーズ』などのジェレミー・ レナー。共演は2006年3月紹介『ナイロビの蜂』などのレイ チェル・ワイズ、2008年7月紹介の『インクレディブル・ハ ルク』には主演したが『アベンジャーズ』には登場しなかっ たエドワード・ノートン。 他に「ボーン」シリーズに登場のジョアン・アレン、1997年 『L.A.コンフィデンシャル』などのデヴィッド・ストラザ ーン、2008年『ブッシュ』などのスコット・グレン、2000年 『エリン・ブロコビッチ』などのアルバート・フィニーらが 脇を固めている。 脚本と監督は、オリジナル3部作の全脚本を手掛けたトニー ・ギルロイ。シリーズの全貌を知り尽くした脚本家が、オリ ジナルを上回るアクション作品を作り上げた。それは北極圏 から東南アジアまで、背景となる風景も楽しめる作品だ。
『フタバから遠く離れて』 2011年3月11日の福島第1原発災害により町ごと避難を命じ られた福島県双葉郡双葉町の姿を追ったドキュメンタリー。 3/11関連のドキュメンタリーを観るのは何本目になるのだ ろう。それぞれが色々な意図を持って描かれた作品には、作 品ごとに見所があるが、もしかしたら本作は、僕が最も観た かった作品と言えるものかもしれない。 この作品には、恐らくは歴史から消え去ってしまうのであろ う原発の町の悲劇が、見事に描かれている。 そこには、緊急避難命令によってまだ生存していたかもしれ ない家族を救いに行けなかった人の悔悟や、畜舎に繋がれた まま放置された家畜たちの最後など、原発と共に僕らの目か ら隠されていた事実が浮かび上がってくる。 その一方で作品は、原発推進派の集まりである全原協の副会 長だった双葉町町長の姿を追い、避難先の埼玉県の廃校に置 かれた仮の町長室での姿や、全原協の会議での発言の様子な ども描かれる。 ここでは福島原発が放射能を撒き散らしている最中なのに、 それには触れずに出来もしない安全対策を国に要求する敦賀 の首長の姿など…。そして双葉町町長は、自分のした事は間 違っていたのかと心情を吐露してしまう。 勿論そこには自業自得という見方もあるだろうが、現実には 国を挙げて彼らを騙し続けてきたのであり、その詐欺の被害 者を「今まで甘い汁を吸ってきた」などと非難することは、 詐欺師を擁護することにほかならない。 そんな今まで自分が言いたかったことの証明がこの作品には 見事に描かれていた。 作品は昨年11月、福島原発事故収束安全宣言が出されたのを 機に纏められたものだが、その時点で避難命令は解除されて おらず除染作業なども行われていない。さらには町長自身の 被爆測定すら行われてはいなかった。 被災前の双葉町は風光明媚な場所だったようだ。しかしその 故郷に住民たちが戻れるのはいつの日か。もしかしたらその 日は永遠に訪れないのかもしれない。弱者を切り捨てる、こ れが日本の原子力政策の実態ということだ。 監督は、2009年9月に『谷中暮色』を紹介している舩橋淳。 今回は外連もなくストレートに綴られた作品だった。
『ビラルの世界』“بلال/Bilal” 2009年の山形国際ドキュメンタリー映画祭で「アジア千波万 波奨励賞」及び「コミュニティシネマ賞」をダブル受賞した 作品。 インド西部の大都市コルカタのスラム街で、盲目の両親と共 に暮らす3歳の少年の姿を追ったドキュメンタリー。 監督は、ボランティアをしていた妻の紹介で、当時8ヶ月の 少年に出会う。その時の少年は怪我をして盲目の母親の胸に ギュッと抱かれていたが、少年は監督に微笑み返し、その手 がそっと母親に触れて監督の存在を知らせたという。 その姿に魅了された監督はその後に何度も少年の家に通い、 家族の了承を得た上で、少年が3歳の時から14ヶ月に亙って 少年とその家族の姿を撮影した。その160時間にも及ぶ映像 素材を1年半以上かけて編集した作品とのことだ。 ここで少年は、3歳児らしいやんちゃな顔を見せる一方で、 両親の目となって健気に手伝いをする姿なども映される。し かし基本はやんちゃ盛りの少年、狭い家の中を上へ下へと動 き回って一時たりと止まらない。 さらに幼い弟をいじめたり、それで父親に叱られたり、兎に 角、喧騒が彼の周りを取り巻いている感じだ。そしてそんな 一家を見つめる周囲の人々。貧しい中でも深く濃いつながり が一家を支えている。 監督のソーラヴ・サーランギは、インドの名門映画学校=イ ンド映画テレビ学院で映画編集を学び、すでにドキュメンタ リーやフィクションの監督作品とプロデューサーとしても活 躍し、受賞作も多いそうだ。 