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2010年10月31日(日)
『あいちトリエンナーレ2010』

『あいちトリエンナーレ2010』

最終日に日帰りで行ってきました。6時品川発の新幹線で行ったおかげで時間に余裕もあり、主要6エリア中4エリアの作品を観ることが出来ました。この4エリアは徒歩でも移動出来る距離だったので交通機関も使わず、散歩もかねてうろうろ出来たのがまた楽しかった。この区画整備は上手く出来てたなあ。この手の広域芸術祭って、とにかく移動に手間がかかって作品鑑賞の時間が減りがちだもんね。心配だった台風も早くに通過、快適な天気だったのもよかった。しかも、さあ最後は芸術文化センター内の展示だけ、となった時に雨が降り出した。今月は雨にたたられることが多かったけど、最後にラッキーが来た。

7:30には名古屋に着いていたので、まずはてくてく歩いてコメダ珈琲納屋橋店へ行き、ウワサのシロノワールを食べる。シロノワールを食べたことのあるひとたちから悉くミニを食べろと言われていたのでミニをオーダーしたのに、来たものはどう見ても普通サイズ。これ、ミニじゃないよね?とまじまじとメニューの写真と見比べる。メニューにはミニは直径9cmと書かれているが、目の前のそれはどう見ても15cm近くある。そしてミニは4カットになっているが、こちらのは6カット。しかし伝票にはミニと書かれている。会計もミニの値段でした。しかも名古屋モーニングの洗礼、コーヒーにトーストとゆで玉子迄付いてきた。前日の夕方から何も食べてなかったんでお腹は空いていて、まあ食べきりましたが朝から腹がパツパツです。

いちばん早く開く会場が9:30の名古屋市美術館だったので移動、開場迄公園を散歩。ねこと遊んだり訓練中の消防隊を見物したりする。

■白川公園エリア/名古屋市美術館
篠島とガッツリ組んだ島袋道浩『きみは魚をさばけるか? 漁村美術の現在』が面白かった。長期滞在したドキュメンタリーを、写真、映像、インスタレーションで。土地に根差して生きるひとと獲物としての魚たち、その共存がユニークに展示されていました。
ぬぬっとなったのはツァイ・ミンリャン(蔡明亮)『エロティックスペース II』。無機質な部屋が20個程並んでいて、実際に入ることが出来、内側から鍵もかけられる。狭い部屋の中にはTVモニター、ベッド、ゴミ箱。モニターにはどこかの洞窟?古墳?の内部が映っている。ははーん(笑)直接的な描写はないのにひとの気持ちをエロに染めるわー。じわじわきます。実際扉が開かない部屋もいくつかあって、中で何をしているのかと…まあ当然自分もしばらく閉じこもってみましたが(笑)
常設展示の方には、河原温さんの作品があった!そうだ河原さん刈谷市出身だったんだ。『Today』シリーズが何点かと、『カム・オン・マイ・ハウス』『私生児の誕生』。た、たしかこの2点実物で観るの初めて…朝から瞳孔が開きそうです。これは予定外だったから嬉しかったなー

納屋橋会場もそろそろ開いたかな、と通りかかった御園座の二月大歌舞伎の予告看板を見てニヤニヤしつつてれてれ歩いていると、どうやら長者町会場に近そうだと気付く。こっちを先に行ってみよう。

■長者町会場
エリアとしてはここがいちばん面白かったー。長者町繊維街に点在する廃屋や店舗内に作品が展示されています。1ビルにつき3〜5作品くらい。フッツーの古いアパートみたいな建物だったりするので、混雑しているところは入場に20分待ちとかあったようです。廃業してしまったお店の建物がそのまま残っていたり、それを再利用したカフェが出来ていたり、街の衰退と再生が混在していて活気溢れるエリアでした。網羅は出来ないと判断、目当ての作家さんの展示があるビルから攻める。
存在感があったのはナウィン・ラワンチャイクン、最近こんなの撮ってるんだーと知ることが出来たマーク・ボスウィック、ボランティアの方にヒントを教えてもらい、隠れた部分の作品も楽しめたジュー・チュンリンも面白かった。
個人的にキたのが旧玉屋ビル。家に何故かある大量生産品…木彫りのヒグマとか、般若のお面とか、いろんな容器のパッケージ。それらをやすりで擦って擦ってなんだかぼんやりした存在にする青田真也作品ちょーかわいー!ちょーおもしろいー!ビルのかつて居住スペースとして使われていた一室に展示されていたことも、くらしと密接に関わっているのにあまり役に立たないものって言う曖昧さが浮き彫りになって面白かった。そして会場が爆笑の渦に包まれていた山本高之作品。こどもに歌を唄わせたり、こどもに作品を作ってもらって解説させたりする映像上映。意図した部分とどうやっても意図出来ない部分。こどもってホント面白い…て言うかこの思考の柔らかさ、もはやカオス。その不可解さを見事に引き出していました。いやーあまりにも面白いんでかなり長居してしまった…山本さんの他の作品はどこで観られるんですかー!すごい気になる。
そして面白いことに、長者町繊維卸会館のシャッターに書かれている絵は高田純次が描いたものだとのこと。随分前に描かれたものだそうです。図らずも入場を待つ行列ギャラリーの目を楽しませる展示になっていました(笑)。これ私の後ろに並んでいたフレンドリーなご夫婦がボランティアのひとに話し掛けた際に出た雑談から知りました。知らないままのひとも結構いたのでは。このご夫婦は地元の方で、会期中週末毎に足を運び、ほぼ全部の会場をまわったそう。おまつりみたいで楽しかったそうです。よかったねえ

そうそう、街中に沢山いたボランティアの方々、関わったひとは皆いいひとだったー。夏は暑かっただろうなあ、おつかれさまでした!

■納屋橋会場
映像作品メインの会場。時間の都合上フルで観られたものは少なかったですが、興味を惹かれるものが沢山。演劇的なドラマを提示した小泉明郎作品はギャラリー多かったなー。これは結末がどうなるのか気になって最後迄見入っちゃいました。
ハラビで見はぐっていた楊福東(ヤン・フードン)の作品も観られた!この展示会場はボーリング場等が入っていた複合施設だったビル。ヤンさんの作品上映場所が正にそのボーリング場だったところで、その広いスペースを真っ暗にして、35mmフィルム作品を一挙に6〜7本上映していました。映像と、映写機から発するもの以外一切光がなく、近くのひとの顔もよく見えない。この環境で観られたのは楽しかったー。孫原(スン・ユァン)+彭禹(ポン・ユゥ)の、一定間隔でバルコニーからゴミが投げ落とされるインスタレーションも面白かった。アトラクションみたいになっててゴミが飛び出して来る毎に歓声があがっていた(笑)。興味津々、かぶりつきで見てるこどもも。こういうとこからアートに興味を持てるっていいねえ

■栄エリア/愛知芸術文化センター
オアシス21の草間彌生の作品は、2日前の台風が原因で最終日を待たず撤去されていました。残念。
芸術文化センターの8Fからが愛知県美術館。ギャラリーGに直行。今回あいちトリエンナーレに行こうと決めたのは、山川冬樹さんの新作が初演されるからでした。前売りは完売、当日券もなし。まずはここから。

