せきねしんいちの観劇&稽古日記
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リハーサルは「在り処」から。 小道具いっぱいのこの芝居はとにかくしなければいけないことが多い。・ その一つ一つを確認しながらの場当たり。ざっと通したところで終了。 続く、「フォルモサ!」のリハーサルを見せてもらう。 この戯曲は日本の台湾統治時代を描いていて、今回の8本の戯曲の中では一番ヘビーだ。というか、一番重厚だ。 その戯曲の世界がすっきりと頭にはいってくる。びっくりした。 ただ読んだだけではわからないことが、見て聞くことでこんなにわかるなんて。 いくつかの場面で涙が出てくる。 命の問題が、最後に立ち上がってくるように僕には思えた。 あわただしく準備をして「在り処」の本番。大きな事故もなく、終了。 終演後に今日も「ブラボー!」の声をいただく。 感謝! 終演後は、永井愛さんを迎えてのポストパフォーマンストーク。 この芝居の老婆がちっとも悲しそうでないことが悲しいと言っていただく。 また、(日常の)会話のほとんどは説明だというのも、目からウロコの説だった。情報を伝えるために人は話をする。 戯曲では、説明ぜりふを書かないように気をつけるものだけれど、会話のあらかたが説明で成り立っているのだとしたら、もっとおもしろい説明のしかたもあるんじゃないだろうかと。 舞台上に登場しない人物と時代の情報たくさんの戯曲「親シラズ」について考える、いいきっかけをいただいた。 こうして、僕の担当の4本はどれも無事に初日があいた。 あとそれぞれ一回ずつの舞台。あっけないくらいあっという間だ。 演出家のさびしさは、初日があくと居場所がなくなることだけれども、今回はそれが4本分まとめてだ。 せめて開演前にきっちり伝えることを伝えて、いいコンディションで俳優さんがいられるように気を配って、しっかり舞台を見届けようと思う。
2007年05月30日(水) |
「ドールハウス」初日 |
昼過ぎから「ドールハウス」のリハーサル。 全体の流れと動きの確認。 そして、衣装のチェックも。この舞台ではキャバ嬢がみんなコスプレをしている。 婦人警官、ナース、女子高生、メイド、チャイナドレス、ファミレスのウェイトレス。 この衣装のスカート丈が短い! 椅子に座るととっても危ないことになる。どうしようかと考えたのだけれど、それぞれの俳優さんに工夫してもらうことにした。台本を膝に置く、足をきちんととじるなどなど。ただそのことで、終始うつむきがちにならないようにとも。 照明が入って、場末のキャバクラの空間ができあがっていく。冒頭、三人の黒服が登場するとなんとも言えないムードだ。パイプ椅子のきらめき、それに台本の表紙につかったミラーもいいかんじ。 その後、「白狐」の初日を拝見する。 おお、こういうふうになったかとわくわく見てしまう。 担当の4本でいっぱいなので、深く読み込んでいない分、新鮮に見ることができた。 ここでも俳優の力に感動する。 ただ読むだけではわからないものが、間違いなく生まれている。 「在り処」で老婆を演じている藤さんと職員役の唐沢くんが全く違う役を演じているそのことがとても新鮮。「親シラズ」の伊藤さんも、また違う母親像を演じている。 おもしろいなあ。 終演後は、横内さんのトーク。 多くの舞台で時代劇を生み出してきた横内さんならではの視点からのお話。 そして、「ドールハウス」の初日。 たくさんのお客さまの前で初めてわかったことがたくさんある。 コスプレした女たちが人形のように見えてくる瞬間。のびのび驕慢にふるまっていた女たちが、じつは男たちに支配されているんだということが浮かび上がるラストなどなど。 それもみんな俳優さんたちがその場でちゃんと生きていてくれたからだと思う。 終演後、いくつかの確認のために楽屋に向かう。今日のうちに確認して共有しておきたいこと。何より、「いいチーム感が生まれていた」ということを伝える。
2007年05月29日(火) |
「佳子のさくら」「親シラズ」初日 |
