井口健二のOn the Production
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2001年12月15日(土) 第5回+囁く砂、グレーマンズ・・・、バスを待ちながら、バニラ・スカイ

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 前回は“Charlie's Angels”の情報を紹介したが、今回も
最初に、往年のテレビシリーズの劇場版リメイクの計画につ
いて、善し悪し含めていろいろな情報から紹介しよう。  
 まずは、65年から71年まで続いたコメディシリーズ『00
12捕虜収容所』“Hogan's Heroes”のリメイク計画に動き
が出てきたようだ。                  
 お話は、第2次世界大戦中のドイツ領内の捕虜収容所を舞
台にしたもので、比較的前線にあるこの収容所は、なぜか脱
走者が一人もいないというのが所長の自慢の種なのだが…。
その実体は、ホーガン率いる連合軍の部隊が地下に秘密基地
を設けて、スパイ活動などで後方から送られてきた兵士を連
合軍の領内に安全に逃がすための中継所となっている。そし
てシリーズでは、毎回秘密を守るためとドイツ軍をおちょく
るためのいろいろな作戦が展開されるというもの。因みに邦
題の『0012』というのは、当時放送したのが東京12チャ
ンネル(現テレビ東京)だったために付けられたものだ。 
 このシリーズを映画化する計画は、以前からワーナーやパ
ラマウントなどで進められ、当時はメル・ギブスンが主人公
のホーガンを演じるというのが有力情報として流れていた。
しかし現在レヴォルーションで進められているこの計画で、
ラッセル・クロウの主演が急浮上してきたということだ。 
 オリジナルに主演したボブ・クレインは、78年に強盗に襲
われて不慮の死を遂げているが、元々はDJとしても鳴らし
たというタレントで、最近伝記映画が製作されるなど注目を
浴びてきている。ということでその風貌はファンには印象深
いものがある訳だが、どちらかというと鰓の張った風貌で、
従ってギブスンもクロウも大体その系統の顔立ち俳優が選ば
れているようだ。                   
 製作状況は、すでにショーン・コネリー主演の『ネバーセ
イ・ネバーアゲイン』や『ザ・ロック』などを手掛けたディ
ック・クレメントとイアン・ラ・フレネイスのコンビによる
脚本が執筆されており、後は監督が決まればという段階にな
っているようだが…。                 
         *       *         
 お次は66年から67年に掛けて放送されたアクションシリー
ズ『グリーン・ホーネット』“Green Hornet”の計画で、過
去10年近くこの計画を進めていたユニヴァーサルが、ついに
断念を発表した。                   
 このシリーズは、元々はラジオ放送でスタートしており、
リムスキー・コルサコフの「熊ん蜂の飛行」の音楽に乗せて
ホーネットと空手の達人のカトーが活躍するヒーローアクシ
ョン。世間的にはホーネットは犯罪組織の一員ということに
なっているが、実はそれを隠蓑にして犯罪を暴くことを使命
としており、その秘密を知るものは数少ないという設定。従
って事件を解決した後も、警察にも捕まらないようにしなけ
ればならないという2重の構造になっている。      
 そしてこのシリーズをリメイクする計画では、一時はジョ
ージ・クルーニーとジェット・リーの共演という情報も伝わ
っていて、01年には『ユージュアル・サスペクツ』でオスカ
ー脚本賞を受賞したクリストファー・マカリーと契約して準
備が進められていたのだったが、この脚本の完成をリーのス
ケジュールに合わせることが出来ず、結局この撮影が流れた
ためにユニヴァーサルとしては、準備に1000万ドルを費やし
たこの計画に終止符を打つことになったものだ。     
 ということでオープンになった計画だが、実はその直後か
ら各社が相次いで引き継ぎを表明、最終的にミラマックスが
300万ドルをユニヴァーサルに支払って計画を買い取ること
になっている。なおリーは、オリジナルでブルース・リーが
演じたカトー役に熱意を持っており、製作会社が変わっても
参加の意志に変わりはないようだ。因にミラマックスでは、
傘下のディメンションで計画を進めることにしている。  
         *       *         
 もう1本は新作で、カートゥーンネットワークで最高視聴
率を誇るアニメーションシリーズ“Samurai Jack”を実写で
映画化する計画がニューラインから発表されている。   
 お話は、昔の日本の武士を主人公にしたもので、悪の魔法
使いに父親でもあるエンペラーを奪われた主人公が、鍛練を
重ね時空を超えて悪に挑むというもの。これを『ラッシュ・
アワー』のブレット・ラトナーの製作、監督で映画化しよう
というのだから、面白くなりそうだ。          
 因に、ラトナー監督で01年夏公開された『ラッシュ・アワ
ー2』は、全米で2億2500万ドルの興行収入を上げ、実写作
品では『ハリー・ポッター』に次ぐ成績を記録しているが、
今回計画されている“Samurai Jack”は、アクションとユー
モアを程よくバランスした作品ということで、ラトナー監督
にはベストマッチの作品とニューライン側は説明している。
 脚本は、テレビシリーズのクリエーターでもあるジェンデ
