せきねしんいちの観劇&稽古日記
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2009年09月30日(水) |
演劇授業と久しぶり! |
9月30日(水) 富士見丘小学校演劇授業 夏休みの宿題で子供たちに書いてもらった作文をもとに篠原さんと相馬杜宇さんが書いてくれた卒業公演の冒頭シーンをまずは読んで、それから話し合い。 思いも寄らない設定から始まる今回のお話が、ブレインストーミング、正解を見つけなくていいよという話し合いの中、さらにとんでもないものになっていく可能性を見せていく。 久しぶりに会った子供たちはやっぱり一回り大きくなったような印象。 記憶の中にあるキャラクターもさらに濃くなっているようだ。 1組、2組、それぞれのクラスの特徴も出て、とてもおもしろい話し合いになった。 今日の授業を踏まえて、また宿題を出す。続きを書いてきてくださいというもの。 さあ、どんなものになっていくだろうか。とても楽しみ。
夜は印象の稽古。 ここ数日の劇読みの稽古で演出だけをずっとしていたせいか、セリフをしゃべり動くのを体がよろこんでいるのを感じる。 シーンを一回やったあと、次を待っている間がもうわくわくしている。 広場で遊んでいる犬の気持ち、ふたたび(笑)。 久しぶりにダダこと岡田梨那ちゃんと一緒になる。 駅までの道をおしゃべりしながら。 稽古中のクロカミショウネン18の公演のことなど。 劇読みとまるかぶりなので、うまく行けるかどうか。 加藤さん、久米さん、香ちゃんはどんな芝居をしているんだろうと、わくわく想像する。
2009年09月29日(火) |
立ち稽古と十年ぶりの御挨拶 |
9月29日(火) 「月、白き水晶の夜」の稽古。二回目。 前回の読み合わせに続いて、今日は立ち稽古。 戯曲に描かれているのは、室内の一杯道具。 それほど忠実に位置を再現しなくてもいいだろうと考えていたのだけれど、やはり位置関係がわからないと関係も成立しにくいということが判明。 急遽、舞台上の椅子の位置を変更。 それをもとに俳優さんたちに動いていってもらう。 今回、ト書きを読んでくださるのは、劇団俳小の斉藤真さん。十年以上前、池袋演劇祭でお世話になって以来だ。 「何か賞がもらえたら授賞式は女装で!」という宣言のまま、女装していった受賞式で斉藤さんは司会をしていてくださった。 久しぶりの御挨拶をする。 全体の約半分までで今日は時間切れ。 もっともっとていねいに稽古したい、そんな深みのある台本なのだけれど、限られた稽古時間の中でできることを確認して、そのことをぐいぐい俳優さんたちに伝えていく。
9月28日(月) 午後と夜間で、「短編連続上演」と「時はおもちゃ箱に詰めこんで」の稽古、それぞれ二回目。 今日は立ち稽古。 稽古場にバミリをしてもらって、どんどん立っていく。 短編は、舞台上の二重の向きをまず変更。 3本の短編を一本ずつ、違う味わいのものにしていく。 俳優さんたちにお願いする、セリフ以外のことが盛りだくさん。 セリフもト書きも全く違う書かれ方をしたものを次々と演じていく俳優さんたちの、体と心のバネを頼りに思い切ったことをどんどん、繊細なことをていねいに演じていってもらう。 今日は、「こんなことをお願いします」ということを伝えて、まずはやってみてもらう日。 おお、そうなるかと納得したところ、変更を決めたところなどなど。 3本の全体像は見えたかな? 夜は「時はおもちゃ箱に詰めこんで」。 二時間弱の上演時間が予想される作品。 半分までいけたらいいなと思っていたのだけれど、9割方動きの確認と演出を終えることができた。 のりのりで演じてくれた俳優のみなさんに感謝。 にしやんこと西田夏奈子さんの無から有を生み出すその圧倒的な力がすさまじい。 太陽のように暖かな熱と光を発しつづけてくれている。 次回はラストのちょっとだけ大がかりな演出を試してみようと思う。
2009年09月27日(日) |
一日稽古とあっという間 |
9月27日(日) 「父産」一日稽古の日。 稽古場に向かう電車の中では、正直「まだ着かないの?時間が経つのはなんて遅いんだろう」と思ってしまうのだけれど、稽古場ではなんだか楽しくて、あっという間に時間が過ぎてしまう。 何本も台本を抱えていても、今はこれだけを考えていればいいという時間にいられると、ふっとのびのびとした自由な気持ちになる。 今回、僕は父親役なので、自然と座組の最年長になっている。 若い俳優さんたちが、もうみんなかわいくてしかたない。 子離れできていない寂しがりやという設定をいいことに、この「かわいいなあ」という気持ちを自分に思う存分許してしまう。 父親としての威厳とか格とかそんなんじゃなしに、もう「かわいいなあ」という気持ち。 帰り、つい一人で駅までの道を歩くことに。 環八の近くの古本屋に寄り道。 さがしていた本を何冊も発見。手に取るが、今日はいいやとまた今度にする。 今の気分では、読書は抱えている台本たちからの逃避になってしまいそうなので。
2009年09月26日(土) |
まぶしい若さと病み上がり |
9月26日(土) 「父産」の稽古。 熱は下がったもののふらふらするので、遅刻をさせてもらっての稽古場入り。 体調が悪いときの稽古は、芝居をしながら、相手役から力をもらっているような気持ちになる。 夢中になって芝居をしているうちに、声の調子も体の具合も、なんだかよくなっていくよう。 今日のケータリングは、煮込みうどん。ごちそうさまです。 「根岸の一夜」が終わって、一気に始まった「父産」「劇読み」2本(実は4本)の稽古で、ほんとうに大勢に俳優さんとご一緒している。 特に若い俳優さんたちが大勢で、なんだかその若さがまぶしくってならない(笑)。 「父産」では、父親役なので、僕には息子がいるわけなのだけれど、もうこれがみんなかわいくてしかたがない。 息子ばなれができないという台本の設定上とは違う感覚で、かわいいなあと思ってしまう。 自分のトシも同時に感じながら・・・(笑)。 後半、舞台美術の坂口さんが来てくれたので、ざっくりと要所要所を通してみる。 僕は、まだどうしていいかわからないでいるところが多いので、台本を持ったままの荒通しのような気持ち。 途中でふっと、これって劇読みの気分に近いかもしれないと思ったが、思った瞬間、いや、劇読みではいくらなんでもこんなに大暴れはしていないと訂正。同時に、自分のあばれまくりぶりが客観的に見えたようで、おかしい。 稽古終了後、みんな駅までの道を歩いて行くというのを、共演の小角まやちゃんと二人でバスに乗って。明日は一日稽古の日。