昨日の仕込みはお休みさせてもらって、今日は朝から「親シラズ」のリハーサル。劇場で何ができるかというよりも、一昨日稽古場でやったようなことをいろいろやって、身体の確認。テキストを読んでみる。いいかんじだ。 続いて、「佳子のさくら」のリハーサル。車椅子の段取りの確認を中心に。 二つの舞台ではまったく舞台の印象が変わる。 「親シラズ」はダイニングテーブルのまわりに椅子が4つ。「佳子のさくら」は病室を連想させるような白いボックスに桜の枯れ枝のささった花瓶。車椅子に2つの椅子。 リーディングなのに演目ごとの場面転換が大変だ。 八着さんをはじめとするスタッフのみなさん(劇団劇作家の舞台部のみなさん=もちろん劇作家)は、演目と演目の間の短い時間に転換作業をしなくてはいけない。感謝だ。 「在り処」はこたつでの芝居が多いので、客席から見えにくくならないよう高くした台の上にこたつを乗せた。舞台全体は茶の間なのだけれど、ちょっと抽象的な空間をつくっている。「ドールハウス」も後列を平台を積んで高くしてもらっている。これも見やすくするためと、男と女の階級(?)の違いをはっきりさせるため。 いよいよ本番。「佳子のさくら」。三人のベテランの俳優さんの存在感に圧倒される。 健翔さんと一緒に桟敷席のはじっこから舞台を見ながら、俳優ってなんてすごいんだろうと思う。 カーテンコールで客席から「ブラボー!」の声がかかった。 「親シラズ」。稽古でいちばん大切にした二人のやりとりがきちんとできていることに感動。 客席からくすくす笑いがもれる。この親子のやりとりの他愛のないおかしさと悲しさがちゃんと客席にとどいた証拠だ。 こちらも暖かい拍手をいただいた。 それぞれの終演後は、別役実さんを迎えてのポストパフォーマンストーク。 戯曲の構造についてのとてもプロフェッショナルな深いお話。 なるほどなあとうなずくことたくさん。 終演後の俳優さんたちの笑顔が僕のもらった初日祝いだ。 あと2本の舞台はどんなふうに始まるんだろう。
急遽、お願いして「親シラズ」の稽古をさせてもらう。@青年劇場の稽古場。 前回の稽古のまま、初日を迎えるのは申し訳なかった。心細そうな二人の顔が頭を離れなかったので。 今日は、客席に伝えることよりなにより、舞台にいる二人がちゃんとやりとりできるようにしてほしいとお願いする。 そのためのエクササイズをいろいろ。 作者の福山さんをまじえて、四人で(僕も入れて)、しりとりをしたり、歩き回ったり、誰にしゃべっているのか、身体を自由にするにはどうしたらいいかというのを、頭で考えるのではなく、あ、こういうことなんだと腑に落ちるようなやりかたで確認していく。 初めのうちはなかなかできなかったことがさらっとできるようになって、台本に向かう。 初めから全体をイメージして何かをやろうとするのではなく、その都度その都度のやりとりを正直に積み上げていってほしいと話す。 そうしてできた場面は、とてもコンパクトであっさりしていて、でも、今までで一番この話がよくわかった。 びっくりする。 情報たくさんの戯曲の情報をどう伝えるかではなく、そのことをさもないおしゃべりの中で共有していく親子の姿があるだけで、こんなにおもしろくなるんだと、みんなでおどろく(僕も含めて)。 手強く、重たく思えていたこの戯曲が、とても軽やかなかわいらしいものに思えてくる。 そして、娘の知らない過去をたくさん抱えた母親のなぞめいた大きさと色っぽさ、本人は気づいていないのに父親そっくりな娘の姿、初めて見えたことがいくつもある。 どうなるんだろうと思って始まった今日の稽古。終わる頃にはとてもしあわせな気持ちになっていた。 これで大丈夫。僕の担当する4本の舞台はきっといい初日を迎えられるだろう。すべては初日が開いてからなのだけれど、まずは、おだやかな気持ちでいられる今に感謝。
2007年05月26日(土) |
「こんにちは、母さん」 |
劇作家協会の理事会と総会。 諸々の議案についての承認と確認。 高校時代にお世話になった山口?子先生に会う。山口先生は(今でも先生と呼んでしまうけど)、劇作家協会の監事だ。 相変わらずおしゃれに帽子をかぶった姿がかっこいい。 高校時代の話をおしゃべりさせてもらう。