ィ・タートフスキーが担当。なおタートフスキーは、この他
にもカートゥーンネットワークの“Dexter's Laboratory”
や“The Powerpuff Girls”などを手掛けており、この内後
者は、ワーナーで劇場版リメイクが計画されているそうだ。
         *       *         
 リメイクの情報はこれくらいにして、続いては続編の情報
を1つ紹介しておこう。待望の『ターミネーター』の第3作
“T3”の計画がいよいよ本格的になってきた。      
 この計画では、すでに正式題名が“T-3:Rise of the Mach
ines”と発表され、監督のジョナサン・モストウと、主演の
アーノルド・シュワルツェネッガーの準備もOKということ
で、02年の春から夏に掛けての撮影の準備は万端整ったとい
うところのようだが…。                
 お話は前作の10年後、再び現れたターミネーターとジョン
・コナー(エドワード・ファーロング再演)は、未来から送
られてきた女性型殺人サイボーグ、ターミナトリックスと闘
うというもの。脚本は、テッド・サラフィアンのオリジナル
から、モストウと彼の永年の協力者のジョン・ブラッカトウ
とマイクル・フェリスが8カ月掛けてリライトしたものだ。
 ところがこの計画では、実は史上最高額となる製作費1億
6500万ドルのリスクを負うアメリカでの配給会社の決定が遅
れている。因みにこの製作費の高騰の原因は、まずシュワル
ツェネッガーの出演料が3000万ドル、さらにモストウの監督
料が 500万ドルということだが、シュワルツェネッガーは97
年の『バットマン&ロビン』で2500万ドルを達成しており、
今回は主演ということでは当然と考えられているようだ。ま
た、難航しているアメリカ配給権については、製作費の全額
という訳ではなく、テレビの放映権及びヴィデオの権利も含
めて最低5000万ドルあるいは配給収入の50%ということで、
これも比較的妥当な線といえるようだ。         
 ということでこの配給には、一時はユニヴァーサルが有力
と伝えられていたが、03年夏に予定される公開時期は、自社
作品の“The Hulk”がぶつかるということで配給ができない
ことになり、現在はワーナーと交渉が行われているようだ。
なお日本公開は、東宝東和の配給が先に契約されている。 
 最近、シュワルツェネッガーの交通事故の話も伝わってい
るが、撮影までには大丈夫のようだ。          
         *       *         
 お金の話のついでに前回紹介した“Charlie's Angels 2”
で、交渉のまとまったキャメロン・ディアスの出演料は2000
万ドルを突破、これは女優では、『エリン・ブロコビッチ』
でのジュリア・ロバーツに次ぐ記録になったということだ。
一方、製作も兼ねるドリュー・バリモアは先に契約が済んで
おり、ルーシー・リューの再登場もほぼ決まっているという
ことで、これで続編の製作に向けての障害は無くなったと前
回書いたのだが、考えてみたらもう一人のレギュラー出演者
ボスレー役のビル・マーレーが残っていた。前作では撮影中
にマーレーと女優たちの間でトラブルがあったという情報も
伝わっているが、今度はどうするのだろうか。      
         *       *         
 最後に短いニュースをまとめておこう。        
 まずは前回紹介したドン・マーフィ製作の“Astro Boy”
は、オールCGIのアニメーションで製作されることが発表
された。当初の計画ではアトムだけがCGIの『スチュアー
ト・リトル』のような映画ということだったが、計画が変更
されたようだ。公開は04年の夏の予定になっている。   
 日本でも大ヒットしている『ハリー・ポッター』の第2作
“The Chamber of Secrets”は予定通り02年の公開だが、第
3作の“The Prisoner of Azkaban”の公開は、1年遅れて
04年の秋になることが発表された。その理由は、03年には、
同じワーナー配給で『マトリックス』の2本の続編“The Ma
trix Reloaded”と“The Matrix Revolutions”の5月と11
月の公開が決定され、当初03年の11月に予定された“ Azkab
an”の公開にぶつかることになったためのようだ。まあ原作
の第5部の刊行も遅れているようだし、この際、映画製作に
も少し余裕が持てるのも良いことかも知れない。     
 ただし、同じくワーナー系のニューラインで製作公開され
ている“Lord of the Rings”の方は当初の予定通り、03年
に第3部の公開を行うということだ。          
 一方、ニューラインからは、『指輪物語』に並ぶイギリス
のもう一つの大河ファンタシーで、C・S・ルイス原作によ
る“The Chronicles of Narnia”『ナルニア国ものがたり』
の映画化にも乗り出すことが発表されている。この原作は、
魔法が使える異世界ナルニアを舞台にしたもので、物語の順
番では『カスピアンの王子』に始まる7部作だが、発表され
た計画では、第2部で最初に発表された“The Lion, the Wi
tch and the Wardrobe”(ライオンと魔女)からの製作にな
るようだ。なおこの原作は過去にBBCでミニシリーズ化さ
れたことがあるようだが、本格的な映画化は初めてになる。
                           