その作品は、時間をかけてじっくり登場人物たちと向き合う 手法で、繊細な作品に定評があると紹介されている。因に最 新作はNHKなどの製作で、ガンジス川の中洲に暮らす人々 を描いた作品がこの秋にBSで放送予定になっている。 そして本作は、10月に東京はオーディトリウム渋谷で上映、 その後は全国のミニシアター系での公開が予定されている。 多分誰もが元気を与えてもらえる作品。どんなに困難な暮ら しの中でも、人は生きている…そんな感じの作品だ。 なお原題はアラビア語だが、これはビラルの父親がイスラム 教徒で、その関係で付けられた名前だからのようだ。映画の 巻頭にもこのように表記されていた。
『情熱のピアニズム』“Michel Petrucciani” 1962年フランス生まれ。1999年1月にニューヨークで病死す るまで36年間を、疾風のごとく駆け抜けた稀代のジャズ・ピ アニスト、ミシェル・ペトルチアーニの人生を描いたドキュ メンタリー。 ペトルチアーニは誕生の時、全身の骨が折れた状態で生まれ てきた。骨形成不全症という遺伝性の病気を持つ彼は、些細 な圧力でも骨が砕けてしまうという得意な体質の持ち主だっ たのだ。しかし天は彼に2つの贈り物を与える。それは音楽 に対する稀有な才能と、カリスマ的な人格だった。 元々彼の一家は、父親がモダンジャズに傾倒するセミプロの ミュージシャンで、子供の頃から音楽に浸ていた彼は、3歳 までに主なジャズのメロディを正確に口ずさめたという。そ して4歳でデューク・エイリントンをテレビで見た彼は、玩 具ではない本物のピアノを両親にねだる。 かくして本物のピアノを手に入れた彼は7歳までに神童であ ることを証明。一時はクラシックの音楽学校に入学するが、 結局はジャズを選び、14歳のときには地元で評判の即興演奏 家となって行く。その頃にはアメリカ人ジャズマンとの共演 も果たしている。 さらにその3年後には、パリでレコード製作を開始。1981年 から85年までの間に5枚のアルバムを録音。また81年にはパ リ・ジャズフェスで演奏して、またたく間にスターの座を獲 得する。しかし彼はヨーロッパに飽きたらず、18歳でアメリ カに渡り、さらに高みを目指して行くが。 作品は、かなり初期の頃から残されている映像や、さらに素 晴らしい録音に彩られて、ジャズと、女にも生きた彼の生涯 が綴られて行く。それは音楽映画として聞くにも充分な作品 になっている。 監督は、1994年『イル・ポスティーノ』などのマイクル・ラ ザフォード。元々はドキュメンタリー出身の監督が、関係者 へのインタヴューなども織り込みながら、身長1mのピアニ ストの生涯を見事に描き出している。
『リヴィッド』“Livide” 今年6月に開催された「フランス映画祭2012」での上映作品 中、唯一紹介できなかった作品。今回はその作品を、9月の 一般公開に向けてのマスコミ試写で観ることができた。 主人公は看護士の資格を持つ若い女性。彼女は研修のために とある湊町に到着し、年配の女看護士が行う在宅老人の投薬 など介護に同行する。しかしその待ち合わせのバス停には、 多数の行方不明の子供を捜す張り紙があった。 そして主人公らが向かった3軒目は森に包まれた大邸宅。そ こで輸血のみで生きながらえる老女は植物状態だが、老女の 遺言と財産によってその状態が保たれていた。そしてその邸 宅には、財宝が隠されているとの噂もあった。 一方、主人公は実はその湊町の出身で、恋人と再会した彼女 はその財宝の話をする。そしてその情報は恋人を一獲千金の 夢に駆り立て、恋人の弟も加えた3人は深夜の邸宅に忍び込 むが…。そこには世にも怪奇な出来事が待ち構えていた。 映画の途中には、年配の女看護士が拉致した少女を処理する シーンなども挿入され、それは邸宅の秘密に繋がっているよ うなのだが、その辺の説明が今いちピンとこない。その邸宅 の主にはそれなりの理由もあるようなのだが。 でもまあそれはそれとして、最後にはかなりシュールな展開 もあって、何というかニヤリとするお話が展開されていた。 脚本と監督は、2007年『屋敷女』のアレクサンドル・パステ ィロ&ジュリアン・モーリー。前作が海外で評判を得た2人 組には、『ハロウィン』『ヘルレイザー』などの新作も依頼 されたがいずれも頓挫し、制約の少ないフランスに戻って本 作を完成させたものだ。 出演は、2011年1月紹介『ゲンスブールと女たち』に出てい たというクロエ・クールー。1991年生まれの新星がヒロイン を務める。 他にセザール賞受賞者のカトリーヌ・ジャコブ、マルセイユ 国立バレエの芸術監督も務めたマリ=クロード・ピエトラガ ラ、本作でスカウトされた撮影当時14歳のクロエ・マルク。 さらにフェリックス・モアティ、ジェレミー・カポーヌ、そ して『屋敷女』のベアトリス・ダルらが脇を固めている。 『サスペリア』を想起させるバレエとホラーの組み合わせな どダリオ・アルジェントへの傾倒も見られ、ユーロホラーの 新たな担い手となる意欲も満々な作品のようだ。