2009年09月25日(金) |
立ち稽古と演劇トライアスロン |
9月25日(金) 劇読みの稽古三本目、短編連続上演の稽古初日。 熱は、まだ下がりきらないものの、一本当たり3回しかない稽古なので、えいっと起きて出かける。 今日の稽古場は、印象の稽古場のすぐ近くの施設。 はじめましての御挨拶、そしてまずト書きの読みの指定と読み合わせ。 その後、さっくり読んでもらって、演出プランの説明をする。 僕は、この演目で3本目(台本としては5本目)だけれど、出演の俳優さんたちも同様に何本もかけもっている方が多い。 今日の短編に出演している小泉真希さん、河合杏奈さん、はなたろうさんとは「時はおもちゃ箱に詰めこんで」で、及川陽葉さんとは「月、白き水晶の夜」でもご一緒している。彼らは他の作品にも出演しているので、僕以上に同時進行で稽古が進んでいる感覚は強いだろうと思う。 今回、音響の青木タクヘイさんのところの柳川しおりさんが全作品のオペレーターをするのだけれど、7演目、9作品のオペレーションをするのは、まさに「演劇トライアスロン」ですよと話したところだった。 僕もこんなところでぜーはーしていてはいけない。 終了後、演出助手でついてくれている、劇団劇作家の黒川陽子さん、有吉朝子さん、舞台部の三浦実夫さんと打ち合わせ。 黒川さんは短編「どっきり地獄」、有吉さんは「月、白き水晶の夜」、三浦さんは「金の卵1960」の作者(三浦さんはG.comの「金の卵1970」の作者でもある)。 本業は劇作家のみなさんに、小道具や衣装の相談とお願いをあれこれする。 劇団劇作家のみなさんは、他にも代表の篠原久美子さんを初めとして、毎回の稽古場に来て、スタッフとしての仕事をいろいろしてくれている。 小劇団は、作家、演出家、俳優がいるもので、こういった中間のポジションの仕事をしてくれる人が大勢いるというのは、実はめずらしいのではないかと思う。 作家、稽古場では、さらっとスタッフになっているというのが、何とも言えず、潔く、いいなあと思える。 そして、とっても大助かりでありがたい。 短編の連続上演は、三本の全く違うテイストの違う戯曲を6人の俳優が続けて演じる。 その続き方、もとい続け方をあれこれ考える。 読んでもらった印象は、「立ち稽古してみなきゃわからないなあ」というもの。 リーディングで立ち稽古というのもなんだか不思議なかんじだが、次回の立ち稽古がとても楽しみになった、今日の初稽古だった。
9月24日(木) 朝起きたら熱っぽくて、ふらふらする。 熱を計ったら38度を超えていて、びっくり。 朝一番で病院へ。 すぐにインフルエンザの検査をされて、ちょっとドキドキしていたのだけれど、結果は陰性。 ただの風邪でしょうとのこと。 喉が少し腫れていると言われたのだけれど、自覚症状はなし。 先週の本番、今週の稽古と声を出し続けているからだと思う。 舞台の本番が終わると前はよく熱を出してダウンしていたものだけれど、このところ舞台が続いていたのでダウンするひまがなくここまで来たのが、ついに折れたのかもしれない。 というか、一気に始まった6本の台本を前にしての知恵熱じゃないかと、これが実は正解じゃないかと思う。 まつながさんに連絡をして今日の稽古をお休みさせてもらう。 今日は僕を含めてキャスト全員が勢揃いする日だったかもしれないとのこと。 申し訳ない。 とりあえず横になって、いつもより長い時間眠ってみる。
2009年09月23日(水) |
二つの稽古と公演案内 |
9月23日(水) 午後、劇読みの稽古、有吉朝子「月、白き水晶の夜」の稽古初日。 今日は読み合わせ。 劇中に登場する英語のセリフを福井裕子さんが読んだとたん、びっくりする。 フランスの女優、サラ・ベルナールがレストランのメニューを読んだだけで、観客を感動させたというエピソードを聞いたことがあるが、まさにそんなかんじ。 聞こえてくるのは、英語の詩なのだけれど、なんだろう、意味とかそういうことじゃなくて、音の響きに感動してしまう。 ト書きを読む、斎藤真さんの声もすばらしい。こちらもまた響きが心に直に伝わってくるよう。 リーディングで声の力を思い知った、そんな稽古。 篠原さん、相馬くんと駅前まで一緒に歩いてもらって、その道すがら富士見丘小学校の演劇授業の打ち合わせ。立ち話でばたばたと。 その後、僕は、昨日に続いて「父産」の稽古場へ。 昨日に続いて、体を「父産」に向けて調整している、そんな気分になりながら。
劇読みの公演案内をまとめて載せておきますね。
◇劇団劇作家「劇読み!vol.3」◇
日程:2009年10月7日(水)〜10月12日(月・祝) タイムテーブル等はこちらをご覧下さい。
会場:TACCS1179 東京都新宿区上落合1-17-9 西武新宿線下落合駅北口、南口から共に徒歩2分 地図
チケット:各ステージ券(自由席)/2,000円 シンポジウム/1,000円 全日程フリーパス/5,000円
劇団劇作家の本公演「劇読み!」の第3弾! 8人の劇作家の戯曲をフェスティバル形式でお届けします。
【公演ラインナップ】
●「この花折るな」作:守 夏代 演出:藤井ごう ●「痩せてたまるか!」作:相馬杜宇 演出:山本健翔 ●「時はおもちゃ箱に詰めこんで」作:錦織伊代 演出:関根信一 ●「ざっとむがし、あっとこさ」作:佐藤喜久子 演出:山本健翔 ●「金の卵1960 〜あすなろう〜」作:三浦実夫 演出:藤井ごう ●「月、白き水晶の夜」作:有吉朝子 演出:関根信一 ●「短編連続上演」演出:関根信一 ・「ムラサメ」作:坂本 鈴 ・「どっきり地獄」作:黒川陽子 ・「幕切れ」作:相馬杜宇
【スタッフ】 総合演出:篠原久美子 演出:関根信一 藤井ごう 山本健翔
