2003年06月16日(月) |
チャーリーズ、コンフェッション、28日後、ミニミニ大作戦、シェフと素顔と、レボリューション6、10日間で男を、タイタニックの秘密 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介します。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『チャーリーズ・エンジェル(特別映像)』 6月28日の日米同時公開で、本編の完成試写はまだ行われて いないが、6月2日の主演3人の来日記者会見の前に41分の 特別映像が披露された。 完成前なので批評はしないでくれという要請はあったが、見 たことの紹介だけはさせてもらう。 00年に公開された前作は、言ってしまえば、まるでアクショ ンの似合っていない主演の3人が、見事にアクションを決め てしまうのが見ものだった訳だが、その前作を上回らなけれ ばならない続編に、同じメムバーで再び挑むのだから、その 自信の程は相当のものだったのだろう。 そしてその結果は、この3年間のVFXの進歩には長足のも のがあることが、またしても証明された感がある訳で、一部 しか見ていない条件ではあるが、次々に繰り出されるアクシ ョンは、実に上手く決まっている感じがした。 実際、とてつもないアクションが、顔を隠したスタントマン ではなく、見るからにディアス、バリモア、リューの顔で行 われているのだから、この進化は、『マトリックス』以上と 言えるかも知れない。 また、今回のアクションはかなりコミカルに演出されている 感じなのだが、かなりはちゃめちゃなアクションが平然と行 われているのには、感心と言うか、感動的ですらあった。 もちろん完成品を見なければ最終的な判断は出来ないが、こ の特別映像のアクションのテンションが保たれるのなら、か なり楽しめそうだ。 それに加えて、3人のファッションやら、ダンスシーンやら …、ということで、見所はかなりありそうな感じ。完成披露 試写は6月17日に予定されている。 『コンフェッション』“Confession of a Dangerous Mind” 『ゴング・ショー』が懐かしいチャック・バーリスが執筆し た原作を、チャーリー・カウフマンが脚色、ジョージ・クル ーニーが監督第1作として映画化した作品。 テレビ創成期のどたばたを描いた自伝的部分と、実はバーリ スがCIAの訓練で鍛えられた殺し屋だったというフィクシ ョンが交錯する物語。 カウフマンは、『アダプテーション』ではノンフィクション の脚色の難しさを訴えつつ、見事にフィクションとの融合を 実現して見せたが、本作では、最初からノンフィクションと フィクションの入り混じった原作を脚色した訳だ。 実は、僕はもっとコミカルなものを期待して行ったのだが、 かなりシリアスというか、真面目な雰囲気に驚いた。もちろ ん笑いを取るシーンもあるのだが、全体的には、真面目な印 象が残る。 ところが、話自体はかなりいい加減というか、コミカルな物 語なのだから、実はちょっと困ってしまった。これをお笑い として見られる感覚があればいいのだが、僕にはそれができ なかった。多分、これが本当に実話だったら、これで納得で きたのだろうが…。 ただし、真面目な物語としてみれば、かなりいいお話にはな っている。いろいろなことに正面から真剣に取り組もうとす るバーリスの美化されたイメージは、それなりに理解できる し…、だから作品自体は気に入っている。 正直に言って、僕自身、まだ混乱しているところなのだ。 主演のサム・ロックウェルは、屈折した主人公をよく演じて いるし、特に後半『ゴング・ショー』を再現した部分のバー リスの姿は、自分で覚えている番組の中のバーリスそっくり で感心した。 また『ゴング・ショー』時代のタレントたちや、最近のスタ ーのカメオ出演も楽しめた。 そういえば、昔Unknown Comicが出演する“Night Patrol” という映画のLDを買って持っていたはずだが、どこにある のだろう。 『28日後...』“28 Days Later” 『トレインスポッティング』などのダニー・ボイルが監督し た2002年作品。ボイル監督、レオナルド・ディカプリオ主演 で映画化された『ザ・ビーチ』の原作者アレックス・ガーラ ンドのオリジナル脚本の映画化。 突然蔓延した人の凶暴性を増進させるウィルスによって、ほ とんどの人間が28日間で死滅した後のイギリスを舞台にした 終末もの。 作者は、J・G・バラードをイメージして書き上げたストー リーということだが、バラードというよりは、ジョン・ウィ ンダムやジョン・クリストファーなど、もう一世代前のイギ リスの破滅ものの雰囲気が感じられる。 実際、この作品はイギリス映画であって、ウィンダムの『ト リフィドの日』を映画化した『人類SOS』や、クリストフ ァーの『草の死』を映画化した『最後の脱出』のような雰囲 気がよく出ていて、その伝統が守られている感じがした。 最近のイギリスを舞台にした終末ものでは、先に公開された 『サラマンダー』があるが、VFX満載の作品に比べ、それ に頼らなかった分だけ雰囲気は正統に近い。また、ケヴィン ・コスナーの諸作のように主人公がヒーロー振らないところ も良い感じだった。 それにしても、イギリス軍の志気の低さと弱体さが描かれて いるのは笑えるし、最後は、物語の流れからいって多分アメ リカ軍に救われるというのも、皮肉っぽくて良かった。 『ミニミニ大作戦』“The Italian Job” 69年に公開された同名のイギリス作品のリメイク。 と言っても、オリジナルはイタリアのトリノが舞台で、本作 の舞台はロサンゼルス。それに犯行の手口も全く違うのだか ら、わざわざリメイクとしなくても良さそうなものだが、ミ ニクーパーを駆使した金塊強奪というアイデアだけで著作権 が成立しているようだ。 しかし、一応はオリジナルに敬意を表したのか、発端はイタ リアのヴェネチアというのが気が利いている。この水の都の 水路を駆使した作戦で、主人公たちは大量の金塊を盗み出す のだが、裏切りで年長の金庫破りが殺され、金塊は奪われて しまう。 そう言えば、オリジナルの映画は、飛んでもないクリフハン ガーで終っていたものだが、当時に出たノヴェライズによる と、主人公たちは金塊を持ってイギリスに帰り着くものの、 そこで奪われてしまうという結末になっていた。 従って、本作の発端でイタリアで奪った金塊を奪われてしま うという展開は、ある意味、オリジナルを引き継いでいると 言えないこともない。 そして1年後、金塊の行方を追ってロサンゼルスに潜伏する 裏切り者を見つけ出した主人公は、父親譲りの金庫破りの腕 を持つ娘を巻き込んで、金塊奪還の作戦を立てる。それはロ サンゼルスに大渋滞を引き起こし、その中をミニで突破する というものだった。 オリジナルは、イギリス映画らしいユーモアに溢れた、アク ションと言うよりは小粋な犯罪コメディという感じで、カー チェイスも円形断面の下水道の中をミニが左右に大きく揺れ ながら突っ走るシーンが印象に残っている程度だ。 このシーンは今回も再現されているが、オリジナルでは主人 公たちの後をやはり小型車のパトカーが追いかけたものが、 アメリカのパトカーではそうは行かず、バイクになっている のはご愛嬌だ。 それに加えて今回は、地下鉄や小型ヘリコプターなど、いろ いろなアクションが取り揃えられていて、さすがに21世紀版 のリメイクという感じがした。 なお、映画の中でテレビに白黒映画が映っているシーンがあ り、その作品が何かと思ったら『アルフィー』だった。これ はオリジナルに主演したマイクル・ケインに敬意を払っての ことだろう。 それからもう一つ、発端部分の老金庫破りの役でドナルド・ サザーランドが出ているが、彼が『M★A★S★H』でブレ イクする直前に出演した『戦略大作戦』という作品は、本作 のオリジナルを執筆したトロイ・ケネディ・マーティンの脚 本によるものだった。 