せきねしんいちの観劇&稽古日記
Diary INDEXpastwill


2004年01月31日(土) 稽古は休み

 振り幅は小さくなったものの、まだ熱が上がったり下がったりなので、休ませてもらう。
 みんなには集まって読み合わせをしてもらう。


2004年01月29日(木) 寝たきり

 35度台の低体温と39度を超す発熱を行ったりきたり。まだふらふらしている。


2004年01月28日(水) 稽古はなし

 初めての稽古の予定だったのを、なしにしてもらう。申し訳ない。
 熱はまだ下がらない。
 台本もストップしたまんま。
 ノグの風邪はインフルエンザじゃなかったようでほっとする。


2004年01月27日(火) インフルエンザ

 ちっとも熱が下がらないので、医者に行く。
 検査の結果、インフルエンザA型だと判明。わかったとたん隔離されて、それまで待合室にいっぱいいた人が誰もいなくなってから、帰ってくる。
 日曜に一緒だったノグも具合が悪そうだったので、すぐに電話して、インフルエンザだったと知らせる。
 その後は、眠りつづける。眠れてよかったと思いながら、眠っている。


2004年01月26日(月) 風邪

 一日完全に寝込む。熱は39度を超してる。
 うつらうつらしながら、つらいことばかり考える。僕は何をしてるんだろう?とか。何をしてきたんだろうとか。
 猫のシューが布団の足元にのっかってててくれて温かい。真面目にありがとうと言ってる自分がいる。


2004年01月25日(日) うさぎへび「幸せの息子」@本多スタジオ

 「非戦を選ぶ演劇人の会」で知り合った、清木場直子さんと一倉梨紗さんのユニット「うさぎへび」の旗揚げ公演。作・演出は西山水木さん。青年団の永井秀樹さんも出演している豪華さ。 ノグと待ち合わせをして二人で見る。
 商店街の福引きの景品だった3台のビデオカメラがどこにいったかを探っていくお話。
 かなり複雑な人間模様が初めのうちはややわかりにくかったものの、終盤に向けて一気におもしろくなっていった。
 モノを作るということ、そして、命の問題と、とってもいい刺激をもらった。
 終演後、うさぎへびの清木場さんと一倉さんと握手して帰ってくる。
 西山水木さんが書いたセリフは、どれも「一生に一度」口にするかどうかという特別なセリフだ。その特別さを、うまくカラダに落とし込んでしゃべっている役者さんたちがとても魅力的だった。
 帰りの電車の中から寒気がしていて、軽い気持で熱を計ったら38度もあってびっくりする。
 風邪をひいたらしい。まいったなあ。
 昨日とは全然違う理由で今日も眠れない。


2004年01月24日(土) 「Four Seasons 2」顔合わせ

 高円寺で顔合わせ。
 制作のいろいろをみんなで確認。
 その後、少しだけ持ってった台本を、読み合わせもしないで解散。
 真っ白。来年のスケジュールも再検討。
 もう何だかわからない。朝までこれっぽっちも眠れない。


