※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 今回はまずこの話題から、1月8日に『ハリー・ポッター と賢者の石』の日本での大ヒットを記念して、第2作を撮影 中のロンドン郊外リーヴスデン・スタジオと東京のホテルを 衛星回線で結んで、主演の若手俳優3人と、監督、プロデュ ーサーによる記者会見が行われた。 因に日本での興行成績は、公開28日間で 100億円を突破。 これは『千と千尋の神隠し』の出足を上回っているというこ とだ。そして会見の出席者には「大入り」の記念品としてシ リアルナンバー入りの置き時計が配られた。案内状には「ポ ッターからのお年玉があります」とあり、「百味ビーンズ」 でも貰えるのかと思っていたが、大違いだった。 ということで会見の内容だが、会見はまず主演の3人がそ れぞれ「アケマシテオメデトウゴザイマス」と日本語で挨拶 したのに始まり、最初は他愛もない質問が続いたが、僕が注 目したのはやはり第2作に関する発言からだ。 その中で、ポッター役のダニエル・ラドクリフは「第1作 はオブザーバー的だったが、第2作ではより自発的になる」 と言い、ハーマイオーニ役のエマ・ワトスンは「フレンドリ ーになる」ということだが、ロン役のルパート・グリントは 「ジニーが入学してくるのでその世話をする」と言って笑わ せてくれた。なお3人の印象は、ラドクリフは声変わりして いるせいもあるのか終始口ごもりがちでシャイ、ワトスンは 何にでもはきはきと答えて活発な感じ、グリントは発言の度 にcoolの連発でやんちゃっぽく、物語の3人そのままという 感じだった。 続いてクリス・コロンバス監督の発言では、第2作はより ダークでアドヴェンチャラスになるということ、またCGI に関しては、クディッチのシーンがよりスピーディーで見応 えのあるものになるということだった。 一方、第1作でMrピーヴスが登場しなかったことについて の質問が出たが、これについてコロンバスは、シークェンス の撮影はしたが、ピーヴスのデザインにどうしても満足でき ず、最終的に全部カットしたということだ。しかしその後に 満足できるデザインが出来上がったということで、第2作に は登場させるということ。また第1作についても将来発売さ れるDVDや再公開の時には、新しいデザインのピーヴスを 登場させて完全版を出したいということだった。また原作を 完全に映画化するには6時間掛かるとも言っていたが、それ を実現したいような口振りでもあった。 それから原作者のJ・K・ローリングに関しては、「最高 のコラボレーションだ」ということで、物語に関するどんな 質問にも完璧に答えてくれるということだが、実はいくつか の問いに関しては「それはbook 7に関わることだから」と言 って回答を拒否されたそうだ。そしてあるとき、スネイプ先 生役のアラン・リックマンがちょっと奇妙な演技をし、なぜ そんな演技をしたのかという問いに対して「book 7を読めば 判る」と答えたのだそうで、スタジオではこの「book 7」と いう言葉が流行りになっていたようだ。 以上、中継はリーヴスデン・スタジオのホグワーツの大広 間のセットから行われたが、最後にコロンバスの指示でカメ ラが周囲を写して見せ、天井の照明が写ったときに「魔法の 天井は今は働いていない」と言ったのが良い感じだった。 * * お次は年明けで、いろいろ統計や各賞の下馬評なども出始 めているのでその話題を紹介しよう。 まずはアメリカでの映画興行成績で、昨年2億ドルを突破 した作品は5本。第1位は『ハリー・ポッターと賢者の石』 の2億9160万ドルだった。11月中旬封切りのこの作品は3億 ドルの突破は確実で、後は歴代1位の『タイタニック』(6 億ドル)に何処まで迫れるかというところだったが、それは ちょっと厳しくなってきたようだ。しかし4億ドルは超えて 『スター・ウォーズ』には迫ってもらいたいものだ。なお、 上記の記者会見での紹介によると、全世界での興行収入はす でに8億ドルを突破しているそうだ。 続く第2位は『シュレック』の2億6770万ドル、第3位は 『モンスターズ・インク』の2億3920万ドルとCGIアニメ ーション作品が並んでいる。この2作では11月初旬封切りの 『モンスターズ…』が最終的には何処まで追い込めるかで、 今年新設されるアカデミー賞長編アニメーション部門の史上 最初の受賞者の行方と共に注目される。 さらに第4位は『ラッシュアワー2』の2億2610万ドル。 アジアの代表ジャッキー・チェンが快挙を成し遂げた。そし て第5位は『ハムナプトラ2』の2億 200万ドル。