せきねしんいちの観劇&稽古日記
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劇作家協会の世田谷パブリックシアターでの戯曲セミナー。僕は、同じ教育部にいるのだけれど、こちらにはほぼノータッチだ。 友人のスワさんが今年の受講生で、作品の講評を依頼されたので、会って話をすることにした。 講評の文章を書き始めたものの質問したいことがいっぱいで、これは聞きながら話した方がいいだろうと思ったので。 お茶をしながら、テキストを前に話しこむ。 僕なりの戯曲作法を、これは僕の好みだけどとか、これは常識的にこうだねとか言いながら。 話しながら見えてくるのは、僕が戯曲を書く上で大事にしていることの数々だ。普段は言葉にしないいろいろを、今日は言葉にしてみる。 もっともっといい台本を書き上げていってほしいと思う。 「見えることとそれができることは別物」という歌詞が中島みゆきにある。 別物じゃなく、ちゃんとできる人でいたいと思う。 出した言葉は、まっすぐ僕に返ってくるようだった。朝よりは少し背筋がのびたような気持ち。
2007年03月29日(木) |
「劇場が学校で考えること」 |
世田谷パブリックシアターでのレクチャーにうかがう。 パブリックシアターがここ数年行ってきた、学校へのアウトリーチの報告と、福岡市文化芸術振興財団のとりくみの報告。 情報としては知っていた「かなりゴキゲンなワークショップ巡回団」「@スクール公演『どっとこむ商会』」のことが、とてもよくわかった。 教育の現場へ演劇人が入っていく上での大変さやおもしろさが、先月のワークショップでご一緒した柏木陽さん、すずきこーたさん、富永圭一さんからダイレクトに伝わってくる。 パブリックシアターの学芸部の川島さんの話もとても興味深かった。 第二部は、パブリックシアターが協力している福岡市文化芸術振興財団の実例の報告。こちらでは、地元の演劇人をワークショップのファシリテーターとして育てることをとても大事な目的にしている。 ただやっていくだけでなく、同時に人を育てるというのは、とても重要だけど、とても大変なことでもある。だからこそ、意識して取り組んでいかないといけないんだと思った。 世田谷パブリックシアター発行の「ワークショップのためのゲームガイド『SPT educational 01』」買って帰る。 ワークショップでのゲームがかわいいイラストでわかりやすく紹介されている。巻末の現場からの声(教師やワークショップリーダー)もとてもおもしろく読んだ。 興味深かったのは、福岡市文化芸術振興財団の事業報告書。どのようにワークショップが行われたか、具体的にしっかり書いてある。おお、そういうことかと、納得することが多い。これはいい資料だと思ったので、お願いして、一部余計にいただいてきた。
東武線に乗ってヘッドフォンで音楽を聴きながらパソコンに向かっていた。 急停車したので前を見たら、何人もの人が集まってきてる。何だろうと思って見回したら、僕の左側、ドアをはさんだ車いすスぺースの窓ガラスが割れていた。床は粉々になったガラスの山だ。車の事故と同じで、ガラスは細かく砕けていて、小さなものはさらさらの粉になっている。 車掌がやってきて、近くにいた人に話を聞いている。ヘッドフォンを外してわかったのは、突然ひびが入って、全面にひろがったかと思ったら、となりを走る特急電車の風圧で一気に落ちたという事故(?)の様子。へえ、そうなんだとあらためてびっくりする。 急遽、北千住止まりになった電車を降りたら、何人もの人が携帯で割れた窓の写真を撮ってる。その様子にもちょっとびっくり。 夜、ニュースになったりしてるかなとネットを見てみたら、ニュースにはなってない。まあ、怪我した人がいなかったからね。 朝干して出た洗濯物がきれいにかわいて気持ちいい。どっさり取り込んだら、花粉も一緒に部屋に入ってきたようで、目のかゆみとくしゃみがひどくなった。
2007年03月27日(火) |
劇団劇作家打ち合わせ 演劇集団円「ラプチュア」 |