【キャスト】 稲葉智美 枝元 萌(ハイリンド) 遠藤純一(劇団昴) 遠藤 好(青年座) 及川陽葉(劇団俳協) 鴨川てんし(燐光群) 河合杏奈 河嶋政規(プロペラ☆サーカス) 菊地一浩 岸槌隆至(文学座) 日下部そう(有限会社プリッシマ)小泉真希(劇団俳協) 斉藤 真(劇団俳小) 阪上善樹(サムライプロモーション) 清水 愛(劇団俳協) 志村彩佳(WHOOPEE) 鈴木弘明 高橋義和 手塚美南子(天然工房) 西田夏奈子 西山水木(La Compagnie An) はなたろう 原 陽三(青年劇場) 日榮春華(劇団俳協) 福井裕子(演劇集団 円) 藤 あゆみ 三原玄也(オフィスクロキ) 矢原将宗(THEATRE MOMENTS) 山本悠生(劇団俳協)
関根は、以下の3演目の演出をしています。
◎10月8日(木)19:00〜、10月12日(月・祝)17:00〜 「時はおもちゃ箱に詰めこんで」作:錦織伊代
二十歳の誕生日、菜月の部屋に現れたのは幼馴染みの桃と、奇妙な集団「迷子達」。授業という名の「不思議な遊び」を繰り広げる迷子達との共同生活が、菜月の蓋を開けていく……。 演出:関根信一(劇団フライングステージ) 出演:小泉真希 清水 愛 河合杏奈 はなたろう 山本悠生 西田夏奈子 手塚美南子 日榮春華 志村彩佳
◎10月10日(土)19:00〜、10月12日(月・祝)11:00〜 「月、白き水晶の夜」作:有吉朝子
頃は大正、ある病院に一人の女性が閉じ込められていた。そこへ、白い狐に導かれ現れた恋敵の息子。オペラ「白狐」を真ん中に、年月を経てなお鮮やかにとどまる愛と、刹那の思いを描く。 演出:関根信一 出演:福井裕子 遠藤 好 及川陽葉 菊地一浩 矢原将宗 日下部そう 斎藤 真
◎10月9日(金)19:00〜、10月11日(日)13:30〜
「短編連続上演」 ・「どっきり地獄」作:黒川陽子 漫才コンビを襲った解散危機は怒涛のミザナビームの幕開け! ・「幕切れ」作:相馬杜宇 離婚届を出しに行く車内。赤子、カルピス、ポテトチップス。 ・「ムラサメ」作:坂本鈴 血を浴びる程切れ味を増す妖刀のように、女を抱く程モテる男。
演出:関根信一 出演:及川陽葉 河合杏奈 小泉真希 高橋義和 はなたろう 三原玄也
9日(金)19:00の回、終演後、ポストパフォーマンストークに 関根信一が出演します。詳細はこちらをご覧下さい。
ご予約お問い合わせは、関根までお願いします。
2009年09月22日(火) |
帰ってきた稽古場とカレーライス |
9月22日(火) 午後から劇団印象「父産」の稽古。 昨日の演出家から今日は役者に切り替え。 うまくいっているのかどうかよくわからないのだけれど、とにかくセリフをしゃべり、動き回り、父親役をがしがし演じてみる。 力づくというか、力まかせに。 あっという間に汗だくになってしまい、はずかしい。 夕方、まつながさんがケータリングでカレーをつくってくれる。 あたたかいご飯はうれしい。座組のみんなで食卓を囲むのも。 後半の稽古でまた汗をかいて、今日はおしまい。 8月のG.com、この間の名作劇場と二つ続いた女役でおさえていてものを、全部自由にしたような気分の稽古。さぐりながらも、やりたいほうだいをさせてもらった。 稽古場で時々感じる、広い公園の広場で、犬が散歩のつなを外されて、さあ、好きに遊んでいいよと言われたような気持ち。 夕方にきっちり食事をさせてもらったのだけれど、稽古の後でみんなで食事に行く。 楽しくおしゃべりをしながら、今日は早めに失礼する。
2009年09月21日(月) |
音響打ち合わせとヒゲと眉の伸ばし始め |
9月21日(月) 劇団劇作家の「劇読み」の稽古。 すでに他の演目は先週から稽古が始まっているのだけれど、僕が担当している3演目5作品は、今週から。 今日は、1本目の「時はおもちゃ箱につめこんで」(作、錦織伊代)。 まずは自己紹介と簡単なシアターゲーム。 それから、ト書きと台本の改訂部分の確認をして、読み始めた。 ほんとうに初めての読み合わせ。 これから計3回ある稽古のうちの一回目。 初めましてのみなさんに、今年もよろしくのみなさん、一緒に文字通り、戯曲を「立ち上げて」いく。 終了後、音響の青木タクヘイさんと音響の打ち合わせ。 きっちり読み込んでくださって、細かくていねいに曲を入れる位置を提案してくれる。 おお、なるほどと、演出の僕がおもしろがりながら、それでいきましょうとお願いをする。 ばたばたと終電で帰宅。 昨日終わった芝居が、まだどこかに残っているようで、ふと加賀川さんのセリフが口にのぼってきてしまうのを、もうおしまいと途中で止める。 剃った眉とヒゲも今日から伸ばし放題にしてみる。 眉はまだ影も形もないので、きっちり描いておいた。
9月20日(日) 千穐楽の舞台。九回裏。 千穐楽だから特別な何かということは何もなく、ただ、いつもと同じで毎回違う、今を生きるそんな時間を舞台上で過ごす。 終演後、劇団劇作家の篠原さん、佐藤さんが楽屋に来てくれる。昨日に続いてのIさんにも御挨拶。 ばらしのお手伝いはほとんどできないまま、メークを落とし、着物を片付け、お世話になったかつらの手入れをして返却の準備をする。 川和先生の奥様から加賀川役への贈り物をいただいた。 松竹梅の金地黒骨の舞扇。自作の短歌が添えられている。 「人の世の 習いに添った面つけ さらりと生きる 加賀川かなしや」 実は、僕は加賀川さんを演じながら、哀しい人だなと思ったことはなく、劇中で「運がいい方」自分で言っているくらいなので、そうなんだなあとばかり思っていた。 でも、言われてみれば、遊女に売られて、抱一に落籍されても、男を頼りにして生きるしか道はないわけで、そういう意味では、ほんとうに哀しい人だなあと、千穐楽の舞台の後で気がつかされた。 今度やるときは(いつか、あるかどうかもわからないけど)そんなことも考えて演じてみたいと思う。 打ち上げは、本来は休業日の「青葉」さんを貸し切りで、川和先生も一緒ににぎやかに盛り上がった。 二次会に流れるみなさんと別れ、一次会で失礼させてもらう。 気持ちよく舞台を終えることができて、本当にうれしく、ありがたい。 ご一緒させていただいた、キャスト、スタッフのみなさん、そしてご来場いただいたみなさん、どうもありがとうございました!