この作品 が、『パール・ハーバー』(1億9854万ドル)や『ジュラシ ック・パーク3』(1億8110万ドル)、『猿の惑星』(1億 7930万ドル)を押さえたのはある意味笑えるところだ。 この他、12月封切りの『ロード・オブ・ザ・リング』は、 年末までに1億7412万ドルを記録しているということで、こ の作品も2億ドル突破は確実のようだが、実は先に候補の発 表されたゴールデン・グローブ賞でも、作品、監督、音楽、 歌曲の4部門で候補に挙がるなど評価も高く、意外と賞争い のダークホースにもなっているようだ。 * * というところで、先にも書いたアカデミー賞長編アニメー ション部門だが、すでに9本の予備候補が発表されている。 その作品は、上記の2作の他に、ソニー配給の『ファイナ ル・ファンタジー』、パラマウント配給の“Jimmy Neuton: Boy Genius”、ワーナー配給で実写シーンもある“Osmosis Jones”、フォックス配給の“Waking Life”。さらに独立 系の配給で“Marco Polo: Return to Xanadu”“The Prince of Light”“The Trumpet of the Swan”が選ばれている。 なお事前審査では、デンマーク製の『トビ★ウォーズ』も 入っていたが、年度内のアメリカ公開が決まらなかったため にキャンセルされた。また“Jin Roh: The Wolf Brigade” と“Vampire Hunter D: Bloodlust”も事前審査の対象だっ たようだが、いずれも規定に合わず外されたそうだ。因に選 定の条件は、年度内に初公開された作品で、且つアメリカ国 内で一般上映されていること。また長編アニメーションの基 準は、上映時間70分以上で、アニメーションシーンが75%以 上を占める作品となっている。 そしてもう1本、ディズニーの『アトランティス』だが、 この作品については、結局ディズニー側が勝負を『モンスタ ーズ・インク』1本に絞り込んだために外されることになっ たようだ。つまりディズニーとしては『シュレック』相手に 2作品が候補になると投票が分散されてしまうことを避ける ため、あえて1作品を降ろしたということのようだ。 従って2月11日に発表される3本の最終候補は上記の9本 の中から選ばれることになった訳だが、この内、『シュレッ ク』と『モンスターズ…』は間違いないところとして、3本 目の候補が注目されることになる。もちろん受賞の可能性は 限りなくゼロだが、映えある第1回の候補に残る3本目は一 体どの作品になるのだろうか。なお、事前審査段階で候補が 16作品以上の場合には最終候補は5作品に拡大され、候補が 8作品未満の場合には最終候補は選出しないということだ。 * * 一方、もう一つ気になる視覚効果部門には8本の予備候補 が発表されている。 その作品は、『A.I.』、“Black Hawk Down”、『キャッ ツ&ドックス』、『ワイルド・スピード』、『ハリー・ポッ ターと賢者の石』、『ジュラシックパーク3』、『ロード・ オブ・ザ・リング』、『パール・ハーバー』ということで、 SFからファンタシー、怪獣(恐竜)映画に戦争映画、自動 車アクションまで、実にヴァラエティに富んだ作品が並んだ が、話題になった作品の中では、『ハムナプトラ2』と『猿 の惑星』は選から漏れたようだ。因にこの予備候補は、アメ リカ映画アカデミーの視覚効果部門の40人のメムバーによっ て選ばれている。 感じとしては、『ハリー・ポッターと賢者の石』と『ロー ド・オブ・ザ・リング』のファンタシー2作品の争いになり そうだが、他にSF映画がない分、『A.I.』にも目があるか も知れない。これも2月11日に発表される3本の最終候補次 第になりそうだ。 * * 続いて、今年7月までのアメリカ封切り日が決定されてい る主な作品を列記しておくと。まずH・G・ウェルズの名作 を映画化する“The Time Machine”が3月8日。未公開シー ンの追加もある『E.T.』の20周年記念の再公開が3月22日。 『ハムナプトラ』の第3弾でもある“The Scorpion King” が4月19日。続いてシリーズ化も期待される“Spider-Man” が5月3日。そして“Star Wars Episode II:The Attack of the Clones ”が5月17日。チェン主演の“The Taxedo”が 6月7日。ディック+スピルバーグ+クルーズの“Minority Report”が6月28日。待望の続編“Men in Black 2”が7月 3日。同じく“Stuart Little 2”が7月19日。