2004年01月23日(金) 平常「毛皮のマリー」@GALLARY LA CAMAERA

 一人芝居人形劇の「毛皮のマリー」。
 ギャラリーのほんとに狭いスペースを使っての上演。最初はどうなるんだろう?と思ったモノの、思い切って、桟敷の真正面に座って、大正解。うしろにすわったマダムたちのノリのよさにも助けられて、とてもおもしろく見ることができた。
 こんなにちゃんとテキストが立ち上がっている上演は初めてだと思う。かなり満足。いい気持。二場の終わりの巨大な蝶が登場する場面、僕だったらどうするだろうとずっと考えたたんだけど、今回の演出は大成功だと思う。
 人形は、不思議な愛らしさでどれも素晴らしい。顔だけのマリー。胴体だけの水夫。スポンジの指人形の美女の亡霊。美少女は、片手扱いの人形。にゃんちゅう(教育テレビ)とドキンちゃん(アンパンマン)を混ぜたような、かわいらしさ。
 演じる平常くんは、22歳という若さだけど、実にきちんと観客に向き合っている。客の視線に鍛えられたというかんじ。このくらい美しくないと「美少年役」はできないんだろうなと改めて思う。二の腕の筋肉の隆起もとってもきれい、二枚重ねのタイツのモアレもセクシー。
 一人きりで演ずる人形劇というのは、初めて見たのだけれど、平くんは、1時間40分の長丁場を、見事に演じきったと思う。最終場は、やや情緒に走り過ぎというか、やや間延びした感があったけれども。
 「毛皮のマリー」という芝居のラストについては、いつも考えることがある。長大なエピローグをくっつけて、全然違う芝居にしちゃた美輪さん版はもとより、どうやって終わるのがいいんだろうと。
 今回の演出でも、マリーの笑いが泣きになっていくという運びだったんだけど、どうなんだろう? 美輪さんも泣いてたけどね。
 僕は、もっと違うものがあるような気がする。「母もの」としての「泣き」にもっていくのが、芝居の終わりとしてはおさまりがいいのかもしれないんだけど。もっと非情なものがあっていいんじゃないかって。テキストを読む限りは、これっぽっちも母ものじゃないと思うんだけど、どうなんだろう?
 非情なニセ母が、自分のコピーを作り上げて、婉然とほほえむというラストじゃだめなんだろうか? その方が怖いし、怪しいし、まっすぐな気がするんだけど。
 僕は、「毛皮のマリー」のラストでマリーが泣いてるのを見るたびに、いつもどうしてなんだろう?と思ってしまうんだった。それは今回も。
 最後にマリーの人形を「死んだように」横たえて終わるときに、それまで操っていた平くん=美少年に、何か変化があるとおもしろかったかもしれない。
 ともあれ、とっても満足。終演後、監修のヘンリックさんに挨拶して帰ってくる。


2004年01月22日(木) 台本な日

 このところの読書三昧もひとだんらく。電車の中でも台本を書くか、考えるかしている。
 手袋を忘れたり、反対のホームに降りたりするたびに、ああ、いっぱいいっぱいだなあと思う。なんとかしなきゃじゃなく、自分のそんな「しょうがない」状態で、どれだけ芝居に入り込んでいるかがわかったりする、この頃。
 夕方、新宿で、養成所一年生のタカヤマくんと食事。卒業公演の稽古もたけなわな彼と、軽くおしゃべりして帰ってくる。
 都営新宿線の中が妙に明るいと思ったら、広告が一枚もなかった。中吊りも、壁?に貼ってあるのも。ただ、真っ白。ド派手なアド車両の真反対。これはこれで不思議なかんじ。


2004年01月21日(水) フライングステージ稽古

 マッスー、マミー、早瀬くん、ノグに僕の五人。小林くんは学校の試験のためお休み。
 ようやくそろったようなかんじ。
 ストレッチをたらたらとやる。
 とりあえず、そろった感が楽しくて、おしゃべりに花が咲く。
 ひとしきり話して、ストレッチして、これからどうしようか?ということになったのだけれど、えいっと稽古しようという気にもならず(ごめん)、これで終わりにしようということになった。というわけで9時過ぎでおしまい。
 さくさく帰ってくる。

 帰りの電車で見かけた渋谷で降りてった男子。コートの後ろに黄色い付箋がくっついてて、「ちかん」って書いてあった。いたずらか、ほんとに痴漢なのか……? なかなかかわいい子だったんで、つい妄想が……。剥がしてあげればよかったね。

 母親とはなしくずしで仲直りか。それでも、食事しながらの会話に、微妙に気を使う。新聞を読みながらでも、「返事はちゃんとする」ように。いただきもののアイスワインを二人で飲んだり、猫をかまったりと、「二人」なことをいろいろして、部屋に引っこむ。


2004年01月20日(火) フライヤー入稿 プロデュース公演うち合わせ

 次回公演のフライヤーを、プリントネットワークさんに入稿する。
 裏面は僕がつくってるんだけど、「イラストレーター」でデザインするところでまず苦労して、プラス、コメント書きに苦心した。
 で、ようやく入稿。土曜日の顔合わせには間に合う。