                           
                           
                           
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『囁く砂』“Pasir Berbisik”             
1960年頃、反乱軍が民衆の生活を脅かしている時代を背景に
したインドネシア映画。                
主人公の母親と娘のダヤは最初は海に近い村に住んでいた。
薬の行商を営む父親の行方は知れず、母親はダヤを呼ぶとき
には、ただ「娘」と呼んで厳格に育てている。      
その村が反乱軍の焼き討ちにあい、母娘はそこに行けば安全
に暮らせるというパシール・プティ(「白い砂」の意味)を
目指して旅に出る。しかしその地は遠く、母娘は途中の山里
に小屋を借りて住み始める。だが、その山里も安住の地と呼
ぶには程遠かった。                  
インドネシアというと熱帯のイメージがあったが、ここに登
場する山里は荒涼とした砂漠の中にあって、時折は白い息も
見える。そんな予想外の風景に驚かされた。       
混乱の時代だからこそ、娘を厳格に育てようとする母親。し
かしそれに反抗する娘との確執は、いつの時代にも変わらな
いテーマのようだ。                  
                           
『グレーマンズ・ジャーニー』             
             *“Journey of the Gray Men”
旅回りで音楽人形劇を見せる老人たちを描いたイラン映画。
いろいろな経緯から昔チームを組んだ3人の老人が数10年ぶ
りに再会、彼らが出会った町に向けて人形劇を演じながら旅
をして行くことになる。そこは1人にとっては故郷であり、
1人にとっては兵役の場所であり、1人にとっては政治犯で
服役した場所であった。                
その旅の間で、いろいろな人との出会いや、革命や大地震の
傷跡が描かれ、アフガン難民などイランの抱える問題が浮き
彫りにされて行く。                  
映画の巻頭で監督が、観客に向かって自分の父親についての
映画を、素人の俳優を使って撮影していることを告げる。実
はこれがちょっとした仕掛けになっていて、映画は途中でス
タッフが登場したり、成りゆきでシナリオを改訂したりと、
ドラマとドキュメンタリーを綯い交ぜにした構成になってい
る。                         
しかしこれがなかなか巧みで、ちょっとあざといところもあ
るがなかなか面白かった。               
原題はアラビア語で、その発音がどうかは知らないが、英語
題名の「グレーメン」は、主人公たちが音楽人形劇を演じて
いることからして、多分「ブレーメンの音楽隊」をなぞった
ものだろう。                     
                           