さらにシリ ーズ第3弾の“Austin Powers in Goldmembers”とディズニ ーランドの人気アトラクションを映画化する“The Country Bears”が7月26日の封切りとなっている。 いまさら言うまでもなく、今年は『スター・ウォーズ』の 公開年だが、その前後に“Spider-Man”“Men in Black 2” “Stuart Little 2”をぶつけるソニーの成果は如何にとい うところになりそうだ。 * * さて後半はいつものように製作情報を紹介しよう。 上で紹介した興行成績で2位3位を占めた2作品を始め、 アカデミー賞の予備候補でもメイジャー系の作品はいずれも 何らかの形でコンピューターの補助を受けているということ で、CGIアニメーションの勢いは留まるところを知らない 感じだが、以前に紹介した“Astro Boy”“The Cricket in Times Square”“Curious George”に加えて、またもや新た なCGIアニメーションの計画が発表された。 発表したのはミラマックス傘下のディメンションで、題名 は“American McGee's Alice”という作品。この題名に冠さ れたAmerican McGeeについては、ゲームマニアにはご存じの 方も多いかも知れないが、“Doom”や “Quake”などのシリ ーズ作品で、アメリカでは2000年度の10 game godsの1人に も選ばれているゲームクリエーター。そして今回の計画は、 そのAmerican McGeeが00年12月に発表した最新のパソコン用 ヴィデオゲーム“Alice”を映画化するというものだ。 ゲームの内容は、ルイス・キャロルの『不思議の国のアリ ス』をゴシック風に再構成したものということで、ゲームの ジャンルはアクションファンタシーゲーム。ストーリー的に は、成長したアリスが、マッド・ハッターやチェシャキャッ ト、それに赤の女王らと闘うというものだそうだ。 そしてこの計画では、実は昨年の5月にディメンションと American McGeeとの間で映画化権の契約が結ばれ、同時にウ ェス・クレイヴンの製作監督で、『チャーリーズ・エンジェ ル』のジョン・オーガストが脚本を担当することが発表され ていた。しかしこの時の発表では、具体的な映画化がどのよ うに行われるか示されていなかったが、今回の発表で、この 作品をオールCGIで製作することになったようだ。 なおクレイヴンは今回の発表でも、作品について「21世紀 の視点で見たアリスを描きたい」と語っており、製作監督は 変わらないようだ。『スクリーム』から『ミュージック・オ ブ・ハート』まで幅広いレパートリーのクレイヴンだが、俳 優の登場しないCGIアニメーションの監督でどのような手 腕を発揮してくれるだろうか。 またディメンションでは、“Doom”と“Quake” について も、今後に映画化を計画しているそうだ。 * * お次は、上の今年の公開予定でも紹介した“The Country Bears”に続いて、ディズニーランドの人気アトラクション を映画化する計画が続々発表されている。 因に“The Country Bears”は、ディズニーお家芸のオー ディオアニマトロニクスを実地に応用したアトラクションの Country Baer Jamboree を映画化するものだが、クリストフ ァー・ウォーケンが主演し、クマの声の出演にはハーレイ・ ジョエル・オスメントが参加するなど期待の作品で、すでに 続編の計画も進められているということだ。 それに続いて今回発表されたのは、まず“Pirates of the Caribbean”=「カリブの海賊」の映画化。この計画には、 ジェイ・ウォルパートという脚本家が参加してアトラクショ ンからインスパイアされた脚本が執筆されているということ だが、さらにこの計画の製作者として『アルマゲドン』など のジェリー・ブラッカイマーの参加が発表された。 ブラッカイマーは昨年の『パール・ハーバー』も製作して いるが、ディズニー映画の中では超大作部門を担当している 感じで、そのブラッカイマーが参加する「カリブの海賊」が 一体どのような作品になるのか興味を曳かれる。またハリウ ッドでは数年前から海賊映画ブームの期待があるが、この作 品がその起爆剤になってくれることも期待したいところだ。 そしてもう1本、“Haunted Mansion”=「ホーンテッド ・マンション」の映画化の計画も発表された。この計画には デイヴィッド・ベレンバウムという脚本家と、製作者にはア ンドリュー・ガンの参加が発表されているが、脚本家のベレ ンバウムは、ニューラインで映画化される “Elf”という作 品の他、『ラブ・バッグ』のリメイク版“Herbie the Love Bug”の脚本も担当しているということだ。 