僕の携帯は,息も絶え絶えだ。 娘を迎えに行くのに,これでは心もとない。 と,いうわけで,妻の携帯を借りた。
確認しておきますけど,ここを押せばいいんですね。
「そうそう。それでとれるから」
よし。 大丈夫。 僕だって最近は携帯も使いこなせるようになったのだ。 ははは。
ところが。
思わぬ事態が。
妻がメールを送り付けてきたのだ。
なぜ。 なぜ,電話の取り方を教えておいてメールを…。
仕方ない。
るるる…。
「もしもし」
あ,私ですけどね,あの,メール送りましたか。
「うんうん」
あ,いや,うんうんじゃなくてね,メールの内容を。
「は?」
「まさか,アンタ…」
メール見られなかったんですが。
「くくく…」
あ,怒ってますね。 怒ってもいいですから,とにかく内容を。 急いでるんですから。
「あー,塾出たってさ」
そうですか。 わかりました。 では。
「あのね,あーしてこーしたら簡単に見られるから」 「やってみてね。くくく」
あれ?笑ってるのか? まあ,いいや。 はいはい。 では,待ち時間に。
帰宅してすぐに忌まわしい機械を返却する。
「あっ。アンタ,結局メール見られなかったね」
なんでわかるんだ…。
「この画面でここをこーするだけなのに」
早くてわからない…。
「はっ。しかもこのマークは何よっ」
え,あー,そういえば, いじってたら,登録されましたって言われましたけど。
「余計なことはできるんだね…」
びっ。
あっという間に削除されてました。
しかも,また
「ネタ提供ありがとうございます」
って言われちゃいました…。
那須に来た。
昨日は,吹きガラスをやるという妻と下の娘をガラス工房に送り届けた後, 上のムスメの希望で「3Dホラー館」へ。 春にも来たな…。ふっ。 気を失いそうになりながら,なんとかホラー館をこなし, 妻と下の娘を迎えに行こうとしたら。 渋滞にはまった。
ええ,ええ。 罵られましたとも。よりによってこの2人を待たせたんですからね。
しかし,2日続けて罵られることになろうとは。
今日は,いつもの牧場でなく,もっと広い牧場に行こうと企画した。 いつものように,ぐずぐずする人たちをさりげなくせき立てつつ, なんとか車に乗り込む。 よしよし,今出られれば、まだそんなに車も混んでいないはず。 ところが,そのとき妻が。
「あれ?お財布…」 「忘れたかな」
えっ,またですか。 あれほど,出かける前には用意をきちんとして確認するようにと…。 ここは、部屋から駐車場までけっこう距離があるんですから。
「ああ,あった,あった。おほほほ」
なんだ,そうですか。
あれ?
そういえば,僕の財布はどうしましたっけ? は。 財布はともかく,免許…。
「はあ?免許をお持ちじゃないんですって?」 「たーいへんだ,不携帯で捕まっちゃうよ」 「そりゃ,まずいっすねえ」 「いつもご立派なこと言ってらっしゃるのに,どうしたことでしょう」
い,いや,たぶんどこかに入っているはず。
すると,下の娘が 「あたし,金庫を閉めるときに見た。おとうさんの」 「写真がついてるカード」
嗚呼。
と,いうことは。
「金庫の中だね。くすっ」
なんでうれしそうなんだこの人。
仕方ない。免許を持たずに車を運転するわけにはいかないからな。 取りに帰ろう。
「私は車で待ってるからね」
ええ,あなたが降りるとは思ってませんよ,まったくね。
「あたし,ついて行ってあげる」 「おとうさん,金庫開けられないでしょ」
「ぶはは。やさしい娘でよかったねえ」
うるさいな。
なんとか免許も手にして,再び出発。
「おおー,いい具合に混んでますね〜」
ううう,うるさい…。
この後,動揺したのか道にも迷い,妻にナビゲートされる始末。
勝ち誇られたのは言うまでもない。
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