わたしは写真を撮ることは好きだけど自分の人生において重要な部分をしめるものでもないし三度の飯より欠かせないほどの嗜好でもない が、しかしなぜが小さい時から写真とは縁があるというのだろうか なぜかそんんふうに思えてならない時がある
小学校五年生のときだったか、あるひとりのカメラマンと出会った 私立体育館のまわりに公園みたいな憩いの場所があってひとりで遊んでいた 中では何か催し物があったようでたくさんの人が出入りしていた ふらっとひとりの三十代くらいの男性が近づいてきて「撮ってあげようか」と言った 私はテレくさいので返事もせずそのままかまわず遊んでいた
嫌な感じか良い感じかといえば良い感じの男の人だったのでべつに逃げることもしないでおしゃべりをしだした そうしてごく自然に写真を撮ってもらっていた 最初は少し離れたところからだったのがだんだん近くに寄ってきて何枚もシャッターを押していた そしてちょっとこのお花を持って、とか笑わなくていいよ、とか注文?をつけてきた
父にはよく写真を撮ってもらっていたがこんなふうに撮られたのは初めてだったのでちょっと戸惑いながら撮ってもらっていたことを覚えている 出来上がったら郵送してあげるからね そういって帰っていった 数週間後写真が送られてきた 十五枚ほどだっただろうか 見て驚いた まるで芸能人のブロマイド(当時はそう呼ばれていて集めるのが流行っていた)みたいに写っていた え!これがわたし? 横顔のなどは女の子というより大人の女の人みたいに写っていて自分でもドキドキした でもこんなの恥ずかしくて皆に見せられないわと封筒に入れて引き出しの奥にしまっておいた
そのカメラマンK,Nさんはその後自分で焼付けした年賀状を送ってきてくれたり個展をするから見においでと案内状を送ってきてくれたりして、わたしはもう一度あの男の人に会いたいなって思ったけど子どもがそんな場所に行けるわけもなくそれっきり会えなかった なんだろうな、好きっていう感情があったのかどうかわからないけれど会えなくてちょっぴり寂しかったかな・・・
K,Nさんは当時あの若さで個展も開いていたのだから今思うと有名なカメラマンだったのかもしれない わたしが学生を卒業してカメラ店でバイトを始めることにしたのもこんな仕事にかかわっていたら、K,Nさんのことがなにかわかるかもしれない そんな気持ちがどこかにあったのだと思う 今は何処で何をされているのかわからないけれどきっと今でもカメラを構えているのじゃないかと思う だってあのときわたしはまだ11歳だったけど二回りも離れているようにはみえなかったから
引き出しにしまっておいたあの写真はわたしが女として自信がなくなりかけたりしたときにそっと出してきて見ていたの わたしだってこんなに綺麗なんだよねって・・・自信もっていいんだよねって・・・もしもK,Nさんに出会えることがあれば ちゃんとお礼がいいたい あなたが撮ってくれた写真があったからわたしは自信をもって生きてこれたんですって。
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