妻が呼んでいる。
無視しちゃおーかなーなんてちょっと思ったけど、 これがあなた、無視できるような音量じゃないんですってば。
「ねーねー、このページ見てよ」
はー、どれどれ。 いや、こりゃまた目が痛いページですね。
「そうじゃなくて、動いてるでしょっ」 「すごいよねえ」
は? 何が動いているんですか。
「え」 「動いてるでしょ」
は。 模様が動いてるんですか。
「え」 「いや、動いてないけど動いてるでしょ」
うーむ。 なにをおっしゃてるのかわからないのですが。
「えーっ」 「動いてるじゃん、動いてるよね」 「てか、動いて見えるでしょ」
ムスメ達までよってきて、 「うごいてるー。きもちわるいー」 などと大騒ぎだ。
動いてませんよ。 動いてないんだから。 僕の目は真実しかうつさないんですよ。
「あんたって…。目まで融通がきかないんだね…」 「人生半分くらい損してるよ…」
損してもいい。 僕は人としてまともでありたいんだ。
「まとも通り越して変人だって」 「人間の目にはちゃんと動いて見えるんだって」
人間の目って。
「もしかして、鳥か魚みたいにもの見てるんじゃないの」
そ、そうなんでしょうか。 鳥とか魚みたいに…?
山のように積まれたこの板はなんなんでしょうか。
ムスメ達が音楽祭のリハーサルにでかけたのどかな午後。 僕の目の前にはのどかでない光景が。
「だーかーらー」 「台所用のすき間家具だってば」 「鬼の居ぬ間に組み立てるのよっ」
いやあ、これは、鬼の居ぬ間には組み立て上がりませんよ。
「ならいっそう早く取り掛からなきゃ、ねっ」
しかし、この部品の多さ。 どこから手を付けていいのやら。
「だいじょぶ。IQの高い私が振り分けてあげるから」 「アンタは組立だけすればいいから」
むっ。 なんだかちょっと失礼なものいいなんでは。 しかし、始めてみるとくやしいが合理的かつ能率的な分担だった。 ま、アナタは仕事が雑で遅いですからね。
地道に作業を続ける。 途中で帰ってきたムスメ達がまとわりつく。 でも、地道に…。 下のムスメにビニールの緩衝材を捨てたことを泣きながら責められても地道に…。
お、終わらない。
組立時間は四十分と書いてあったそうだが、 2人がかりで2時間以上かかった。
しかも、なんだか引き出しが入らない。
「あっ。アンタ、これ上下逆だよ」 「だから説明するって言ったのに、自分で見たほうがわかるなんて見栄をはるからだよー」 「やりなおしっ」
途中から作業そっちのけで台所でむーむーうなってたくせにその言い草。
「配置を考えてたんだよ」 「さぼってたわけじゃないもん」
ふ。 とにかくなんとか仕上げました。
精も根も尽き果てたので、 「組立代がかからなかったから、いいじゃん」 という妻の甘言に負けて、回る寿司にいっちゃいました。
皿洗いがないって素晴らしいなあと思いました。
2004年11月16日(火) |
妻に何かをしてもらうということ |
「ねー、それ持ってくのやめてよ」 「お風呂で使うんだからさー」
それとは、僕のCDウォークマンのことですか?
「iPodはどーしたのさ」
僕が聞きたいのはこれに入ってないんですってば。
「あ、そーか。取り込んでないのか」 「って自分でやんなよー」
でも、これウィンドウズでできないってアナタが言ったんじゃないですか。
「そうか。仕方ないなー。じゃあ、やってあげるよ」 「1曲いくらで?」
ナニ言ってるんですか。 アナタが吉祥寺に行きたいって言ったときに、 僕が足代をとったことがありますか。
「むー。ちっ!」
かちゃかちゃかちゃ。 黙ってやればいいものを。
ほんとに人にものを頼まれるのがきらいなんだな…。
「あっ!」
なななななんですか。
「これ、曲名が自動で入らないよ…」 「こんなCD聞く人いないんだよ…」
なんですって。 オフコースを聞かないんですか、みなさんは。
「過去の遺物なんだよ」 「どーすんの、これ私が打ち込むの?」
あー、いいですよ、そのまま取り込んでくれれば。
「えっ。いいの?iPodで見たときにトラック01とか出るんだよ」 「ふーん、いいのか」
えっ。いや、それはちょっと…。
「わかったよ、やればいいんでしょ、やれば」
って言ってから取り込み終わるまで時間はほとんどかからなかった。 ほんとに恩着せがましい人だ。
「あれ?まだ入れるの?」 「甲斐バンド?中島みゆき?」
「く、暗すぎる…」
えー、その点に関しては反論いたしません。 でも、聞きたいんだからしょうがいなだろう。
今日聞いてみたら、甲斐バンドは却下されてました。 なんで?