ディズニーランドのアトラクションの映画化となれば、当 然Gレイトの作品となるのだろうが、かなりの大作も期待さ れそうで面白くなりそうだ。 * * 後は短いニュースをまとめておこう。 前回、ディズニーとの共同で“The King of the Elves” の映画化を紹介したジム・ヘンスン・ピクチャーズからもう 1本“ Thumb”という計画が発表されている。この作品は、 グリム兄弟の童話『親指トム』を映画化するもので、この原 作は58年にジョージ・パルの監督で“Tom Thumb”(邦題・ 親指トム)として映画化されているが、今回は物語を現代版 にするということだ。そしてこの脚色に、00年にマドンナの 主演で映画化された『2番目に幸せなこと』などのトム・ロ ウペルスキーが契約されている。なお製作は、パル版を製作 したMGMとの共同で行われるが、多分パル版のリメイク権 は、現在はワーナーが所有しているはずなので、その辺の調 整が微妙になりそうだ。 第5回で紹介したジョナサン・モストウ監督、アーノルド ・シュワルツェネッガー主演“Terminator 3: Rise of the Machines”の映画化で、視覚効果をILMが担当することが 発表された。このシリーズでは『T2』もILMが担当して いるが、監督は変わっても視覚効果は同じになったというこ とだ。因にこの映画のアメリカ配給権はワーナーが獲得した が、アメリカ以外の配給権はソニーが契約した。ただし、日 本と韓国の配給権については東宝東和が先に契約している。 また、ワーナーとソニーの契約には、“T4”以降の契約に関 する優先権も含まれているそうだ。 最後にもう一つ、以前から注目されていたスティーヴン・ スピルバーグ監督の“Memoirs of A Geisha”の映画化の話 題が再燃してきている。製作者の発言によると、アキヴァ・ ゴールズマンの手掛けていた脚本がほぼ完璧に完成されたと いうことで、早ければ今年の夏にも撮影に取りかかれそうだ ということだ。ただしキャスティングは白紙に戻されている ということで、その作業からの再開になるようだ。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを公開に合わせて紹介します。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ このページについては今年になって見た試写の分からは、 公開時期に合わせて紹介することにします。したがって今回 は作品の紹介はありません。 なお1月12日封切りの『ヴィドック』は東京国際映画祭の 特集、19日封切りの『ハートブレイカー』は第1回、『息子 の部屋』は第4回、『バスを待ちながら』は第5回、26日封 切りの『プリティ・プリンセス』は第3回にそれぞれ紹介が あります。
2002年01月01日(火) |
第6回+モンスターズ・インク、アメリカン・スウィートハート、タイムリセット、沈みゆく女 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※ ※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※ ※キネ旬の記事も併せてお読みください。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 明けましておめでとうございます。今年もよろしくお願い いたします。 ということで、今回はまず新ネタから紹介しよう。 日本では『ブレードランナー』の原作者として有名なSF 作家の故フィリップ・K・ディックが、作家デビューの翌年 の53年に発表した7100語の小説“The King of the Elves” を映画化する計画が発表されている。 この原作は、昨年映画化されて日本先行公開となった『ク ローン』(原題“Impostor”)などと同じディックの初期の 作品群に含まれるもので、お話は、人付合いの下手なガソリ ンスタンドのサーヴィス係が、とある雨の日にエルフたちの 訪問を受け、彼らの王に選ばれる。そしてエルフたちのリー ダーとしてトロール族との絶望的な闘いに挑むというもの。 作者本人が、「これはSFではなく、ファンタシー」と称し ている作品だ。 そしてこの作品の映画化権を、ディズニーとジム・ヘンス ン・ピクチャーズが獲得し、その脚色を、『シンプソンズ』 を手掛けていたウォリー・ウォロダスキーが担当することが 発表されている。