・山川冬樹『Pneumonia』@愛知県美術館 ギャラリーG
開演数日前に献息の募集があった。吊るされた13個の風船には吹き込まれた息の持ち主のポラロイド写真が貼られている。
まずはサウンド。水中土木作業用の潜水ヘルメットを被った山川さんが登場し、呼吸し、鼓動を聴かせる。呼吸は照明とシンクロさせてある。『黒髪譚歌』と通じるランウェイ式パフォーマンスエリアを往復する。視界が狭いようで、時々アシスタントに進行方向を矯正してもらう。
そして演劇、ドキュメンタリー要素。ヘルメットを外し、ギターを弾き、山平和彦の「放送禁止歌」を唄う。放送禁止、先刻承知、奇妙奇天烈、摩訶不思議……。人工呼吸器が現れる。私の名前はピューリタンベネット7200A、名古屋市内の病院で使われていました。私を外すと犯罪になります。そしてふたりの会話。ピューリタンベネット7200Aは歌を唄い、吊るされたギターに体当たりをして演奏もします(微笑)。なんだか人格を宿しているように見えてくる。
ブレイク、ヘルメットを被った3人目が登場。山川さんの弟、史門さんであるらしい。ふたりの会話は肺炎で亡くなったお祖父さま、食道ガンで亡くなったお父さま(ニュースキャスター山川千秋氏)の話題へと拡がる。風船を割った史門さんをきつく叱ったお祖父さまは、臨終の際人工呼吸器に繋がれていた。“息”が繋ぐ思い出、“声”を受け継ぐ肉体。
続いてインスタレーション要素。豚の肺はホルモンで何と呼ぶか知っていますか?とギャラリーに質問。ふたりが知っていた、「フワ」。フワを仕入れてくれた名古屋のホルモン屋さんを紹介し場が和む。今回の作品を発表する前にどうしてもフワ=肺を食べてみたかったと山川さん。『Pneumonia』は肺炎と言う意味だ。肺の形状、仕組み、食感を説明する。ピューリタンベネット7200Aにフワを接続すると呼吸が始まる。フワは膨らみ、そしてへこむ。まるで生きているよう。いや、生かされている。肉塊に意志はなくとも、機械はその器官を機能させることが出来る。
ピューリタンベネット7200Aは「父ちゃんのためなら エンヤコラ 母ちゃんのためなら エンヤコラ もひとつおまけに エンヤコラ」と語り出し、山川さんが「ヨイトマケの歌」を唄い出す。
そしてクライマックス。13個の風船に入った空気を山川さんが吸い込み、声を発する。ホーメイを駆使した倍音、叫び、歌。それらはループされ、会場のあちこちに設置されたスピーカーを震わせる。さまざまな声が重ねられ、時間も場所も把握出来ないような空間が立ち上がる。最後の風船を、山川さんは吸い込むことなく割る。その破裂音と同時にピューリタンベネット7200Aが停止する。器官が止まる、実際にはそこになかった筈の命が消える。ピーーーーーーーーと言う電子音が響き渡る。
…1時間くらいだったんだろうか。長くとも短くとも感じられた。音楽?舞台芸術?美術?そこにあるのは、命と言うものの凄まじさ。『4.48サイコシス』の時にも思ったけど、感動とは違う、死んではいけないと言う教訓とも違う。ただただ、生きていることは奇跡的だと言うこと。山川さんは、それをただただ見せてくれる。ひたすら、命懸けで。来てよかった…!

さてクローズ迄あと少し、残り時間で展示を一気見。不気味で最高な志賀理江子の写真+インスタレーション、ヘマ・ウパディヤイの廃材で作成されたミニチュア(と行っても広大!)街が面白かったー。そして三沢厚彦+豊嶋秀樹!三沢さんの彫刻、豊嶋さんの空間構成。弘前の『AtoZ』展以来のどうぶつたちに会えたよー!このひとたちのはドデカイ空間で見てこそなので、いいスペースで観られた、よかったー。しかも閉場寸前だったのでしばしの間ひとりじめ、うふふう。宮永愛子のナフタリン作品は入場が〆切られており入口の小品しか観られなかったのが残念。このひとまたの機会に絶対観たい、展示情報調べよう…。
閉館ギリギリ、美術館のスタッフやボランティアのひとたちが出口に花道を作っていて、拍手で送り出されました(笑)いやお礼を言いたいのはこっちの方だ!

ここで初めて地下鉄を使い名古屋駅へ。おひるは海老フライ、夜はきしめんを食べて名古屋の食も満喫したぜ。沢山歩き回ったこともありおいしく食べられたにゃー。帰りの新幹線では爆睡。いやーちょっとした遠足気分で楽しかったです。



2010年10月30日(土)
『わたしを離さないで』

東京国際映画祭『わたしを離さないで』@TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン7

あの3人が動いてる!喋ってる!という感動と、あのエピソードをカットしてああ脚色するか!というショックがないまぜ。監督はこの作品をラブストーリーとして撮ったとのこと。そう言われると納得出来るところも沢山ありました。でもそのために、キャシーとルースふたりの、女の子同士の独特な絆についての描写が弱くなってしまったように思います。マダムと校長先生=大人たちが彼らに抱いている思いについては、シンプルな描写になった分やりきれなさがより強調されたように感じました。

ロケハン、役者、映像、演出はとにかくよかった。思い描いたあの風景が目の前にあった。今思い返すだけでも涙が出る。

ネタバレしづらいな…そもそも原作が予備知識なしで読んだ方が絶対いい!ものだったし。一般公開されたらまた観に行こうと思っているので、その時に改めて感想書こうかな。とりあえずネタバレにならないところをいくつか。

・とにかくロケハンは最高
・子役と大人になってからの役者との違和感が全くなかった!
・役者は皆よかったー。主要3人だけでなく、学校の先生やマダムや、コテージの先輩たち
・今回TIFFで観た2本両方に出ていたアンドリュー・ガーフィールドいい役者さんだなー。今度スパイダーマンになる子ですよ…『ソーシャル・ネットワーク』での小金持ちくんと『わたしを〜』でのトミーが同一人物!トミーが別の人生を歩むことが出来ていたらといろいろ思いを馳せてしまった…(涙)
・“Possible”の訳が“もしか”。これちょっとよかったな
・逆に“かわいそうな子たち”、台詞では“Poor creachers”だった。これにはガーンときた
・よだん:製作がDNAフィルムズってとこがなんとも暗示的

そのネタバレとして大事なところを最初にドーン!と提示したのには驚いた。小説ではじわじわと露になる秘密を、そうであってほしくないと思い乍ら読み進め、やはりそうであったことにやり場のない怒りと悲しみを抱えて読了する流れがあったのですが、それを冒頭で無効にする。登場人物たちの行く末を知った上でこのストーリーを観てほしい、と言うことですね。で、そうやって観ると、確かにネタバレとしては相当乱暴なんだけど、作品の本質は謎解きではないと言うこともハッキリ解る。時間のなさ、とりかえしのつかなさ。それを知っている上でひたむきに生きるかつてのこどもたち。彼らの小さい頃の思い出。こういったことが一層鮮やかに像を結びます。

エピソードの脚色も大胆。これは意見が分かれそうです。終映後、監督参加のQ&Aが行われましたが、原作との違いについて鋭い質問も飛びました。司会の方が挙手を求めたところ半数が原作を読んでいるひとでした。初来日のロマネク監督は髪型も短くなり、チェックのシャツにジーンズ、スニーカーと、気のいいアメリカ人な佇まい。しかし着席前に日本語で挨拶してくれたり、 Q&Aの端々に繊細さを感じさせるひとでした。受け答えもとても丁寧。このひとが「Closer」や「Criminal」のMVを撮ったんだなあ……。