 夜は、5月のプロデュース公演、青山さんとの二人芝居のうち合わせを、制作をお願いする渡辺智也くんと新宿で。
 コンコースを歩いてたら、ジオマンのマルゴリータ奈須に声を掛けられる。びっくりだ。
 新年の挨拶をそそくさと。日記の更新がすっかり止まったままで、心配してたので、元気な姿を見てほっとする。
 ナベちゃんと待ち合わせして、トップスへ。
 席について早々、以前、「ハムレット」でお世話になったイマイさんとユキちゃんに声をかけられる。やっぱりここは芝居のうち合わせのメッカね。
 で、うち合わせ。制作の話をいろいろと。僕がやりたいこともあれこれと。
 後半は、最近見た芝居の話を。
 いろんなことが共有できたようで、なんだかうれしかった。
 フライングステージのいつも公演と、何がどのくらい違うかっていうのも、言葉にすることで、僕にはよりはっきり見えてきた気がする。

 帰りの電車。酔っぱらった若い女の子が、ずっと叫んでた。喧嘩かと思ったら、知らない人相手に、怒鳴ってる。「私の三年間を返せ!」とか「みんな地獄に堕ちろ!」とか。きっと悔やむことが多いんだろうな。見た感じは、普通のOLってかんじの子なんだけどね。
 北千住から草加を過ぎたあたりまで怒鳴りまくって、新越谷で降りた。と思ったら、となりの車両に移動して、今度は大人しく黙って座ってるのが見えた。ちょっとほっとする。つらいことがあったんだね、きっと。

 夕食の最中、母親と喧嘩。新聞を読んでるときに、母親が病院でもらってきた血液検査の結果を話し始めたのに、夕刊に載ってた蜷川さんの「ペリクリーズ」についての記事を読みながら、生返事でをしてたら、急にキレてしまった。びっくりする。僕の話、聞いてないときだってあるじゃないよと思ったけども、それは言わずに部屋に引っこむ。考えてみれば、母親との喧嘩らしい喧嘩は久し振りだ。

 夜中、荒くんから電話をもらう。5月のプロデュース公演についてアイデアがあるんだけどという話。
 もともと彼からいろいろ聞いてみたいことがあったので、うれしかった。
 たぶん関根さんが考えている話とは全然違っちゃうんだけどと断ってから、ある本を読んでみてほしいと言われる。
 それは、実はずっと気になってた本だった。映画化もされてて、その映画もきっとむちゃくちゃ参考になるんだよなあと思ったまんま、どっちもまだ手に入れてない。無精モノだ。早速明日探してみよう。


2004年01月18日(日) 「2004 Spring/Summer Tokyo Collection」

 新橋のスタジオで録音の仕事。
 中出さんと新年のご挨拶。「贋作・大奥」、とても楽しんでもらえたようでうれしい。
 東コレ×3本のMAは、微妙に気が重いんだけど、今日はそれでもさくさくと終了。
 早く終わったら、2時からの小松川高校の冬公演を見に行こうと思ってたんだけど、当然のように間に合わず。
 スタジオからMAルームに移動する途中、モニターにとなりで編集中?のAVビデオが映ってる。男子がなかなか今風のいいかんじ(女子はどうでもいい)。ので、「中出さん!ほら!」と手招きしてわざわざ呼んでしまう。後から、「何してんだ?」と妙におかしくなる。普通呼ばないよね。なんだかいろんなモノを超えてしまってるおつきあいなんだねえと納得したりする。


2004年01月17日(土) 稽古はナシに

 稽古に向かう電車の中で、マミーからお休みの連絡が。マッスーからも同じ知らせをもらっていたので、急遽、今日の稽古をなしにする。のぐと早瀬くんとで顔ぶれの違う、またしても三人きりの稽古になりそうだったので。
 すぐに部屋にもどって、台本とフライヤーのデザインにとりかかる。
 夜から雪という予報は、はずれ。
 なんとなく暖かくもなってきているような。
 静かな夜だ。