その後、永井さん、青井さん、篠原さんとお茶をしながら少しおしゃべり。 去年の総会の後もこの顔ぶれで話していたなあと思い出す。 家に着いて、永井さんのシナリオによるNHKドラマ「こんにちは、母さん」を見る。 大好きな舞台版がどうなっているか興味津々。 舞台には出てこない人物と風景に若干の違和感を感じながら、それでも台詞のやりとりのおもしろさ、場面の構成のたくみさに感動する。 ロケの舞台はきらきら立花商店街だろうかなどと考えながら。
2007年05月25日(金) |
「ドールハウス」稽古 |
ミラクルの稽古場にて。 本番の舞台の実寸がとれるので、寸法どおりに椅子を置いて演じていってもらう。 今日の稽古は、動きを中心に。戯曲の指定では舞台一杯にキャバクラが出現しなくてはいけない。キャバ嬢の待機スペースと接客スペース×3、それにカウンターに更衣室とトイレと厨房とドア。 基本的に動かないキャバ嬢に対して動き回る従業員の黒服三人。彼らが場面をどんどん作り出していく。 犬塚さん、桑島さん、マナブくんはト書きも読みながら空間もつくっていく重要な役どころ。 キャバ嬢の視点を決める。錦織さんが持ってきてくれた人形の扱いも決める。 いろいろなことが具体的になって、見えないモノが見えてくる舞台になった。 キャバ嬢の個性がだんだん立ち上がってきた。バラバラだけど不思議なアンサンブル。 何より、一人一人がその場でちゃんと生きていてほしいと思う。 予定の時間を30分延長させてもらって、最後までたどりつく。よし、これでだいじょうぶ。 あとは、劇場入りしてからつくっていこう。
帰りにタックスノットに、非戦の会のチラシを持って行く。 尾辻かな子さんとばったり会う。彼女は、今度の参院選に民主党の公認で出馬する、カミングアウトしているレズビアンの議員さんだ。 どんなふうに応援できるか、あれこれ話す。 ただでさえ大変な選挙に、カミングアウトして臨む、そのことがシンプルにうれしい。どうぞ当選しますように。と祈るだけでなく、具体的なお手伝いができたらと思っている。
2007年05月24日(木) |
「佳子のさくら」「親シラズ」稽古 |
6月30日の非戦を選ぶ演劇人の会のリーディングのための発送作業をしている青年劇場が今日の稽古場。 稽古前に、作業しているみなさんにごあいさつ。チラシを受け取って稽古場へ。
まずは「佳子のさくら」から。今日は、車椅子が稽古場に来たので、その扱い。ト書きを読んでもらう児玉さんをまじえての稽古と菅野さんが演じる安子についての稽古を中心に。 冒頭と最後に入れる音楽を流してみる。青木さんから提案があったドビュッシーの「月の光」。それに、僕からの提案で「夢」。 児玉さんのト書き、そして、「夢」にのって登場する車椅子。いいかんじの始まりだ。 ラストの「月の光」の寸法が合うかどうかは、またあらためて。 つづいて「親シラズ」。ダイニングテーブルを囲んでの母と娘の会話。4つの椅子を移動しながらのやりとり。 移動しながら読んでくださいとシンプルに伝えてしまったせいで、二人の会話がなかなかかみ合わない。 ドキドキしながら、それでも通してみる。きれいに流れていく。それなりによしなのだけれど、もう一つ何かがほしい。 なんとなく心配そうな伊藤さん、泉川さんの表情が心にひっかかったまま稽古終了。
富士見丘小学校で今年の演劇授業の打ち合わせ。 甚野先生、長崎先生、馬場先生、平田さん、篠原さんと。 スケジュールの確認と、先日の扉座の体験教室のフィードバックなどなど。 どうやって思っていることを伝えようかということに苦心するのではなく、シンプルに話し合いができているそのことがうれしい。 今年は六年生だけでなく、他学年対象のワークショップについても劇作家協会がとりまとめることになった。 そのことについての打ち合わせも。
夜、劇団制作社の樺澤氏と打ち合わせ。原付に乗って、家の近くまで来てくれた。ファミレスで深夜3時近くまで。 熱のようなものをいっぱいもらい、思っていることをお互いにたくさん言い合う。いい時間。
2007年05月19日(土) |
「在り処」稽古 フライングステージWS |