『バスを待ちながら』“Lista de Espera”        
最近話題作が続くキューバ映画の1編。         
舞台は、ハバナとサンティアゴに向かうバスの待合所。古び
た建物の中はバスを待つ人々でごった返している。しかしよ
うやく来たバスには空席はなく、人々はいつ来るとも判らな
いバスを待ち続ける。                 
待合所には故障したバスがあり、所長は修理して運行しよう
とするが、不調のエンジンの修理は難しい。そして人々が諦
め顔になり、所長が待合所の閉鎖を提案したとき、主人公の
男がバスをもう一度修理しようと言い出す。その輪が人々の
中に拡がって…。                   
後半は、思わぬユートピアが実現してしまうというファンタ
スティックな物語になって行くところがこの映画の面白さだ
ろう。しかしその間に、キューバの現状や、人々の閉塞感の
ようなものが見え隠れする。その辺の巧みさに、この映画の
作者の才能を感じた。                 
                           
『バニラ・スカイ』“Vnilla Sky”           
前回『アザーズ』を紹介したアレハンドロ・アメナーバル監
督の『オープン・ユア・アイズ』を、トム・クルーズが自ら
権利を買い取り、キャメロン・クロウの監督で、ハリウッド
でリメイクした作品。                 
クルーズ演じる主人公は、若くして父親が始めた出版社を引
き継ぎ、成功を納め、彼自身も容姿に恵まれて、キャメロン
・ディアス演じるモデルの女性を恋人に優雅な独身生活を送
っている。しかし周囲には彼から会社の支配権を奪おうと画
策している連中もいた。                
そんなある日、彼に自宅で開かれたパーティにペネロペ・ク
ルス演じる女性が現れる。彼はその女性に魅かれ、彼女の家
まで送って行くが、それ以上のことには至らない。    
ところが彼女の家を出たところに待っていたのはモデルの女
性で、彼女は主人公を自分の車に乗せると、街中を暴走し、
ついに陸橋から落下、彼女は死亡し、彼は顔面に大怪我を負
ってしまう。                     
その怪我は手術で修復されるのだが…。その日から、彼の周
囲の世界に変化が生じ始めた。             
実は『オープン・ユア・アイズ』を見落としていて、オリジ
ナルとの比較は出来ないのだが、物語が全く同じだとすると
『アザーズ』との共通点が見えて面白かった。      
これ以上は何を書いてもネタばれになってしまいそうで、紹
介しづらいのだが、結末には救いがあって僕は好ましく感じ
た。                         
パーティシーンの招待客にも注目。           