『恋と映画とウッディ・アレン』 “Woody Allen: A Documentary” 1965年『何かいいことないか子猫チャン』の脚本・出演から 2011年『ミッドナイト・イン・パリ』まで、45年に亙るアレ ンの映画人生と、それ以前のギャグライターやスタンダップ ・コメディアンに遡るアレンの半生を、アレン自身への密着 取材や初めて紹介される撮影風景なども含めて描いたPBS 制作のドキュメンタリー。 僕自身のアレン体験は、『何かいいことないか子猫チャン』 は観ているが当時は意識していなかった。しかし、1973年の 『スリーパー』の公開の時は、アメリカで話題のウッディ・ アレンの作品として意識して試写会に駆けつけたものだ。 それから1969年の監督デビュー作『泥棒野郎』や、1972年の 『ボギー!俺も男だ』は追い掛けて観に行ったが、1977年の 『アニー・ホール』からはアレンは変わってしまったとの想 いで遠ざかっていた。 ただし、ファンタシー系と見倣せた1985年の『カイロの紫の バラ』や、1987年の『ラジオ・デイズ』などは観ていた。そ して1999年の『ギター弾きの恋』あたりからまた観始めてい たものだ。この作品はそんな僕にぴったりの作品だった。 ここには正にアレンの映画が満載で、しかもそれぞれの時代 の思い出と共に語られており、それはほぼ同時代を生きた僕 にとっての思い出にも重なるもの。僕はアレンより14歳年下 だが、そんなノスタルジーに浸ることもできた。 それにしてもクリップで挿入される各作品の面白いこと。そ れはもちろん作品のベストの部分が抜き出されているものだ が、それにしても短いカットだけで確実に笑えることには、 今さらながら驚嘆した。 それからアレンへのインタヴューの中で、SFファン的には 興味深いアレンとアイザック・アシモフのエピソードが語ら れていた。これにはアレンのSFへの関心も感じられ、SF ファンには聞き逃せないものだ。 正にアレンファンには見逃せない1作だ。 なお本作は、東京では11月10日からTOHOシネマズ・シャンテ で公開されるが、その後の12月1日からは同劇場で2010年作 の『恋のロンドン狂騒曲』も公開、さらに2013年には最新作 の“To Roma with Love”の日本公開も決まったようだ。 因に『恋のロンドン狂騒曲』“You Will Meet a Tall Dark Stranger”は、今回のドキュメンタリーと一緒に試写を観せ てもらったが、アンソニー・ホプキンス、ジェマ・ジョーン ズ、ナオミ・ワッツ、ジョッシュ・ブローリン、さらにアン トニオ・バンデラス、フリーダ・ピント、ルーシー・パンチ らの共演で、アレンらしいほろ苦さの効いた大人のコメディ が展開されていた。 その作品が、ドキュメンタリーでの撮影風景に続けて楽しめ るのも、ファンには嬉しいプレゼントとなっているものだ。
『UVERworld/Documentary:THE SONG』 2005年にメジャーデビューした滋賀県出身の5人組バンドを 追ったドキュメンタリー。 2010年には東京ドーム公演も成功させながら、今だにライヴ ハウスにこだわる彼らの音楽姿勢と、それを培った彼らの成 長の記録が、メムバーや関係者へのインタヴューによって描 かれている。 元々滋賀県には2つのライヴハウスがあり、そこに集まるの はほとんどが知り合いばかり。そんな観客よりも出演者の方 が多いような環境の中で、幼馴染やその友達の友達というよ うな感じで仲間が集まり、バンドが結成される。 そんな彼らが一歩ずつ階段を登り、メジャーデビューを果た す。しかしそこには別の試練も待ち構える。そんな中で結束 した彼らは、自らの想いで音楽性を高めて行く。 その一方で彼らはリハーサルを公開し、若いバンドマンたち の目標となる努力も重ねる。それは彼ら自身が昔し見せても らった先輩たちの姿にも重なっているようだ。 