・公式記者会見での様子はこちら。ネタバレガッツリありますので未見の方はご注意を

以下被っていない部分をちょっと起こします。記憶で書いているのでそのままではありません。

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質問●子役と大人の役者に全く違和感がなかった。特にトミー役は顔だけでなく、動きの特徴迄似ていたように感じました。どうやって演出をつけたのですか?
監督●こどもたちのシーンを撮る時も、大人の役者がまるで私の演出助手のようにつきっきりでいてくれました。リハーサルの時間を沢山とり、子役たちのシーンを大人が演じて見せることもやりました

質問●原作のカズオ・イシグロから脚色について意見交換等はあったか?
監督●脚本のアレックス・ガーランドはイシグロさんと十年来の友人で、意志の疎通に問題はなかったと思います。イシグロさんが気に入ってくれるか不安でしたが、試写が終わって彼を見ると涙を流していた。とても嬉しかったです

質問●原作を読んでいます。イメージ通りのロケーションでした、素晴らしかったです。しかし疑問に思ったところがあります。キャシーがテープを聴き乍ら踊っているシーン、原作ではそれをマダムが目撃します。何故今回ルースが目撃する脚色にしたのでしょう?
監督●難しい判断でしたが、ラブストーリーとして描いたので、トミーがくれたテープを大事そうに聴いているキャシー、それをルースが目撃する、と言うシチュエーションを選びました



2010年10月24日(日)
『野音 de ワンマン』

TOKYO No.1 SOUL SET 20th ANNIVERSARY『野音 de ワンマン』@日比谷野外大音楽堂

や っ ぱ り 雨 か い

一時期降らない時期があって、俊美が「実はウチの父ちゃんが観に来ると降るってのがわかった、雨男は父ちゃんだったんだ」と言ってたけど、この日は来てたんですかね…。それにしてもDCPRGに続き、今月の野音2回とも雨だよ、しかしDCPRGもソウルセットも我が心の一軍ベンチ、雨などものともしないね!いっそ雨上等です。20周年おめでとう。

20周年と言っても途中何年も休んでいた時期もあったし、ピンとこない。しかしこの年頃(自分もなー)の20年ってなんだかんだであっと言う間だよね。でもその20年の間にはいろんな出会いや別れがあった。二度と会えないひともいる。佐藤くんや青ちゃん、他にもたくさん。オザケンは来なかった。これはこれで、ある意味ホッとした(SDP20周年に現れた時の話を聞いていたので)。かせき、ハルカリ、SDPが来てくれたのは楽しかったし嬉しかったなー。スパークリングサイクリング≡!バジリコバジリコ!ブギーバック!ビッケの呑みが復活したのでToo Drink To Liveもやったし、久々のロマンティック伝説(!!!)も聴けた。あーもーたまんねーヒロシくん最高!寒いこともあり(笑)踊り狂う。

しかしいちばん驚いたのは、ヤードをやったこと。初めて。初めてだよ。俊美がギター持たないで手ぶらでマイク前に立ってて所在なさげ、「初めてやるんだよね」と言って、それにビッケが「えっ初めてだっけ?」と応えたのにはウケた。20周年ですとかしこまった感じも感慨深い感じもなかったのに、この時ばかりは俊美さんが感極まってたように見えました。ヤード…一生聴くことはないと思ってた。あの響き渡るヒロシくんのループ、ビッケのライム、俊美の歌。巨大なミラーボール、光。ただただ、立ち尽くして聴き入った。

あぁ、雨よ、降りすぎないでくれ 両手を握りすぎないでくれ
そう、そうさ、照れくさい ちょっとした夢の話

聞こえて来ないその小さな声で また頼りないその首かしげ
いつも誰のためそれを祈っているの まだ終われない間違いの中

初の野音は台風で延期になって、その延期公演はアンコールのJr.で図ったかのように雷雨が降り出した。そしてヤードも雨。ソウルセットには雨が似合う、ソウルセットにはドラマが待っている。本人たちは淡々と進む、そしてこれからも続いて行く。またきっと別れがある。でもきっと、出会いもある。その繰り返し。

そういえば、おーもりくんから花が来ていたけど何か縁があったっけ?



2010年10月23日(土)
『じゃじゃ馬馴らし』『ソーシャル・ネットワーク』

どちらも膨大な量の台詞を演出と役者の力で魅せに魅せる作品でした。機関銃のようなテンポとリズム、すごかった!そして『ソーシャル・ネットワーク』にはシェイクスピア作品のような肌触りもあったのです。偶然とは言え同じ日に観たのは面白い体験でした。

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『じゃじゃ馬馴らし』@彩の国さいたま芸術劇場 大ホール

そもそも筧さんを蜷川演出作品で観るなんてまー、あったらいいなあればいいなと思ったことは過去何度もありましたが、今になって実現するとは。長生きはするもんだねー!と書いてからぴーとさんのブログ観に行ったら同じこと書いてた(笑)

自分の好きな演出家と役者が組んでくれれば嬉しい、と言うのは勿論ですが、筧さんが出演するバリバリのシェイクスピア作品と言うのを観てみたいとずっと思っていました。あの詩的とも言える美しいリズムの台詞は質量ともに濃厚膨大。モノにするのはとても難しいが、乗りこなせるひとが口にすれば“語らず、歌え”の世界が開けます。筧さんは台詞のF1ドライバーなので、絶対絶対面白い筈ー!と思ってて。過去筧さんが出演したシェイクスピア作品ってOTTSの『真夏の夜の夢』くらいですよね?何故だ…とも思ってて。

いやー、ま・さ・に!あのスピード、あの滑舌、あのおかしみ(笑)最高だった。筧さんを観る度思うが、ホントこのひとは芝居の怪物だわ…。あの台詞をあのスピードで言って、何故全て聴き取れるのだと言う。バリバリにクリアです。しかも言葉の羅列にならない。意味も頭にズバズバ入ってくる。プラス今回はその意味をいちいち考えてる暇をこちらに与えない、そしてそれは「あーペトルーチオってイカレてるー!」と言う印象をこちらにクッキリ植え付けます。内容的にはおいおいってな酷いことも相当言ってるのに、まあこんなひとだから…で許される域の人物像にしっかりなってしまう(笑)。そして同時にいいことも言ってるんだ、キャタリーナを口説きまくる時の甘く真剣な言葉の数々と言ったら!そのどちらもが成立してしまうとなれば、喜劇の登場人物として魅力的でない訳がない。

この作品ってモロ男尊女卑の話ととられても仕方がない内容なんですが、清々しいとも言える後味。劇中劇と言う構造を仕掛けているのが効果的で、所謂男女の役割なんて喜劇なんですよ、それを自覚した上で、役割を演じているんですよ、と言う約束ごとを提示している。そして劇中劇に切り替わる前の「(芝居は)何よりもわくわくすることですよ」と言う台詞。男女の役割を演じることは喜劇で、なおかつわくわくすること。そう言われるとなんだかパンと心が開きます。オールメールキャストと言うのもキモ。男が女を支配する、女が男に屈服させられる、と言うこの作品の嫌な面が、演技として楽しめるものになってくるのです。