しかしこの作品は、僕にとっても期待外れだったもので、サ ザーランドはある意味、その批判の矢面に立たされたところ がある。それを考えると、サザーランドにとって本作は積年 の思いを遂げた出演というところかも知れない。 ちょっと長めに書いてしまったが、実は本作がリメイクであ ることは、試写会で配られたプレスシートにもほとんど触れ られていない。このため翌日見に行った別の試写会でも、そ のことを知らないで話している人がいて、思わず説明をして しまったほどだ。 リメイクというのが、必ずしも宣伝にはならないのかも知れ ないが、邦題もわざわざオリジナルと同じにして、話題のネ タも沢山あるのに、もったいない感じもした。 『シェフと素顔と、おいしい時間』“Decalage Horaire” シャルル・ドゴール空港を舞台に、ストで足止めを喰った男 女の巡り会いを、ジャン・レノとジュリエット・ビノシェの 共演で描いたロマンティック・コメディ。 男は、フランスの田舎町に店を開く同業の父のもとを飛び出 し、アメリカで成功した料理人で、ドイツで行われる元恋人 の母親の葬儀に向かう途中、天候の悪化で搭乗機がシャルル ・ドゴールに着陸、そのまま足止めを喰ってしまう。 女は、コンテストの優勝経験もある美容師で、12年間耐えて きた夫の暴力から逃れるために、アカプルコのホテルの美容 室に職を見つけ、無断で家を出て空港までやってきた。しか し足止めとなったために、夫が追いかけてくる恐怖を感じて いる。 そして彼女は、家に残した置き手紙を廃棄させようと、家族 に電話連絡を取るために、男の携帯電話を借りる。こうして 2人は巡り会い、ドラマが始まる。 片や、ホテル客室の煙草の残り香まで気にする繊細な男と、 片や、厚化粧で香水を振り撒きながら、素顔は裸でいるよう な気分と言い切る女。そんな生き方も考え方もまるで違う2 人が、出会いから恋を育んで行く様子が描かれる。 まあ、特殊なシチュエーション、特別な境遇の登場人物と言 うことで、言ってみれば夢物語ではあるけれど、ルルーシュ の『男と女』の昔から、フランス映画の伝統を守るロマンテ ィックドラマと言うところだ。 ただし、主演2人のキャラクターのお陰で、かなりコメディ タッチなのが今風と言える。それに携帯電話の使い方が、実 に上手くて、その辺も良い感じで見られる作品だった。 脚本は、監督も手掛ける女流のダニエル・トンプソンと彼女 の息子のクリストファー。因にトンプソンは、『大進撃』な ど一連の往年のフランスコメディ映画の脚本を、父親で監督 のジェラール・ウーリーと共に手掛けたことでも知られる。 それにしても、ビノシェが厚化粧から素顔になったときの美 しさが見事。普通は化粧をして美しくなるものだが、その逆 をできるのは、女優でも中々いない。 それとビノシェは、前作『ショコラ』ではチョコレートをい ろいろ料理してみせてくれたが、今回は一つを除いてジャン ・レノが作る料理を食べるだけというのも良かった。 『レボリューション6』“Was Tun, Ween's Brennt?” 現代のドイツの過激派の行動を描いたエンターテインメント 作品。 舞台は現代のベルリン。旧西ベルリン地区の一角の廃屋だっ た屋敷で爆発が起こる。それは15年前に時限爆弾を仕掛けた ものの、不発に終った装置が偶然作動したものだったが、現 代も残る過激派の行動に手を焼く警察は、それをきっかけに 一斉捜索に乗り出す。 そして、その内の2人が住むアパートから多量の映画フィル ムが押収される。ところがそのフィルムの中に、15年前に時 限爆弾を作ったときの記録映像が紛れ込んでいた。その事実 に気付いた2人は、当時の仲間に連絡を取る。 仲間達は2人を残して普通の生活に戻っており、シングルマ ザーや各方面で活躍する人材になっていた。しかしフィルム が警察の目に留まれば、彼らへの訴追は免れない。彼らは現 在の生活を守るためにフィルムを奪還しなければならなくな る。 そして大人の知恵で警察内部に入り込んだ彼らは、フィルム の保管場所は確認するが、そのままでは手出しができないこ とを知る。そこで彼らは、新たに時限爆弾を作って、フィル ムもろとも破壊してしまう計画を立てたのだが…。 20歳前後の若気の至りの結果が、30代半ばの生活を脅かす。 しかし物語は、それほど深刻振らずに、こんなことがきっか けで青春時代を取り戻してしまった男女の行動を、ちょっと したメルヒェンタッチで描いている。 当然、当時活動をしていた連中も現存している状況で、そん な題材をメルヒェンタッチのエンターテインメントで描いて しまうことには抵抗もあるだろうが、僕にとってはちょっと ノスタルジックな青春ドラマという感じで好ましい作品だっ た。 『10日間で男を上手にフル方法』 “How to Lose a Guy in 10 Days” 今年の2月に全米で公開され、興行収入1億ドルを突破して いるラヴコメディ。 女性の主人公は、女性雑誌の記者。コロムビア大学を卒業し 社会派ネタで勝負したいが、雑誌の性格はそれを許さない。 そんな彼女が、同僚のフラレ癖の女性の姿をヒントに、男を 10日間でフル方法の特集記事を、実体験でまとめることにな る。 男性の主人公は、広告代理店のクリエイティヴ。彼はダイア モンド業者の広告を獲得するために、10日間で初対面の女性 を恋人にしてみせるという賭けを受ける。 こうして男をフルことに全力を上げる女と、彼女をものにし なければならない男の勝負が始まるのだが…。 正直言ってかなりシチュエーションに無理のある物語だが、 それでもアメリカで大ヒットしたのは、それなりに的を得た 描き方をしているからだろう。試写会の後でも「反省しなく ちゃ」などといっている女性がいたから、そういう客層が動 けば面白くなりそうだ。 男の立場からすれば、かなり嫌みな部分もあるが、それなり に笑える部分もある。女性向けの映画だとは思うが、デート ムーヴィとして使えば、女性が反省してくれるかも知れない と言うところか? 主演は、マシュー・マコノヒーと、ゴーディ・ホーンの娘で 『あの頃ペニー・レインと』のタイトルロールを演じたケイ ト・ハドソン。なお、ダイヤモンドなどの装飾品やファッシ ョンも、かなり豪華なものが使用されているようだ。 『タイタニックの秘密』“Ghosts of the Abyss” 映画史上最高のヒット作『タイタニック』のジェームズ・キ ャメロン監督が、映画の巻頭シーンでも登場させた、北大西 洋に沈む本物のタイタニック号の撮影に再び挑んだドキュメ ンタリー。しかもIMAX−3Dで上映されるという作品。 ただし、今回僕が見せてもらったのは2Dのヴィデオ版なの だが、実はIMAX版の45分より長い上映時間60分のヴァー ジョンということで、公開版にはないシーンも含まれている というものだ。 内容は、挑戦に同行した俳優ビル・パクストンのナレーショ ンで進められ、母船上での準備の様子や、実際の水深3650メ ートルの深海に横たわるタイタニック号の映像で綴られる。 ここまではよくあるスタイルだが、今回は、さらにこれにC GIなどで再現した映像を合成して往時の姿を偲ばせる。そ の演出の巧みさは、さすがにキャメロンの作品という感じだ った。 実際、ロボットカメラで撮影された船内の映像などは、その 大きさが把握しにくいが、そこに往時の姿の再現が合成され ることで、そのスケールが如実に感じられる。 しかしそのためには大変な費用と手間暇が掛けられた訳で、 これはキャメロンにしかできなかったというところだろう。 彼のタイタニックに対する思いが感じられた。 ただ、今回、本編の撮影はソニーのシネアルタ(HD-24P)シ ステムで行われていて、それをIMAXで上映することには 一抹の不安がある。しかしそれは実際のIMAX上映を見な いことにはなんとも言えないところで、それはまた改めて報 告することにしよう。