最近は何故かドキュメンタリーの試写が立て続けにあって、 今週もすでに観た9本の内6本がドキュメンタリーだった。 その中で本作は、音楽に疎い僕としては正直にはあまり期待 していなかったのだが。 作品を通して感じる彼らの気持ちには共感を覚え、いつしか 引き込まれる作品になっていた。 それは彼らの音楽に対する真剣な態度もあるが、何より周囲 の者を大切にし、後輩たちにも優しい気配りをする姿が、最 近の若者にはない純朴さのようなものを感じさせてくれたせ いかもしれない。 それに本作では、ライヴシーンの楽曲に歌詞の字幕が付いて いるのも好ましく感じられた。それは作品の展開ともマッチ して、彼らからのメッセージが一層明確に伝わってくる感じ もしたものだ。 歌詞の字幕は日本著作権協会が煩くて、うかつに付けられな い、という話を以前に聞いたことがあるが、本作ではそれを どのようにクリアしたのか。映画の展開として有効な字幕だ っただけに、よけいに気になった。 特にエンディングクレジットは、字幕の配置も含めて見事な ものだった。 監督は、関ジャニ∞のコンサート用映像や、福山雅治主演の 「アサヒスーパードライ」のCMなどを手掛ける中村哲平。 新たな映像作家の誕生も感じさせる作品だった。
『中国映画の全貌2012』 10月6日から東京新宿K’sシネマにて開催される標記特集 の中で上映される作品の内、新作2本の試写が行われた。 「私の少女時代」“我的少女時代” 文化大革命による下放を描いた作品。主人公は子供の頃の病 気で下半身が付随になり、部屋を一歩も出られない生活をし ていた。しかし下放政策により両親と共に田園の村に行かさ れた主人公は、独学の医療で村人の役に立ち始める。 物語は、映画の最初と最後に出演している中国障害者連合会 の女性会長チャン・ハイディーの自伝に基づくもので、下放 政策の中でも逞しく生き抜いた女性の姿が描かれる。 とは言っても、今まで中国映画では下放政策のネガティヴな 面ばかり観てきていたから、多少の違和感は生じたが、まあ こういう人もいたということ、こういう人だから会長も務め ているのだろう。 監督は、中国中央電視台・番組総監の地位にあるフェン・ゼ ンジとその妻のチャオ・ホイリー。2人は前作でも障害者を 主人公にした作品を撮っているそうだ。主演は、京劇出身で 本作が3作目のリー・イーシャオが務めている。 「ロスト・イン・北京」“蘋果” 現代の北京で暮らす2組の夫婦の物語。1組はエステサロン を経営する金持ちの夫婦だが、年月を重ねても子供に恵まれ ていない。もう1組は妻がそのサロンに勤めるエステシャン だが、ある状況から社長と不倫をしてしまう。 しかも彼女の夫がそれを目撃してしまい、ドタバタの事態に なってしまうのだが、やがて彼女の妊娠が判明し、その子供 を巡ってさらに2組の夫婦の葛藤が始まる。 中国の一人っ子政策が今も続いているかどうか知らないが、 中国での子供の誕生は、特にその子が男子の場合は日本以上 に特別な意味を持っているようだ。そんな事情も絡んでの、 笑い飛ばすには少々厳しいドラマが展開される。 監督は、2010年11月1日付の「東京国際映画祭」で紹介した 『ブッダ・マウンテン』のリー・ユー。同作で映画祭の最優 秀女優賞を獲得したファン・ビンビンが本作にも出演し、他 にレオン・カーワイ、トン・ダーウェイ、エレイン・チンら が共演している。 なお今回の特集では、上記の新作の他に、国交回復で日中友 好協会に寄贈された5本のプロパガンダ作品『農奴』『白毛 女』『阿片戦争』『五人の娘』『エニアル』も上映されるこ とになっている。
2012年08月05日(日) |
莫逆家族、アシュラ、籠釣瓶、恋に至る病、リンカーン/秘密の書、キック・オーバー、デンジャラス・ラン、トータル・リコール+Hobbit |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介しています。なお、文中※ ※物語に関る部分は伏せ字にしておきますので、読まれる※ ※方は左クリックドラッグで反転してください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『莫逆家族』 1999年から2004年まで「週刊ヤングマガジン」に連載された 田中宏原作漫画を、2010年9月紹介『海炭市叙景』などの熊 切和嘉監督が、主演にお笑いコンビ・チュートリアルの徳井 義実を迎えて映画化した作品。 主人公は30代半ばの男性。以前は暴走族のリーダーで鳴らし ていたようだが、今は建設労務者でグダグダした仕事を続け ている。