“じゃじゃ馬”を演じるのは、男性が女性を演じるプロ中のプロ。亀治郎さんの女形としての所作、貫禄は勿論素晴らしく、その上で端々に“男女の役割”からはみだした演技を見せることで喜劇をより多層なものにする。突然ドスの利いた声に転じる、時折腕っ節が“男”になる、視覚的にも“男”の身体を見せる。緩急自在です。そんな彼女が終盤見せる大演説の説得力。イカレたペトルーチオにこのキャタリーナ、お似合いのふたりに見えてくる。そして亀治郎さんがいることで、月川くんも浮き上がることなくのびのびやれていたように思います。この月川くん演じるビアンカも絶品。女性の美しさ、女性の傲慢さ、女性の底知れなさ。突飛な行動も愛嬌に彩られます。

劇中劇の役者たちが入場する場面、退場する場面もすごくよかった。出てきただけで面白いよ筧さんも亀治郎さんも…くくく……(笑)。この、音楽とともに登場人物たちが手を振り乍ら練り歩く場面には一種祝祭めいた華やかさと幸福感があり、ああ芝居っていいな、人間って面白いなと言った気持ちで劇場を出ることが出来ます。あの音楽、あの役者たちの笑顔。今でも思い出せるし、思い出すとこちらも笑顔になるなー。

それにしても亀治郎さんと筧さん、どちらも自分の芸でガチンコでした。龍虎の対決ですよ!俺対俺、極端な話変人対変人(笑)。なんだろ野放しとは違うんだけど、自分の持っているものを惜しみなく出せる、それは現代劇でもシェイクスピア作品でも蜷川演出でも揺らぐことのない確固としたものを持っているふたりだからこそ。そしてそれを受けとめて、自分の演出作品に仕上げる蜷川さんも素晴らしい。演者が入る迄の枠組みの強固さ、入ってからの柔軟さ。いやー、こうなると今度は蜷川演出で筧さんの出演するシェイクスピア悲劇を観たい、観てみたいよー!そして亀治郎さんの演じる『サド侯爵夫人』とか観てみたい…この作品来年蜷川演出でやるのが決定してますが、亀治郎さんでも観てみたかったなー!

それにしても筧さんの衣装はいちいち面白かったわ…馬に乗ってる時の装束、くわがた…?みたいな兜で腹がよじれる程笑った。

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ぴーとさんと初めてお会い出来て、芝居の話もいろいろ出来て、さい芸のビストロやまで優雅なランチも出来て楽しかったーうまかったー。その後六本木に移動してMIOさんと合流、飴屋さんが箱から出た後最初の食事をした中華屋さんでごはん食べつつ音楽の話をいろいろ。こちらも楽しかったー。

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東京国際映画祭『ソーシャル・ネットワーク』@TOHOシネマズ六本木ヒルズ スクリーン6

たった6年前の出来事が、普遍性をも湛えた古典のような重厚さを備えた映画になった。裏切り、憧憬、嫉妬、誤解。ちょっとした逡巡、一時の勢いに任せた激情が、ボタンを掛け違えたかのように次々と取り返しのつかない事態を招いて行く。これはシェイクスピア作品のようではないか。それでいて、どうしようもなく現代的。若さ故の瑞々しさと苦さを描いた青春映画は、ひと昔前なら学園内での恋愛、スポーツ、バケーションと言った展開になりますが、今の若者は起業して何千億もの金を動かしてしまう。

スピード感溢れる台詞の応酬、舞台の台詞劇にもなりそうな芳醇な言葉たち。それを圧倒的なスピードで操りグイグイ観客を引き込んでいく役者たち。アーロン・ソーキンの脚本がすごい、ジェシー・アイゼンバーグ、アンドリュー・ガーフィールド、ジャスティン・ティンバーレイクら役者がすごい。そしてそれをテンポ良く緊迫感に溢れた映像に落とし込み、なおかつ登場人物に一瞬、ほんの一瞬浮かび上がる雄弁な表情を余すことなく掬いとった監督のデヴィッド・フィンチャーがすごい!

大雑把に言ってしまえば出会い系SNSを立ち上げようとしたエリート学生がオタクなプログラマーの能力を買ってサイト作成を依頼、プログラマーはそれを出し抜いて自分のものとしてオープン。アイディアを返せ!金払え!とケンカになる話です。プログラマーには共同創立者として出資を引き受けるちょいとした小金持ちのルームメイトがおり、彼ともケンカになる。子供じみた顕示欲や幼稚な意地の張り合い、コンプレックスの裏返しから来る他人への見下しが描かれます。正直言って子供のケンカなのです。しかし子供のケンカで済まなかったのが現代的なところ。彼らがやったことはあっと言う間にインターネットと言う網に散り、巨額の金が動く。幼い考えのまま社会に出て行かざるを得なくなった登場人物たちは、ちょっと可哀相にすら見える。

そこには特権階級の存在、そこに属するひとたちの無邪気な差別意識と、そこに“仲間入り”をしようとする、才能ある若者の姿がある。コネも金もないけれど、才能がある。彼は「自分は評価されるべき」と、別の特権意識を持っている。多くのものを手に入れるために、ひとりの友人を失う男の子の話にも見えます。でもやっぱり彼はひとつのものを手に入れるために、多くのものを捨てることになったのだと思います。どこかに属するため、そこに仲間入りするため。壊れた関係は二度と元に戻ることはありません。

フィンチャーはもともと大好きな監督でしたが、それは映像演出の名手としてでした。今回、生身の人間への演出力を見せつけられた感じです。ますます大好きになったー。映像の面で彼らしいなーと思ったところは、ミニチュア模型のように見えるボートレースのシーン(本城直季さんの撮る写真みたいな感じ)と双子ちゃんかな。エンドロール見たらこの双子の兄弟、ひとりの役者が演じていた!合成だったんですね…ビックリ。いや確かに同じ顔だけどさ、あの違和感のなさはすごいわ…。

トレント・レズナーとアティカス・ロスのサントラもよかったです。映画音楽として、最初はストーリーとともに聴きたかったので購入した音源は聴いていなかったのだ。そしてトレント等が直接手掛けていないエンディングに流れるある歌があまりにもシニカル、象徴的。笑ってしまうとともにどうしようもなくせつなくなりました。この選曲は誰がやったんだろう。

“上流階級に仲間入りした気分はどうだい?あそこで何を見たんだい、目に見えないものは何も見なかった?ベイビー、あんたは金持ちだ。ついに金持ちの仲間入りをしたんだね。”

よだん:
・エグゼクティヴ・プロデューサーにケヴィン・スペイシーのクレジット
・ジェシー・アイゼンバーグを見てるとなんかベン・リーを思い出すわ…
・ナップスターがこんなに絡んでるとは知らなかった。CDが売れなくなった云々のくだりは非常に興味深いシーンでした

一般公開されたらまた観に行こう。



2010年10月21日(木)
『10月突然大豆のごとく』

シティボーイズミックス PRESENTS『10月突然大豆のごとく』@新国立劇場 中劇場

わー細川さん演出になってからの作品ではいちばん好きですわ、今回。面白かった!グダグダじゃなかった!あれで?とか言うな、シティボーイズではあれはグダグダではない域なんです!せいこうさんがいないのに場が締まっていたよ…(暴言)。せいこうさんが出ていると、まことの負担軽減になるのです。ツッコミでへとへとになるまことも観る分には面白いんだけど、最近は流石に心配になったりする。失礼かもしれないけど。が、今回は叱りバーで一箇所にムキーッ!を集中させて、他のコントは穏やかクールにツッコむ作風。この手があったか。これ、いい!全体の流れとしてもいい!

