2002年06月14日(金)
時折思い出したようにへこんだり、ぐちゃぐちゃ考えたりする。 本当、人間関係保の下手だよな、自分……ていうか、優柔不断さと臆病さが相まって、人として、かなりダメダメって処かな(苦笑)
リー・ヴェイのモデルってのは、霞が中学の時……いや、高校に入ってからもなんだけど、多分一番好きだった相手。多分……そう、付け加えなきゃならないほど、自分の気持ちがあやふやで……結局、最低なやり方でその迷いを断ち切ろうとした。自分のあやふやな気持ちから逃げるためだけでもひどいって言うのに、当時の自分は、自分の感情の全てさえを自分でコントロールできないものかと、無謀なことを考えていて、その行動は、一つの実験でさえあった。その行動―――相手を、無視すること。 毎朝決まった時間にバスに乗って、地下鉄乗って、駅の決まった場所で落ち合って、ただ、他愛もないことを喋ってるのが楽しかった。 それを、自分の都合だけで何も言わずに家を出る時間を変え、相手と同じ制服(霞は女子校で、相手は男子校だった)見る度に避けてかかって……今、霞の目がこの上なく悪いのは、勿論移動中の読書の影響ってのも否めないけど、「視力が落ちたから気付かなかったんだ」って言い訳を強く念じていたせいだと思ってる。 昔から人付き合いには武装してかかる人間だったけれど、ここまで自分の感情に自信がもてなくなったのは、多分、この頃から。全く持って、自業自得。 結局その人は、暫く経ってから、(霞の)友人の後輩に告られて、付き合うことになったらしい。偶然に知った後で、ショックを受けたのが、どんな心理なのか自分で理解不能だった。高二の文化祭、その「彼女」と一緒にいるところを目撃したこと。その人が、バイクでこけて入院したらしい話―――勝手な終わらせ方をしたことが後ろめたくて気になり続けてるのか、それとも、まだその人に未練があるのか、実は未だに自分でもよくわからないままだったりする。思い返してみると、相手のことも、ろくに知らないでいたから。 その後にだって一応、好きだと思った相手だっているし、付き合った相手ぐらいいるし、振られてもうオーバーなぐらいに泣いて落ち込みまくったこともあるんだけど……大学を出て、また家に戻ったせいか、未だに一番引きずってるのって言えば高校の時に自分が無視したその相手のことで。当時から顔が良いなと思ってたクラスメートとかにバイト先でばったり、なんてとき、やたらと緊張しまくりで、こんなんでもし当時も一番自分好みの容姿をしていたその相手がひょっこりそこにやってきたらどうしようかってひどく心配した。その理由がどんな種類のものになっても、平静を保てない自信だけは、あった。 幸いなことに、といえばいいのか、多分一度もそれらしい人は見かけてない。でも、もし今のその人を見たら、自分の中で判然としないままだった気持ちに区切りがつけられるかもしれないとも思うと、見かけることがないというのは不幸なことなのかも知れないとも思う。 会ってみたい・会わなくていい・気になる・関係ない……今更。 その人を連想させるような相手を見かける度にぐるぐる悩んで、でももういい加減、自分の気持ち的にも時効でしょ? そう目を背け始めていたんだけど。 目を背けたまま、少しずつ忘れ去るつもりでいたんだけど。今となってはリー・ヴェイは外見以外全く何のつながりも持たない霞的なキャラクターになっているわけだし。 ある人から電話があって、一度会うことになった。 元々「顔と名前に覚えがある」程度の知り合いだったから会話を弾ませようもなくて、とぎれがちになるやりとりの間に、間にというよりむしろそのとき同時進行で頭の中で、「その人」のこと、思い出していた。 どんな因果の働きか、電話を寄越したのは「その人」と同じ高校に進んだ人で。ただでさえ、連想させ易い要因ってのが多かったんだけど……互いのことよく知らない―――共通の話題が見つかるわけでもない、その局面で、外見のことや中・高生の時分の話をされる度に私が思うのは、私は「その人」のことを何も知ろうとはしなかったんじゃないかって、目の前で話しかけてくる相手同様、見た目だけに気を取られていたんじゃないかってことばっかりだった。 で。 ごめんなさいの返事の後で、たまたま、中学で仲が良かった友達(こっちは当然同性)に会った。何だかほっとしてしまって、それで初めて自分がものすごく緊張し続けていたことに気付いたら……また、気が抜けてしまった。趣味も似通ってるし、あまり連絡を取り合うようなタイプじゃないってことも似てたんだけど、家族がそれぞれ同士で仲の良い人だった(母親同士・兄同士が友人で、彼女のお父さんは家のピアノを調律しに来る楽器屋さんの調律師さん)こともあって、ものすごく、安心して訳の分からない台詞を連発してしまった。 きれいだとかかわいいとか、普段言われなれない褒め言葉を使われるととりあえずそれは嬉しくて、だけど居心地悪くて、借りてきた猫状態になってたんだ。 どうでも良いことには饒舌だけど、正直な自分の気持ちには(それがあまりにも曖昧すぎることもあるけど)舌を凍り付かせてしまうダメ人間だから、強引に押し切られれば流されそうにもなるけど……「自分を好いてくれる人だから好きだ」っていうのは、あまりにも自分が情けなさ過ぎる。そんなの。相手なんか誰でも良い話になってしまって、自分にとっても相手にとってもちっとも良いことなんてない。ちゃんと説明できれば良かったのに、そういうことを説明する口は持っていなくて、相手の目を見て返事することもできなくて、殆ど、ずっと俯いたままだった。 だから。 ごく当たり前に砕けた口調で、素の状態で話せる相手にあった瞬間気が弛んだんだと思う。 訳の分からない台詞「なごむなぁ!」……時代劇のビデオのラベルとか棚に並んだ少年漫画見て若い娘さんが言う台詞じゃないですよ、霞さん。
その友達のおかげで家に戻る頃にはいったん自分の中の動揺もおさまったんだけど、やっぱりまだ、ぐるぐる悩んでる。
人を好きになるということ。 人の目を見て話すこと。 私は誰を、どう思ってるんだろうか……?
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