2001年12月01日(土) 第4回+スパイ・キッズ、恋ごころ、スパイ・ゲーム、息子の部屋、アザーズ、マルティナの海、ヘドウイッグ

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※このページは、キネマ旬報誌で連載中のワールドニュー※
※スを基に、いろいろな情報を追加して掲載しています。※
※キネ旬の記事も併せてお読みください。       ※
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 最初はリメイクの情報で、往年のB級ホラー映画作家の作
品をシリーズでリメイクする新たな計画が発表されている。
 アメリカではすでに、ロバート・ゼメキスとジョール・シ
ルヴァらが、60年代に活躍したウィリアム・キャッスルの作
品をリメイクするダークキャッスルを設立し、ここからは01
年にも60年に製作された“13 Ghosts”のリメイクが発表さ
れているが、今度はヨーロッパから、60〜70年代にイタリア
で活躍したマリオ・バーヴァの監督作品13本をリメイクする
権利が、ロサンゼルスに本拠を置くキスメット・グループと
契約され、その第1作として、72年製作の“Baron Blood”
をリメイクする計画が発表された。           
 バーヴァは、キャッスルと同じ14年の生まれで、最初はカ
メラマンとしてイタリア映画界入りしたが、60年の『血ぬら
れた墓標』から長編監督として活躍を始め、77年の“Baby
Kong”まで、僕のチェックした範囲では17本の監督作品があ
るようだ。そして80年、その前年に後継者ともいえるダリオ
・アルジェント監督の『インフェルノ』の特殊効果を手掛け
たのを最後にこの世を去っている。しかしアメリカでは、ウ
ェス・クレイヴンやクェンティン・タランティーノらにも影
響を与えたと言われ、最近特に再評価が進んでいたようだ。
 そこでキスメットでは、先にインターナショナルメディア
との共同で、イタリアのプロデューサー、アルフレッド・レ
オーネが持つバーヴァ作品のリメイク権を獲得、さらにこれ
にセヴンアーツ・ピクチャーズが資金面で参加して今回の計
画発表となっている。なお、今回計画の発表された“Baron
Blood”は、日本では『処刑男爵』の題名でヴィデオリリー
スがあるようだが、ジョセフ・コットンとエルケ・ゾマーの
主演で、貴族の男のリインカーネイションを巡る物語。紹介
記事ではサディスティックな描写があるということだが、公
開当時のレイティングはPGになっている。        
 今回の計画の詳細は不明だが、キスメットとセヴンアーツ
では、先にサミュエル・L・ジャクスン、ミラ・ジョヴォヴ
ィッチ共演の“No Good Deed”などの作品も手掛けており、
実績のある会社なので期待ができそうだ。因に、“No Good
Deed”の日本配給はGAGAが契約しているということで、出来
たら今回のリメイク作品もお願いしたいものだ。また今回の
発表でキスメットは、アルフレッド・レオーネから、バーヴ
ァ監督作品以外にも同時期にイタリアで製作されたホラー、
SF、冒険映画など14本のリメイク権を獲得したということ
で、正直言ってB級どころかC級の作品も多いイタリアSF
だが、現代のVFXを駆使して面白い作品を期待したい。 
         *       *         
 リメイクの次は続編の情報で、ソニー傘下のコロムビアか
ら95年に公開された『ジュマンジ』の続編が製作されること
になるようだ。                    
 実はこの計画は、第1作の公開直後から検討されていたも
のだが、前作を受け継ぐ物語をどのようなものにするかでな
かなかまとまらず、最近では00年8月に『ビッグ・ママス・
ハウス』の脚本家のドン・ライマーが契約して脚本の改訂が
行われているとの発表があったものの、その後の情報は跡絶
えていた。なおこのときの情報で、当時考えられていた物語
は、大洋に沈んでいたゲーム盤を副大統領が釣り上げ、これ
によってまたまた大混乱が始まるというものだったようだ。
 ところが最近になって、原作者で前作の脚色も務めた絵本
作家のクリス・ヴァン=オールズバーグが続編となる新作を
発表、この新作の映画化権をコロムビアが獲得したことが発
表された。しかしこの新作は題名が“Jumanji 2”ではなく
“Zathura”と名付けられており、物語の中心は、実はジュ
マンジのゲーム盤の裏側に描かれていた別のゲームという設
定で、ジュマンジの舞台はジャングルだったが、今度は宇宙
空間が舞台となるというものだ。            
 この展開にコロムビアとしては、当然この新作の方を続編
の“Jumanji 2”として製作する意向で、すでにMTVの企
画製作などを手掛けるエリック・フォーゲルと契約して脚色
を依頼、02年秋の製作開始を目指して準備を進めることにし
ている。一方、宙に浮いてしまったドン・ライマーの計画に
対しては、さらにこれを“Jumanji 3”にしようという方向
で計画が進められることになるようだ。ただしライマーの計
画を“Jumanji 2”として残し、 “Zathura”は独立の作品
として進める可能性も考えられているということだ。   
 最近、また『ハリー・ポッター』の大ヒットで、各社は単
なる続編よりさらにシリーズ化を狙える作品を血眼になって
探している状況だが、元々シリーズになっている場合は別と
して、原作者本人がシリーズ化を進めてくれるケースは、ト
マス・ハリスの『ハンニバル』のような場合を除いては珍し
い訳で、今回、予想外の展開でシリーズ化が実現できること