昨年から参加しているふじきみつ彦さんや、今回から増えた作家陣の力も大きいのかな。半年空けた効果もあるのかな。沖井礼二さん(FROG、ex. Cymbals)の音楽もかなり好み、サントラあったら買ってた。映像も毎回格好いいけど、ジングルの入れ方がこれ迄とひと味違うものになっていておおっと思った。

うーん、なんだろ。ネタそのものは昨年の方がスコーンと抜けてる感があったんだけど、今回は役者の巧さで面白さが増した感じ。相乗効果で舞台はより魅力的になります。ゲストのラバーガール、ザ・ギースとシティボーイズの相性もよかったように思います。いい意味で無遠慮、若さが武器。で、若いのに落ち着いてるし貫禄があるし、芝居が巧い。カーテンコールでも話出ましたが、“若者”そのものがネタ(叱るバーとか、年上女房の会とか)になっているものは彼らがいなければ出来なかったですね。そして大水さんの電車のひとが怖面白過ぎた。尾関さんのご祝儀ほしいひともよかったー。

あ〜それにしても脳内ハードディスクを整理するコント、あれいいわ〜。自分も捨てたいファイルが沢山あるぜ!捨てて忘れられるんなら捨てたいぜ!叱るバーはマンドラゴラの時のサドルバー思い出してニヤニヤした。コロスも蜷川さんの舞台観てると尚更ウケる。思えばコロスをコロスらしく扱う舞台って、自分蜷川さんのでしか観てないかも。

なにげにいちばん毒を吐くのはきたろうなんだけど、まあ今回もカーテンコールではいろいろ爆弾を落として面白かった。なんでこんなに上から目線なのに笑えるのかしら〜、有志が上から目線だとイラッとくるのに(笑)天性だわね、愛されてキャラ。そして終演後物販見てたふたりづれが「Tシャツ買ってあげないの?」と言ってたのにウケた。客も上から目線(笑)もはやそんな関係。

まことが痩せててせつなくなったり(逆にしげるは多少痩せててホッとした)「来年もまたここでお会いしたい!」がなかったりでぼんやりした不安もありますが、皆元気な姿を来年も見せてほしいな。60過ぎのおじちゃんたちのコント、大好きです。



2010年10月17日(日)
『ベストヒット☆SMA』

『ベストヒット☆SMA』@渋谷のどこそこ

SMAのおまつり。お誘い頂き把握してないまま出かけていきました。やあなんかユニコーン観られるよーいやそれは渋公のチケットないとダメなんだよねー当日券出ないかしらねーみたいな。

とりあえずオンエアグループのチケットは確保していたので、east、west、duo、nest、crestでのライヴはいろいろ観られるねと言っていたら、直前になってnestに民生が出ると発表が。それはどう考えても入場規制……。とりあえずお昼くらいに行ってみようかと出かけてみると、既に「もう並ばれても入れない可能性がございます」とのこと。一度入ったら出られなくなりそうだし、民生のライヴの模様は急遽eastで録画上映されることになったので全く観られない訳ではないし、まあ仕方がない…と諦める。しかしnest、民生に倶知安乃風にYO-KINGとなれば、そのひとたち以外の出演者のファンはプログラムの時間通りに来ても絶対入れなかっただろうな。気の毒。

で、最初全てのインフォメーションはeast前でと言うことだったので、CCの当日券って出ますか?と訊きに行ってみると「それはCCに直接行って訊いてみてください」と言う。カウンターのおねえさんはいいひとで、でも状態を把握しておらずわざわざ他のスタッフに確認しに行ってくれました。この時点でいやな予感…これはお互いの会場の連絡が全く出来てないなと……。あんだけ公式ツイッターやサイトがあるのに、当日の案内がまるでない。結構いきあたりばったりなようでした。てくてく歩いてCCに行き問い合わせ。当日券は出ませんとのこと。

この時点で13時くらいだったかな?開演16時迄は間がある。CCから代々木公園方面を見るとなんだか楽しそうな屋台が沢山出ている。『東京ベジフードフェスタ』でした。天気もよかったし、いろいろベジフード食べ乍らのんびり。おいしかったー。公園だけにいぬをつれてきているひとが多く、いろいろかわいいいぬらを見たりさわったり出来てたのしかったです。

で、オンエア界隈に戻りザ・ビートモーターズ(east)、黒猫チェルシー(east)、GENERAL HEAD MOUNTAIN(duo)、VOLA & THE ORIENTAL MACHINE(duo)、OKAMOTO‘S(east)、UNISON SQUARE GARDEN(east)を観る。westにも観たいものはあったんだけど、何故かeastでひきかえたドリンクが持ち込めなくてなんだか面倒になったんでやめた。わけわからん。

しかし観たものは皆面白かったー。若いのに手練な感じのバンドも多くすごいなーと思ったー。そして何故に皆さんこんなに貫禄があるのか。そして久々に観たボラはすんごいダンスミュージックになっていてビックリした。ちょっと衝撃。SMAていろんなひとが所属しているんだなあ。

そしてeast最後に民生の映像。nestってホント狭いし段差もないので、後ろのひとは何も見えなかったりしたんじゃないだろうか。そういう意味では映像でじっくり観られてよかったな。民生は格好よかった!

ライヴの内容に関して具体的なことは全然触れてませんが(トホホ)楽しかった!これ恒例になるのかな、来年もあったら行きたいものです。



2010年10月16日(土)
『ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所』

遊園地再生事業団 #17『ジャパニーズ・スリーピング/世界でいちばん眠い場所』@座・高円寺 1

眠りについてのインタヴュー。眠ら(れ)ない男3人、いつも眠っている男、異常なほどよく眠る女、思わぬ場所で不意に眠ってしまう女、いままさに眠っている女、セカイでいちばん眠い場所をしっているという女。そして製薬会社の営業マン、インタヴューを撮影するカメラマン。

練炭で集団自殺を図った一団の記事から連想される、ある人物についてのモノローグ。それによって完成させられなかった小説について。セカイでいちばん眠い場所をしっているという女と眠らない男のセラピーのようなダイアローグ。ダイアローグはモノローグのようで展開される。いつも眠っている男にインタヴューするカメラマン、思わぬ場所で不意に眠ってしまう女の状況説明。それぞれのシーンを時系列を無視してランダムに提示する。シーンが提示されている間は、後方スクリーンにチャプターナンバーが映し出される。何層にもわたる出来事、時系列から解放され行き来する思想。

そのように構成されているように見える…が、そうではない。ストーリーがあるようでない。と言うか、意識的にストーリーを避けている。テキストには膨大な引用と参照があり、それはオープンにされている。今敏監督の遺言『さようなら』から夏目漱石、安部公房、川端康成、チャンドラー、ポー、ベケット等の小説、睡眠障害や薬物についての文献迄多岐に渡っている。宮沢さん自身が睡眠障害だと言う。眠れるひとへの興味、眠れないひとへの共感、発端はさまざまだろうが、答えはどこにもないようで、どこにでもあるようにすら感じる。それぞれが、自分の答えを持っていて、それを見付けられないでいる。或いは見付けていると思っていても、それは“正解”ではない。例えば、わかっていても眠れなかったり、わからなくても薬物で眠ることが出来たりする。心のせいで眠れなかったり、身体のせいで眠れたり。頭では解っている、身体では解っている。しかしそれらは相反することもある。