5月の末に演出をする、劇団劇作家のリーディング(正式なタイトルは「劇読み vol.1」)。今日は、作家のみなさんとの顔合わせというか、打ち合わせ。 作家として、どんなリーディングにしたいかというのをうかがい、僕も自分の考えを言わせてもらう。 今回取り上げる8本の作品のうち、僕の担当は4本。それぞれ全く違うテイストの戯曲を、どう立ち上げていくかをじっくり話し合った。 最終的な演出プランはまだ決まらないけど、絶対におさえておきたいという何点かを伝える。僕のやり方についてのプレゼンだ。 キャラクターを各自がつくって、どう語るかの工夫をして、正面に向かって語りかけるようなものにはしたくない。それぞれがマイクに向かう形の声優さんの録音じゃないんだから。芝居は俳優一人一人の中じゃなく、俳優たちの間、俳優と観客の間にありたい。 ちゃんと上演するのは大変だから、とりあえずリーディングにしてみましたというような「とりあえず」のものにもしたくない。リーディングならではのおもしろさを生み出さなくてはと思う。 印刷して持って行った4本分の仮台本は、それだけでずっしり重い。4本分だものあたりまえだねと作家のみなさんと笑いあった。 夜、近くのステージ円で上演中の「ラプチュア」を観る。オーストラリアの劇作家、ジョアンナ・マレー・スミス作で、演出は、劇団劇作家でも演出をご一緒する山本健翔さん。 円の舞台をみるのはほぼ二十年ぶりだ。養成所の同期の活躍は知っていながら、なかなか見に来ることができないでいた。 今日のキャストのひとり、込山順子さんもその一人。 登場人物は、男女3人ずつ6人の舞台。前見たときは、若々しかった役者さんたちが、みんなそれぞれ中年になっていたことにおどろく。まあ、当たり前なんだけど。 芝居は、ヤッピーなクラスの三組の夫婦、彼らはとても仲がいいんだけど、一組のカップルの家が全焼してしまったことをきっかけに、初めて、自分たちがなんなのかというのを見つめるようになる。たしかだと思っていた友情が、どれだけもろいものの上になりたっていたかなどなど。 全編、ひたすら会話。というか、おしゃべりの連続。他愛のない話が、とんでもないことになってしまうスリル。どんどんとんでもないことになっていく彼らの間柄から目が離せない。 それにしても、これは日本人の会話じゃないなあと思う。きっちり対立することにためらいがないもの。 終演後、一緒に観ていた劇団劇作家のみんなと話したのだけれど、日本人はもっと違う方向に話がずれていくと思う。対立を回避する方向へ。 今日の舞台は、翻訳劇にありがちの「それにしてもよくしゃべるなあ」という感じがちっともしなかった。翻訳がこなれていて、とても自然だ。センテンスの長さが俳優の息にぴったり合っているように思えた。キャストのうでと、翻訳と演出の力、それがせいいっぱいの力業でなく、この芝居をつくりあげているのがすてきだった。
2007年03月26日(月) |
サーカス劇場「ファントム」 |
タイニイアリスにサーカス劇場公演「ファントム」を見に行く。 米軍基地のファントム戦闘機が横浜の住宅地に墜落した事件をモチーフにしたお話。 唐さんのテイストというか、唐さんの手をいっぱい使った、リリシズム満載の2時間。 クセものぞろいのキャラクターが、気持ちいいくらいに台詞をうたいあげてくれる。 母役のそのだりんさんが、とてもすてきだった。 ずっと昔、新宿のシアタープーという劇場で、コクトーの「声」をやったとき、その劇場で会ったのがりんさんだ。今日、音響の操作をしていた世界劇場の小島さんともそのとき何度かお話させたもらった。 二十年以上前にすれ違ったような出会い方をした人たちとの再会。いや、これだけ時間がたつともう初めましての気持ちだ。 唐さんの芝居もしばらく見てないなあと思った。青春を懐かしむような、ある時代を懐かしむような主人公が印象的だった唐さんの作品たち。今の僕は、まっすぐそのままシンプルに向き合えるような気がする。今度見たら、きっとまた違った感想を持つんだろうなと思う。
2007年03月24日(土) |
フライングステージWS |
