肌触りの良いそれを
ぎゅうっと抱き締める。
顔を埋める。
安心する。

眠れなくて寂しい夜に
話し相手になってくれた大切なきみに
「抱き枕離しちゃ駄目だよ」って言われたから
離さないようにちゃんと
この両の腕の中にちゃんと
抱き締める。

願わくば早く
早くあたしを眠りの世界に連れて行って

怖いのに、怖がっていない振り
そんな虚勢でさえ、張り続けることができなくて

だって怖い

誰かも知らない、赤の他人からの好奇
誰かも知らない、赤の他人からの興味

でも、これは全部自分で蒔いた種だ
自分の手で、刈り取らなければ

黙っていればすぐに治まるはず
大人しくしていればすぐに元通りになるはず

くらやみにむかってのばしたてのひらに
ふかいよるのやみがふれた

負けない。
諦めない。
迷わない。

すべては自分自身との闘い。

焦らない。
気負わない。
立ち止まらない。

「悔しい」と思った「あたし」を力に変えて。
見返すんだ。
あたしを蔑んだ視線を。
あたしを軽んじた態度を。
見返してやるんだ。

そのためにもあたしはあたしに勝たなくちゃいけない。
いつまでも負けてばかりはいられない。

「好意」には「好意」を
「悪意」には「悪意」を

善人になんてなれないから
悪人でもいい
ワガママで自分勝手だと思われても構わない
あたしはあたしのやりたいようにやるんだ
誰にも邪魔させないし、止められない

絶対に、負けない。

望んでも叶わない。
願っても届かない。
思っても伝わらない。

知っている。
痛いほど、知っている。

だけど

望んでしまう。
願ってしまう。
思ってしまう。

愚かだと、知りながら。

「強く望めば願いは叶う」なんて誰が決めた？
「強く思えば思いは伝わる」なんて誰が決めた？

期待し過ぎるな。
多くを望むな。
「今」で満足しなくちゃ。

壊れそうな「今」を必死で抱きしめる。
この腕の強さでさえも壊れそうな「今」を。

好きなんです。
ただ、それだけなんです。

褪せない思い
枯れない涙

たくさんの涙が今年もまた空へ
長い長い川を作って
空へ

今年も痛いほどに青く澄んだ空から
あなたが笑って手を振っているような気がする

まだ涙しか送れないけれど
いつかきっと笑ってこの空を見上げるから

あなたのいない８年目の春が過ぎる。