になった『ジュマンジ』について、コロムビアではこのチャ
ンスを大事に活かしたいとしている。          
 なお、コロムビアではもう1本、“Charlie's Angels 2”
の計画も進み始めている。こちらは前作の監督の McGの再登
板が発表された他、キャメロン・ディアスの出演交渉もまと
まったということだ。また、他の2人のエンジェルの出演は
ほぼ決まっているということで、これで続編の製作に障害は
無くなったようだ。なお McGは、先に計画されていた“Drea
dnought” という作品の中にジェット旅客機を撃墜するシー
ンがあり、9月11日の事件との関係で製作延期となったため
に、替りにこの作品が選ばれたそうだ。         
         *       *         
 続いて、前回は『マッハ Go!Go!Go!』の情報をお伝えした
が、今回もまた日本製テレビアニメーションからの映画化の
情報で、今度はコロムビアで計画されている“Astro Boy”
こと、手塚治虫原作『鉄腕アトム』の映画化に強力な助っ人
が参加することになった。               
 この計画は、コロムビアが97年のアメリカ版『ゴジラ』に
続いて発表したもので、ちょうど『スチュアート・リトル』
の製作も進められた頃ということもあって、アトムをCGI
で制作するなどの概要が発表されていた。しかしその後は、
脚本を『アンツ』のトッド・オルコットが手掛けているとい
う情報があった程度で、具体的な話はなかなか伝わって来な
かった。この計画に、先にフォックスからジョニー・デップ
主演の“From Hell”を発表して2600万ドルの興行収入
を記録したプロデューサー、ドン・マーフィの参加が発表さ
れたもので、これでいよいよ本格的な製作がスタートするこ
とになるようだ。                   
 なおマーフィは、元々はコロムビアに本拠を置いて98年の
『ゴールデン・ボーイ』なども手掛けていたが、最近では外
部の仕事が目立っていた。因に、今回のコロムビアの発表で
は、ドン・ウィンスロー原作のミステリー作品“A Cool Bre
eze on the Underground”の映画化計画と一緒に報告されて
いるが、この他にニューラインでマーヴェルコミックス原作
の“Iron Man”を計画しており、また、ジム・ヘンスンとの
共同で、岩明均原作の和製コミックス『寄生獣』(アメリカ
題名“Parasyte”)の計画も進めているということだ。  
 さらにマーフィは、ニッケルオデオンでクライヴ・バーカ
ーの原作による“Ecto-Kid”の計画も進めている。この作品
は、マーヴェルコミックスから発表されていたものだが、超
能力を持つ女性と殺人被害者の男の幽霊との間に生まれた少
年デックス・モンゴを主人公にした物語で、デックスは片方
の目で生者の世界、もう一方の目で死者の世界を見ることが
でき、現世とこの世ではない2つの世界をさまよう物語だそ
うだ。何だか『シックス・センス』に似ているようだが、コ
ミックスは93年に発刊されており、この時のストーリーはラ
リー・ウォシャウスキーが共同で執筆したものだそうだ。 
         *       *         
 後半は短いニュースをまとめておこう。        
 まずは続報で、前々回に紹介したコーエン兄弟とジョージ
・クルーニーのコラボレーションによる“Intolerable Cru
elty”の計画で、キャサリン・ゼータ=ジョーンズの共演が
が発表された。前の記事でジュリア・ロバーツを口説いてい
るらしいと書いたのは、実は前回紹介した“Confessions of
a Dangerous Mind”の方だったらしく、いくらなんでも同じ
女優と3作連続というのは無かったようだ。       
 次は、日本では正月映画で公開されたロベルト・ロドリゲ
ス監督、アントニオ・バンデラス主演の『スパイ・キッズ』
(試写の感想は下のページを見てください)の続編“Spy Ki
ds 2”の製作がすでに開始され、この続編には前作の主人公
達が顔を揃えた他、ロメロという謎のキャラクター役でステ
ィーヴ・ブシェーミの出演が発表されている。ブシェーミと
バンデラスはロドリゲス監督の『デスペラード』で共演して
おり、メムバー勢揃いという感じだ。他に14歳のマット・オ
レアリーという俳優も共演しているそうだ。       
 最後にドリームワークスから、こちらも正月映画で公開さ
れた『シュレック』(試写の感想は第2回を見てください)
の製作チームが、ビヨルン・ソートランドの原作、ラーズ・
イーリング挿絵による絵本“The Dream Factory”をアニメ
ーション化する計画が発表されている。この作品はクリスマ
スストーリーで、お話は2人の子供がイヴの夜に、叔父さん
の家の屋根裏部屋で出会ったチャーリー・チャップリンの後
を追いかけて行く内、不思議な映画の世界に迷い込み、いろ
いろな映画のセットを訪問して、そこでオースン・ウェルズ
やマルレーネ・ディートリッヒ、さらにはターザンやキング
コングらと出会ったりするというもの。具体的な計画は未確
定だが、ハリウッド映画の歴史的なセットやキャラクターが
CGIで再現されるというのは面白そうだ。なお映画の物語
は、ソートランド&イーリングの他の作品“Anna's Art Adv
enture”と “The Story of the Search for the Story”も
加味して作られるということだ。            
                           