久しぶりのフライングステージのトレーニング。もとい、トレーニング的な要素は各自でやってもらうことにしたので、ワークショップ。 最寄り駅からのバスに乗り損ない、時間に遅れるわと思いタクシーを止める。ワンメーター分、運転手さんと桜の話をひとしきり。 時間には間に合ったものの、メンバーがそろわず、しかたなく開始を遅らせることにした。 今日のメニューは、コミュニケーションをメインにしたもの。フライングステージでこれまでやっていたシアターゲームに、この間のナショナルシアターのワークショップで学んだことをとりいれてみた。 10時近くまで、休憩をはさみながら、わりとみっちり、ワークを積み重ねる。頭の後ろの方、普段はつかわない部分がきーんと痛くなってくる。リハビリになってる証拠、ずっと使わないでいた証拠だろう。そんなに動いていないはずなのに、あちこちが筋肉痛になってるのも、ラクしてた証拠だ。 来月は、もう少し先のことをやってみようと思う。 帰り道、ひさしぶりに外郎売りをさらってみる。今の自分の状態がよくわかる。驚きとやっぱりねの気持ちが入り交じる。トレーニングは各自でやること。僕がまず率先しないと。
寝坊してしまい、あたふたと家を出る。 富士見丘小学校卒業式。 10時開始の式にぎりぎり間に合った。体育館の手前にはすでに六年生が整列していて、ばたばたと走っていったら、「関根さーん!」と手を振ってくれる。今日のみんなは、きりっとしたブレザー姿。またいちだんと大人びて見える。 体育館の中、来賓席の篠原さん、健翔さんのとなりに座る。 今年で三度目の卒業式だ。今年もまたいっぱい泣かされてしまう。 校長先生のお話では、篠原さんの去年の舞台「ギフト」の話が登場。 ギフトとは、プレゼントという意味だけではなく、天からさずかった才能だということ。そんな才能や、夢を、大切に生きていってくださいと。 卒業証書の授与。今年は、名前を呼ばれた子供達が壇上で一人一人、一言挨拶をする。将来の夢だったり、今の気持ちだったり。 こんなのはじめてだ。ただ、証書を渡す時間だと思っていたので、びっくりする。 最初に呼ばれた1組のアマノメくんから、一番最後2組のヨシナガさんまで、誰もがきっちり自分の言葉で、自分の気持ちを語ってくれた。広い体育館全体に届く、いい声で。 一年間の演劇授業の最後に、これがあるような気がしてとてもうれしい。もっと言わせてもらえば、三年間の授業のおしまいが、このスピーチなのだなあと思った。 一昨年の六年生は、最後の発表会で、即興で今の気持ちを話す、というのをやった。みんなよくできていたけど、それでも、うまく伝えられなかったり、話すことにためらいがあったりという場面も生まれた。 あれからちょうど二年。富士見丘小学校が通年で行ってきた、対話、会話の授業と、演劇授業、その結果が、今日の彼らの堂々としたスピーチになったのだと思う。 このスタイルは、小学校の卒業式としてはままあるかたちなのだそうだけれど、富士見丘小学校でははじめてとのことだ。 演劇授業についてしゃべってくれた人も何人かいた。俳優になりたいと思うと言ってくれた人、演劇授業で学んだことをこれからも生かしていきたいと言ってくれた人。ありがとう。 その後、卒業の言葉。六年生が六年間の思い出や今の気持ちを全員で語る。その間に、「光速マシーンに乗って」の劇中歌2曲も歌われた。この曲を聞くのも、今日が最後だと思うとまた泣けてきた。 式のあと、特活室にいる卒業生に、篠原さん、健翔さんと挨拶する。 こうやってここで彼らと向き合うのは何度目だろう。でも、今日が最後。 「卒業式は今年が三度目で、僕は泣き虫なので毎年泣いてしまうんですが、今年はじめて、なんで涙が出るのかわかったような気がします。一緒に舞台をつくった『仲間』とさよならするのが、さびしいんだとわかりました。いい思い出をたくさん、ほんとうにありがとう。みんなには、夢も希望も、思い出も、仲間もいます。これからも元気で生きていってください。ありがとう!」。僕は、こんなことを話した。 その後、校庭で卒業生を見送る。五年生がつくったアーチをくぐって、歩いていく彼らを拍手で送り出す。 その後、子供達、保護者のみなさん、先生方と、わいわい写真に撮られる。 帰り際の昇降口で聞いた話。昇降口には、「光速マシーンに乗って」に登場した11体の犬の操り人形が天井から吊られ飾られている。 その中の一匹、犬のチョコを見た一年生が「どこを押すと鳴くの?」と聞いたそうだ。チョコの声は、ルイちゃんの担当。ほんとうに犬が鳴いてるようないい演技だった。その子は、チョコと歩ちゃんの場面にとっても感動したんだって。すごいね、ルイちゃん。歩役のスギヤマさんも、チョコの操りのイイダさんも。よかったね! 春は今日から始まったというようなあたたかい日。校庭の早咲きの桜の濃いピンクやこぶしの花の白が青い空にはえてきれいだった。 みんな、卒業おめでとう!