「在り処」の稽古。今日は、小道具を全部用意してもらっての稽古になった。 この戯曲は、モノを介しての芝居がとっても多い。こたつ、通帳、最中、リンゴ、いものにっころしがし、糖尿病用の注射、血糖値を計る機械、あやしげな数珠、子供の帽子、穴の開いた靴下、穴のあいた手袋(元々の戯曲にあったものを今回上演用に若干変更)。 ト書きで読むよりも実際にあった方がいいと思ったので、この芝居に関しては、小道具をほぼ全部出して、実際のそれを使いながら(食べながら)リーディングをしてもらうことにした。 それでも、「リーディング」という枠組みはおさえておきたいので、冒頭の0場は、きっちり読んでもらう。「この子たちの夏」のように3人が並んでまっすぐ前を向いて。その後、舞台上にある段ボール箱から新聞紙のゴミを舞台全体にちらかす。きれいに(?)ちらかったところで、職員役の唐沢くんが「30分後」というト書きを読んで、1場の芝居が始まる。 ゴミの中での小道具ありの芝居はほんとうに大変だ。板倉さんと藤さんには、申し訳ない演出だ。 最後の場面の、板倉さんの芝居をクローズアップする。台本のト書きを解釈して、気持ちの変化というか、とまどいをていねいに演じてもらう。 近松の封印切りのような場面になった。 演出しながら、ほろっとしてしまう。今日はにやにやだけじゃなくて、涙もか(笑)。 ラストの藤さんの芝居を確認して、今日の稽古は終了。 2回の稽古でここまで来たというそのことに感動。俳優さんたちの集中力と腕のたしかさに感動。 そして、小道具を用意してきてくれた劇団劇作家の皆さん、なかでも、じゃがいもを煮てきてくれた相馬くんと篠原さん、どうもありがとう。 リーディングでモノを食べるってどうよ?というためらいも何もふっとばすくらい、唐沢くんの食べっぷりと、それに関わる板倉さんの反応のビビッドさはすばらしい。 芝居しながら、リンゴをむいていく藤さん。もうその姿だけでいいというような、なつかしさが生まれてくる。 さあ、これから、どうなるか。本番がたのしみだ。
夜はフライングステージのワークショップ。 先々月、先月と今回で計3回のプログラムを組んでみた。 今日は、新聞記事をもとにした作品づくり。 シアターゲームのあと、初めましてのチームで一つの場面。それに続く場面を作り上げた。 作品もおもしろかったけれど、どの記事をチョイスするかというディスカッションの時間が興味深かった。 コミュニケーションのしかた、リードする人、じっと話を聞いて考えている人。それでもみんなで一つのものをつくりあげていかなくはいけない。 何が正解かもわからなくて、どうしたらいいかもわからない状況から、とにかくみんなでつくっていく過程そのものが何かになっていく。 ワークショップは今回で一区切りだけれど、「サロン」が終わった秋にまた再開できたらと思っている。
2007年05月18日(金) |
「ドールハウス」稽古 |
今日で演出プランを固めなくてはいけないという稽古場。 来週は、稽古に参加できない俳優さんがいるので、今日の稽古で「こういうことです」というのをきっちり手渡さないといけない。 まずは、ト書きを読むキャバクラの従業員の分担。 なんとか、戯曲に描かれている空間を成立させようとしたのだけれど、やっぱりやめて、前列にキャバ嬢、一段高くなった後列に客と従業員の男性陣が座るというスタイルに変更。 今日はまず、座ったままでいいので、ト書きを分担して読みながら、全体を通してみる。 まだわからないことがいっぱい。 細かいつめは次回の稽古にしよう。 4本の作品の中では一番どうなるかわからない作品。心配もあるけれど、わからないというのも大きな魅力だ。
2007年05月17日(木) |
「佳子のさくら」「親シラズ」稽古 |
リーディング3本目「佳子のさくら」、4本目「親シラズ」の稽古。 東宝現代劇の青木玲子さん、菅野園子さん、児玉利和さんの出演。 三人とも大ベテランだ。東宝の舞台で何度も拝見している、そんな方たちと一緒に芝居をつくることにまずびっくり。 今日は、児玉さんがお休みで、青木さん、菅野さんとテキストの解釈を中心に読み合わせ。 リーディングで読み合わせというのも変だけれど、ていねいに言葉のニュアンスや、気持ちの変化をたどっていった。 お二人とも、今日までにきっちりと、そして深く読み込んできてくれてきている。 やろうとしていることがはっきりしている俳優に対して、アドバイスするのはとてもおもしろい。 ちょっとした一言で、場面のニュアンスがみるみる変化していく。 「佳子のさくら」はとても不思議な芝居だ。抽象的な夢のような時間と空間の中に、暖かなやりとりと思い出がいっぱいにつまっている。 今日の稽古では、登場する二人の女性の関係の変化を主にたどった。 稽古が終わって、なんだかわくわくとうれしくなってしまう。 なんて楽しい稽古なんだろう。