淡々と話す役者たち、淡々と進む構成、眠りを誘われそうでいて、観ているうちに頭が冴え冴えとしてくる。そして淡々としている登場人物が異様に記憶に残る。客演の伊沢磨紀さんややついいちろうさんの存在感は流石だが、とにかく全員が強烈で、視線の分配に困る。

林巻子さん(!)の美術、よかったー。モニターとスクリーン、椅子のシンプルな構成だけど、すっきりしていて美しい。最前列だったので、もうちょっと後ろで全体を観てみたかったな。桜井圭介さんの音楽はオリジナルと選曲がありましたが、その区分けみたいなものは何だろう、と思った。選曲も桜井さんなのかな、それとも宮沢さん?大音響のマイブラ、エディット・ピアフの「水に流して Non, je ne regrette rien」(これは『インセプション』の“キック”を連想させますね)。この辺り“眠り”を意識した選曲だったのは間違いないだろうけど、それをハッキリ連想させる既知の曲たちと、桜井さんの曲とのバランスが不思議な、と言うか奇妙な落ち着きのなさを感じさせもした。この気持ちよさと居心地のわるさ、宮沢さんの作品によく感じる。

それにしても、枕で殴り合いってなんであんなに楽しいんだろう(笑)。



2010年10月15日(金)
『KORN III: Remember Who You Are JAPAN TOUR 2010』

KORN『KORN III: Remember Who You Are JAPAN TOUR 2010』@STUDIO COAST

単独あってよかった…初めてLOUD PARKに行くことになるところだった。いや行ったら行ったで面白そうなんだけど、メタルにはあまり縁がないもので。そうなんだよなあ、メタルよく知らないのに、KORNだけは大好きなんだよー。って、KORNをメタルでくくるのも?だが。音は確かにメタルの要素もあるしメンバーもヘドバンとかするけど、自分の中ではニューウェイヴ…いやいっそのことニューロマだよ!そしてジョナはちょうエモいよ!

そんな訳で(?)前回の来日ではOAが2つあった上なかなか本編が始まらず、開演が20:30くらいだった記憶があったのでのんびりしていたら前日の大阪がOAなしの定刻に始まったと知り慌てる。走った走った、入場と同時に始まりました。間に合ってよかった……。

いやーよかった。新譜の曲ライヴ栄えするねー!ヘッドに続きデイヴィッドもいなくなりましたが、KORNだったよ…(泣)。ええと把握してませんがレイってサポートなの?正式メンバーなの?(追記:ミッチさんのブログに新加入と書いてあった)そのレイのドラムがすごかったー。本人のルックスは地味なのに(失礼)演奏は派手!あとサポートでGとKey、6人編成。そういえばマイクスタンドがギーガーのじゃなかった…。ドラムセットも簡易版?だったようです。しかし演奏はよかったよ。

曲間にジャムっぽいこともやったり、前回よりギュッとタイトになった感じでした。フィールディーがいろいろ仕掛けてて面白かった。前回ヒゲの女子高生だったフィールディーは相変わらず素敵であった。そして殆ど縦にして弾くベースがまた格好いい。音はかなり歪ませてあるので場所によっては音程が聴き取れなくなったりしたんだけど、そのドスンと腹にくる重低音で鳴らされる曲の圧倒的なことと言ったらもうね…。そういえば終演後マンキィがピックまいてるのを見てるなーと思ったら袖にひっこんで、大量のピックを持って現れてまいてたのにはウケた(フィールディーはピック使いません)。と言うか使ってないじゃんと終演後指摘されて気付く自分もどうかと思う。そしてマンキィはいつでも厚着だね……。

ジョナサン序盤はなんだかちょっとどんより?気味っぽく、一曲唄う毎に酸素吸入してたんだけど、途中からスイッチ入ったみたいにエモ!エモ!ちょうエモい!いやもうどんよりしてても心配になるけどスイッチ入ってもハラハラするよ。そしてあんだけエモく唄えば酸素も要るよ…もうね、なんかプライマルスクリーム(否バンド)ですかってな叫びで、声だけじゃ足りないと言わんばかりに身体全体で唄うもんだから、聴いてるこっちもうわーんてなる……。まだ出したい!まだ足りない!みたいに腕やらなんやら振り回しまくり乍ら唄うもんで、時々すごく変な動きになるんですが(ゴリラのドラミングみたいになってたり)それがもう笑いを通り越して格好よく見えてしまう程です。これをツアーに出たら毎回やってると思うと…すごいよ、本当に……。感情のコントロールとか出来なくなりそう。いやむしろこれでバランスを保っているのか?どうなんだろう。ジョナは本当にすごい……。

「We Will Rock You」や「Another Brick In The Wall」等カヴァーもよかった。ジョナの歌は本当にすさまじい(涙)ちょっと身体も絞ったような…そのせいかまた声がよく出るようになってたようなー。しかしアンコールでバグパイプ吹き乍ら現れた時、お腹がぽっこり出ててほっこりした(笑)。てゆーかさ、最後投げキッスしてビックリした!ちょ、なに、どうしたの!笑顔も見えてよかったねえと思ったよ。

そういえばこの日は上下adidasのトラックスーツだった。豊洲('98フジ)ではPUMAだったのを思い出した。「A.D.I.D.A.S」て曲があるのにPUMA着てる〜って思ったんでよく憶えてる(笑)。フィールディーもadidas着てました。

そんなジョナはステージを降りればこんなに穏やかおちゃめさんです。ちょ、かわゆい、そして何そのTシャツ。ご近所づきあいって(笑)。同一人物とは思えない〜

なんかジョナのことばかり書いている…いやもうホントよかった……観られてよかった……。KORNでデトックスした気分だ。また元気で会いたいものです。

おまけ:
これすごく面白かった〜『Kerrang!』のジョナとマンキィがクイズに答えるやつ



2010年10月10日(日)
『COLD SLEEP』

川井郁子&ファルフ・ルジマトフ 1st Collaboration『COLD SLEEP』@新国立劇場 中劇場

振付はボリショイ・バレエ団の岩田守弘さん、構成・演出はスズカツさん。るるるるじまとふさんに失礼があったらどうしよう(それはスズカツさんに対して失礼じゃないの・笑)とびくびくし乍ら観に行きました。事前情報を読んでもわかるようなわからないような…だったし。いや、あらすじみたいなものは、まっさっにっ90年代初めにザズゥシアターでやってた感じのものだったんだけど…これをバレエで?と言う……。

しかしルジマトフはルジマトフなのであった。そして川井さんも川井さんなのであった。『“ヴァイオリンの女神”と“バレエの美神”』とか紹介入れちゃうくらいですからね。ナルシスト対ナルシスト、両者一歩も譲らぬガチンコ対決。構成が、男女が出会って愛し合って争って闘って死により別れてみたいなののぐるぐるだったんですが、愛し合ってるシーンでも闘ってるように見えるよ!(笑)“私”が常に前面に出ています。「男を愛するアタシ」「男の支配に抵抗するアタシ」「女を愛する俺」「女をエスコートする俺」みたいな。自分をいちばん愛してるのは自分でーす。…いや、このひとたちくらいになるとそうもなるのであろうよ……それが強靭な美しさを放っているのでいいのではないですか……。