2007年03月22日(木) |
スロウライダー「Adam:ski(アダムスキー)」 |
スロウライダー公演「Adam:ski(アダムスキー)」@三鷹市芸術文化センター星のホールを見に、久しぶりに三鷹まで。 仮設でつくられた急傾斜の客席が、まずこわくて、ドキドキする(最上段の一番端っこだったので)。 折口信夫をモデルにした「先生」とその弟子たちのお話。 お話もたくみ、役者さんたちもていねいな芝居で、とても緻密な時間と空間ができあがっている。 ホラーということだったのだけれど、見ながら思ったのは、恐怖と笑いってほんとうに紙一重なんだってこと。 今日の舞台では、ある意味「男同士」の愛が描かれていて、その関係性の上に恐怖がのっかってる。僕は、どこかで「男同士」の愛に恐怖を感じないようになっているので(もしくは、そういう前提は拒否したいと思う)、純粋な恐怖の分量が少し少なくなっているのかもしれない。 これは、切ないコメディにもなるんじゃないかな、でもこの舞台はそうじゃないんだね、と思いながら見ていた。同じ状況を描いても、全然違うものが生まれる可能性があるっていうのは、おもしろいことだと思う。 帰り、来るときはバスに乗った道を三鷹駅まで歩く。ぐいぐいと。 渋谷に出て、稽古帰りの危婦人のみなさんと合流してカラオケで歌の練習。 スギさん、ザンさん、キキコロモちゃんに、少年社中から客演の井俣太良さんも。 候補曲をザンさんとデュエット(?)。その後、井俣さんと二人で少年隊の「仮面舞踏会」を熱唱。今日はこんなところで・・・。
2007年03月21日(水) |
創作舞踊名流顔見世「百雀会」@浅草公会堂 |
まみぃこと石関準くんと元制作の高市梅莟さん出演の舞踊会、「百雀会」@浅草公会堂へ。 高市氏は、春謡流の師範、春謡妙左という名取り、マミィも今回、春謡妙左京という名前をいただいての名取披露だ。 妙左京さんの踊り「松江舟歌」を朝一番で見る。鮮やかな緑の着付けが若々しくてきりっとしたいい風情。 その後、「サロン」のオーディションのために、劇団制作社の事務所へ向かう。 前回、会えなかった方たちとお会いする。今回も「誠実に」を心がける。 その後、また浅草へ戻り、妙左さんの出し物「長崎ぶらぶら節」を拝見。長崎の芸者の座敷舞。妙左京さんも妹分の芸者として登場して、台詞も芝居も、しどころいっぱい。妙左さんは迫りで奈落に降りて、早変わりで登場。この後半の踊りがすばらしかった。いつもは古典の重厚な出し物が多いのだけれど、この速いテンポで、振りの手数の多い踊りが、とても生き生きと演じられていた。二人の連れ舞の部分も見事。拍手拍手!! 出番の終わった二人に楽屋口で挨拶。お疲れ様でした。 帰りは、ひさしぶりな、さっこさん、いっこうさん、それにノグ夫妻にトシくんたちと、歩きながらのおしゃべり。観光地浅草の人混みにややびっくり。 雷門前の人力車のお兄さんが、外国からのお客さんに「ジンリキシャドウデスカ?」と、怪しい外国人がしゃべるような抑揚で呼び込みをしていた。有効なのか?
2007年03月20日(火) |
「恋の骨折り損」@彩の国さいたま芸術劇場 |
さいたま芸術劇場に、蜷川幸雄演出「恋の骨折り損」を見に行く。 乗り換え途中の武蔵浦和の駅から、夕焼けがすこし残った夜空に細い月が見えた。銀色の小さな魚のよう。 さて、オールメールキャストの「恋の骨折り損」。とにかくきれいだった。 18世紀フランスの大きな(幅が広い!)ドレスがゴージャスなフランス王女たち、対するナヴァール王たち、もうみんな絵のように美しい。絵といっても、もしかすると少女漫画のようだったりするかもしれないけど。いや、そうじゃなくて、ラファエル前派の絵みたいかな。 顔の小ささといい、細さといい、まさに今だけの美しさとしての「若さ」でいっぱいだ。 お話自体は、「だから何なの?」というか、筋立て的にはかなり無理のある、そして、あまりおもしろくない「恋の骨折り損」という戯曲を、今回の上演では、ひたすら「恋」する心の美しさ、はかさな、若さ、純粋さをメインに舞台化している。 すじだてよりも、ただただ「恋心」という抽象的な概念がたちあがっている印象。 一幕の最後(今回の上演版)のナヴァール王の友人貴族、ビローンの長台詞。3年間恋をしないと誓った自分たちの愚かさを語る部分とそこに行くまでの4人の男子のやりとり。それまでは、やや勢いとノリがメインだった若い俳優たちが、真剣に恋の悩む姿が美しい。