                           
                           
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※このページでは、試写で見せてもらった映画の中から、※
※僕が気に入った作品のみを紹介します。       ※
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『スパイ・キッズ』“Spy Kids”            
『デスペラート』のロベルト・ロドリゲス監督と、主演のア
ントニオ・バンデラスが再び組んだスパイアクション映画。
と言ってもバンデラスは、スパイ同士で結婚して引退した元
スパイの役で、この元スパイ夫婦が緊急事態で呼び戻される
が敵に捕まってしまい、それを救出に向かう2人の子供が大
活躍するというお子様映画だ。             
しかしこの作品がアメリカでは、2月に公開されるや3週連
続のトップに輝き、すでに1億ドル以上を稼ぎ出すという大
ヒットを記録している。                
『デスペラート』は、銃を撃って撃って撃ちまくるという激
烈な映画で、その監督と主演の映画は一体どんなものかとい
うと、これが完璧なお子様映画に仕上げられている。監督は
ロアルト・ダールの『チョコレート工場の秘密』を映画化し
た“Willy Wonka”を引き合いに出しており、この作品は僕
もヴィデオで見ているが、子供の喜びそうなものを選りすぐ
りで寄せ集めたような雰囲気は実にそっくりだった。   
子供は絶対に喜ぶし、大人もそれなりに楽しめる作品になっ
ている。
                           
『恋ごころ』“Va Savoir”               
ヌーヴェル・ヴァーグの旗手の一人だったジャック・リヴェ
ット監督の最新作。今年のカンヌ映画祭に正式出品され、秋
のニューヨーク映画祭ではオープニングを飾った。    
恋人を捨ててパリを去った女優が、イタリアで参加した劇団
と共にパリに戻ってくる。その公演中に起きるいろいろな出
来事が描かれる。                   
といっても、別段人生の機微と言うような大げさなものでは
なくて、ちょっと予測の付かない物語と、その中でいろいろ
な人物が絡み合う様が面白い。             
女優を主人公にしたせいもあってか、概して女性が堅実で、
男性が奇人に描かれているのは、監督の考え方がそうなのだ
ろうか。                       
ハリウッド流にアクションや台詞の連発で笑わせるのではな
く、上品な笑いで久しぶりにフランスのコメディを「観た」
という感じがした。                  
劇中演じられる『あなたのお望みのまま』という演劇が気に
なった。ルイジ・ピランデッロの作品で、グレタ・ガルボ主
演の映画化もあるということなので観てみたくなった。  
                           
『スパイ・ゲーム』“Spy Game”            
ロバート・レッドフォード、ブラッド・ピット共演、トニー
・スコット監督によるスパイ映画。           
レッドフォードが演じるのは、CIAからの引退最終日を迎
えた老スパイ。しかしそこにかつての教え子だったピットが
中国での作戦中に逮捕されたという報が入る。      
老スパイは作戦室に呼ばれ、教え子の取った行動の解析を始
めるが、折しも大統領の訪中を控える政府は中国との関係悪
化を怖れて救出を諦め、事件のもみ消しを図る。それは24時
間後に処刑が行われることを意味していた。       
解析が進む中で、ヴェトナム、ラオスからベルリン、ベイル
ートへと続く15年に亙る2人の行動が語られ、非情なスパイ
の世界が描かれる。その一つ一つが息詰まるようなスパイ作
戦の記録なのだから、それこそ「007」を何本かまとめた
ような見応えだ。                   
レッドフォードとピットは、『リバー・ランズ・スルー・イ
ット』での監督と俳優以来のコラボレーション。レッドフォ
ードの最近の姿は大体こんなものだが、2人の出合いのシー
ンでは、久しぶりに初々しい雰囲気のピットの姿が出てくる
のが面白かった。                   
                           