その存在は妻や高校生の息子からも疎まれている感 じだ。しかしその息子の恋人で、主人公の族仲間だった男の 娘がレイプ被害にあったことから事態が動き出す。 それは主人公を過去に直面させ、その過去を精算するものに なって行った。内容的には『海炭市叙景』にも通じるものが あると思われるが、本作ではそれがさらに暴力的に描かれて いた。 その違いは原作によるものではあろうが、それを敢えて熊切 監督が撮る理由があったのか否か。2008年10月紹介『ノン子 36歳』以降の作品からは違和感も感じる。しかしそれ以前 の作品を考えるとこれも熊切作品という感じだし、その根底 にあるものは多分同じなのだろう。 共演は、林遣都、阿部サダヲ、玉山鉄二、新井浩文、大森南 朋、北村一輝、村上淳、そして倍賞美津子。さらに今年3月 紹介『けの汁』などの石田法嗣、2011年1月紹介『津軽百年 食堂』などのちすん、2010年4月紹介『書道ガールズ』など の山下リオらが脇を固めている。 物語の全体には、水よりも濃い血の流れのようなものも感じ させるが、その中から新しい未来を生み出そうとする、そん な希望のようなものも感じさせてくれる作品ではあった。こ れも熊切作品ということだろう。 なお徳井は、普段のヴァラエティ番組などで見掛けるのとは 雰囲気も風貌も異なり、この役柄に真剣に取り組んでいる気 持ちが伝わってきた。因に映画の終盤で倍賞に頬を張られる シーンは、至福の喜びだったようだ。 さらにクライマックスの決闘シーンは、2011年3月の極寒の 中、3日間徹夜で撮影されたものだそうで、その徳井の意気 込みに応えて、上記の現代日本映画を背負う俳優たちが見事 な競演を見せているものだ。
『アシュラ』 ジョージ秋山原作、発表当時有害図書と糾弾された作品が、 原作のヴィジュアルを活かしたアニメーションで映画化され た。 時代は中世、平安京の頃。相次ぐ洪水や旱魃による飢饉に加 え、日本史上最大の内戦・応仁の乱により世の中は荒廃。食 物を失った人々の間では人肉食も横行し始めていた。そんな 中で1人の赤子が誕生する。 産み落としたのは狂女。彼女は最初のうちこそ赤子を育てよ うとするが…。やがて親ともはぐれた赤子は、野獣たちの中 を生き抜いて行く。そしてアシュラと名付けられた少年は、 人々を襲うケダモノとなる。 原作は、1970年8月の連載開始で当時の僕はあまり漫画は読 んでいなかったが、この作品だけは上記の話題もあり、回し 読みなどで目にしていた。その当時の印象は、ひどく物悲し い物語だったと記憶している。 それは、今回映像化された中でも、若狭に肉を与えようとし て拒否されるくだりなどは、何故なんだと自問したくなるく らいのものだった。その時は心底からアシュラを救いたくな るような気持ちだった。 そんな作品に、40年以上を経て今回は再会したものだが、当 時を知る者としては、さすがにその時のインパクトは薄れて いた。しかし当時のメッセージは今でも通じるものと思われ るし、今の若い人たちにはそれを感じ取って欲しいものだ。 監督は、2005年『鴉-KARASU-』が話題になったさいとうけい いち。2011年『TIGER & BUNNY』をヒットさせた俊英が、歴 史的な作品に挑んでいるものだ。 声優には野沢雅子、林原めぐみ、玄田哲章、平田広明、水島 裕ら大御所が集い、さらに北大路欣也がキーとなる役柄を演 じている。ただし北大路にはもう少し外連があっても良いよ うにも感じたが。 なお本作は、アヌシー国際アニメーション映画祭や上海国際 映画祭、ファンタジア映画祭、ニューヨーク・アジア映画祭 などで招待上映されているようだ。 公開は9月29日から。因に本作の鑑賞制限はGの一般向きに 指定されている。
『シネマ歌舞伎・籠釣瓶花街酔醒』 歌舞伎の舞台を映画で上映する「シネマ歌舞伎」の第18弾。 江戸吉原で起きた実際の事件に基づき、1888年に初演された という三世河竹新七作の歌舞伎の舞台が、中村勘三郎、片岡 仁左衛門、坂東玉三郎の共演で登場する。 序幕は吉原仲之町。田舎から出てきたお大尽がふと入り込ん だ吉原で、道中をする人気花魁の八ツ橋に遭遇する。そして 八ツ橋に入れあげたお大尽は、八ツ橋の身請けの話までも進 めようとするのだが、八ツ橋には間夫の侍がいた。 序幕の見染めの場では3組の花魁道中が登場し、豪華な衣裳 が競われる。その中でも玉三郎演じる八ツ橋の衣裳は、立体 的な蝶の刺繍などそれは絢爛なものだ。