2004年01月16日(金) 罠公演 タックスノット

 夕方、マツウラくんと待ち合わせして、次回公演のフライヤーデザインのデータを受け取る。
 その足で、新宿のシアターブラッツへ。
 小林くんが客演している罠公演「わななき 神も、愛も、おまえもおわり」を見る。
 いっこうちゃん、高市氏、マミー、宇田くん、三枝嬢と合流。
 芝居はオープニングの絵がとってもきれいでショッキングで、「これってすごいかも?」と思ったきりで、後は微妙なかんじ。ていうか、久し振りにつらかった。どうしようか……?と見ながらずっと考える。つらい芝居はどうすればいいかを考えれば、結局は楽しくなってしまうものだけれど、そうもなっていかなくて困った。
 小林くんは、セリフがないセクシーな獣男の役がはまり役。
 突然登場してギターを弾いて歌い出す女子二人と「セフレ」な三人がいい味だった。
 終演後、宇田くん、三枝嬢と食事。
 その後、タックスノットに流れ、遅まきの新年のご挨拶。
 結局ラストまでになり、青山さんの来るまでタックさんと三人ラーメンを食べに行くことに。
 恵比寿の「揚州商人」まで。ワンタン麺がおいしかった。
 青山さんに北千住まで送ってもらい、始発で帰る。


2004年01月15日(木) 演劇人の会ミーティング る・ばる「片づけられない女たち」

 昼から、梅ヶ丘の燐光群さんのアトリエで「非戦を選ぶ演劇人の会」の集まり。
 イラクから帰っていらした平田伊都子さんのお話を聞く。
 新聞やテレビの報道ではわからないイラクの今の話をいろいろ伺った。
 自衛隊の派兵も決まってしまった今、これからどうなるのか?
 一番忘れられているのはイラクの人たちのことだという話に大きく頷く。
 後半は、会のうち合わせ。2月の燐光群さんの公演中のスズナリでイベントをやろうという話が決まる。
 永井さん、篠原さん、くまがいさんと梅ヶ丘のうどん屋で食事をした後、豪徳寺から世田谷線に乗ってシアタートラムへ。永井さん作演出のる・ばる公演「片づけられない女たち」を見に行く。
 五十過ぎの三人の女たちの芝居。連絡がとれないので、心配になって来てみると部屋はものすごいちらかりよう。ていうか、ゴミの山。
 夜の十時過ぎから、その山を片づけはじめようと決心する三人の、リアルタイムな1時間40分。
 片づけ始めては、すぐに別のおしゃべりに夢中になってしまう。片づけようとするために余計ちらかってしまう。そんな、ほんとうなら「バカじゃないの?」ないろいろが、なんだかとってもいとおしかった。
 高校のバスケット部の同級生な五十代の三人の中には、17歳の彼女たちがちゃんといるのもうれしい。
 作劇や演出に、斬新なものすごいものはないんだけど、ほっかりとほんとにいい芝居だった。
 篠原さんに、フライングステージの芝居に似てると言われる。たしかにそうかもしれない。人間がちゃんとそこにいて、さもない話で右往左往しているかんじ。僕も見てて、そんなことを少し思ってたんだった。
 終演後、永井さん、篠原さん、劇作家セミナーの谷さんと飲むことに。
 台本を書く大変さについて、大いに盛り上がる。
 すっかり終電を逃し、僕は、練馬へ帰る永井さんと一緒に車で高円寺まで。
 永井さんごちそうさまでした。
 今日は一日、ほんとに濃い一日だった。
 毛布にくるまってもなかなか寝付けず、いつまでも起きている。


2004年01月14日(水) フライングステージ初稽古

 フライングステージの今年最初の稽古。なんだけど、参加者は、僕とマミーとマッスーの三人。
 基礎トレをばっちりやるぞ!と新しいスウェットを持ってったりしたんだけど、その気合いはすぐにトーンダウン。三人で、ストレッチをしながら、だらだら話す、「お正月ってかんじだよね」(マミー談)な稽古。
 早めに上がり、「よーし、飲みに行くぞ」となったが、大戸屋でご飯、ビール付きとこっちもトーンダウン気味。
 それでもわいわい飲んで楽しい、初稽古。
 帰りの電車で、3月の「Four Seasons 2」のフライヤーデザインを2人に見てもらう。
 「いいじゃん、かわいいじゃん!」(マッスー談)。
 「『この人は出ません』って書いとかないとね」(マミー談)。