9月19日(土) 今日も二回公演。 昨日の夜から、着付けを共演の吉田幸矢さんと山口晶代さんのお世話になっている。 写真は着付けた後の後ろ姿。初日と帯が違うのは、衣装の鳥井さんと相談して、もう少し派手にしてみたため。 終演後、三枝嬢、目劇者のみどりさんたちが楽屋にきてくれる。 三枝嬢からは、肌にやさしい「ウォータークレンジング」のボトルと、オーガニックなコットンの差し入れ。ブログを読んで心配してくれたそう。感謝。 みどりさんたちからもうれしい差し入れ。にぎやかにしばしおしゃべり。ありがとうございました。 ソワレの前に、ふと楽屋の化粧前で、松尾智昭さん、根岸光太郎さんと三人になる時間があって、三人並んだ化粧前で、芝居の話をいろいろとする。 川和先生から聞いた、「城」の初演で、ヒロインの雪絵を演じていたのは新派の女形、喜多村禄郎さんだったということ。 「根岸の一夜」を川和さんに渡されて読んだ松尾さんが、加賀川役は「女形じゃないですか」と川和さんに伝えたという話(それで、僕に出演の依頼があったんじゃないだろうか)。 最初に読んだときは、ほんとになんだか分からなかった「根岸の一夜」を、演じているうち、演じているのを見て聞いているうちに、だんだんわかってきたという不思議について。 などなど、今だから言えるというようなことをいろいろ話し、うかがった。 ドラマチックな盛り上がりがあるようなないような、不思議な台本「根岸の一夜」をやりながら、演じていてとても楽しいのは、いいセリフがいっぱいあるせいかもしれないと思う。 前半の、抱一上人と二人で、間に養子の八十丸(実生ちゃん)をはさんでの長い場面、松尾さんも僕も長セリフがずっと続くのだけれど、これがとってもいい時間なのだ。 自分がどうやろうとか、どういうふうにこの場にいようかというようなことはさておいて(座り位置にはとても気をつけるのだけれど)、この場面の抱一上人の話がほんとにおもしろい。 酒井家との関わりを洒落のめして語るセリフ、自分は絵描きしては上々の人生を歩んできたという話に加賀川がこんな話をする。
加賀川「思えば、私(わちき)も運のいい方ざますね。」 抱一「あはは、まずそうだ。その上にそんな子は出来て行く末の便りはある。ただこれからは命だいじに永らえて移ってゆく世をながめるのだ。『楽しみは命のほかはなかりけり、長らえて見る有明の月』年をとっての楽しみは、寂しくともただ命だ」。」 加賀川「だが上人さん、私は時々、思いいす。人間というものも、これが一生ならばつまらぬもの。しあわせというものも、大抵こんなことならば、いっそ生まれぬほうがまし。そう思いいすと、ふっと嫌な気持ちになりいして気が滅入り、何ともいえぬ気がしいす。」 抱一「ふむ、其方はそんな気が時々起こるか」 加賀川「あい」
僕はこの場面の加賀川のセリフが、樋口一葉の「にごりえ」のおりきの言葉のように思えてしまう。 「にごりえ」には「これが一生か、一生がこれか」というおりきのセリフがある。 そんな加賀川に抱一上人は、「物はつきつめて思うものではない。(中略)物はぢっと見つめたり、思いつめたりするものではない。ただ軽く見ておくものだ」と話す。 それを聞いていると、慰められるような、許されたような、とても静かな気持ちになれるのだ。 どう演じるかということもとてもおもしろい場面なのだけれど、このセリフのやりとりの中に身を置いていること、この言葉を受け止めている時間が、なんだかとてもしあわせに感じられる。大好きな場面だ。 終演後、小松川高校演劇部の後輩の西山くん、フライングステージのお客様のIさん、劇団印象のまつながさんが顔を出してくれる。 西山くんとはほんとにひさしぶり。この土日は、小松川高校の文化祭なのだけれど、僕は名作劇場があるので、顔を出せない。みんなによろしくとお願いする。 Iさんは、とても楽しんでくれて、明日、お友達と一緒にまた来て下さるとのこと。とてもありがたい。 まつながさんから、「父産」の稽古のことをいろいろうかがう。フライヤーと台本をいただいた。来週末からは、また稽古が始まる。 今日もスタッフルームでの缶ビール飲みに参加。 そういえば、ソワレの開演前、誰かが「八回裏」と言っていた。全部で九回の公演、二本立ての二本目だから、たしかにそうなる。「まだ逆転のチャンスはある」というのに「え、負けてるの?」などと軽口を言いながら、開演前の板付きの準備をした。 明日はいよいよ「九回裏」の公演。これでおしまいだ。勝ち負けはどうでもいいので、いい試合をしたいと思う。
2009年09月18日(金) |
缶ビールと眉なしの帰宅 |
9月18日(金) 二回公演の日。 マチネ。本番中、セリフを言いながら口の中を噛んでしまう。 「八十丸さん、八十丸さん」と呼ぶところの二度目の「さん」の「ん」で右の奥歯で頬の内側の肉を思い切り。 痛いも痛かったが、びっくりした。で、その後の「上人さんがお呼びだよ」もなんだか変な音になってしまう。 いつもとちょっと違う音、少し高めの音を出そうとして失敗したんだと思う。それにしても「ん」を言おうとして噛むっていうのも、何だかありえないことのような気がする。 終演後、劇団劇作家の有吉さん、石原さん、劇団印象の加藤くん、桜澤凛さんが楽屋に来てくれる。 加藤くんは、印象の「父産」で僕の息子を演じる予定。 今日は「息子として」見に来てくれた。着替え途中の「おっ母さん」なまんまでごあいさつ。 桜澤さんは、以前、名作劇場の「遺族達」に出演していたんだった。ひさしぶりなおしゃべり。 ソワレ。 このところ、毎回思うことなのだけれど、オープニングの酒井家御用人の某(「なにがし」、そういう役名なのです)、芸者のおきわさん、おとらさん、幇間の鼓八さんとのやりとりが、とても楽しい。 冒頭の加賀川さんは、こてこての花魁言葉で某さんを煙に巻いてるので(僕は「花魁ごっこ」のつもりで演じてます)、やりとりよりは、どうしゃべるかということを意識していたのだけれど、初日が開いてから、舞台でのやりとりがどんどんおもしろくなってきた。 某の杉浦くんが笑うのと一緒に、声を上げて笑ってみたり、幇間の初月くん、芸者の五弓さん、吉田さんを、三人まとめておしゃべりしているのではなく、一人一人に向けて話しかけるようにしてみたり、そんなことがいろいろできるようになって、ものすごくラクに舞台上にいられるようになってきた。