そして仲居などを引 き連れた道中の様も見事な姿になっていた。 そこから始まる廓の話。廓噺は落語ではいくつも聞いている が、このような豪華な衣裳を見せられると、成程これが江戸 の花街だったのかと、改めて廓の世界を認識させられる思い がした。 そして舞台は、立ち回りなどの派手な演出は少ないが、特に 第3幕の縁切りの場からは見事な台詞回しの連続で、七五調 の決め台詞が次から次に登場してくる。その心地良さといっ たら、これは格別なものだった。 それは七五調の台詞回しにはリアルさも何もないものだが、 これこそが日本の芸能文化の原点とも感じさせてくれるもの で、これは大事に継承していかなければいけないと感じさせ てくれるものだ。 実は昔に瀬田貞二訳の『指輪物語』が読み難くて辟易してい たものが、ある日その訳文が七五調であることに気付き、音 読の気持ちで読み返したら実に気持ちよかった。そんな気分 も思い出させてくれた。 共演は中村魁春、中村勘九郎、中村七之助、中村鶴松、市村 家橘、片岡亀蔵、片岡市蔵、坂東彌十郎、片岡秀太郎、片岡 我當。なお撮影は平成22年2月の歌舞伎座で、第十七代中村 勘三郎の二十三回忌追善興行として上演された舞台となって いる。 お大尽のあばた面の化粧が今の人たちにどれほど通じるのか など、心配になる部分もあるが、それを言ったら廓の風情も 今には通じないものだろうし、このような作品によって文化 が伝えられて行くことも期待したいものだ。
『恋に至る病』 第21回PFFスカラシップ作品として製作された木村承子脚 本・監督による長編デビュー作。 気弱な生物の教師に焦がれるようになった女子生徒が、多少 ヘンな妄想にとり憑かれ、それを実践してみると…という、 ちょっとファンタスティックなところもある作品。 主人公のツブラはある妄想を持っている。それは大好きなマ ドカ先生に抱かれて、彼の大事なものを奪ってしまうという もの。そんな妄想が高じた終業式の日、準備室にいた先生に 襲い掛かると、それは実現してしまう。 こうしてあそこだけ男性になってしまったツブラと、女性に なってしまった先生は、やむ無く人里離れた廃屋だった先生 の実家に隠れることにする。そこにツブラの親友のエンや、 そのボーイフレンドのマルもやってきて…。 男女が入れ替わってしまうというのは、過去にも名作のある 定番のファンタシーだが、それがアソコだけというのは確か に新機軸かもしれない。とはいうものの、それを映像で描け ないのはかなりのハンディキャップだ。 ただし監督は、そんなことは気にしていないのか、いざとな ってからは台詞も含め具体的なことはほとんど表現しない。 観客が思い付けということだろうが、僕らはいいけど一般向 けの映画として、これは多少無理があるとも感じられた。 実際にマドカが股間を抑えて驚愕するシーンには、別のこと も想像してしまった。これが後半までの隠し技としても、も う少し何かの工夫は必要だったのではないかな。そこが映画 監督としての腕の見せ所のようにも感じたものだ。 それにエンとマルの描き方があまりにステレオタイプなのも 気になるところで、これではこの2人の登場の意味がない。 どうせならツブラとエン、マドカとマルの関係も描いて、順 番に巡って万事収まるような展開もあると思えたが。 出演は、今年4月紹介『苦役列車』など出演の我妻三輪子、 2007年8月紹介『サッド・ヴァケイション』など青山真治監 督作品に常連の斉藤陽一郎、2009年7月紹介『悪夢のエレベ ーター』などの佐津川愛美、2012年『ヒミズ』でヴェネツィ ア映画祭主演賞受賞の染谷将太。なかなか気になる顔ぶれが 揃ったものだ。
『リンカーン/秘密の書』 “Abraham Lincoln: Vampire Hunter” 今年5月紹介『ダーク・シャドウ』の脚本を担当したセス・ グレアム=スミスが原案と脚本、製作総指揮も務めたアクシ ョン・ファンタシー。因にグレアム=スミスは、2009年発表 の“Pride and Prejudice and Zombies”も評判の作家だ。 物語の始りはリンカーンの幼少時代。奴隷を巡る争いで返り 討ちに遭い、その後に最愛の母親が謎の死を遂げる。しかし その死がある人物に関わると知るリンカーンは復讐を誓い、 やがてその時が訪れる。 ところがその人物は不思議な力に守られ、何度倒しても起き 上がってきた。その急場を救ったのはヘンリーと名告る男。 そのヘンリーは、戦いの相手がヴァンパイアであることを教 える。