2004年01月13日(火) 少年王者舘 KUDAN Project「真夜中の弥次さん喜多さん」

 池袋のシアターグリーンで、少年王者舘 KUDAN Project「真夜中の弥次さん喜多さん」を見る。
 少年王者舘は去年に続いて二度目。でも、今度は別プロジェクト、二人とも初めての役者さんだ。
 しりあがり寿の原作を舞台化したもの。一昨年、見逃してたので、今回は是非とも見たかった。
 いやあ、おもしろい芝居だったなあ。
 「エセ」でリアルじゃない江戸から、リアルな伊勢(イセ)に行こうとする二人が、川沿いの宿で足止めを食ってる。その宿の部屋は江戸の喜多さんの部屋にも似ていて……。
 雨が降り出すと、「ふりだし」に戻ってしまう、どうどう巡りなやりとり。二人の会話は、ヤク中の喜多さんの夢の中の出来事のような、そうでないような。
 この夢が本当かということを延々、確かめていく過程が、舞台の嘘とのかけひきのようでね、なんともよかった。
 見えないうどん(本当に蕎麦屋に注文して出前を取ってる)が、ほんとにあるのかないのか?部屋の壁、客席にむかった「第四の壁」はほんとうにあるのか、天井はほんとうにあるのか?
 天井には「しおうめ」がいっぱいぶらさがっていて、その中からは「塩梅=梅干」が転がり出てくる。
 どこまでが夢でどこまでがリアルかということを、もういいよというくらい、何度も何度もくり返しているうちに、いつの間にか、見ている僕たちも、この芝居の世界づくりに荷担してることに気がつく。
 最後の場面、エンドクレジットが映写される中、ものすごい勢いで全ての装置が取っ払われていく。これでおしまいかと思ったら、最後に二人が登場して、襖の向こうに。その襖が倒れると、そこにはもう誰もいない。
 見事なラストだった。これで、カーテン・コールもなしに終わるのもありなんだろうけど、きっちり二人が出てきて、挨拶。その加減も、ちょうどよかったね。
 シアター・グリーンの閉館記念公演には、とってもふさわしい。劇場の夢がいっぱいの不思議な芝居になってた。あの原作が、こんな「劇場愛」の物語になってるなんて、思いもしなかった。
 シアターグリーンは、僕が17歳のクリスマスに初舞台を踏んだ劇場だ。高校時代の友達と一緒に立ったその舞台は、ほんとにヒドい芝居で、次々降板していく仲間の後、僕は意地になって舞台に立ったんだった。で、初日のカーテンコールで出演もしていた作演出家が「稽古不足でごめんなさい」とお客さんに謝った。僕は、打ち上げにも顔を出さずに、彼らとはそれっきり絶交。今、思うと、もっといいやり方あったんじゃないの?という気がしないでもないけど、当時の僕にはそれがせいいっぱいだった。
 そんなわけで、この劇場は、僕にとって、とっても「負」なイメージを持ってる小屋だ。
 その前も後も、いろんな芝居をここで見たけど、いつも思うのは、この劇場がなんとも言えない、怪しさを持ってるということ。
 芝居を見始めたばかりの高校生だった僕には、芝居=悪くて怖くて後ろめたいモノの代表みたいな小屋だったのは間違いない。
 今日のこの芝居は、他の劇場でやっても、きっと十分成り立つんだろうけど、このシアターグリーンという小屋でやってこその怪しさが上乗せされてたと思う。その「おまけ」を堪能したのは、きっと僕だけじゃないとも思う。
 ラスト間近に、ほんとうの真っ暗闇の中でセリフだけが聞こえてくる場面がある。その中で「手は握られてる時だけ、手だってわかるんだ」というセリフがとってもしみた。本当の闇が出来る劇場は、実はそんなにない。味のある「真っ暗闇」が実にいい芝居だった。
 とっても満足して帰る。
 でも、すぐに帰ってしまうのはもったいない気がして、池袋の街をふらふら歩く。歩いてるうちに、区役所の方まで行ってしまい、豊島区民センターの前の公演でひと息つく。
 初めて池袋演劇祭に参加したとき、CM予告編大会の練習をここでしたなあと思い出す。
 今日も帰りは、西新井までバス。いい芝居を見た後のゆったりしたいい気持ち、知らない人にもやさしくなれてしまうような、そんなかんじ。