稽古場でなんでできなかったんだろうと思ってしまうが、まずは、今、そんな時間を楽しめていることに感謝。 終演後、母校小松川高校の演劇部の後輩の鈴木さんたち、それに相楽満子さんが楽屋に顔を出してくれる。また、着替えとメーク落としの途中でごあいさつ。 着物を片付け、メークを落として、スタッフルームでの缶ビールでの乾杯に参加。 スタッフ、若手キャストのみなさんと。 22時撤収なので、ばたばたとあわただしく。 終演後すぐのビールは、このタイミングならではおいしさ。 帰り、両国の駅で、メークを落としたままで眉を描いていないことに気がつく。 うわ、駅のトイレで描こうか?と思ったのだけれど、毎朝、眉を描かないまんまで劇場入りしていることに気がつく。 なんで、帰りにだけ、描かなきゃという気になったんだろう? いや、なんで毎朝、家を出るときに描かなきゃという気持ちにならないんだろう? 乗り換えの亀戸駅のトイレでさくっと描いて、駅近くのドンキホーテでキャットフードを買って帰宅する。 写真は、今回お世話になっている地味顔化力ばつぐんのかつらです。
2009年09月17日(木) |
マチネのみの日とパック |
9月17日(木) 今日はマチネのみの日。 開演前の仕事の順番が大体決まってくる。 まず、着物の下着をつける。膝のサポーターをつけて、足袋をはく。 それから、ヒゲと眉を剃って、化粧水。羽二重を付けて、ファンデーションを塗って、メーク。 下げ髪の地味顔化力が強いので、今回和物なのだけれど、つけまつげをつけている。 メークは、それでもドラァグクィーンや女装のときよりは、かなりおとなしめ。 それから着付け。 「城」が開演して30分後くらいに、衣装の鳥井照子さんと共演の吉田幸矢さんが、二人がかりで着付けてくれる。 吉田さんは、稽古もほとんどずっと着物で来て、そのまま稽古をしてたくらい着物を着慣れた方だ。 そして、ものすごくきちんと着付けてくれる。帯を締めるときの力の強いことと言ったら。 細い身体のどこにそんな力があるんだろうというくらい、きっちり締めてくれる。感謝。 着付けが終わると、かつらをかける。 今回、仕掛けがあるので、生え際を整えた後、下げ髪の部分の仕掛けを共演の初月佑維さんが付けてくれる。吉田さんもそうだけれど、同じ、幕開きの板付きにいる役を演じているのに、出番の直前に、とてもありがたい。 ぐーんと後ろに重みがかかるのを感じると、これで出の準備が完了。 懐に入れる小道具の確認をする頃には、「城」が終演している。 今日は、マチネ一回きりの公演。 1時間ちょっとの舞台なので、どう考えても舞台上より楽屋で準備をしている時間の方が長いのだけれど、今日はいつも以上に舞台上でラクに息をしていられたような気がする。 終演後、見に来てくださった東工大の谷岡さんと打ち合わせ。 11月に講演というか、一人芝居をするのだけれど、そのタイトルやら内容やらをあれこれ話し合う。 一人で考えているときよりも、二人で話している方が、いろいろなアイデアが浮かんで、しかもそれがみんな具体的に立ち上がってくるのがおもしろい。 いいものになりそうな予感。「根岸の一夜」が終わって、劇団劇作家の劇読みの演出、それから劇団印象「父産」の次の舞台。 まだまだ時間があるので、いろいろ工夫して冒険してみようと思う。 夜、早めに帰宅できたので、洗濯。足袋や肌着、サポーターやらをまとめて。夜洗った洗濯物が翌朝には乾いているのが大助かり。これが冬だったら、乾燥機のお世話にならないといけないところだ。 メールのやりとりをいろいろしながら、ひさしぶりにパックをしてみる。 舞台メークで肌が荒れてくるように思えるのは、年齢の問題もあるだろうけれど、化粧を大急ぎで落とす時のクレンジングシートのせいなのだと友達に言われた。 クリームで油分を補給しながら落とすのと、石油からできた(たぶん)何かでえいっと落とすのでは、肌にかかる負担も全然違うんだろう。 で、パック。眉がないせいで、とっても簡単! もう少しで、おでこからあごまでが一枚につながってはがれるところ。 ちょっとすっきりして、お風呂に入り、たまった日記のアップロードをのんびり始めた。
9月16日(水) 2日目。 小屋入りしてすぐ、有志(若手キャスト)のしきりでラジオ体操。 何年ぶりだろうと思いながら、一緒にやってみる。 かんたんにできたはずの動きが、え?というくらい大変なことになっている。 びっくり。 毎日、これをやってるだけで、結構な体調キープになるかもしれない。 まんべんなくあちこち伸ばされ、ウォームアップをした気分。 マチネ、ソワレの二回公演。 マチネにマミィともっちゃんが来てくれる。もっちゃんに「おっかさん!」何度もと言われる。しかも、笑いながら。そんなに笑うかと思いながら、たしかにそのとおりと、納得。 ソワレ。 舞台はライブだと実感することいろいろ。 終演後、目劇者のオジーさん、東屋さん、それにフライングステージの水月アキラが来てくれる。 かつらを取って、メークを落とそうとしていたら、先に帰り支度を終えた共演の五弓さんに、「あ、メーク足したでしょ?」と言われる。 たしかに、今日の本番は、ゲネの頃よりは濃いめのメークだけど、五弓さんは「芝居を終えて、試しにまた足してみた」んじゃないかと思ったんだそう。 「そんなことしません!」と言いながらも、下げ髪のかつらをかけているときよりも、かつらをとったままの素頭の方が、メークが引き立って見えるのはたしか。 五弓さんも実生ちゃんもそう思うと言っていた。 下げ髪のかつらの力は、地味顔にしてしまう力はすごいんだなあと実感。 早めに帰宅したので、このところすれ違っている猫たちと顔を合わす。 最初に来た黒いのがなかなか帰らずにベランダにいるなあと思ったら、しましまがやってきて、なにやら挨拶をしているよう。 黒いのが帰って行き、今度はしましまがやってきた。 今日は缶詰を切らしてしまったので、カリカリのみ。 それが気に入らないのか、しばらく食べようとしないでじっと座っている。 写真はその様子。 見えにくいのだけれど、べろがちょっとはみ出てる。 20分ほどそのままでいた後、あきらめてかりかりを食べて、帰っていった。 夜中、歌舞伎のビデオが見たくなって野田秀樹の「野田版、研辰の討たれ」を見る。 着物をしっかり着ていても、そんなの関係ない動きが新鮮。 そうだよ、着られてるうちはダメなんだよと気がつき、明日の目標を見つけたような気持ちになる。