エルフだのトロールだのと言われると、今 の時期はどうしても“The Lord of the Rings”が思い浮か ぶが、ウォロダスキーはむしろ『シュレック』のような作品 を目指したいということで、夏公開の大作映画になるように 脚色が行われているようだ。 なお、ヘンスン・ピクチャーズでは、第3回で紹介したよ うに岩明均原作の和製コミックス『寄生獣』(アメリカ題名 “Parasyte”)の計画をドン・マーフィと共同で進めている が、一緒に紹介した“Astro Boy”(鉄腕アトム)の映画化 にも参加しているということだ。 そしてこの“Astro Boy”の映画化では、先に全てCGI によって製作されることが発表されているが、今回の“The King of the Elves”の映画化では、もちろんVFXは多用 されるがCGIによるキャラクターの製作はしないというこ とで、エルフたちも全て人間の俳優によって演じられるとさ れている。といってもヘンスン・ピクチャーズは、元々マペ ッツを手掛けてきた人たちなので、ここでいう人間の俳優と いうのがどういう意味なのかは未確認だ。 公開時期は未発表だが、早い完成を期待したい。 ところでこの記事は、Daily Variety紙に載ったジョナサ ン・ビングという人のコラムを基にしたが、このコラムでデ ィックの紹介が製作中の“Minority Report”で書かれるの は当然としても、過去の代表作が『トータル・リコール』に なっていて、日本では絶対人気の『ブレードランナー』には 全く触れられていなかった。確かに興行成績で見ると、『ト ータル』が1億1900万ドルに対して、『ブレード…』は 7500万ドル以下でその評価によるものかとも思えるが、 実はガイドブックの評価でも、『トータル』が星3つに対し て、『ブレード…』は星1つ半ということで、この2作に対 する日米の評価の違いが面白いところだ。 * * お次ぎは往年のシリーズ復活の情報で、人形アニメーター のレイ・ハリーハウゼン(『モンスターズ・インク』ではレ ストランの名前にもなっていた)が手掛けたダイナメーショ ン特撮による作品で、58年の『シンドバッド七回目の航海』 “The Seventh Voyage of Sinbad”、74年の『黄金の航海』 “The Golden Voyage of Sinbad”、それに77年の『虎の目 大作戦』“Sinbad and the Eye of Tiger”と製作されたシ リーズの新作の計画が発表された。 このシリーズは、「アラビアンナイト」の盗賊ヒーロー、 シンドバッドを主人公にしたもので、毎回「アラビアンナイ ト」に登場するいろいろな怪物がハリーハウゼンの人形アニ メーションで再現されて、人気を博していた。特に第1作の 『七回目の航海』では、クライマックスに登場した骸骨戦士 との剣戟シーンが素晴らしく、これが63年に製作されたハリ ーハウゼンの代表作『アルゴ探検隊の大冒険』“Jason and the Argonauts”の成功へとつながっていったものだ。 しかし人形を俳優の演技に合わせて一駒ずつ撮影し、合成 するダイナーメーション技術には途方もない時間と労力が要 求され、徐々にその技術は失われていった。ところが最近に なって、『ハムナプトラ2』のスコーピオンキングや、『ハ リー・ポッター』の怪物などに往年のハリーハウゼンを髣髴 とさせるシーンがCGIで再現され、同時にハリーハウゼン の業績への再認識が進んでいたようだ。 そして今回、そのハリーハウゼンが手掛けた『シンドバッ ド』の再開が発表されたもので、ここではどうやらCGIを 駆使してハリーハウゼン・ワールドの再現が目指されること になるようだ。製作はハリーハウゼンの諸作のアメリカ配給 を手掛けたコロムビア。 なお今回の計画では、すでに脚本に“T3”のオリジナルを 手掛けたデッド・サラフィアンが契約され、監督は『ポエテ ィック・ジャスティス』などのジョン・シングルトンが発表 されている。シングルトンといえば黒人監督の代表格とも言 える人物で、その監督がシンドバッドとはちょっとイメージ が繋がり難いが、その辺の経緯が明らかになったらまた紹介 したい。公開は03年か04年の夏ということだ。 * * お次も続編の話題。と言ってもこれを続編と呼んで良いも のかちょっと悩むところだが、97年に公開され、オスカー脚 色賞と助演女優賞を受賞した『L.A.コンフィデンシャル』 の続編で、原作者のジェームズ・エルロイが92年に発表した “White Jazz”の映画化計画が発表されている。 