芝居としてもぐーんとおもしろい場面になった。 去年のロジャーリーズのワークショップでちょっとだけやったこの長台詞を、実際の舞台で聞くのは初めて。演じるのは高橋洋。すばらしかった。 フランス王女一行のなか、一番元気なロザラインを演じる内田滋も、女役を演じながらも存分に芝居をしていて、小気味いい。 王女のお目付役の貴族ボイエットを演じるのは青井陽治さん。25年前に見た薔薇座の「ベント」以来の俳優としての舞台出演だそう。今回は、女子の中にただ一人まじる男性として、ナヴァール王たちからやきもちをやかれる独特なポジション。青井さんのキャラがぴったりな、とてもナイスなキャスティング。 終演後のアフタートークでは、主演の男性陣四人より、翻訳の松岡和子さんから、いろいろな裏話を聞けた。4人の貴族のうち、戯曲の書き込みの少ない二人を演じる苦労などなど。 帰りは、ほんとうに真っ暗な道を歩いて与野本町駅まで。もう少し明るくてもいいのに。
今夜は桜沢エリカさんの特集。 新しく依頼された連載の主人公は年収10億円の男性。「知らないものは書けない」と言い切って、自分の足で取材する姿勢がかっこいい。 「知らないものは書けない」。いい言葉だなあ。ほんとうにそのとおりだと思う。 桜沢さんが家族と一緒に過ごす休日の姿、大勢で囲む食卓の風景。とても当たり前で、とてもあたたかい。 今、脚色させてもらっている「サロン」の登場人物のつながり方の現在形のような気がした。 もう一つ、いい言葉。「お金で買えるものなんてほしくない」。思っていてもなかなかできない言い切りのかたち。 言い切ることの強さと、その強さを持ち続けることの大切さを見せてもらった、そんな気持ち。
土曜だけど仕事。 北千住から、常磐線に乗る。明日まで、常磐線のグリーン車が普通車として開放されている。 何度か乗っているのだけれど、とても気持ちがいい。 無理矢理二階建てにしたような新しい車両。 今日は初めて、二階部分に乗ってみた。 北千住から上野までのほんとに短い時間が、ぐーんと「旅」な気分で味わえる。 明日以降は、けっこうなお値段のグリーン料金。いつか、のんきに旅行に出かけるときに利用しよう。いつになるかわからないけど。 夜、篠原さんと電話で打ち合わせ、もろもろ。来年度の話あれこれ。
夜、危婦人のスギタクミさん、ザンヨウコさん、ヤビマーヤさんと打ち合わせ。 4月の舞台「大部屋女優浜子〜宴の華〜」での、僕がやることについての確認。 蘭浜子の友人の女優、鴇恵(ときめぐみ)が僕のキャラ。 3本のオムニバスのあとのレビューに登場させてもらう、その段取りや衣装などについて、いろいろ話す。 歌う曲の候補がいくつもあがるなか、どれもが「ミュージカル大好き」&「ゲイテイスト満載」でうれしくなる。 帰り、ヤビマーヤさんと途中まで一緒に帰ってくる。電車の中でしゃべり過ぎて、うっかり乗り過ごすところだった。
2007年03月15日(木) |
ワークショップの案内 |
フライングステージのHPに、ワークショップの案内をアップする。 劇団のメンバーが集まるのは、基本的に公演のときだけという、プロデューススタイルの活動をしていたのだけれど、この間、ひさしぶりに劇団員が集まって話をしたところ、やっぱり月いちくらいは集まろうということになった。 各人のスキルアップはそれぞれがそれぞれの場所でやっていけばいいと思うのだけれど、会って話をする、一緒に何かをするということを、改めてはじめてみようと思う。 数年前までは、週に一度、多いときには二度集まってトレーニングをしていた時期もある。 それは、ある意味では、新しいメンバーの養成だったりしたのだけれど、ある時期から、「育てる」ということについてのモチベーションが僕のなかですとんと落ちてしまった。 それは、いつまでも一緒に芝居をつくっていけると思っていた人が、劇団をやめてしまったりすることが何度かあったせいでもある。 そんなわけなので、新たに始めた月一のワークショップは、劇団員のトレーニングというよりは、むしろ、出会いの場だ。 劇団員どうし、また、外部の人にもぜひ来てもらって、いろんな人と出会いたいと思っている。 はじめましても、知らなかった一面にあえるのも、とても楽しみだ。 詳しくは、フライングステージのHPか掲示板へどうぞ。 富士見丘小学校でやってきたこと、また、先日の世田谷パブリックシアターでのワークショップでの経験を生かして、楽しい時間をつくっていきたいと思う。