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずは新しい計画の話題から。 昨年公開された『ザ・ロイヤル・テネンバウムズ』は、ち ょっと日本人の嗜好には合い難かったようだが、アメリカで はかなりのヒットを記録したウェス・アンダースン監督の新 作の計画が、前作と同じタッチストーンから発表された。 新作の題名は“The Life Aquatic”。コメディ・アドヴェ ンチャー作品と紹介されているが、この新作に、『テネンバ ウムズ』のビル・マーレイ、アンジェリカ・ヒューストン、 オーウェン・ウィルスンらに加えて、ジェフ・ゴールドブラ ム、バッド・コートの出演が発表されている。 お話は、海洋学者のチームが深海底で神秘的な鮫を捕獲し ようとしたことから、思いも寄らぬ災難に巻き込まれるとい うもの。このお話を、上記のメムバーで描くという訳だ。 そしてさらにこの作品の制作に、ティム・バートン製作の 『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』や『ジャイアント ・ピーチ』などのストップモーション・アニメーション作品 を監督したヘンリー・セリックが協力することが発表されて いる。海の中の情景をセリックが担当するということだが、 CGIなどとは違うストップモーション・アニメーションの 映像が、どのように活かされるのだろうか。 撮影は、今年の9月からイタリアでのロケーションと、ス タジオはローマのチネチッタを使って行われることになって いるが、実写にストップモーション・アニメーションが絡む となると、完成はちょっと先になりそうだ。 * * お次はライオンズ・ゲイトの製作で、“Final Cut”とい うSFスリラー作品の撮影が6月29日に開始される。 この作品は、オマー・ナイムという新人の映画作家の脚本 監督によるもので、内容は、人の体内にその人物の行動を記 録するマイクロティップが埋め込まれ、死後、そのマイクロ ティップを取り出して、その記録から人物の人生のハイライ トシーンを映像化し、愛する遺族に贈ることになっていると いう世界を舞台にしたもの。 何か、よく似たテーマの日本映画があったような気もする が、ハリウッドリメイクが予定されているその作品の計画で はなく、独自に計画されている作品のようだ。 そして、この作品の主演にロビン・ウィリアムスとジム・ カヴィエゼルが発表されている。 なおカヴィエゼル役柄は、そのテクノロジーに反対するグ ループのリーダーということで、SFスリラーという紹介か ら考えて、このテクノロジーには何か裏がありそうだが、カ ヴィエゼル役柄は、単純な反対運動から、やがて政治的な陰 謀に巻き込まれて行くというようなものなのだろうか。 一方、ウィリアムスは最近悪役付いているが、今回の役柄 が善人か否か判らないのも味噌になりそうだ。 因にカヴィエゼルは、メル・ギブスンの監督でキリストを 演じた“The Passion”の撮影はすでに完了、ポストプロダ クションに入っている他、8月23日全米公開でニューライン 配給の“Highwayman”という作品が控えているそうだ。 * * ジョン・マルコヴィッチとジョニー・デップの共演で、17 世紀のイギリス王宮を舞台にした作品が計画されている。 作品の題名は“The Libertine”で、内容は1647年に生ま れ、80年に33歳で亡くなった詩人ジョン・ウィルモット・ロ チェスターの生涯を描くというもの。元々はスティーヴン・ ジェフリーが発表した戯曲があり、その舞台ではマルコヴィ ッチがロチェスターを演じていたということで、数年前から その舞台劇の映画化が計画されていたものだ。 しかし、マルコヴィッチとデップの共演という陣容は初め から発表されていたものの、なかなか製作体制が整わず。当 初は2300万ドルと言われた製作費を、1600万ドルにまで切り 詰めて、ようやく12月からの撮影が実現できそうだというこ とだ。 なお今回の発表で、マルコヴィッチはイギリス国王チャー ルズ2世役を演じることになっており、ロチェスター役をデ ップが演じることになるようだ。他に、サマンサ・モートン の共演が発表されている。 またこの計画では、以前はマルコヴィッチの監督が期待さ れていたものだが、今回の発表で監督には新人のロウレンス ・ダンモアが起用されることになっている。ダンモアはコマ ーシャル監督として実績を上げており、マルコヴィッチとは 「ユーロスター」のコマーシャルで一緒になって、力量を見 極めたマルコヴィッチが抜擢を決めたということだ。 物語は、舞台劇からさらに脚色されるということで、マル コヴィッチの発言によると「高度に文学的で、極めて猥褻、 セクシーで騒々しい断片からなる」そうだが、一体どのよう な作品なのだろうか。 因にロチェスターに関しては、チャールズ2世の側近など も勤めた人物で、その作品は「知的で、懐疑主義的な風刺詩 に優れていた」ということだが、その一方で、本人について は「性の競技者」などという表現もされており、かなり奔放 な生涯を送った人物のようだ。その役柄をデップがどのよう に演じるかも楽しみだ。 * * 続いては、続編の話題をいくつか紹介しよう。 まずは、1995年にジョン・トラヴォルタ、ジーン・ハック マン、レネ・ルッソ、ダニー・デヴィートらの共演で映画化 された『ゲット・ショーティ』の続編の計画が、オリジナル を公開したMGMから発表された。 実はこの計画は、前作のプレミアの行われた日に、当時の MGMのトップだったフランク・マンクーソが、原作者のエ ルモア・レナードに「続編のアイデアはないか」と話し掛け たことから始まったというものだったが、紆余曲折の末によ うやく実現に漕ぎ着けたということだ。 そして映画の主人公のチリ・パルマー役で、ジョン・トラ ヴォルタの再登場も発表されている。 なお映画は、レナードがこのために書き下ろした小説“Be Cool”に基づいて行われるもので、前作でマイアミからハ リウッドに乗り込んできた主人公が、1作ヒット作は生み出 したものの、その後は凡作を連発。結局、映画をあきらめた 主人公は、今度はプロモーターになって、ロシアン・マフィ アにつきまとわれる歌手のため、口八丁手八丁の活躍をする というものだそうだ。 さらに今回の計画では、前作を監督したバリー・ソネンフ ェルドに代って、ブレット・ラトナーの参加が検討されてい る。ラトナーは、『レッド・ドラゴン』を大ヒットさせたと ころだが、以前に紹介したようにワーナーで進められていた “Superman”からの降板は決まっており、次回作にはニュー ラインで“Rush Hour 3”の計画を進めている。 従って、MGMとの交渉でも“Rush Hour 3”の次という 形で話し合われているようだが、実際は“Rush Hour 3”の 実現には、クリス・タッカー、ジャッキー・チェンの出演料 など、難問が山積みになっており、もしかするとMGMがニ ューラインに申し入れをして、今回の計画を先行させる可能 性もあるようだ。 一方、トラヴォルタは、現在撮影中の“Ladder 49”に続 いて前回紹介したコミックスの映画化“The Punisher”の敵 役が予定されており、さらにその後には“A Love Song for Bobby Long”という作品が控えていて、それが片づくのは秋 口ということになるが、そこには以前紹介したディメンショ ン製作“Harvey”のリメイクの計画が予定されている。 ということで、最終的にはトラヴォルタが、“Be Cool” と“Harvey”のどちらを取るかということになるようで、い ずれにしても事態は流動的なようだ。 * * お次は、昨年の東京ファンタスティック映画祭で上映され た“Astérix & Obelix: Mission Cleopatra”に続く、同シ リーズの第3弾の計画がちょっと危なくなっている。 “Astérix & Obelix”のシリーズは、元々はレネ・ゴシェ ニーとアルバート・ウダーゾが1961年に第1巻を発行したフ ランスの人気コミックスに基づくもので、古代ガリア人戦士 のアステリックスとオベリックスを主人公に、この2人が、 ポパイのほうれん草のような秘薬を武器に、フランスからロ ーマ帝国、エジプト、アメリカ、果てはアトランティス大陸 までを旅して、いろいろな歴史上の人物と共に、奇想天外な 騒動を巻き起こすというもの。原作コミックスは、僕の手持 ちの資料では96年までに30巻が発行されているようだ。 さらにこのシリーズは、1967年に原作コミックスの第1巻 “Astérix le Gaulois”が、ゴシェニーの脚色でアニメーシ ョン化されたのを皮切りに、フランスとドイツで94年までに 7作が製作されている。 そして1999年に、満を持しての実写シリーズがスタートし たもので、ジェラール・ドパルデューとクリスチャン・クラ ヴィエを主演に迎えた第1作の“Astérix & Obelix contre César”では、さらに、ゲスト出演者にロベルト・ベニーニ を招く豪華版で映画化されている。 また、2001年に製作された第2作では、クレオパトラ役で モニカ・ベルッチが登場し、この作品はフランスだけで1450 万人の動員を記録して、2002年度の最大のヒット作になって いるということだ。 そのシリーズの第3弾の計画が発表されたのは、昨年の11 月。その英語題名は“Asterix 3: Asterix in Spain”と発 表され、これは1969年に発行された原作コミックスの第14巻 “Astérix en Hispanie”に基づくものになるようだった。 また、製作は前2作も手掛けたクロード・バリのレン・プ ロダクションとパテ。監督は毎回交代して今回はジェラルド ・ジュノー。さらに配役では、一時降板が伝えられたアステ リックス役のクラヴィエも再登場が発表されたのだが…。こ の製作計画は、著作権を持つウダーゾと77年に亡くなったゴ シニーの遺族、それに出版社ら権利者たちの了承を得られて おらず、現状では製作が不可能になっているということだ。 一方、フランスのM6というプロダクションが、英語題名 “Asterix and the Vikings”というアニメーション作品の 計画を発表。こちらは権利者たちの了承を得られているよう だが、この計画は、デンマーク人の監督と、ベルギー人の脚 本、俳優によるもので、実写版を計画しているフランス映画 人への当て付けとも見られている。 パテにとっては、ヒット間違いなしの作品を失うことにな る訳だが、これは1社だけの問題ではなく、ドパルデュー、 クラヴィエを迎えた作品は、フランス映画界にとっても久々 のヒットシリーズだった訳で、それを失う痛手はかなり深刻 なようだ。恐らくは、前2作の儲けの分配辺りで揉めている のだろうが、早く決着してもらいたいものだ。 * * 続編の3つめの話題は、98年に第1作が公開され、昨年第 2作が公開されたニューラインシネマの“Blade”(ブレイ ド)シリーズ第3弾の計画が発表された。 このシリーズは、70年代にマーヴル・コミックスから発表 されたマーヴ・ウルフマン原作の“Tomb of Dracula”に登 場するアフリカ系アメリカ人の脇役キャラクターを主人公に 据えて、脚本家のデイヴィッド・S・ゴイヤーが作り上げた もので、前2作は、製作も担当するウェズリー・スナイプス が主演し、ワールドワイドの合計では2億7700万ドルを稼ぎ 出しているということだ。 その第3弾が計画されているものだが、製作主演はもちろ んスナイプス、そして監督を第1作のスティーヴン・ノリン トン、第2作のギレルモ・デル・トロに替って、脚本家のゴ イヤー自身が担当すると発表されている。なおゴイヤーは、 先にスナイプスとジョン・レグイザーモ共演の“Zig Zag” という作品を脚本監督で発表して、限定公開ながら高い評価 を得ているということで、その力量は実証済みのようだ。 ということで、シリーズ第3弾“Blade III”が製作され ることになった訳だが、現実的な契約はまだなされていない ようだ。しかしニューラインでは、今年の夏にカナダのヴァ ンクーヴァでの撮影を期待しているそうだ。昨年の『ブレイ ド2』はチェコのプラハで撮影され、ちょっと古びた町並が 登場したが、ヴァンクーヴァはニューヨーク・ロケの代わり にも使われる近代的な町並で、その近代的な背景でのブレイ ドの活躍も楽しみだ。 今年の夏の撮影ということは、公開は来年の春頃が期待で きそうだ。 * * お次は、またまたリメイクの話題を紹介しておこう。 最初は、以前にも紹介したと思うが、アーノルド・シュワ ツェネッガーの製作でワーナーが進めている“Westworld” (ウェストワールド)のリメイクで、脚本に『ターミネータ ー3』を担当したマイクル・フェリスとジョン・ブランケイ トの起用が発表された。 オリジナルは、73年にマイクル・クライトンの脚本、初監 督で製作された作品だが、ロボットテクニックを駆使して西 部劇の舞台を模して作られたアミューズメントパークが、コ ンピューターの暴走でパニックに陥るという内容。特に、感 情のないロボットのガンマンに扮したユル・ブリナーの演技 が評判になったものだ。 このMGMで製作された作品の再映画化の権利は、現在は ワーナーが所有しており、その権利に基づいたリメイクを、 シュワルツェネッガーが以前から希望していた。そしてその 脚本に『T3』のコンビが起用されたもので、この起用は、 『T3』に出演したシュワルツェネッガーが強く要望したも のだそうだ。 なおこのリメイクで、シュワルツェネッガーが演じるのは ロボットガンマンの役ではなく、ワールドを訪れてパニック に巻き込まれる観客ということで、共同製作を担当するジェ リー・ウェイントルーブは、「ワールドの規模はオリジナル よりずっと大きくなる。そして、できればアーノルドの次回 作にして、彼が州知事になってしまう前に完成させたい」と いうことだ。 因に、脚本家の2人は、ハーヴァード大学の出身で、学生 時代はパロディ雑誌Harvard Lampoonの執筆陣にも加わって いたようだが、脚本家としては、『ゲーム』や『ザ・インタ ーネット』などの知的なスリラー作品を発表している。そし て『T3』には、監督のジョナサン・モストウがハーヴァー ド時代の同級生ということで、監督の要請で参加したものだ そうだ。 * * もう一つリメイクは、76年にジョン・カーペンターの監督 で映画化された“Assault on Precinct 13”(要塞警察)の リメイクが計画されている。 オリジナルは、ハワード・ホークスの名作西部劇『リオ・ ブラボー』にインスパイアされた作品で、ロサンゼルスの半 ば放棄された警察署を舞台に、警察に不満を持つギャング団 との壮絶な銃撃戦を描いたもの。最終的には、警察スタッフ 側に収監されていた容疑者までもが協力して、ギャング団と の戦いを繰り広げるというものだ。 そしてこの作品の再映画化権をフォーカス・フィーチャー ズが獲得して、ユニヴァーサルとの間で配給を確立してリメ イクに臨むものだ。 物語は、舞台を現代化し、警察署内の設備も21世紀にマッ チしたものにするということだが、オリジナルにはかなりの カルト的なファンがいるということで、彼らを納得させる作 品を造り出すことはかなり至難の技になりそうだ。 しかし製作者は、「カーペンターは西部劇を都会に持って くることで成功させた。我々はさらにそれをより洗練され、 スピード感に溢れた面白い作品にする」として、成功を確信 しているようだ。 * * 最後にキャスティングの情報で、マーティン・スコセッシ が監督し、レオナルド・ディカプリオがハワード・ヒューズ を演じる伝記映画“The Aviator”に、ケイト・ブランシェ ット、ジョン・C・ライリー、ケイト・ベッキンセイル、グ ウェン・ステファーニの共演が発表されている。 この内、ブランシェットが演じるのはキャサリン・ヘップ バーン、ベッキセイルの役はエヴァ・ガードナー、そしてス テファーニはジーン・ハーロウの役だそうだ。またライリー は、ヒューズの右腕だったノア・ダイエットリッチを演じる ことになっている。 なお、ステファーニは本業ロックシンガーだそうで、俳優 としての映画出演は初めてのようだが、昨年公開されたベン ・スティラー監督主演の『ズーランダー』には、本人の役で 出演していた他、テレビドラマのゲスト出演の経験はあると いうことだ。 撮影は7月にカナダのモントリオールで開始され、製作費 は1億ドル以上が予定されているそうだ。
