久しぶりに立ち寄ったパン屋さんで甘食と目が合った。 この間読んだ本に甘食にちなんだ話しがあり、食べたいなぁ。と思ってた。 小ぶりな甘食は真ん中が盛り上がってて角もちゃんとあった。 一口食べた瞬間に あぁ懐かしい味がする。 食べた事がある味なんだけど甘食ではない。 表面が少しカリカリとした食感で、中身はしっとり。でも、ケーキのスポンジ生地のような柔らかさはなくて、もう少し重たい感じ。 次の瞬間に何の味か思い出した。 そうだ。この味は、母がよく作ってくれたカップケーキの味と同じだ。 バターたっぷりのマドレーヌやフィナンシェではなくてカップケーキ。 今 巷に出回ってるチョコやアイシングでデコレートしてるカラフルなものではなくて、シンプルなもの。 何も入ってないし何もかかってない お化粧してないすっぴんのカップケーキ。 母は色んなお菓子を作ってくれたけど 私が好きだったのは、レモン味のクッキーや生の林檎をクランブルで被ったアップルパイ、シナモンのきいた焼き林檎。 食べたくなった時には自分で作ったりるする。 すっぴんのカップケーキは私にとってそんなに印象深いものではなかったから自分で作った事もなかった。 母が作るすっぴんのカップケーキが一度だけお化粧した事があった。 小学3年の担任の先生に頼まれてクラスの人数分のカップケーキを母は焼いた。 いつものすっぴんのカップケーキではなくてチョコやアラザンがついてお化粧したオシャレなカップケーキだった。 小学3年の私は特に何かに秀でていた訳ではなかったので、人からすごいねぇと言われた事はなかった。 いつもおやつにこういうの食べてるの?すごいねぇ。 と私はその日はクラス一番の注目の的だった。 いつも食べてるのはこんなにオシャレなカップケーキではなかったけど・・・ 母の作るカップケーキと同じ味だとわかってから甘食を食べると 幸せな気持ちでいっぱいになった。 味の記憶ってすごい。 いつも食べてた普通のものがすごく好きなものなのかもしれないな。
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