4月に客演する危婦人さんの「大部屋女優浜子〜宴の華〜」。僕は、浜子の友人ということで、文字通りの「友情出演」だ。 サンモールスタジオの新年会で、僕に主演女優賞を手渡してくれたのが、浜子を演じる、ザンヨウコさん。 今回、僕が演じることになる役のプロフィールが、キキコロモちゃんから届いた。 一読して、感動する。「このキャラ一生やっていたいわ!」と思う。 どんなことになるのか、とても楽しみ。
2007年03月13日(火) |
「サロン」オーディション2日目 |
昨日と同じ会場で二日目のオーディション。 緊張しつづけていたせいか、昨日は家に帰ったら背中がバリバリに張っていた。横になると痛くてつらかった。 昨日と同じように、誠実に向き合うことを心がける。 来週にあと一日を残して、まずは一段落。 打ち合わせのあと乗った帰りの東上線。武蔵野線に乗り換えるのは北朝霞なのに、芝居のことを考えていて、つい朝霞で降りてしまう。寒いホームで15分立っていることに。考えること、考えなきゃいけないことは、いくらでもある。頭の中がいっぱいでいる、芝居のことだけ考えている、この状態が、僕にとっての誠実に向き合うということだ。まずは。
2007年03月12日(月) |
「サロン」オーディション1日目 |
昼から「サロン」のオーディション、一日目。 会場に向かうのに、久しぶりに乗った東武東上線。いつも乗ってる東武伊勢崎線と同じ電車でびっくり。準急と各駅の乗り継ぎに失敗して、待ち合わせに遅刻してしまう。 午後から夜までかかって、何人もの方と会って、お話をうかがう。 課題を渡して、歌って、踊って、台詞を言ってもらうというのとはちょっと違う、どんな人なのかを話してもらう、そんな出会い方。 多くの方に来ていただけたことに感謝。まずは一日目終了。
2007年03月11日(日) |
「俺たちがTVだ」最終日 |
火曜日に出演した、「俺たちがTVだ」の千秋楽にうかがう。しいたけをさんと会場で待ち合わせ。 この間は、幕の後ろで声だけだったので、会場の雰囲気がどんなふうなのか、9月の演劇公演がどんなノリになるんだろうかというのをかんじてみたかった。 70年代のヒット曲についてのトーク、それからすてきな方々のパフォーマンス。青空はだかさん、小象さん、DJキーポンさん、沢田王子さん。ノリノリの客席と一緒に最高に盛り上がる。 この手のイベント、たとえば懐メロとかちょっとキッチュなものが大好き!というセンスは、僕にはゲイ関係のイベントですっかり近しく思えるのだけれど、ゲイがらみじゃない人たちがこんなふうに楽しんでるという、そのことがとてもうれしい。だって、おもしろいんだもの、みんな大好きなのはあたりまえだわとも思う。 二丁目では、今夜、尾辻かな子さんの立候補前のキックオフイベントが開催されていた。後からネットでみたら、大盛況とのこと。なんてすてきなんだろう。 尾辻さんのほかにも、今回は、何人ものカミングアウトしたLGBTが政治の現場に向かおうとしている。石坂わたるさん、上川あやさん(現職の世田谷区議)。 声を上げることがどれだけ大事なことか。ごく一部の人たちが盛り上がるんじゃなくて、ほんとにたくさんの人が、当たり前のように、自分たちの意見を代表してくれる人たちをもとめてる。 ヘテロセクシュアルの政治とは、ちょっと違う、「声の切実さ」がそこにはあると思う。 僕もできるかぎりのことをして、応援したいと思う。
松本紀保さん出演の「殺人者」@グローブ座を見に行く。 ジャニーズの三宅健主演。作・演出はシャンプーハットの赤堀雅秋さん。TVで「雨が来る」は見たのだけれど(「演技者。」)、舞台は初めて。 千葉の住宅街の二軒の家の玄関先(軒先?裏庭?)が舞台。せまい密集した街中の話が、広いグローブ座の客席に向かって演じられる。 大きな劇場用に声を張るんじゃなくて、この空間が信じられる声でやりとりするのは、とてもむずかしいんだなと思った。 お話は、謎がいっぱいで、解明することははじめからやめようと思っていたので、俳優さんたち一人一人の舞台でのいかたの違いが、僕には一番のみどころだった。 一つしか手を持ってない人、技術とかんじさせずにひきずりこんでしまう人、さまざまな場面で次々違った存在になっていく人。おもしろい。 松本さんと赤堀さんの息がとても似ているように思えた。自然に、この空間の広がり、もとい閉塞感までを、存在自体でかんじさせてくれる。 終演後、楽屋にうかがって、松本さんにごあいさつ。お疲れ様でした。 すれ違った三宅くんはほんとに華奢なからだつきで、舞台での大きさが嘘のよう。さすがだなあと思って帰ってくる。