9月15日(火) 午後からゲネプロ、夜、本番。 屋台の揺れはスタッフのみなさんのおかげで、ずいぶん軽減。ほっとしながら、何度も歩いて、確認をする。 ゲネは、下げ髪のさばきにやや失敗。余計に顔にかかってしまい、途中から気になりだし、集中力がとぎれがちに。 本番前にかつらの手入れをきちんとする。その後、しっかり着付けをしていただいて、本番に臨む。 鳥井さんのお知り合いの踊りの先生が、わざわざ来てくださった。 大柄、太めな僕の身体にきっちりと帯がフィットしてる。とてもありがたい。 写真は、着付けていただいた後ろ姿を、化粧前をとなりにさせてもらっている根岸さんに撮っていただいたもの。 初日の公演は、無事終了。 久しぶりな丁田政次郎くんが楽屋に来てくれる。 何年ぶりだろうという話になり、山崎哲史くんの書いた「夜曲」に彼と桜澤凛さんが出演したのを演出して以来かもしれないと話した。 彼は今、作家として活躍している。こうして久しぶりに会えたのがとてもうれしい。 初日乾杯は、名作チーム行きつけの中華「青葉」にて。松尾さんと今回、初めてご一緒する。 ごちそうさまでした。
9月14日(月) 劇場入りと仕込みの日。 昨日の眉つぶしを使ってのメークがうまくいかなかったので、今日、思い切って眉を剃った。 生まれて初めての経験。 メークが簡単にはなったのだけれど、どうも眉の下に「筋肉」がしっかりあるらしく、またそり跡もやや青く残っていて、ファンデーションを塗っても完全な眉なしにはならない。うーん。 「城」チームの後、「根岸の一夜」の場当たり。 通しますとのことだったのが、ほんとに場当たりをさくさくと済ませる。 歩くたびに二重の屋台が揺れてしまうのが、ちょっと心配。 稽古場での稽古と同じ歩数で歩こうとすると、屋台が大きく揺れてしまう。 着物の芝居なので、歩数はとても重要だ。 右から出るか左から出るか、工夫して練習もしたプランがあらかた台無しになる(笑)。 終了後、両国駅前のはなの舞で「根岸の一夜」「城」チーム合同の飲み会。 城チームの田口弘さんとお話する。 田口さんが主演していたテアトロ海の公演「追伸・猫は死にました」の話をする。 高校生の頃に見た、とても大事な芝居。 こんなふうにご一緒できるなんて、なんてうれしいんだろう。 衣装の鳥井さんとも初めての飲み。楽しい時間を過ごした。
2009年09月13日(日) |
稽古場ラストと自然体の女形 |
稽古場ラスト。明日は劇場入り。 かつらをつけて、メークをして通し稽古。 いろいろ発見。 メークしやすいように眉をずいぶん整えて来たのだけれど(とても薄くつぶしやすくした)、眉つぶしがいまいちうまく効かず、川和さんからダメだしがある。 もう剃るしかないか・・・ 長い髪のかつらも、まだ全然扱いきれていない。 ラストの処理もどうなることやら。 ともあれ、明日は劇場入り。 帰り「根岸の一夜」のメンバーとさくら水産で飲み会。 わいわいと楽しく。 旬のサンマをおいしくいただく。 夜中、新派のビデオを見る。 花柳章太郎主演の「遊女夕霧」「婦系図 めの惣」、そして、「太夫さん」。 「太夫さん」のビデオは前回見て巻き戻した時にテープが切れた(というか巻き終わりがはがれてしまった)のを修理して。 VHSテープのこういう修理は久しぶり。やっぱりうまくいかず、もういらないと思ったビデオを一本余計に分解して参考にして成功。 歌舞伎の女形とは違う、ずっと自然体な新派の女形さんたちの芝居がとてもおもしろい。 先代の英太郎さん、瀬戸英一さん、何もしてないんじゃないの?というようなほんとに自然なおばさんになっている。 そこにはもちろん芸の力があるんだろうけど、その何もしてないかんじが今の僕にはとても近しく思える。 また、花柳さんの声の使い方、女っぽい仕草として多用する足を後ろに跳ね上げる動作も、いちいち具体的な参考になっておもしろい。 様式よりは自然なリアクション、そしてやや余計じゃないかと思えるくらいの仕草の多さが、ちっとも不自然じゃない。 「根岸の一夜」の加賀川さんでもっとできることはないだろうかといろいろ考える。
9月12日(土) 劇団員の荒俊樹くんのお墓参りに行く。 今年の4月に一度行って以来、二度目になる。 最寄りの駅で待ち合わせて、総勢12名で墓苑までの道を歩いた。 荒くんが亡くなってもう丸二年が過ぎた。実は彼の死を知ったのは、ずっと最近になってからだ。 gaku-GAY-kaiへの出演と本公演の制作の手伝いをいつもお願いしていた荒くん。 一番最初は、ぷれいす東京のイベントでの二人芝居で共演した。彼のアイデアで僕が書いた台本。 止まってしまったエレベーターの中の二人のゲイ。この芝居は、後にフライングステージの本公演「プレゼント」の中の場面になってる。 だから、ずっと連絡が取れなくても、頼りがないのは元気なしるしと思っていた。 そういう距離の友達づきあい、劇団員どうしのつきあいだった。 彼の友人から亡くなったという連絡をもらい(それも何ヶ月か経ってから)、それでも、なかなかご家族と連絡が取れず、こうした別れ方もしかたないのだと、受け入れるしかないと思っていたところ、フライングステージのHP経由で彼の大学時代のお友達から連絡をいただき、ご家族とお話することができたのだった。 ずいぶん長いつきあいのに、なんて友達甲斐のない友達なんだろうと、かなしく申し訳ない。 その気持ちは今も変わらない。 今回のお墓参りは、僕たち彼の友人ばかりで、なんだかにぎやかに。 駅から墓苑までの道を大勢で歩くのは、なんだか遠くの稽古場へ向かう時のようだなあと思った。 顔ぶれには、久しぶりに会う面々が何人も。 駅で集合したときには、誰かが「これで芝居ができるね」と言ったくらい、なんだかほんとに芝居のために集まったよう。 薔薇がたくさん植えられたきれいな墓苑。 なぜか一列にならんで一人ずつ手を合わせた。 帰り、駅近くのファミレスでみんなで食事をした。 こちらもまた、バカな話に笑いながら楽しい時間を過ごす。 もう会えない彼のことを思いながら、みんなが笑っていた。 いい時間をもらったなあと、そのことを荒くんに感謝したいような気持ちになった。 また今度来ようと思う。 写真は、最初の二人芝居の時に劇中で使った熊のぬいぐるみ。 そのまんま「プレゼント」でも使った、荒くんからのプレゼント。