この作品は、『ブラック・ダリア』に始まる「暗黒のLA 4部作」の最終話に当たるものだが、シリーズとしての映画 化権は設定されていなかったようで、今回の映画化は俳優で エルロイの親友とも言われるニック・ノルティが主宰するキ ングスゲイト・フィルムスとLAに本拠を置くインターライ トで行われることになっている。 従ってスタッフキャストも総入れ替えで、前作でケヴィン ・スペイシーとラッセル・クロウ、それにガイ・ピアースが 演じた刑事役は、今回は製作者でもあるノルティとジョン・ キューザックが演じることになっており、また相手役にはウ イノナ・ライダーが交渉されているということだ。 確かに原作では前作『L.A.…』の何年か後の話のようだ が、それにしてもノルティは、前作の3人とは20歳前後以上 も年上な訳で、一体どの役を演じるのだろうか。監督はロバ ート・リチャードスン。製作費には2800万ドルが計上さ れ、その資金の大半はドイツの製作会社が提供することにな っている。 またシリーズ第1作『ブラック・ダリア』の映画化権は、 監督のデイヴィッド・フィンチャーが持っているそうだ。 * * 続いては、またまた往年のテレビシリーズからの映画化の 計画で、74−78年に放送された『600万ドルの男』“The Six Million Dollar Man”を映画化する計画が発表された。 このシリーズは、グレゴリー・ペック主演で映画化された 『宇宙からの脱出』“Marooned”などでも知られるマーティ ン・ケイディンの原作“Cyborg”をテレビ化したもので、不 時着して瀕死の重傷を負った元宇宙パイロットが、現代医学 の粋と 600万ドルの費用を掛けてサイボーグとして甦り、備 わった能力を駆使していろいろな敵と闘うというお話。 この作品を映画化する計画は、95年頃からユニヴァーサル で進められ、すでにケヴィン・スミスによる脚本も作られて いるということだ。そして今回、この計画にミラマックス傘 下のディメンションが加わることが発表されたもので、さら に両社は、ケイディンが執筆した続編の“Operation Nuke” “High Crystal”“Cyborg IV”を加えた全4作の映画化権 を一括して契約し、シリーズ化を目指して映画化を進めると いうことだ。 なおこのシリーズでは、76−78年には女性版の『バイオニ ック・ジェミー』“The Bionic Woman”も放送されていた。 * * 後半は短いニュースをまとめておこう。 最初の記事でも“Astro Boy”のオールCGIによる映画 化について触れたが、この他にも各社からオールCGIによ る作品の計画がいろいろと発表されている。 まず最初はミラマックスからで、“The Cricket in Times Square”という計画が発表されている。この作品はジョージ ・セデン原作の児童書を映画化するもので、ニューヨークの 地下鉄駅に暮らすコオロギを主人公にした物語。人間との交 流を描いたコオロギ版『スチュアート・リトル』のようなお 話ということだが、実写の合成は行わず、オールCGIによ る映画化が予定されている。なお原作は、60年に刊行された 第1作以降、全6巻が発表されているそうだ。 もう1本はユニヴァーサルからで、長年検討されていた絵 本“Curious George”の映画化もオールCGIで進められる ことが発表されている。この作品は日本でも人気のある悪戯 者の猿を主人公にしたものだが、一時はスター俳優を主演に した実写での製作が検討されていた。しかし最終的にオール CGIによる製作が決定されたもので、監督には『モンスタ ーズ・インク』の共同監督のデイヴィッド・シルヴァーマン の起用が発表されている。なおこの原作も全7巻のシリーズ になっている。 この他、ユニヴァーサルからは、ジョン・ニックル原作の “The Ant Bully”や、モーリス・センダク原作の“Where the Wild Things Are”といった作品のCGIによる映画化 の計画も発表されているが、今回の発表でその先陣を“Curi ous George”が切ることが決まったようだ。 ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※ ※僕が気に入った作品のみを紹介します。 ※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『モンスターズ・インク』“Monsters,Inc.” 『トイ・ストーリー』などのピクサー製作、ディズニー配給 のCGIアニメーション最新作。 モンスターが子供を脅かすのは、実は子供の悲鳴を集めて彼 らの世界のエネルギー資源として使うため。ところが最近は 子供たちが恐がらなくなり、モンスターの世界は慢性的なエ ネルギー不足に見舞われていた。 