2007年03月08日(木) |
ドネルケバブ@北千住 |
途中下車して、北千住の街を歩く。 にぎやかな西口をまっすぐ歩いて、ツタヤを過ぎて、日光街道までの商店街散策。 入ったことのない、洋服の青山の上のダイソーをのぞき、猫用のブラシを購入。 その先の角にドネルケバブの店があった。チキンを購入。すごいボリュームだ。肉よりも野菜、キャベツやらピクルスやらの方が圧倒的に多い。ヘルシーか? その後、駅まで戻る道をまた適当に曲がったところ、初めて見る「十円饅頭」の店を発見。北千住は、東口にもこの手の饅頭屋がある。一駅に二つって大丈夫なんだろうか? 自宅用に20個、妹のところ用に30個を買って帰る。
二週間ぶりの富士見丘小学校。今日は、保護者のみなさん主催の「卒業を祝う会」。 来賓(?)として、篠原さんと二人、先生方と一緒にエスコートされて体育館へ。 六年生は、二週間会ってないだけなのに、ずいぶん大人の顔になった。女子は、なんだか大人のおしゃれだし、男子はみんな顔が少し縦に長くなったよう。 六年生からの出し物で、「光速マシーンに乗って」の劇中歌を歌ってもらう。その後、保護者のみなさんの出し物、それから、先生方からも。 最後に、六年生がみんなでつくったアーチをくぐって退場させてもらう。二人が両手をあげてつくった、せまいアーチ。くぐりながら、みんなの顔を間近で見る。中腰で歩くのがつらいのでやや早足になったのがもったいない。「ありがとね!」と何度も何度も言いながらくぐり終えた。 おみやげにいいにおいのするスイートピーの花束と手書きのカード、手作りのコースターをいただいた。 その後、校長室で、先生方と来年度の打ち合わせ。演劇授業のスケジュールを、学校行事とのかねあいでどの日にするかのめどをつけていく。 こういう話し合いはもう何度目だろう。話すたびに、先生方との距離が近くなっていることに気がつかされる。 僕たちの意識が、演劇を小学校の授業の現場に「届ける」ことから、「一緒に作る」ことにだんだん変わってきたからだと思う。 当たり前のことなはずなのに、なかなかできなかった。それがようやく当たり前にできるようになった今、なんてしあわせな現場なんだろうと思う。 帰り、富士見丘小学校のことが記事になっている「シアターガイド」を買って帰る。 文化庁の鈴木仁也さんのお話や、宮校長先生のお話、どれもうれしくひびいてくる。 残念だったのは、何枚か載っている写真のキャプションの間違い。タイトルは「光速マシーンに乗って」だ。「高速」じゃなくて。 子供達はこの本を買うだろうか? あ、自分が写ってると思って。それがまた演劇への新しい道しるべになるかもしれない。とりあえず買ったこの一冊は、永久保存版だ。
2007年03月06日(火) |
「俺たちがTVだ」夏木マリデー |
メークがあるので早めに入ろうと思ったのが、買い物に手間取り、結局、ぎりぎりになる。 ひさしぶりの池袋小劇場。 挨拶をして荷物を置いて、買い残した小道具(バナナ!ピストルのかわりに使う)を買いに、池袋の街へ。 こんなことなら、駅前のデパートで買ってくればよかった。カートを引いているのが面倒だったので、近くの果物屋でも・・・と思ったのが、甘かった。 立教大の方へ向かうも、その手の店は見つからず、コンビニにあるんじゃ?という願いもむなしく、寒い夕方に、汗をかきながら、早足で歩きまわる。 結局、大通りに面したミニストップでようやく発見。よかった・・・。 開場がはじまるなか、あたふたとメークをすすめ、開演までに終わるがどうか微妙になってきたので、舞台裏のスペース(楽屋)で続行することに。 幕裏でのスタンバイは、僕と、ボクデスの小浜さん。 オジーさんとホックニーさん、それに今日のスペシャルゲスト、KONTA さんによる夏木マリに始まり、70年代セクシー歌謡についてのトークを、裏側からじっくり聞かせてもらう。 丸一週間のイベントの二日目の今日、客席はたいへんな盛り上がり。 9月の演劇公演でご一緒する、伊藤靖朗さんと、斎藤静香さんの司会で、次から次へと豪華なパフォーマンスが登場する。 僕の「ピストル」は、まあなんとかなったかな?といったかんじ。 ひさしぶりのリップシンクは、身体がなんだか違ったものになったよう、不思議なリフレッシュ感がある。 終演後、打ち上げにおじゃまする。初めましてのみなさんと楽しくおしゃべり。 小浜さん、島さんとお先に失礼してかえってくる。 ひさしぶりに「自分でやった」気分。悪くない。
