作品集

2007年08月08日(水)  『ミルクとパンと君と僕』


君が産声をあげた その日
僕は朝食にパンを食べていた


新聞を片手に 見もしないテレビをつけて
一日の予定を考えていたんだ

その日の朝食はミルクとゆでたまごとパンだった

チャンネルを変えると同じニュースばかりで
君のことなんてふれてもいなかった

だから君が生まれたことを知らずに
僕は朝食にパンを食べていた


どこかの街の様子が流れても
「またか」なんて横目でみていた

僕は何も知らなかった
それがどんなに怖ろしいことか
そのことすらも 僕は知らなかった

どこの記録に残らなくても
確かに君はその瞬間 そこに存在していた
ただ僕が知らなかっただけで

僕が何も知らないように
ミルクの味も知らずに 君は旅立っていった
そのことすらも僕は知らなかった


君が旅立っていった その日
僕は朝食にパンを食べていた




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高穂 由美 [MAIL]

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