2004年01月12日(月) 「幕末純情伝」

 新宿でジュンちゃんと待ち合わせ。「東京レズビアン&ゲイパレード2002」のビデオをもらう。ウルフくんと三人でしばらくおしゃべり。
 食事をして帰った後、夜、WOWOWでやってた広末涼子、筧利夫主演「幕末純情伝」を録画しながら、つい見てしまう。想像してたよりもずっとずっとよかった。
 むちゃくちゃ寄りまくりのカメラが、この芝居には妙に合ってたかもしれない。


2004年01月11日(日) 読書

 今日の昼間、日比谷公会堂であった「イラク派兵に反対する会」には、結局、仕事で行けなかった。
 そのかわりのように、今日は一日、戦争について、ずっと考えている。
 「せりふの時代」の最新号を買って、座りっぱなしの東武線〜半蔵門線の車内で読む。
 平田オリザ作「南方俘虜記」、アリエル・ドーフマン「The Other Side/線の向こう側」。戦争についての戯曲。
 アリエル・ドーフマンは「死と乙女」で有名な作家だ。
 まもなく新国立劇場で上演されるこの戯曲は、架空の国の国境を舞台にした三人芝居。
 なんて力強い作劇なんだろう。シンプルな言葉の持つ力の強さを改めて感じる。
 翻訳されても、それでも薄まっていかない言葉の魂のようなもの力強さ。
 不条理劇のような、ファンタジーのような、リアリズムのような不思議な芝居だ。
 一度読んで、もう一度読み返す。
 出演は、岸田今日子、品川徹、千葉徹也の三人。とってもナイスなキャスティングだと思う。
 楽しみな芝居がまた一つ見つかった。
 僕が戦争について書くとしたらどんな芝居になるんだろう?
 前に篠原さんと話していたとき言ったのは、「ローマの休日」のゲイ版のアダプテーションだと思うということ。僕が書く、戦争と平和の物語は、きっとそんな切ないコメディになるんだと思うと。
 今、また新しい地点でまた違ったことを考えはじめている。その考えが一本の芝居になるのは、いつだろう?
 まずは書いてみることか。


2004年01月09日(金) バスに乗って

 仕事の帰り、池袋から西新井までバスに乗ってみる。
 疲れて、どうしても座って帰りたかったので。
 池袋で読む本がなくなり、NHKの人間講座「こんにちは、一葉さん」のテキストを買う。
 作者の森まゆみの「一葉の四季」は前に読んでたんだけど、あまりぴんとこなかった。
 なんだけど、このテキストはおもしろい。
 写真がいっぱいでね。明治初年の崩壊した江戸城の様子とか、戦争で荒れ果てた上野の寛永寺とか。ああ、ここを天璋院は明け渡したのね……などと勝手に感慨深い。
 作品の解説というだけでなく、一葉の交友関係に立ち入っているのも興味深い。
 井上ひさしの「樋口一葉に聞く」もよかったけど、こちらの方が、手に取るようにわかっていいかもしれない。
 知らない暗い道をバスで行きながら、読み終えてしまう。
 ほんとに久し振りな西新井駅西口。駅前の花屋で、水仙を買って帰る。


2004年01月08日(木) 仕事な日

 仕事の行き帰りの読書で、有吉佐和子の「悪女について」を読む。大好きな本だ。
 中学一年の時、ドラマ化されて、主演は亡くなった影万里江さん。ドラマでは考えられないようなオールスターキャストで、一話に一人、登場する人物が、虚飾の女王、富小路公子について語っていく。
 朝と夜で読み終えてしまう。ほんとにるんるん読んでしまう。
 こんなふうに「惑溺」して読んでしまう本が僕にはあと何冊かある。
 まず、モームの「劇場」。中年の舞台女優が主人公のバックステージもの。「ガラスの仮面」の元ネタはこれか!と思うようなエピソードが楽しい。
 それから、樋口一葉の「にごりえ」「たけくらべ」「十三夜」といった作品群。悲しい気分の時に聞く中島みゆきのように、気持が沈んでしまうとき、僕は一葉を読んでいる。
 ともあれ、久し振りにのんびり読書な時間が持てて、しみじみと幸せ。