明日のイベントで使うCDをツタヤで探しているのだけれど、見つからない。夏木マリの全曲集ともう一枚。 よく行く北千住店は、この一ヶ月近くずっと「日曜日」と返却予定のゴムがかかったまんまだ。そんな夏木マリファンがいるのか北千住? そのうちにこちらの方がより必要な「パロール」というアルバムまで貸し出し中になってしまった。 あちこちのツタヤを点々と渡り歩くが(電車に乗って)見つからない。結局「わざわざ行くのはしゃくだよね」と思っていた新宿店まで行くことになる。 明日のイベントでは、夏木マリがカバーしている「いいじゃないの幸せならば」を使おうと思っていたのだけれど、イベントの進行表を送ってもらったところ、それなりに小芝居をした方がいいかもと思い、予定変更。「ピストル」というエセ・シャンソンにした。衣装を確認して、夜中に少し練習してみる。一人でのリップシンクは、ずいぶん久しぶりだ。どうなることやら。
夜、マルゴリータさん宅へ、年末のgaku-Gay-kai以来、預けっぱなしの荷物(女装関係)をピックアップしにうかがう。 途中で、イチゴと黄色いチューリップを買って、手みやげというか長く預かってもらったお礼がわりに。 短い時間の立ち話のみで、荷物をいただいて、失礼する。 今日は、春のような陽気。カートをひいて歩く道も、ほんのりと春めいて、お花見の帰りのような、ほろ酔い気分になる。飲んでないのに。 鏡花の「日本橋」に出てくる、「雛の節句のあくる晩、春で朧で御縁日」というのは、こういう夜なんじゃないかな。鏡花の台詞をしゃべりなら、いつもより余計に歩いてみる。
ひなまつり。僕は桜餅が好きだ。ついでに言うとひなあられも好きだ。 なので、この季節は、3月3日の前に、桜餅もひなあられも何度も食べてしまい、ひなまつり当日は何もないことが多い。 今年もまたそんなかんじ。 夕飯のあと、パンを焼く。といっても、材料を量ってホームベーカリーに入れるだけのだけれど。この頃のブームは、くるみパンだ。ざくざくと砕いたくるみを一緒に入れて焼くと、生地をこねているうちに、なんとなく粉々になって、うっすら茶色、というか薄紫色のパンが焼き上がる。 ずっと起きている夜中、何度か階下に降りて、ホームベーカリーをしばらくのぞいている。いい気分転換。同じように、僕はこんなふうに洗濯機を見ているのも好きだ。
劇作家協会の会報「ト書き」の原稿を書き上げる。 富士見丘小学校の三年間について書いた。 限られた字数であれもこれもと欲張ったら収集がつかなくなり、結局、何をやったかを具体的に書くよりは、この三年で僕が得たもの、そして、これからのことを会員のみなさんに向けてお知らせしようとわりきった。 実質、篠原久美子さんと僕とが中心になって動いている、富士見丘小学校の演劇授業だけれど、これから先、どうやっていこうかと考える。 これまた限られた予算の中でできることは何か。三年間で積み重ねたことを、きっちり外に向かって発信するいうのが、今の僕には一番意義のあることに思える。 一年目の授業風景をまとめたDVDとは違う、「芝居づくり」について。そして、富士見丘小学校の先生方と、僕たち劇作家、演劇人が、どんなふうに、共同作業をつみかさねて、子供達に向き合っていったか。 四年目になる来年は、今年よりもまた一つ先のことを目指していきたい。まだどんな芝居をつくることになるかは、見当もつかない。うまくいくか、途方にくれるかもわからない。 でも、この間のワークショップでディディとクリッシーに言われた、「一度、途方にくれることが大事だ」という言葉が、勇気をくれる。 今年の「光速マシーンに乗って」も、はじめのうちは「どうなるんだろう?」と思っていた。でも、そこから始めたからこそ、あの舞台ができあがったんだと思う。 「大人がやりたいことを子供達にやらせる」んじゃないというのは、こういう出発点のことを指すんだと気づいた。
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