そんな中でも、毛むくじゃらの怪物サリーと目玉の親父のよ うなマイクのコンビは、悲鳴集めのナンバーワンの成績を上 げていたが…。ある日、彼らの世界に人間の子供が紛れ込ん でいるのを発見してしまう。それはモンスター世界にとって は存亡の危機だったが、実はその裏にはとんでもない陰謀が 隠されていた。 『シュレック』の製作者のジェフリー・カツェンバーグは、 来日記者会見でディズニーアニメを子供向きと決めつけてい たが、この作品では背景にエネルギー問題があったり、主人 公の父性が扱われたり、かなり大人向きと言えないこともな い展開になっていた。 しかもピクサーお得意のスピード感あふれる映像は、大人に も充分楽しめる作品になっている。これで、来年のアカデミ ー賞から新設される長編アニメーション部門の初の受賞作の 行方が本当に判らなくなった。 物語の中では、ハリーハウゼンという名前のレストランが登 場し、そこの店主がタコというのは55年製作『水爆と深海の 怪物』“It Came from Beneath the Sea”へのオマージュだ と思うが、その店がジャパニーズレストラン(寿司屋)とい うのは一体どういう意味なのだろうか。 『アメリカン・スウィートハート』 “America's Sweethearts” ビリー・クリスタルの脚本で、ジュリア・ロバーツ主演によ るラヴ・コメディ。 理想のカップルと呼ばれ、共演作は大ヒット連続のスターカ ップルが、ある作品の共演後に妻の浮気が発覚、夫はノイロ ーゼになり、以後バラバラに出演した作品は失敗の連続。し かも切っ掛けとなった共演作品はカリスマ監督が編集権を独 占し、編集が終わるまではプロデューサーも見ることができ ない。 そんな監督から完成の連絡があり、もう失敗の許されないプ ロデューサーはラスヴェガス郊外のホテルを借り切ってのマ スコミ披露を計画、スターの2人も再浮上のチャンスとばか りそこに現れるが…。 ロバーツの役柄はそんなスター女優に振り回される実の妹で 付き人。クリスタルは狂言回し的な宣伝マンを演じる。そし て理想のスターカップルに扮するのが、キャサリン・ゼタ= ジョーンズとジョン・キューザックなのだから、これはもう ハリウッドを見事に凝縮した作品だ。 映画ファンには、ジャンケットと呼ばれるマスコミ披露の裏 側や、我儘言い放題のスター女優、なりふりかまわぬ宣伝工 作に、カリスマ監督に振り回されるプロデューサーなど、い ろいろなハリウッド事情がパロディになっていて楽しめる。 そうでなくてもこの豪華な共演者は、それだけで堪能できる 作品だろう。 なおロバーツは、『オーシャンズ11』の撮影と同時進行で、 この撮影に参加していたそうだ。 『タイムリセット』“Ta Fa Likit” 01年の東京国際映画祭で上映されたタイ国映画『レイン』の オキサイド・パン監督が97年に発表した第1作。 家族公認の恋人同士のジァップとワーン。ところがある日、 ワーンが原因不明の病で意識不明となり、僧侶に助けを求め たジァップはワーンが前世で5人家族惨殺の罪を犯し、その 報いと知らされる。 その運命から逃れる術は、ジァップがこれから死ぬ運命の5 人の命を救うこと。そしてジァップの手には未来を教える白 紙の新聞紙が握られる。 話自体はどこかにありそうなものだが、CF出身のパン監督 はこの物語をスピーディー、かつ丁寧に作り上げている。 事件が解決して新聞記事が消えるときに『バック・トゥ・ザ ・フューチャー』みたいだと言わせたり、ユーモアも適度に あって飽きさせず、結末も期待以上の良さがあった。 この監督は注目しておく必要がある。 『沈みゆく女』“Suspicious River” ローラ・カシシュケの原作を女流監督リン・ストップケウィ ッチが映画化したカナダ映画。 川沿いにあるモーテル、そこのフロントに勤める主人公レイ ラは密かに泊まり客に特別なサーヴィスを提供していた。 その土地で生まれ育ち、生活に不自由がある訳ではない。し かし漠然とした不満が彼女をそのサーヴィスへと向かわせて いたのかもしれない。 そんなモーテルに、噂を聞きつけた一人の男がやってくる。 そして男は言葉巧みに彼女を誘い出す…。 女性のこうゆう行動というのは、僕には理解しがたいものが あるのだが、さすが女性監督ということもあるのか、何とな くその気持ちが伝わってくるような感じもした。 どんよりした冬空の風景は何処となく『ツイン・ピークス』 を思い出させた。内容的にも近いものもあるが、描き方は女 性らしくしつこさもなく、良い感じだった。
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