2003年06月02日(月) |
ムーンライトマイル、Mリローデッド、フリーダ、アンダーカバー・B、ファム・ファタール、セクレタリー、ウェルカム to C、白百合クラブ |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介します。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ムーンライトマイル』“Moonlight Mile” 『遠い空の向こうに』のジェイク・ギレンホールの主演で、 ダスティン・ホフマン、スーザン・サランドン、ホリー・ハ ンターのいずれもオスカー主演賞を受賞した3人が共演した ファミリー(?)ドラマ。 発砲事件に巻き込まれて死亡した花嫁。その花嫁の両親の元 にいる花婿。しかし結婚するはずだった2人は、事件の3日 前に婚約を解消していた。 そして葬儀が終り、仕事で気を紛らわせようとする父親や、 気丈に振舞ってみせる母親を前にしたとき、花婿だった主人 公は事実を言い出せなくなってしまう。 そんな彼に、ヴェトナムで行方不明になっている恋人を待つ 女性との関係が生まれる。 物語の舞台は1973年。ヴェトナム戦争の影が色濃く覆ってい る。将来の見えないそんな時代だから、主人公の優柔不断さ も当然理解できるのだが、その時代を知らない今の観客たち にはどう映るのだろうか。 でも、そんなことは別にして、一人娘を失った両親の悲しみ を、全く秋嘆場を作らずに描いて見せたのは、ホフマン、サ ランドンの見事な演技と、ブラッド・シルバーリング監督の 力量というところだろう。 またハンターが検事役を演じて、発砲犯に対する裁判をサイ ドストーリーに描いたドラマの盛り上げ方も、見事だった。 なおギレンホールには、一時『スパイダーマン2』に主演と の情報もあったが、確かに『サイダーハウス』の時のトビー ・マクガイアと似た雰囲気を出していた。 『マトリックス/リローデッド』“Matrix Reloaded” 『マトリックス』の続編は、今年2作公開されるが、本作は その前編。 前作でマトリックスから救出されたネオが、いよいよマシン と本格的な戦いを始める。前に紹介したアニメーションが本 編の発端になっており、物語はオシリスが送ったデータによ ってマシンの襲撃が明らかになったところから始まる。 この情報に、脱出者の町ザイオンの司令官は防備を固め、マ シンを撃退することを決定する。しかし、「ネオは救世主」 の預言を信じるモーフィアスは、ネオと共に戦列を離れ、他 の2隻の乗り組み員と共に、再びマトリックスを襲う計画を 立てる。 その計画とは、マトリックスの中心部を麻痺させ、その隙を 縫ってネオがバックドアから真の支配者に会いに行くこと。 そのためには、まずバックドアを管理するキーメーカーを探 し出すことから始めなければならない。 物語自体は、どうしても中継ぎだから、ちゃんとした結末が ある訳でもなく、中途半端な感じは否めない。しかし、前作 でも結局その部分が評価された訳だが、目くるめくようなV FXの氾濫で最後まで飽きさせない。 しかも、前作はまだいわゆるカメラエフェクトが中心だった が、今回は完全にディジタルエフェクトに移行しており、そ の中に格闘技アクションが見事に填め込まれている。スタン トとVFXの見事な融合という感じだ。 そして本作では、ネオの存在の意味が明らかにされる。その 存在の意味が、最終話でどのように結末を迎えるのか…、11 月の公開が待ち遠しい。 それにしても、予告編にも使われた100人のエージェント・ スミスとの闘いのシーンや、全長3キロのオープンセットを 建設して行われたというハイウェイのシーンは見事。 特にクライマックスのハイウェイのシーンは、カメラが絶対 に入れないところに高速で突っ込んで行く描写が強烈で、デ ィジタルの真骨頂という感じだった。 『フリーダ』“Frida” メキシコの女流画家フリーダ・カーロの人生を描いて、今年 のアカデミー賞では、主演のサルマ・ハエックが女優賞候補 になった他、音楽賞とメークアップ賞を受賞した作品。 フリーダは、1907年に生まれ、18歳の時に交通事故で瀕死の 重傷を負うが奇跡的に回復、その回復期間に絵筆を取り、絵 画の才能を開かせて行く。 それを支援したのが、すでに著名な壁画画家だったディエゴ ・リヴェラ。早くから彼女の才能を認めたリヴェラは、おり しもメキシコで沸き上がった共産主義運動とも絡み合って、 21歳の年の差を乗り越えて彼女と結婚する。 その後、リヴェラはアメリカにも進出、次々に成功を納めて 行く。しかし女癖に問題のあるリヴェラは、モデルの女性ら と次々に関係を持ち、フリーダを悩ませる。そしてフリーダ は、その境遇に耐えながら絵筆を取り続ける。 そんなフリーダの人生を、トロツキーやロックフェラー、画 家のシケイロス、女流写真家のモドッティ、アンドレ・ブル トンらが彩る。 何しろ波乱に満ちた生涯、フリーダは47歳で亡くなるが、そ れまでに事故に起因する手術を30回以上の受けたという。し かし映画は、その部分にはあまり触れない。多分単なる悲劇 の女性に描きたくなかったのだろう。 それが最後で、身体の痛みが無かったことはないという台詞 が1回だけ出てきて、ずしりと重く心に残る。その辺の描き 方が実に見事だった。そして、常に前向きな彼女の生き方に も共感が出来た。 フリーダの絵は、今までちゃんと見たことはなかったが、映 画に登場する作品は、かなりシュールレアリスティックな感 じで、映画もその雰囲気をうまく取り入れている。劇中、突 然アニメーションが挿入されたり、コラージュになったり、 その描き方は巧みだ。 監督は、舞台の『ライオンキング』や映画『タイタス』のジ ュリー・テイモア。男女の愛憎劇を描くでなく、単なる悲劇 を描くでなく、芸術家フリーダの生涯を芸術作品の様に描き 上げている。 『アンダーカバー・ブラザー』“Undercover Brother” インターネット上で公開されている短編アニメーションシリ ーズの実写による映画化。 舞台は1970年代。60年代に公民権運動などで急速に盛り上が った黒人文化は、白人文化の巻き返しにあっている。しかし その陰には、白人至上主義の組織ザ・マンの存在があった。 ザ・マンはいろいろな策略で黒人文化の繁栄を妨害していた のだ。 その組織に対抗するのが、秘密組織のブラザーフッド。そし て今しもザ・マンの資金源を潰すために銀行の中枢に迫った のだが、そこに飛んでもない邪魔が入ってしまう。 それは銀行の金を貧しい人々に分け与えようとする謎の男ア ンダーカバー・ブラザーの仕業。ブラザーは、そうとは知ら ずに作戦を妨害してしまったのだ。 しかしこの一件で実力を認められたブラザーは、ブラザーフ ッドの一員として活躍を始めることになる。 一方、史上初の黒人大統領誕生の有力候補と思われていた人 物が、突然、立候補を辞退してフライドチキンチェーンを開 くと表明。その陰にザ・マンの存在を嗅ぎつけたブラザー・ フッドは、アンダーカバー・ブラザーを中心にその真相を探 り始めるが…。 1時間23分という上映時間は、もう少し長くしてもう一捻り 欲しいという感じにはなる。