夜は、G.comの精算会@下北沢に顔を出す。 その前に、「根岸の一夜」のためにメーク用品の買い物。いつもの本多劇場のビルのメーク用品屋さんで、あれこれ相談しながら。 精算会では、公演のビデオをみんなで見た。 いつもは、苦手な記録ビデオ鑑賞なのだけれど、今回、一度も見れていない場面がいくつもあるのと、自分がどんなことをしているか、どんなふうみ見えるのかとても気になるので、じっくり見せてもらった。 楽しい時間を過ごした。感謝。 明日は「根岸の一夜」の最後の稽古。よし、がんばろう。
9月11日(金) 「根岸の一夜」稽古。 今日からかつらが来るということで、羽二重を用意して、いつもより早めに稽古場入り。 僕が演じる加賀川さんの頭は、戯曲の指定では「櫛巻き」なのだけれど、今回は、下げ髪。 出家するために髪を切る場面もあるので、その仕掛けも。 実は羽二重を自分でつけるのははじめてで、汗をかいてしまう。 まあ、こんなもんでしょと思い切って、なんとかおさまる。 かつらをかけて、仕掛けの部分を幇間役で共演している初月さんにセットしてもらう。 とてもありがたい。 稽古は今日も通し稽古。 衣装はなしで、かつらをかけて。 後ろに下げ髪の重さがかかるので、立ったり座ったりするときの重心が変わった。 ラクに立てたはずが思わぬ苦労をしたり、あちこちで確認をしながら。 二度目の通しはラスト近くでタイムオーバー。最後の断髪のシーンにはたどりつけずに終了。 次の稽古は日曜日、メークもありにさせてもらおうと思う。 演出の川和先生に「眉はつぶした方がいいですね」と言われる。 たしかにそのとおり。つぶしてどう描くかか、いろいろやってみようと思いますと伝えたところ、「描かなくてもいいかもしれません」と言われる。 おお、眉なしか・・・。どうなることやら、日曜日にいろいろ試してみようと思う。
9月10日(木) 来週の火曜が初日なのだけれど、二本立ての公演なので、今日は「城」の稽古。 ということで、今日は稽古がない日。 ミクシィのコミュ「目劇者」のイベントで、東京湾納涼船クルーズに参加。 竹芝から遊覧船に乗って2時間の飲み放題クルージング。浴衣着用だと1500円に割引きということで、毎日着物を着ているこの夏のしめくくりとして、浴衣で出かける。 東京出身なもののこの手の東京湾クルーズは初体験。 「夏のせいかしら」で共演した織江ちゃん、コミュ管理人のオジーさん、東屋さんの他、今日が初めましてのみなさんとにぎやかに、おしゃべり&飲み放題。 海の上から見る東京の夜景がとてもきれいで印象的。高いビルの上からでもないと見ることができないきらきらした風景が、海の上からは幾重にも重なって見える。 レインボーブリッジをくぐり、羽田に発着する飛行機のお腹を見上げて、気持ちのいい2時間だった。 トップデッキにずっといた僕たちですが、竹芝に帰り着いて、階段を下りて行ったところ、知らない背の高い学生風のお兄さんに突然、頬を両手ではさまれ、何か言われてびっくり(何を言われたのかはおぼえてない、そのくらいびっくりした)! 知り合いと間違えたのか、それにしても、あの大きな手の感触といい、僕がびっくりしたほどには向こうは驚いていないようで、酔っぱらってたんだろうとは思うものの、不思議な経験。 帰りは地下鉄で。浴衣は着替えないまでも、せめて下駄をサンダルに履き替えようかと思ったものの、カランカランと音をさせるのが楽しく、そのまま大門の駅へ。 と都営浅草線のホームで見事にすべって転倒(笑)。 やっぱり下駄は、石造りの道で履くモノではないと反省。 帰宅して、やっぱりパンパンになっていたふくらはぎと(下駄履きのせい)、転んだときに打ったらしい右手をあたためるために、いつもより長めの入浴。
2009年09月09日(水) |
小返し稽古と公演のご案内 |
宗興役の根岸さんがお休みなので、小返しの稽古。 冒頭から宗興の登場までを2回繰り返し、その後、成駒屋の手代が登場する場面、そして、遊女黛の登場からラストまでを。 休憩の後、冒頭からのラストまでの流れをもう一度。 立ち稽古になっての初めての小返し稽古。 幕開きに登場する酒井家用人役の杉浦くんも今日から復帰。風邪がなおってよかった! 差し入れの「あんこおかき」(両国名物)をいただく。 今日は川和先生の奥様も稽古場に来てくださる。 ほんとに久しぶりにお話できてとてもうれしい。 声が色っぽいとほめていただいた。 帰りは、雨が降り出した。今朝は10%だったのに・・・ 稽古場の稽古もあと2回。 来週の月曜には劇場入り、火曜は初日だ。 みなさまのご来場をお待ちしています。
日本近・現代秀作短編劇100本シリーズ 第29回シアターX 名作劇場「城」「根岸の一夜」
日程:2009年9月15日(火)〜20日(日) 15日(火)19:00 16日(水)14:00 19:00 17日(木)14:00 18日(金)14:00 19:00 19日(土)14:00 19:00 20日(日)14:00 ※開場時間は開演の30分前
会場:両国 シアターΧ 作:島村民蔵「城」 池田大伍「根岸の一夜」 演出:川和孝 出演:松尾智昭 根岸光太郎 田口弘 関根信一 藤本 至 鈴木宏昌 藤田隆之 初月佑維 島影昌幸 村瀬知之 杉浦 直 吉田幸矢 関塚まいこ 山口晶代 五弓陽子 奈良井志摩 小笠原和子 安井実生
チケット:全席自由 前売 3,000円 当日 3,500円 学生 2,000円 シニア(65歳以上)2,800円
関根は「根岸の一夜」に出演しています。 「名月八幡祭」「西郷と豚姫」等の歌舞伎作品で有名な池田大伍の短編劇。 江戸の文人画家、酒井抱一が悠々自適の暮らしをしている根岸の草庵を舞台にした一夜の出来事。 関根は、抱一の妾、花魁あがりの加賀川という女を演じています。
ご予約お問い合わせはフライングステージ 関根までどうぞ。(割引きチケットのご用意があります)
ご来場をお待ちしていますね!