すごいのは、こんな感じなのに、実際舞台にあがっているものと観るとなんの嫌味もなく観られてしまうのですよ。そこが一流の証なのでしょうなあ、眼福です。もうルジマトフにはぽ〜となりましたもん(笑)。いやー素敵だったわ……。実のところいちばん惹かれたのは、セットをとりのぞき、シンプルな衣裳に着替えたふたりが音と踊りだけを示すエピローグ「J.S.バッハ:シャコンヌ」でした(この曲の振付はホセ・リモン)。

ひっかかったのは、所謂カラオケをバックに演奏していたこと。パーカッションの生演奏も入っていましたが(高田みどりさん(!)と、和太鼓で服部博之さん、辻祐さん)…この手のソロイストのコンサートってあまり観たことがないのでよく判らないんだけど、普通のことなのでしょうか。バレエだと録音したものをかけて踊るのは珍しくないけど、カラオケ+生演奏ってのはちょっと気になった。

スズカツさん構成・演出の面から興味深かったのは、男は何代にもわたっているのに女は同一人物だったってところかな。あと自然が女の味方をするところ。最近パティ・スミスの9.11を題材にした詩をMIOさんに教えてもらったんだけど、それは「巨大ビルを建てるのも男、破壊するのも男……男たちの自作自演を、ただ見ているのが、女」と言うものだった。これをちょっと思い出したな。塔と言うモチーフも出てきましたしね。

個人的にはeastern youthの“何回だってやり直す〜”が頭の中で鳴ってました(笑)。いつかはやりなおせる時が来ればいいのにね。

その他。
・ヨタロウさんがナレーション!
・川井さんの使用楽器は1715年製のアントニオ・ストラディヴァリウスだったんだけど、パンフレットに「都合上、同楽器を使用しない楽曲もございます」と注意書きが。演奏する川井さんをルジマトフがリフトしたりする振付もあったので納得(笑)



2010年10月09日(土)
DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN再始動

DATE COURSE PENTAGON ROYAL GARDEN@日比谷野外大音楽堂

DCPRG再始動は、絶好のシチュエーションになりました。流石です菊地さん、土砂降りの野音です。被災とか言うなや!(笑)

自分の頭の中を整理するためにまずメモから。

・再始動の経緯等:ele-king『デート・コース・ペンタゴン・ロイヤル・ガーデンの復活 ――菊地成孔、インタヴュー』

・メンバー
菊地成孔(Conduct、Organ、CDJ)、坪口昌恭(Key)、大儀見元(Perc)、津上研太(Ss、As)←欠席
(以上正式メンバー/残留)
丈青(Key from J.A.M、SOIL&"PIMP"SESSIONS)、千住宗臣(Drs/Left from COMBO PIANO、PARA)
(以上正式メンバー/新規加入)
田中教順(Drs/Right)、アリガス(B)、高井汐人(Ss、Ts)
(以上正式メンバー/新規加入 from ペン大)
ヨスヴァニー・テリー・カブレラ(Ss、Ts、Shekere)、リッチー・フローレス(Conga)、竹野昌邦(As from 南博GO THERE!)
(以上日比谷のみゲスト)
佐々木史郎(Tp)←元メンバーご祝儀出演、TAKUYA(G ex. JUDY AND MARY)
(以上日比谷、ボロフェスタゲスト)
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来年から類家心平(Tp)が合流、Gの正式メンバーは現在交渉中につき名前出せず

・タイムテーブル
DJ:小林径/17:00〜
ヨスヴァニー・テリー・カブレラ&リッチー・フローレス/17:40〜
DCPRG/18:00〜20:00

・セットリスト
01. バラク・オバマ米大統領就任演説〜菊地坪口のインプロ〜ジャングル・クルーズにうってつけの日
02. PLAYMATE AT HANOI
03. 構造II〜Catch22
04. CIRCLE/LINE〜HARDCORE PEACE
encore
05. Mirror Balls

えーとこれで合ってるか?津上さんの代打が竹野さん、類家くんの代打が佐々木さん。そして前期の編成からTb、Tub、Tablaがなくなり、Keyが1パート増え、Gが1パート減っています。とは言え以前から全員揃わない変則飛行は珍しくない。大所帯だしかけもち多いし。菊地さん曰く「今日は外人部隊と助っ人」と言うメンツ…この“外人部隊と助っ人”と、レギュラーメンバーとの間に起こるちっちゃなマジックが散弾のよう。ちょ、あちこちでいろいろ起こり過ぎ!耳も目も追いつかん!これが今回しか観られないとは…いや、今回しか観られないからこそDCPRGらしいと言えばらしい。いつも同じものはないものね。そして野音の使用時間が限られているため、3時間超があたりまえのセットを2時間に凝縮、濃いー濃いー。原液飲まされてる感じでした。いやーこの日しか聴けない、正にスペシャル。再始動の門出にこれ以上ない狂った宴を見せてくれました。

しかしリハ3日間(8時間×3)でこうなるのか…実に恐ろしきは傭兵部隊のポテンシャル。

オバマの演説をCDJでズッタズタにしたスクラッチから始まり(アメリカが常に眼前にあったDCPRGの再始動にふさわしい)、菊地さんと坪口さんのインプロ(ここらへんTZBのようでした)、徐々に3〜4人ずつメンバーが演奏に加わっていく流れ。全員揃ったのは1曲目終盤〜2曲目序盤。Drs/Leftの千住さんが最後に入ったんだけど、これは狙った訳ではないようで、なんと千住さんは朝霧JAMにCOMBO PIANOで出演後駆けつけたのだとか。ひえー、おつかれさまです。

音の印象は、若い!と思ったのがいちばん。両ドラム+ベースのリズム隊がゴリッゴリ、年長者を踏みつけていきそうな勢い。特にアリガスさん。個人的にDCPRG聴く時って基本ベースをガイドにしているのですが、音質が前任の栗原さんとかなり違うので印象に残ったなー。PAの効果もあるのかも知れないけどとにかく硬質でクリア、アタックが強い。スラップ気味のフレーズもどんどん入れる。そして中低音(TbとかTubとか)が不在なので、ホーンのアタックのズレがない。全体的にエッジが利き、攻撃的。前述のインタヴューにもありますが、デートコースチルドレン…ティポグラフィカには間に合わなかったけど、DCPRGを聴いて育った(ポリリズムの共通言語がある)若手が水を得た魚のように意気揚々と演奏しているのが感じられてワクワクしました。そしてその若手がやんちゃに暴れているのを年長組がしっかり支えているようにも思いました。このバランスがスリリング。

で、その攻撃的な音に見事にのっかったのがTAKUYAくん。参加が決まった時には本当にビックリして、どういう縁が!?と思ったのですが、菊地さんがMCで語ったところによると「ギターが決まらなくて本当にこりゃやばい、どうしよう誰かいない!?となった時に、……あっ、一度一緒に呑んだことがある!いいひとだった!と思い出し」とのこと…うわははは!「Playmate〜」辺りでは指揮をしっかり見てビシッとアタックを合わせていて、ソロもカチッとしたものでへええと思ったのですが、爆発したのが「構造II」のソロ。この日のセットの中でいちばんややこしくて(しかも途中から「Catch22」にシフトしたよね?確か)、誰が何拍子で演奏してるかわかんねー!ってなる曲(笑)なんですが、どんどん複雑にそして速くなるポリにメタル的と言ってもいい文字通り金属的、硬質なカッティングを絡める。こーれーがーよかった!もともと独特なカッティングをするひとですが、そのリズム感覚がガッチリマッチ。これはアガッた。しかも前方に出ーてーきーたーぞー!DCPRGで前に出てきて客を煽るプレイヤーがかつていただろうか、あっ、坪口さんがいた(笑)、でも坪口さんのとはまた違うんだよ!キマるんだよ!坪口さんごめん坪口さんのはあれがいいんだよ。…なんだろ、メジャーを相手にやってきたひとの強靭さと余裕が感じられて……魅せることを知っていると言うか。いやー感服しました。華があるわ〜。ボロフェスタは地元だからますます盛り上がるかも。