そしてヘンリーの許でヴァンパイアハンターの訓練を 積んだリンカーンは、遂に母親の復讐を遂げるが、そこには さらなる強大な敵が待ち構えていた。 奴隷制度が実はヴァンパイアに血を供給するための手段であ り、南北戦争がその供給を絶つための戦いであった…という かなり奇想天外な発想に基づく作品。しかもゲティスバーグ の戦いが、いかに重要であったかが語られる。 そんなアメリカの歴史の闇が描かれた作品だが、映画の見所 は様々なアクションで、特に刃が銀でコーティングされた斧 をハンティングの武器とするリンカーンが華麗に斧を振り回 すシーンや、後半ではさらなるアクションが展開される。 これならアメリカの歴史を知らない日本人にも、充分に楽し んでもらえる作品だ。 出演は、2005年5月に紹介した『愛についてのキンゼイ・リ ポート』がデビュー作というベンジャミン・ウォーカー。他 に2011年11月紹介『デビルス・ダブル』などのドミニク・ク ーパー、2012年公開『遊星からの物体X』などのメアリー・ エリザベス・ウィンステッド。 さらには2008年『ハートロッカー』などのアンソニー・マッ キー、2010年『ツーリスト』などのルーカス・シーウェル、 2011年7月紹介『マーガレットと素敵な何か』などのマート ン・ソーカス、スーパーモデルのエリン・ワッソンらが脇を 固めている。 製作はティム・バートン、監督は2008年『ウォンテッド』な どのティムール・ベクマンベトフが担当した。 先月『声をかくす人』を紹介したところで、本作はちょうど その始まりの辺りで終わるものだ。どうせなら暗殺事件との 関わりも描いて欲しかった感じもしたが、それはもっと大き なタブーなのかな。
『キック・オーバー』“Get the Gringo” 1995年『ブレイブハート』でオスカー監督賞に輝いたメル・ ギブスンが俳優に専念し、メキシコの悪名高い刑務所を舞台 に描いたアクション作品。 主人公は、やばい金らしい大金を持ってパトカーに追われな がら国境を突破、メキシコに逃亡したアメリカ人の男。しか しメキシコの悪徳警官に捕まり、金は奪われ、自身は悪名高 きエル・プエブリート刑務所に放り込まれる。 その刑務所は、本来は外部との接触を許容することで犯罪者 の更生を早める目的を持って設営された施設だったが、外部 との接触は組織との接触も容易にし、刑務所内はさながら社 会の縮図で組織の温床になっていた。 そんな中に放り込まれた主人公は、まずは巧みに立ち回って 組織の概要を掴み、さらには彼らを利用して奪われた金を取 り戻すことを画策する。しかし刑務所には軍隊を動員して閉 鎖する期限も迫っていた。 まるでスラム街のような刑務所の中や、そこを牛耳る組織の 姿などが、一面ではヴァイオレンスとユーモアも込めて描か れてゆく。それは適度の興奮とカタルシスも得られる作品だ った。 共演は、2004年『バッド・エデュケーション』などのダニエ ル・ヒメネス・カチョ、2011年のオスカー候補作“A Better Life”などのドロレス・エレディア、2005年2月紹介『コン スタンティン』などのピーター・ストーメア、それに人気子 役のケヴィン・ヘルナンデス。 脚本は、ギブスンと2006年『アポカリプト』の第1助監督を 務めたエイドリアン・グランバーグ、第2助監督を務めたス テイシー・パースキーが共同で執筆。グランバーグが監督、 パースキーが製作を担当している。 さらに『アポカリプト』に参加のジェイ・アロエスティが美 術監督を務めるなど、スタッフはギブスンの関係者が集合し ているようだ。 実生活ではいろいろ問題も起こしているギブスンだが、いざ 映画となれば集まる仲間も多くいるようで、人情には厚いの だろう。それは本作の主人公にも通じるところで、そんな主 人公を自らの脚本で描き出しているものだ。
『デンジャラス・ラン』“Safe House” 1989年『グローリー』と2002年『トレーニング・デイ』で、 2度のオスカー受賞に輝くデンゼル・ワシントンの製作総指 揮・主演によるアクション作品。 物語の舞台は南アフリカ。その国でCIAが重要人物を匿う ために用意した「セイフハウス」は長年開店休業状態だ。そ の管理人のマットは、近々パリに向かう恋人と共に転属する ことを願っているが、捜査活動などに実績のない彼の願いは 叶いそうもない。 そんな時、電話が鳴り出し重要人物の到着が告げられる。と いっても彼が行うのは室内を整えることだけで、特別な任務 がある訳ではなかったが…。