2004年01月07日(水) フライングステージうち合わせ 「鏡獅子」

 夕方から、高円寺でフライングステージのうち合わせを高市氏と。
 3月の「Four Seasons 2」の制作うち合わせと、その後のスケジュールについて。
 来年の夏までの予定を確認する。
 これから書く6本の新作のスケジュールを立てる。
 書いてなくていい時期はまるでないことが判明。しかも、同時進行してないといけない。
 「Four Seasons 2」のシノプシスについて話し合い、5月の青山さんとの二人芝居の中身についても話をする。
 6本の新作は、どれも「どうなるかわからない」ものじゃなくて、今の時点から「どうなるかわかる」気がしている。一つずつ、きちんと書き上げて、いい芝居を作り上げていこうと思う。

 うち合わせの後、マミーと三人で、ケーキを食べながら、BSの小津安二郎監督の「鏡獅子」を見る。六代目尾上菊五郎が踊ってる。初めはなんて大きな人なんだろうと思ったのが、どんどんすっきり見えてくる。これが芸の力か。


2004年01月05日(月) 仕事始め

 仕事始めだったのだけれど、さくっと帰ってくる。
 町はまだまだお正月だ。


2004年01月04日(日) 「坂東玉三郎の古典芸能図鑑」

 寝正月は続く。
 寝だめにしてやる覚悟で、ひたすら眠ろうと決心。
 その合間にとりだめたビデオを見る。
 元旦からハイビジョンでやっていた「坂東玉三郎の古典芸能図鑑」。
 玉三郎が案内人として「能」「文楽」「衣装」「かつら」「歌舞伎座」について語るもの。
 実によくできている。
 第二回の「文楽」を録画しそこなったものの、他の4回はばっちり。
 第一回の「能」では、「花伝書」の本物が登場。最終回の歌舞伎座は、なんだかやたらと感動的なつくりになっててすばらしい。
 「贋作・大奥」のせいで、なぜか歌舞伎が身近に感じられるのも不思議。


2004年01月03日(土) 寝正月

 暮れから母親が引いていた風邪がうつったらしい。
 熱っぽく、肩がぱんぱんに張っている。
 寝正月を決め込む。


2004年01月02日(金) 新年会

 吉川の宇都宮さんの家に新年会に出掛ける。
 宇都宮さんに奥さんのヒロコ、フライングステージに出てもらったワカさん、それに、カワチさん、マイ、オカダくんといった、毎年おなじみの面々が顔を合わせる。
 京劇のプロデューサーをしているマイと久し振りに会う。去年の「Four Seasons 四季」以来だ。
 京劇の話、芝居の話をいっぱいする。
 同い年のオカダくんの結婚話に盛り上がり、披露宴の企画がどんどこ決まっていく。
 夜中、マイとヒロコと三人でしみじみ語る。
 こんなつきあいを僕らはもう二十年もしているんだなと、ふと思う。
 朝から仕事のオカダくんの車に、マイと二人載せてもらい、越谷の駅まで送ってもらう。
 このところ続く、朝帰りの打ち止めのような朝。さすがに空いている電車に二駅乗って帰ってくる。


2004年01月01日(木) 元旦

 初詣から帰って、少しだけ眠り、昼前には、もう弟夫婦&妹夫婦が甥っ子&姪っ子連れでやってくる。
 昼間から、飲み食いし、のんびりとお正月な気分。
 夕方に妹たちは近くのおもちゃやに「福袋」をゲットしに出かけてしまい、ぽかんとした時間。
 夜は手巻き寿司。帰ってきた子供達といっしょにわいわい食べる。
 10時過ぎにわたわたと帰るみんなを見送り、今日はおしまい。


せきねしんいち |MAILHomePage

My追加