『息子の部屋』“La Stanza del Figlio”        
01年度カンヌ映画祭でパルムドール(最優秀作品賞)を受賞
したイタリア映画。                  
両親と息子、娘のごく普通の4人家族。その息子が潜水中の
事故で亡くなり、父親はその日急に入った仕事のために約束
を破り、息子を行かせてしまったことを悔やみ続け、家族は
崩壊して行く。そんな一家の再生までの姿が描かれる。  
映画は父親を中心に描かれており、自分自身、同じように娘
と息子のいる父親として考えさせられることは多々ある。試
写室では、若い女性達の嗚咽があちこちから聞かれたが、僕
自身は泣くよりも、見事に立ち直って行く一家に羨望すら感
じていた。                      
映画はこの題材を、完全に時系列で描き切っており、その構
成に上手さにも感心した。途中回想シーンはあるが、それも
時系列の中の回想であることに注目してもらいたい。   
                           
『アザーズ』“The Others”              
98年東京グランプリを獲得した『オープン・ユア・アイズ』
のアレハンドロ・アメナーバル監督の最新作。      
受賞作は、トム・クルーズ主演で“Vanilla Sky”としてハ
リウッドリメイクされているが、この作品はそのクルーズの
製作総指揮で、撮影当時妻だったニコール・キッドマンの主
演で作られている。                  
物語は、1945年、チャンネル諸島の島に建つ館を舞台に、第
2次世界大戦の欧州戦線に出征した夫の帰りを待つ妻と、光
アレルギーのために暗闇の中に暮らす幼い姉弟を巡って進め
られる。                         
その館の使用人が急に居なくなり、代わりに3人の男女が現
れる。その頃から館に謎の侵入者が現れ始め、最初幼い姉に
だけ見えていた少年の姿が、やがて館中に出没するようにな
る。そしてついには…。                
ぞくぞくする恐怖感が久しぶりに心地よく、結末もいろいろ
言う人はいるだろうけど救いが感じられて、僕は気に入って
いる。                        
                           
『マルティナは海』“Son de Mar”           
スペイン語で書かれた小説が対象の「アルファグアラ賞」を
99年度に受賞したマヌエル・ビセントの小説の映画化。  
主人公は、下宿屋を営む夫婦の一人娘。そこに下宿人の新任
の教師が現れ、2人は恋をし子供を身籠もって結婚する。そ
してある日、夫は小船で海に出て無人の船だけが浜に打ち上
げられる。                      
やがて主人公は、教師と出合う前から想いを寄せられていた
資産家と再婚し、子もその資産家を慕い平穏な生活が続いて
いる。しかしそこに男が戻ってくる。男は2人が出合った頃
の官能の物語を囁き、女はその官能に引き寄せられて行く。
情熱的なスペインならではの物語というところだろうが、そ
の心情は日本人でも判らないことはない。初々しい少女から
官能に溺れる女までを見事に演じた主演のレオノル・ワトリ
ングの今後にも注目したい。              
                           
『ヘドウィッグ・アンド・アングリーインチ』      
             “Hedwig and the Angryinch”
オフブロードウェイで2年半以上のロングランを記録したロ
ックミュージカルが、演出主演を舞台そのままに映画化され
た。                         
主人公は東ベルリンに生まれ、アメリカ軍の軍曹に見初めら
れて結婚によってアメリカへ脱出するために性転換手術を受
ける。しかし手術は失敗、股間には1インチの痕跡が残って
しまう。だから結成したバンドの名前が、「アングリーイン
チ」。イッチじゃないというのは台詞にも出てくる。   
基本的にオカマというのが余り好きではなくて、最近増えて
きたオカマ映画は見ていなかったのだが、この作品はオリジ
ナルの舞台の評判と、東京国際映画祭での招待上映を見逃し
たこともあって見に行った。              
で感想は、テーマはオカマではなくて、自分の失った片割れ
を求める主人公の流浪の物語という感じで、オリジナルのロ
ックミュージックも心地良く、納得の行く作品だった。  


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井口健二