やってきたフロストは10年前に CIAを離脱し、世界各国の諜報機関の機密を握る危険人物 だった。 そして「ハウス」ではフロストから機密を聞き出すべく過酷 な尋問が開始される。ところがその直後、誰も知らないはず のその場所が襲われ、尋問に来ていたベテラン捜査官たちが 皆殺しとなる。この時マットにはフロストと共に脱出して、 彼を次の隠れ家に連れてゆく任務を与えられるが。 事態はCAIに内通者がいることを示し、またフロストはど んな相手も懐柔する心理戦の名手でもあった。 共演は、2011年7月紹介『グリーン・ランタン』では主役を 務めたライアン・レイノルズ。その恋人役に2009年7月紹介 『幸せはシャンソニア劇場から』などのノラ・アルネゼデー ル。女優は本作がハリウッドデビューとなった。 他に2011年8月紹介『ミッション:8ミニッツ』などのヴェ ラ・ファーミガ、2010年2月紹介『グリーン・ゾーン』など のブレンダン・グリースン、2010年9月紹介『フェア・ゲー ム』などのサム・シェパードらが脇を固めている。 脚本は、本作がデビュー作というデヴィッド・グッゲンハイ ム、監督はスウェーデン出身で本作でハリウッドデビューを 飾るダニエル・エスピノーサ。ワシントンはエスピノーサと 会食して、即決でこの役を引き受けたそうだ。
『トータル・リコール』“Total Recall” 1990年にアーノルド・シュワルツェネッガー主演で製作され たフィリップ・K・ディック原作映画のリメイク。この再映 画化に、今年2月紹介『アンダーワールド:覚醒』では製作 総指揮・脚本を務めたレン・ワイズマン監督が挑戦した。 物語の背景は、21世紀末。世界は相次ぐ戦争で荒廃し、人類 が居住可能なのはイギリス諸島を中心としたブリティン連邦 (UFB)と、その植民地である地球の裏側に位置する「コ ロニー」だけだった。 そのコロニーからは、地球の地殻を貫通するフォールと呼ば れる移送機関を通じて毎日労働者がUFBに通勤していた。 そして彼らはUFBに暮らす富裕層の人々に奉仕させられて いたが、この状況は労働者の不満を呼ぶものだった。 そんな中で主人公は、現状に不満は持ちながらもグダグダと 勤務を続けていたが、ある日憂さ晴らしに寄った「リコール 社」で彼はとんでもないトラブルに巻き込まれてしまう。 出演は、2011年11月紹介『フライトナイト』などのコリン・ ファレル、ワイズマン監督夫人のケイト・ベッキンセール、 2011年12月紹介『ニュー・イヤーズ・イブ』などのジェシカ ・ビール。さらにブライアン・クランストン、ビル・ナイ、 2009年『スター・トレック』などのジョン・チョウらが脇を 固めている。 脚本は、2006年6月紹介『ウルトラヴァイオレット』では脚 本監督を務めたカート・ウィマーと、2010年『アンストッパ ブル』などのマーク・ボンバック。 物語は、多分1990年版より原作に則していると言える。少な くとも1990年版の後半の展開は本作には存在しない。しかし 随所に1990年版へのオマージュのようなものは見られ、製作 者たちの気持ちも表されていたようだ。 それに本作では、未来都市の景観がかなり秀逸で、そこには 同じくK・ディック原作『ブレード・ランナー』へのオマー ジュのような感じもあり、乱雑に空中に伸びた迷路のような 大都市が面白く描かれていた。 それにしても子供の頃に科学読み物で知った地殻を貫通する 移送機関がこのような形で見られるとは、その様子にも感激 したものだ。 * * ピーター・ジャクスン監督が今年12月公開を目指して進め ている『LOTR』の前日譚“The Hobbit”の映画化で、作 品が2部作ではなく3部作になることが公式に発表された。 これはジャクスン監督が自らfacebookに報告したもので、 今年12月公開の“An Unexpected Journey”と来年12月公開 の“There and Back Again”に続く、2014年12月の公開とな る作品だ。その内容は不明だが、元々ジャクスン監督が今回 の計画を発表した段階では3部作と言っていたこともあり、 これは本来の姿に戻ったものと考えてよさそうだ。 ただし先の2つのタイトルは原作からも採られたもので、 第3部がどのようなタイトルになるか、それも気になるが、 いずれにしてもこれからたっぷり3年間は楽しめることにな り、ファンには万々歳のところだ。
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