つづいて、「親シラズ」の稽古。 ダイニングキッチンのテーブルをはさんでの母と娘の会話。 ひたすらつづく会話を説明でなく成立させるにはどうしたらいいかというのが、演出の主な目的。 さりげないやりとりの中に生まれるひっかかりを確認していく。 戯曲を読んだだけではわからない、さまざまなニュアンスが二人の間に生まれてくる。 こちらもまたおもしろい稽古になった。
本番の前に、稽古が楽しくてしかたない。 演出家はなんとなくしかつめらしい顔をして稽古を見ているようなイメージがあるのだけれど、今日の僕は、一日にやにやしていた。 ちょっと気持ち悪かったかもしれない。 不思議な稽古場だ。
2007年05月16日(水) |
富士見丘小学校演劇授業 |
新六年生の最初の演劇授業。扉座体験教室。 田中さんをチーフに総勢15名という豪華な講師陣。 六年生全員をグループ分けして、今年もまた芝居のおもしろさを体験する授業。 青井さん、篠原さんと一緒に、全体を見る。また、後半の「さよなら先生」という場面をグループごとに作り上げる場面では、体育館を移動しながら、それぞれのグループの様子を見せてもらう。 子供たちの様子もとてもおもしろく、興味深いが、扉座の役者さんたちの様子も一人一人、とてもおもしろい。 「さよなら先生」という同じテキストを使いながら、俳優さんによって、子供達への手渡し方が様々だ。 最後の発表の時間には、今年もまたほろっとさせてもらう。 途中のいろいろなゲームやエチュードに対する前向きな感じ、というか、当たり前に演劇に入っていってしまえる子供たちにびっくりし、感動する。 この子たちは、3年生のときから演劇授業を受けている(年に一度だけれど)。そして、何より、卒業公演の六年生の姿を見ている。 それがきっと大きいのだろうと思う。 なんておもしろい子たちなんだろう。 全部が終わって、子供達に初めて挨拶する。 これから一年、おつきあいするこどもたち。まだ名前もよくわからない。でも、毎年、ここから始まる。 授業の前、体育館に向かう廊下で、たぶん4年生の女の子たちに「おはよう!」と挨拶した。「おはようございます」と返事をした彼女のとなりの女の子が小さな声で「誰?」と尋ねた。聞かれた彼女は「演劇の人」と答えていた。もう、小学生が「演劇」ってボキャブラリーを持ってるってことがうれしくてしかたない。 これからまた一年、「演劇の人」として、子供達と接することになるんだなあとあらためて思った。 僕の演劇はどんなふうになっていくんだろう。彼らと一緒にどんな演劇をつくっていくんだろうと思った。
2007年05月15日(火) |
「ドールハウス」稽古 |
リーディング二本目「ドールハウス」稽古。 昨日から、作者の錦織さんとメールでやりとり、今日もまた。 一昨日とは違う、地下のとても広い稽古場。 平台もつんであって、照明の機材もある。そのまま公演がうてそうなスペースだ。 出演者が大勢なので、みんなでウォームアップ。その後、読み合わせをして、細かいダメだしとテキレジ。時間いっぱいまで。 「ドールズ」というキャバクラを舞台にした群像劇なのだけれど、少ない人数でのやりとりが緻密に積み上がっていく印象。 稽古のあと、篠原さん、錦織さんと打ち合わせ。
2007年05月13日(日) |
「在り処」稽古 宇宙堂「川を渡る夏」 |
劇団劇作家の稽古初日。今日は相馬杜宇くん作の「在り処」。 三人のキャストと、劇団劇作家のスタッフの面々と時間いっぱいまで。 リーディングってなんだろう?ということをよく考える。 稽古して(台詞覚えて)演じるのが大変だから「とりあえず」読んでみようということじゃもったいないと思う。 リーディングだからこそできることを探す。 それでも、この作品については、かなり芝居を演じるスタイルに近くなっていきそう。 もともと決めていたプランを押し通すのではなく、俳優さんたちと一緒につくりあげている、そんな時間がうれしい。 密度の高い60分の三人芝居。 軽くアップをして、一度読み合わせ。その後、テキストについての確認、そして演出としての意見。この時間をていねいにとったのがよかったと思う。 だめ出しをしたあと、全体をもう一度通したことになる。 びっくりするくらい生き生きと芝居が立ち上がる。藤さん、板倉さん、唐沢さん、それぞれとっても魅力的だ。 稽古してみて初めてわかったあれこれを作者の相馬くんに伝えて、テキレジのお願いをする。 一回目の稽古でここまでこれたということにおどろく。もっともっとおもしろくなるということを確信する。