2009年09月08日(火) |
乙川優三郎「麗しき花実」と妙華尼さん |
稽古は休み。 図書館に行って、朝日新聞に連載中の乙川優三郎「麗しき花実」を読む。 「根岸の一夜」の主人公、酒井抱一のに僕が演じる加賀川さんも登場しているらしいと聞いて、縮刷版を手に取った。 2月からの連載なので、けっこうな量、それでも、今度、いつ来れるかわからないので、一気に読んだ。 これまであまり意識していなかったが、連載小説の欄というのは決まったページにあるのではなく、日によっていろいろなところにある。 とてもいい雰囲気の挿絵を目当てにページをめくった。 7月までの縮刷版と8月から昨日までの分の新聞から、読めるだけの分は全部読んで、閉館時間になった。 加賀川さんは、出家した後の剃髪に頭巾姿、名前も妙華尼となっている(これは「根岸の一夜」も同じ)。 吉原に通う抱一について語る場面、故郷へ帰る女主人公を送る場面での言葉、いいセリフがいっぱいだ。 ああ、こういうこと言うんだろうなというのが、とてもしっくり腑に落ちた。 この人の具体的な資料はほんとに少なくて、抱一と一緒に書いた絵と、それと没年がわかるくらい。 なので、こんなふうに小説の中の生きた人物として描かれているのを読めたのがとてもありがたい。 「根岸の一夜」での抱一への加賀川さんの思いが、前より具体的になったように思う。
鳥井さんが来てくださって、衣装の確認。 新しく用意してくれた袖無羽織の裏地、羽裏をもう少し地味なものに変更するとのこと。 今は、紅い襦袢地のいかにも花魁あがりのお妾さんが着ていそうなかんじのもの。 新しい羽裏は童の模様。養子をもらって、うれしさのあまり涙ぐむこの人にはいかにも似つかわしい。 羽織を脱ぐのは、最後の場面のみ裏地が客席からどれだけ見えるかは微妙なところ。 でも、そんな心遣いをしてくれるのがとてもうれしい。 稽古は今日も、2回の通し。 この間やってみて、やっぱりやめましょうということになった髪を切る段取りを元にもどして、それでも、ラストの気持ちの変化を自分なりにきちんとたどってみた。 稽古終了後、稽古場の移動のための撤収。 このところの稽古場ギャラリーΧから、おとなりのコミューンΧの洋室へ移動。 バミリをとって、パーテーションでつくった仮設の着替え部屋、小道具、衣装をかたづける。 部屋の中央に大きな柱のある、いつものギャラリーΧに戻して、今日は解散。
2009年09月06日(日) |
リーディングと通し稽古×2 |
午後、来年一月に客演する「ろばの葉文庫公演『僕らの声の届かない場所』」の顔合わせ&最初の読み合わせ。 まだ稽古入りには間があるのだけれど、改稿にあたって作家の前で一度読んでみようということだそう。 稽古場の最寄り駅で待ち合わせ。 知っている人は、詩森さんとほさかさんだけ。自己紹介は、後ほど改めてということで、稽古場まで十数分の道をほぼだまって歩く。 緊張している自分、人見知りな自分をもてあます。 会場について、軽いアップの後、読んでみる。「僕らの声の届かない場所」作、ほさかよう。 初めましてなみなさんと、初めての台本を読んでいくうちに、どんどん自由になっていく自分に気がつく。 どうやろうかというプランもほぼないまま、やりとりだけをちゃんとしようとだけ考えて、全編のリーディングを終える。 終了後、とてものびのびとした気持ちになる。 もうみんな、初めましての遠い人たちではなくなっている。どこか「仲間」のような感覚になっている。 そんな力を持った戯曲なんだなあと思った。いいかげんな本だったら、そうはいかない。 詩森さんから、好きな画家について話してもらえますかという提案があり、読み合わせをしたキャストがそれぞれの言葉でそれぞれの好きな画家と作品について話した。 これもいい時間だった。 僕は、ミロ、熊谷守一、ギュスターブ・モロー「廃墟にたたずむヘレネ」、上村松園「焔」「花がたみ」、ゴッホ「オリーブの枝」について話す。 帰り道、駅までの長い道のりを、今日初めて会った役者さんと話しながら帰る。 何時間か前に同じ道を無言で歩いていたのが嘘のよう。 演劇ってそういう力があるんだなと思った。 みんなが懇親会に流れる中、「根岸の一夜」の稽古へ向かう。 稽古は、今日も2回の通し稽古。 オープニングの芸者衆、幇間とのやりとりがとても楽しくなった。 2回やって、出てきづらいセリフというのが、確実にあることが判明。 なんでだろう?と原因を考えてみたら、どういう気持ちで言ってるのかが、はっきりしていないのだとわかる。 いろいろ考えるが、すぐに答えは出てこない。 もう少し、迷ってみようと思う。 帰り、昼間の稽古の懇親会に参加できず残念だった気分を、こちらの飲み会に行くことで埋め合わせ。 去年の「襤褸と宝石」以来、ひさしぶりなさくら水産にて。 昼間のリーディングでほぐれてしまった気分のまま、「根岸の一夜」のキャストのみなさんと楽しい時間を過ごした。ごちそうさまでした。
2009年09月05日(土) |
ミーティングと飲み放題 |
月に一度フライングステージのミーティング。 主に、年末のgaku-GAY-kaiの企画と来年のことについて、あれこれ話し合う。 帰り、三軒茶屋駅近くの居酒屋さんの呼び込みで、2000円飲み放題食べ放題の「えん」という店に行く。 ドリンクもフードもバイキング形式。 びっくりしたのは、生ビールのセルフサービスの機械が指定の位置にジョッキを置くと、ジョッキをぐわんと傾けて、泡が出ないようにビールをついで、最後にジョッキを傾けて泡だけを数センチ分プラス。 これはすごいなあと思った。 食べ放題のフードは、新しくできたものがあると、席を回って「いかがですか?」と言ってくれる。 居酒屋というよりは、うちでできあいのつまみを買って飲み食いしている感はなきにしもあらずだけれども、 なかなかにおもしろかった。
通しての稽古。 「名作劇場」の稽古では、小返し稽古というのはほとんどなく、いつもこんなかんじなのだそう。 ていねいに確認したいところも、プランを考えて、ぶっつけでやってみるしかない。 自分だけのことはともかく、二人以上の場面をさぐりあうのは、なかなかに大変だ。 今日は、二度目の通しから、思い切って、相手の方を向かなくていいと決める。 ずいぶん気持ちがラクになった。その上で、ここは向き合う!と思うところを確認していく。 こういうことも稽古の前に考えて決めておかないといけないんだろうな・・・。 僕はどうしても、芝居は稽古場で、みんなでつくっていくものだと思ってしまうので、そこがむずかしい。 先日の「金の卵1970」同様、今回も小道具の扱いがとても多い。 実物がないまま、舞台監督の大幸さんとどうしたらいいかを考え、やってみる。 酒井抱一役、上人さんを演じる松尾智昭さんが、お手前をするシーンがある。 セリフがない、けっこうな時間。とてもおもしろい。そして、参考になった。 僕の養子としてやってくる八十丸という男の子を、安井実生さんが演じている。 実生ちゃんは、「サロン」で共演した女優さんだ。 「親子」ということなので、いつも一緒にいる。 まっすぐに届くセリフが、とても気持ちがいい。 明日はお休み。 明後日はもっと自由な身体でいられるよう、準備をしておこうと思う。
2009年09月03日(木) |
ありんす言葉と身体の向き |
通し稽古を頭から 気合いを入れて、セリフを入れたつもりが、あちこちで出てこず、プロンプをつけてもらう。 花魁上がりの「ありんす言葉」が、ちゃんと相手に届いているかどうか、心許ない。 差し向かいの場面での体の開き方、客席に向かってななめに座るというのが、なかなか落ち着かない。 歌舞伎では当たり前のことなのだけれど、僕はやっぱり話している相手の方を向きたくなってしまうのだ。 そのあたりのおりあいをどうしようかと考えていると、それだけで集中できなくなってしまい、セリフも出てこない。よくない堂々巡りだ(笑)。
「根岸の一夜」稽古。 衣装の鳥井照子さんが着てくださって、候補の衣装を着てみる。 大汗をかく。 その後、とにかく通し稽古ということに! びっくり。 キャストのみなさんは、きっちりセリフが入っている。 僕は台本をもちながら、なんとかラストまで。 まだ、何がなにやらなかんじだ。 花魁言葉が相手にちゃんと届いているかどうかもこころもとない。 セリフをうたいすぎていないか、いや、ちゃんとうたえているのかどうかも心配。
その後、非戦を選ぶ演劇人の会のミーティング。 先日のピースリーディングの反省会。 終電で帰宅。
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