しかし、元々Bムーヴィの乗り で作られている感じの作品だし、この辺で納得しておかなけ ればいけないというところだ。 全体の乗りは、『オースティン・パワーズ』の黒人版といっ た感じだが、ギャグはあれほど下品ではないし、黒人対白人 という図式のギャグが、自分で何処まで理解できたかは不明 だが、それなりには楽しめた。 『ファム・ファタール』“Femme Fatale” パリを舞台にしたブライアン・デ・パルマ監督の02年作品。 01年のカンヌ映画祭。その日の注目は、会場に現れた女優が 身に付けている時価1000万ドルの宝石に彩られた“蛇のビス チェ”。しかしその会場には、周到に準備された窃盗団が潜 んでいた。 そして計画実行。カメラマンに成り済ました一味の紅一点ロ ールは、ビスチェを身に付けた女優を誘惑し、それを偽物に すり替えることに成功する。ところが、手違いから主犯格の 男は負傷して逮捕され、ロールは一人でビスチェを持ち出し てしまう。 次の日、ロールはパリで、パスポートを手に入れるための算 段をしている。そこをカメラマンに撮影され、レンズを逃れ て教会に入ったロールは、そこで行われていた葬儀の遺族か らリリーという女性と間違われる。 やがて遺族と共にリリーの家に行ったロールは、自分がその 女性に瓜二つであることを知り、それを利用してアメリカへ の逃亡を計る。そしてその機内で、政界入りを目指している 一人の男と出会う。 7年後(2008年!)、男はフランス駐在アメリカ大使として パリに赴任してくる。また主犯格だった男は、傷も癒え、刑 期を終えて出獄する。 一方、街の風景を撮影していたカメラマンに仕事の依頼が来 る。それはパリに赴任したアメリカ大使の妻の写真を撮るこ と。その妻は、一切の写真を拒否していたのだ。 そしてカメラマンは、その妻の撮影には簡単に成功するのだ ったが、その写真がタブロイド紙に掲載されたときから、彼 の周囲にはいろいろな事件が起こり始め、彼は否応無くそれ に巻き込まれて行くことになる。 題名は「魔性の女」という意味だが、ロールが一味の男たち や、大使になった男、彼女を撮影したカメラマンなどを次々 に手玉に取って行く展開は、本当に魔性の女そのものという 感じだ。 デ・パルマは、ヒッチコックの後継者とも言われるが、特に 今回は、全体の雰囲気もヒッチコックの感じが一杯で楽しく なった。また、最初の窃盗のシーンでは、『ミッション・イ ンポッシブル』を髣髴とさせるというか、ほとんどセルフパ ロディに近いシーンもあってこれも嬉しくなった。 なお音楽は、『スネーク・アイズ』に続いて、坂本龍一が手 掛けている。 『セクレタリー』“Secretary” 昨年のサンダンス映画祭で特別審査員賞を受賞した作品。自 傷癖のある女性と、サド気味の弁護士が引き起こすちょっと 不思議なラヴロマンス。 主人公のリーは、自傷癖のため精神病院に入院していたが、 病は癒えたと判断されて退院する。しかし繊細な彼女の神経 は、完全には直り切っていなかった。 それでも前向きに生きようとするリーは、タイピストの研修 を受けトップの成績を取得。そして新聞の求人欄で見つけた 弁護士事務所に就職口を求める。 そこは弁護士一人で運営されている事務所。所長は若いが、 蘭を育てることに熱中するシャイなちょっと変った男。そし て勤め始めたリーに対して彼は些細なミスや行動を追求し、 徐々にサディスティックな行動へエスカレートさせて行く。 映画は前半、彼女の境遇に同情するように描かれるが、それ が彼女自身の気質が明らかになるにつれて話があらぬ方向に それて行く。しかしその展開の仕方が実に巧みで、彼女に同 情したまま後半の展開にも納得してしまう。映画祭での受賞 も頷けた。 男性の僕は、どうしても男性の登場人物の方に目が向いてし まうので、完全には乗り切れないところもあるが、特に働い ている女性には、多分に共感を呼ぶところがあるのだろう。 試写会でも女性にはかなり好感されているようだった。 『ウェルカム トゥ コリンウッド』 “Welcome to Collinwood” 監督のスティーヴン・ソダーバーグと、俳優のジョージ・ク ルーニーが設立したプロダクション「セクション・8」の、 これが第1回作品だそうだ。 アンソニー&ジョー・ルッソという兄弟の脚本監督で、ソダ ーバーグとクルーニーは製作を担当、クルーニーはカメオ出 演もしている。 オハイオ州クリーヴランド近郊のコリンウッド。この見るか らに下層階級の人々の街で、ある犯罪計画が進行している。 それは車上荒らしで捕まった男が、同房になった終身刑の男 から聞かされた絶対確実の計画。 そしてこの計画を実行するため、男は身代わりを仕立てて釈 放を狙うのだが、その身代わり探しの過程で、いろいろな連 中が計画に加わってしまう。ということで、有象無象が集ま って、一攫千金の作戦が開始されることになるが…。 配給会社は、『オーシャンズ11』の線で売りたいようだが、 ちょっと行けてない男たちが一攫千金を狙うという話では、 その前にクルーニーが主演した『オー・ブラザー!』や『ス リー・キングス』の方に似ている感じだ。 特に、『オー・ブラザー!』は評価も高い作品なので、その 線での宣伝もしてもらいたい気もする。 この手の作品だと、得てして話の展開に破綻が見られるもの だが、この作品は、確かに上手く行き過ぎる点や、偶然が重 なり過ぎるところはあるものの、登場人物が結構悪知恵が働 いて、その辺が妙に納得できてしまうところが上手く作られ ている。 さすがに、ソダーバーグとクルーニーが第1回作品に選んだ だけのことはあるという感じだった。 『白百合クラブ 東京へ行く』 『ホテルハイビスカス』の中江裕司監督が、沖縄で50年以上 に渡って活動している音楽グループの初の東京公演を追った ドキュメンタリー作品。 元々この東京公演自体が中江監督が仕掛けたものらしく、そ の意味でも宣伝に使われている『ブエナ・ビスタ・ソシアル ・クラブ』の経緯と似ている。音楽のジャンルは全く異なる が、音楽に賭ける情熱みたいなものは同じ感じがした。 映画は主に、東京公演に向けての練習や打ち合わせの様子を 映しているが、古い写真や思い出話として語られる中に、ク ラブの歴史が刻まれて行く。それは決して平坦なものだけで なかったことも伺わせる。 既に亡くなってしまった人たちや、クラブを脱退していった 人たちにも目は向けられる。また高齢者が多い中で、迷惑を 掛けるからと東京行きを辞退した人たちもいる。そんな全て の人たちを暖かく見つめることで歴史が語られる。 それにしても、ほとんどのメムバーが60代後半というのに元 気のいいこと。さすがに隠居の人も多いようだが、何人かは 農業などに従事している現役で、その仕事場での取材も微笑 ましい。沖縄を愛してやまない中江監督らしい作品だった。