ええ。ええ。 来ましたとも。
どうも、あちこちで調べた底値のさらに半額で手に入れたらしいですよ。 僕はゼッタイだまされてると思ったんですけどね。 ちゃんと届きましたよ。 インターネットの通販にしてはずいぶん時間がかかりましたけどね。
帰宅するなり、ウィーンゴゴゴーってすごい音で。 まだ着替えてもいないのに、鼻先に赤い液体を押し付けられて。 はいはい。 飲みましたよ。 おいしいですよ、確かに。 でもね、僕は夕飯のときのビールのために、 どんなにのどが渇いても何も飲まずに帰ってきてるんですよ。
台無し。
でも、機嫌よくジュース作ってる妻にそんなことは言えませんよ。もちろん。
とりあえず、今はこのジュース作りがブームらしく、 あのものぐさな妻がジュースの材料を探しに小一時間も近所の農家を回ってるんですよ。 よりにもよって今野菜が高いですからね。
ま、あれの二の舞いにならないようにお願いしますよ。 あれって何かって。 あれですよ、あれ。
っていっぱいありすぎてわからないな。 台所にあふれかえってますって、もろもろ。
「身体にいいらしいのよ」 「搾りたてのジュースがっ」
はあ。 それでまたなんか道具を買うんですかね。
「はっ?」 「何よ、その言い方」
「ま、いいや」 「それでね、ミキサーよりジューサーのほうがいいらしいんだよね」
なんたらかんたら…。
だから買うんでしょ?
と、いうわけで午後はコ○マへ。 駐車場に入れないと思いますけどね、この時間は。
「空いてるよ」 「これは神の思し召しだねっ」
でも、神様ではなかったらしく、妻のお目当てのジューサーはなし。
「ちぇ。風邪をおしてきたのに」
はいはい。 風邪引きの人は早く家に帰りましょうね。 自己管理ですよ。
「ジュース、風邪に効くと思ったのに」
未練がましいですね。 あっ。 その手に持ってるのはなんだよ。
「お風呂でポータブルCDが聴けるんだよ、これ欲しかったんだよ」 「これはお小遣いじゃないよね、家計費だよね」
いや、お小遣いとか家計費とか言う前にポータブルのCDって、あれは僕のですよ。
「iPodあげたじゃーん。どうせもう聴かないって。買ってこよっと」
ああ。 買ってやがるよ。
その後行った生協ではなぜか大量に果物だのにんじんだの豆乳だのご購入。 ジューサー買ってないんですよね?どーするんですか、それ。
「だいじょぶ。ネットで注文するから。すぐ来るから」
でも、格安のところで注文したら納期は1週間だそうで。 どーすんだよ、この果物。
夕暮れどき。 いつもとは比べ物にならないほど、いそいそと手際のいい妻。
「お風呂が先で、夕飯は七時までに食べ終えてねっ」
張り切っているのだ。 昨年もやったあれの日なのだ。 そして、今年はもう1人異常にテンションの高い人が。 上のムスメ。 解答用紙もお手製ですよ。
妻の努力の甲斐あって七時には全員テレビの前に。
そう。 テスト・ザ・ネイション 忌まわしい記憶が蘇る…。
それから約三時間。 上のムスメの笑い声やら、下のムスメの泣き声やら、 わけのわからない叫び声やら。
結果?
ふっ。
惨敗…。
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