その後、宇宙堂の若手試演会「川を渡る夏」(作:渡辺えり子)を見に、荻窪のアールコリンへ。 初演は昭和61年、演劇集団円によるもの。 当時、僕は円の養成所にいて、この公演を研究生として見た。 今日の舞台を、僕はとてもなつかしく見た。そして、とても身近なものとして見た。 この芝居の中で描かれるせつなさが、20年前よりもしみてくる。 狭いアールコリンの舞台を縦横に使っての演出が迫力。そして、どこで着替えてるの?と心配になるくらいの転換も見事。 いいものを見せてもらったなあと感謝の気持ち。
帰りにタックスノットへ寄る。 今日は、タックスノット25周年パーティだったのだけれど、僕は稽古が入っていたので、伺えなかった。 なので、ご挨拶に、遅い時間に顔を出すことにした。 久しぶりのタックさんとおしゃべり。タックさんのおばさまは女優の大塚道子さん。今日のパーティにも見えていたそう。 来月の「非戦を選ぶ演劇人の会」のリーディングのことをふられる。大塚さんから聞いたとのこと。 チラシができたら持ってきますねと話す。 満員の店内でいろんな人と立ち話。 25周年ということもあり、世代の近い人たちと「トシ」の話で盛り上がる。 ばたばたと走って終電で帰ってくる。 盛りだくさんの日曜。今夜はきちんと電気を消して眠る。
劇団制作社に集まって、「サロン」のダイレクトメールの発送作業。 今日までに、劇団制作社の伊藤さんと遠山さんが「折り姫」として、フライヤーを折っておいてくれた。 おかげで、封入作業はあっという間に終わる。 それでも、その後の郵便局に持って行くための仕分けの作業はなかなか大変で、トータルで7時間の作業。 終了後、劇団制作社の面々と打ち合わせをみっちり。 「サロン」のこと、来年のことなどなど。 一気に具体的になったあれこれ。おもしろそうなことがてんこもりだ。
2007年05月06日(日) |
新国立劇場研修生「三文オペラ」 |
ロジャー・リーズのワークショップで知り合った山本くんが出演する新国立劇場研修生の初の発表会「三文オペラ」を見に、新国立劇場へ。 「三文オペララ」という難しい戯曲に挑戦している、若い人たちの姿がすがすがしい。 小劇場のフロア全体を使った演出(宮田慶子)は、富士見丘小学校の発表会での体育館の使い方と全く同じで、妙に身近に感じられる。 日本で初めての国立劇場の演劇研修所。年齢制限がなかったら、ぜひ入りたかったと思う。若かったらなあと。でも、きっと選ばれることもないだろうなとの確信もあったりする。そんなこんなを考えてのとても複雑な思いで見てしまいそうだなあと思っていた。 でも、今日の舞台は素直に感動できるものになっていた。そう思えている、自分の今があってよかったなと思った。 出演の俳優さんたちは、強烈な個性を持って突出する人がいないものの、これはちょっとと思ってしまう人もいず、とても気持ちのいいカンパニーに育っていると思う。 アンサンブルというかチームワークがとても気持ちがいい。ただ、反面、一人で立つことについての覚悟はもっと必要かもしれない。突出することをためらわないでどんどん行ってもいいんだという覚悟のようなものも、見てみたいと思った。 終演後、一緒になった、篠原さん、劇団劇作家の福山さん(「親シラズ」の作者)、そして、「在り処」に出演の青年劇場の俳優、板倉さんと四人でお茶をしながら、今見た「三文オペラ」の話をあれこれ。見た後、話せる芝居はいい芝居だ。そのことを感じながら帰ってきた。 そして、劇団劇作家の打ち合わせをもりだくさん。
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