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ まずは待望の、この監督の新作の話題から。 『シックスセンス』『アンブレイカブル』『サイン』の3 作品をディズニーから発表しているM・ナイト・シャマラン 監督が、新たにディズニーと2作品の契約を結び、その1本 目の計画が発表された。 発表された作品の題名は、“The Woods”。1897年を時代 背景に、森に囲まれ、因習で固められたような部落で暮らす 人々と、その森に棲む不思議な生物との交流を描いた物語と いうことで、もちろん脚本もシャマランが執筆している。 そしてこの作品には、00年公開『レインディア・ゲーム』 などに出演したアシュトン・カッチャーと、『サイン』でメ ル・ギブスンの弟役を演じたジョアキン・フェニックスが主 役を務めることが発表された。 一方、シャマランの作品では、今まで女性が重要な登場人 物になることは少なかったが、今回は初めてヒロインが登場 するということで、その女優には、当初はキルスティン・ダ ンストの起用が発表されていた。これはシャマラン自身が彼 女を想定して脚本を執筆したというものだったのだが…。 ところがダンストは、撮影中の“Spider-Man”の続編に続 いて“Wimbledon”への主演が決まっており、さらにキャメ ロン・クロウ監督の次回作への主演も予定されているという ことで、この秋に撮影される計画のシャマラン作品への出演 は不可能ということになってしまった。 このため急遽キャスティングが検討され、後任にブライス ・ダラス・ハワードという21歳の新人の抜擢が発表された。 なおハワードは、昨春までニューヨーク大学の演劇プログラ ムに在籍し、その後は各地の劇場で演劇活動を続けてきたと いうことだが、名前から気付かれた人もいると思うが、実は 『アポロ13』などの監督ロン・ハワードの娘ということで、 血筋は抜群の新人のようだ。 因に、ロン・ハワードは俳優出身の監督だが、彼の父親の ランス・ハワードも、舞台演出なども手掛ける俳優兼脚本家 で、ブライスは俳優一家の3代目ということになる。 “The Woods”の撮影は10月にフィラデルフィアで開始さ れ、公開は04年夏の予定になっている。 ということで、シャマランとディズニーの2本契約の1本 目を紹介したが、実は、ディズニーが監督と2本契約を結ぶ 場合には、その2本は連続で製作することが条件とされるの が通常なのだそうだ。しかし今回の契約では、すでにシャマ ランがディズニーで3本連続で監督していることも考慮され たのか、連続という条件は付けられていない。 そしてシャマランは、「魅力を感じる原作本」のオファー があったら、“The Woods”とその次のディズニー作品との 間に他社の作品も監督する可能性があると発言している。実 際、シャマランは以前にコロムビアで、E・B・ホワイト原 作の『スチュワート・リトル』の脚色を手掛けたことがある 訳で、オリジナル作品は難しいが、原作ものの映画化なら、 今回は監督も含めて可能性があるようだ。 ただしシャマラン自身は、すでにディズニーで次に手掛け るオリジナル作品の構想もまとめ始めているという話もある ようで、そこに割り込むには、かなり魅力的な原作を用意す る必要がありそうだ。それからシャマランは、今回のディズ ニーとの契約では1本当り8桁($)の金額が記載されてい るということで、その金額も用意する必要があるようだ。 * * 続いても待望の情報で、以前から紹介しているロアルド・ ダール原作“Charlie and the Chocolate Factory”の2度 目の映画化に、ティム・バートンの監督が発表された。 因にバートンは、現在はロンドンに居住して、コロムビア 製作“The Big Fish”の仕上げに掛かっているが、その後に はワーナーで2作品の契約を結んでおり、その1作目に予定 されているストップモーションアニメーション作品の“The Corpse Bride”に続いて、本作に取り掛かる計画のようだ。 なおダールの原作は、71年にジーン・ワイルダーの主演で 1度目の映画化がされているが、実は、原作者のダールはこ の映画化が気に入らなかったのだそうで、このため91年頃に ワーナーがリメイクの計画を立上げたものの、90年に亡くな ったダールの著作権を管理している遺族の許可がなかなか得 られなかったということだ。 そして98年にようやく許可が下り、直ちにスコット・フラ ンクや、パラマウントで同じくダール原作の“The BFG”の 脚色を手掛けたグイン・ルウリーらが脚色を行ったものの、 これらの脚色では遺族側の了解を得られなかったものだ。 一方、バートンは、93年に製作したストップモーションア ニメーション作品の“The Nightmare Before Christmas”が ダールの考えに近いものと評価され、さらに96年には正真正 銘ダール原作の“James and the Giant Peach”の製作も手 掛けている。なおこれらの作品は、いずれもヘンリー・セリ ックが監督したものだが、その基本的なヴィジョンはバート ンが提供したものということだ。 ということで、ワーナーとしては、すでに遺族側の評価も 得ているバートンを迎えることで、一気に映画化を進めたい という思惑のようだ。またワーナーでは、映画化に続けてブ ロードウェイでのミュージカル化も期待していると伝えられ ている。 ただしバートンは、監督するに当っては、当然のことなが ら先に作られた脚本を採用せず、原作を自ら再イメージ化す るということで、まずはその脚本の執筆に掛かることにして いる。そしてロンドンで“The Corpse Bride”の製作を進め ながら、本作の撮影を行うとしており、この計画だと、2作 品は同じ時期に製作されることになるようだ。 なお“The Corpse Bride”の製作は、マイク・ジョンスン という監督がバートンのヴィジョンに従って行うことになっ ている。 いずれにしても、この計画はバートンの脚本待ちというこ とになりそうだが、ワーナーとバートンでは、以前にも脚本 待ちのままになってしまった企画があり、ワーナーとしては 戦々恐々というところだろう。もっとも今回は、バートンと ダールは考え方が近く、バートンは自然体で脚色に当れるの で、以前のようなことはないだろうということだが。 なお“Charlie and the Chocolate Factory”の映画化の 製作は、ブラッド・グレイ、ブラッド・ピットとジェニファ ー・アニストンが、最近ワーナーに設立したプロダクション 「プランB」が担当することになっている。 * * お次はちょっとレトロなヒーロー復活の話題で、20世紀の 初頭に一世風靡した“Arsene Lupin”を、本家本元のフラン スで映画化する計画が発表された。 怪盗アルセーヌ・ルパンは、1905年にフランスの作家モー リス・ルブランによって創造された盗賊であり、また探偵と しても活躍したヒーローだが、ルブランは41年に亡くなるま でに全部で56編のルパン・シリーズを発表している。 同時にルパンは、無声映画時代からスクリーンに登場し、 その第1作は、1917年にアメリカでアール・ウィリアムス主 演による映画化が記録されている。なおこの作品は、それ以 前に発表された舞台劇を映画化したものだったそうだ。 さらに18年にはロシアでも映画化され、19年、20年にアメ リカ、そして23年には、日本の溝口健二監督が『813』を 映画化するなど、今回報告された記事によると、今までに15 本の長編映画化と、3回のテレビシリーズ化が記録されてい るということだ。 そのルパンが、映画では1962年にフランスで映画化されて 以来の復活になるというものだが、今回の発表では、ルパン 役を、最近フランスで“Europudding”という作品が評判に なったルメイン・デュリスという俳優が演じ、相手役には、 クリスティン・スコット=トーマスが、カリオストロ伯爵夫 人役で共演するということだ。 伯爵夫人が登場するということは、1924年に原作が発表さ れた“La Contesse de Cagliostro”を映画化することにな りそうだが、20世紀初頭のパリとノルマンディを舞台に、青 年時代のルパンが活躍する物語に、ちょっと新しい解釈を加 えて脚色されているということだ。 監督は、ソフィー・マルソー主演の“Belphegor”などを 手掛けたジャン=ポール・サロメが担当し、8月からの撮影 が予定されている。 なお、話はちょっと変わるけれど、現在撮影中のシリーズ 第3作“Harry Potter and the Prisoner of Azkaban”で、 今回のゲストキャラクターとなる新任の先生の名前は、原書 ではLupinと表記されているが、日本版の翻訳ではルーピン となっている。これは明らかに間違いだと思うのだが、来年 公開の映画の字幕や吹き替えでは、やはり翻訳書に合わせな くてはいけないのだろうか。 * * 怪盗ルパンに対抗するのは、やはり名探偵シャーロック・ ホームズという訳で、その映画化の計画も発表されている。 といっても今回計画されているのは、現代のニューヨーク を舞台にしたお話で、NY市警察の新米刑事が、実は自分が 名探偵の曽々孫であることを発見するというもの。そして難 事件を次々に解決し、一躍マスコミの寵児となって持て囃さ れるのだが…。 そこに、小説に描かれた通りの犯罪を実行する犯罪者が現 れ、曽々孫に挑戦するという展開。これにより、現代ニュー ヨークを舞台に、コナン・ドイルの名作が次々に再現される ということだ。 題名は未定だが、脚本はマーク・ディステファーノという 脚本家が執筆したもので、これをニューライン・シネマが契 約して、映画化が進められることになっている。 ホームズの曽々孫ならルパン3世とも対決してもらいたい 気もするが、ドイルが描いたヴィクトリア朝時代の犯罪が、 現代のニューヨークでどのように展開されるかというのも面 白そうだ。それにしても、主人公の心意気は、やはり「じっ ちゃんの名に賭けて」ということになるのだろうか。 * * 怪盗、探偵の後は殺人鬼の話題で、これはレトロではない が、時代は少し昔を描くことになりそうなディノ・デ=ラウ レンティス製作による“The Lector Variations: The Story of Young Hannibal”の計画が発表された。 この作品は、『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』を製作 したデ=ラウレンティスが、シリーズ第3弾として計画して いるもので、副題の通り若き日のハンニバル・レクターを描 くもの。リトアニア生まれのレクター少年が、パリを経由し てアメリカに現れるまでの物語が描かれるということだ。 『レッド・ドラゴン』は『ハンニバル』の前々日譚だった 訳だが、さらにその前日譚ということになる。つまり時間が どんどん遡っている訳だ。 そしてこの脚本を、レクターシリーズの原作者トマス・ハ リスが自ら執筆するということで、常々古くからの友人だと 語っていたディノとハリス2人の話し合いの中で生み出され た物語が、直接脚本の形で執筆されることになっている。 なお製作は、『ハンニバル』『レッド・ドラゴン』の配給 を手掛けたユニヴァーサルが、今回は共同製作の形で直接参 加するということだが、さらに製作が開始された場合には、 『羊たちの沈黙』を製作したオライオンを引き継ぐMGMが 今回もチームに加わることになるということだ。 脚本以外のスタッフ及びキャストは未発表だが、いくらな んでも少年時代のレクターをアンソニー・ホプキンスが演じ る訳には行かないだろうということで、その配役にも注目が 集まりそうだ。といってもこの配役、最後は殺人鬼を演じる ことになる訳で、その葛藤を演じるにはかなりの演技力が要 求されることになりそうだ。 それから、以前に日本で行われた記者会見では、アジアを 舞台にした『ハンニバル』の後日譚を作るという話があった が、そちらの方はどうなってしまったのだろうか。 * * またまたコミックスの映画化で、『ブレア・ウィッチ』な どのアーチザンとマーヴルスタジオの共同製作が契約され、 その第1弾としてジョナサン・ヘンスレイ脚本、監督による “The Punisher”の計画が発表された。 お話は、FBIの潜入捜査官を主人公としたもので、最後 の任務を終えた主人公が帰宅すると家族が全員惨殺されてい たというところから始まる。そして復讐の鬼と化した主人公 は、その犯人を追い求める。 一方、一度は裏社会を抜けたものの、こちらも息子を殺さ れて舞い戻った男がいる。しかし運命はこの2人を互いに敵 対するものとして、闘いの場に導いて行く、というものだ。 そしてこの元潜入捜査官を、『ドリームキャッチャー』の トーマス・ジェーンが演じ、その敵役のハワード・セイント という役にジョン・トラヴォルタの出演が発表されている。 なおトラヴォルタは、最近悪役での映画出演が目立ってい るが、その中でもこのセイント役は、一筋縄では行かない現 実的な悪役で、面白くなりそうだ。 また、マーヴルコミックスの映画化では、すでに第2作が 公開された『X−メン』、『スパイダー・マン』に続いて、 この夏には『ハルク』の公開が近づいているが、これらの大 作路線とは別に、今回の作品には、ニューラインで製作され ている『ブレイド』シリーズのような規模での映画化と成功 が期待されているようだ。 撮影は7月に開始され、公開は04年夏に予定されている。 * * 後半は短いニュースを紹介しよう。 まずは続報で、前々回報告した『スクービー・ドゥー』の 続編に関し、題名が“Scooby Doo 2: Monsters Unleashed” と発表され、さらにオールドマン・ウィックルズという役で ピーター・ボイルと、TVダッドという役でレイ・ロマーノ の出演が発表された。ボイルは、最近では『チョコレート』 の主人公の父親役などでも登場しているが、『ヤング・フラ ンケンシュタイン』のモンスター役などコメディでも抜群の 存在感を見せる役者で、若手の俳優相手にその存在感を見せ てもらいたいものだ。 因に、ボイルが演じるウィックルズは、テレビシリーズの 第1回にも登場する『スクービー・ドゥー』では最も人気の ある敵役の1人ということで、テレビのエピソードでは、美 術館の館長でありながら、実は裏でいろいろやっていること を「ミステリー社」に暴かれたようだが、映画ではどうなる のだろうか。 もう一つ続報で、すでに何度か報告したジャッキー・チェ ン主演の“Around the World in 80 Days”のリメイクで、 新たにオーウェン&ルーク・ウィルスン兄弟のカメオ出演が 発表されている。オーウェンは、『シャンハイ・ヌーン』の シリーズでチェンと共演している間柄で、その関係で今回の 出演となったようだが、映画の中で彼らはライト兄弟の役を 演じるということだ。 また撮影は、すでにタイでのロケーションを終えて、ベル リン郊外のバベルスバーグ撮影所に移動しているが、ここで はヴィム・ヴェンダース監督の出演シーンも撮影されるとい うことで、監督はエキセントリックな芸術家の役を演じる計 画だそうだ。 * * 最後に新しい話題を1つ。 『スター・ウォーズ』や『ハムナプトラ』などの映画に基 づく小説シリーズの作家として知られるデイヴィッド・ウル ヴァートン(ペンネーム:ファーランド)が、オリジナルで 発表している“The Runelords”という小説シリーズの映画 化とヴィデオゲーム化が進められることになった。 このシリーズは、1997年に第1作が発表され、その後2作 が出版されて、今年の秋には第4作が発行される予定という ことだが、お話は、アースキングという統治者が支配するア ースという世界が舞台の異世界ファンタシーのようだ。 そしてこのシリーズの第1作の映画化を04年秋の劇場公開 を目指して進め、同時にロールプレイング・ゲームの開発も 04年のクリスマスシーズンの発売を目指して進めるという計 画になっている。 なおこの計画には、『グラディエーター』や『マトリック ス』の新作2本のVFXなどにも名を連ねているという特撮 マンのジョン・ネルスンが参加しており、VFX主導の映画 化が行われるようだ。また、原作者のウルヴァートンが製作 にも加わっており、原作者のヴィジョンに忠実な映画化を実 現できる体制となっている。 ウルヴァートンは、過去の仕事の実績から見て映画製作の 裏事情にも詳しそうで、その手腕も期待される。計画では、 2〜6千万ドルの予算で、今後4年間に3作品を製作すると しており、Daily Variety紙などにも1面広告が掲載されて いたが、さてどうなりますか。
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