よだんですがその音といいステージアクションといい恭一を思い出し、ちょっと違う意味で涙が出そうになった。両方知ってるひとには解るよね。ちなみにTAKUYAくん、前日代表戦でゴールを決めた岡崎選手に敬意を表してか、背番号9のレプリカユニを着ていました。下は豹柄のハーフパンツ(笑)。

「Catch22」と言えばアウトロの千住さんのドラムソロがすごくよかった。た、多分9拍子……。田中ちゃんのソロも今度は聴きたいぜ。

イントロから大歓声の「CIRCLE/LINE〜」、「HARDCORE PEACE」への繋ぎのラインは大儀見さんとリッチーのかけあい。リッチーは「世界一速くコンガを叩く男」だそうで、ホンット高速にコンガを連打する。TablaとPercでタメにタメて…だった前期とは違う面白さ。朗らかでナイスキャラクターなリッチー、途中自分の持ち場を離れ大儀見さんの楽器をこれまた高速で叩き、大儀見さんとハイタッチをし、また戻ってコンガを高速で叩く叩く。そりゃ盛り上がるがな!こんなんで「HARDCORE PEACE」になだれこんだらぎゃあああああとか叫ぶがな!しかしこれリッチーいなくなる今後どうなるんだろ、Percひとりだからなあ。気になるところです。

で、「HARDCORE PEACE」ではそれきた坪口さんがショルキーですアヒャーイ。当然TAKUYAくんも出てくるし、ふたりであっちゃこっちゃ動かれた日には楽し過ぎて天を仰いでゲラゲラ笑いもしますよ…雨結構飲んでしまった。坪口さん歯ギターならぬ歯ショルキーもやったで。意外にちゃんと弾けてたで。しかしはっちゃけ過ぎたのか、ケーブルが抜けたで(爆笑)そうだよこういうところが坪口さん!だいすき!あーこの辺り笑い過ぎて吐きそうになった。野外なのに酸素が入って来ない、過呼吸気味。

「Playmate〜」の時がいちばん雨が激しく、フード越しに頭に打ち付ける雨が痛い程だったんだけど、ほぼ満杯(だったと思う)の客席を離脱するひとはいなかったように見えた。席を離れたなーと思ったひとが、ビール持って戻ってきたのには笑った…アホだ。合羽等一切着ずに踊り狂うひと、ジョーよろしく燃え尽きたか座ったまま寝てるひと、エアコンダクトするひととカオスでした。皆頭おかしいで!

あとはーなんだ、何を書いてないか…そうそう丈青はまだはみだし感はない感じ。エレピ音メインでソロもしっかりこなすしやはり格好いいピアノを弾くのですが、DCPRGでどうやっていくかはまだ見えませんでした。ヨスヴァニー・テリーはサックスだけでなくShekere(カバサみたいなの)を演奏したり、楽しそうでしたよー。

アンコール前に初のMC。前述の通り客もおかしくなってるので、口々に菊地さんにいろいろいっぺんに話しかける(これはDCPRGではよくあったか・笑)おかえりとか待ってたとかあれやってとかこれやってとか時間ないからはやく次の曲やってとか。ははは!「おちついて!」と応えていた菊地さん、しまいには「わかった。おちつかなくていい」だって(大笑)。そしていつもの如くあることないこと喋ってましたよ…あーこれがないとねえ。そして「では最後に甘い一皿を」。と言うことは…?きた、あのベースライン!最後にこの曲って、前期終了間近にはなくなっていたことだったので嬉しかったなあ。いやー、やっぱり涙が出ました。“泣きたくなる様な安っぽい話し”、“ミラーボールを発明した人には、ノーベル平和賞をあげるべきだと思う”。憶えている、2005年6月のクアトロで、菊地さんはそう言ったんだ。と、思い出して自分の日記を見直してみたら、この日にも「構造II」「Catch22」の行ったりきたりってのをやってるわ。

あーなんかまとまってなくてすみませんね……。小林径さんのDJ(最後にかけた曲すごかったな)もヨスヴァニー・テリー・カブレラ&リッチー・フローレスのデュオ(リッチーがコンガをその場でループさせて多重演奏してたように思うがどうでしたっけ)も面白かったんですが書く気力がありません。

今後メンバーがかたまってからどうなるか、全貌は未だ不明ですが、一瞬たりとも見逃せないバンドが帰ってきた。一瞬たりともと言いつつボロフェスタ行けないんですけどね…(泣)行かれる方、ご期待あれ。



2010年10月08日(金)
;UNDERWORLD.

;UNDERWORLD.@Zepp Tokyo

このくらいのキャパのハコで、ワンマンで、オールではなく約2時間のギュッとしたセットと言うのは随分久し振り。ここんとこエレグラやフェスで疲労困憊の時間に観ることが多かったので、今回は体力配分を気にせず踊り倒せて楽しかった!現在筋肉痛。一応翌日に出たのでよしまだイケると思ったが、いやはやカールはその次元ではない。53歳ってうっそおってなものですよ…動きといい声といい何あの若々しさ。そのボーダーも1996年のRAINBOW 2000と同じやつですかと問いたくなる程たたずまいが変わりませんよ。変わったと言えばヘッドフォンがイヤーモニターになったことくらいなんじゃないの……。

いやホントのところは時々ぜえぜえしてたように見えた。でもそれは年齢からくることと言うより、今回歌ものが多いから、カールは大変だったんじゃないかなと。いやでもね、この熱さと言うか手の抜かなさと言うか、音源聴いてるだけでは伝わらないカールの唄い上げっぷりとか素晴らしいよ!そして踊るのも決してやめないもんねカール(泣)。そうだよ踊らな!見習いたい!あんなじーさんになりたい!いや、私がなるのはばーさんです。いや言うだけじゃダメだ、見習います。私もがんばろう…背筋を伸ばされる思いでしたよ……。

……あっ、今気付いた。カールって野田秀樹さんに似てるんだ!身体付きといいその動きのキレといい。うわーそうかーーー!!!(なんだか自分だけがユリイカ!のきもち)小柄でもスーツが似合うガッチリした上半身ですよね。あれは鍛えてるなあきっと。

それはともかく、まず驚いたのは新譜からの曲でシンガロングになったこと。アッパーで歌ものが多い『Barking』ですが、いやそれにしても…!「Always Loved A Film」の“Heaven, Heaven, ... Can you feel it? Can you feel it?”のとこ、ぶわーっと声があがって。この時の多幸感とせつなさと言ったら…うえーん!泣くがな!自分の周囲だけだったんだろうか…歌ものに引っ張られる感じが今回結構強くて、それにつられて過去の曲でもフロアから歌が出る出る。ほら、ループ部分とか、シンプルな単語が多いから。「Cowgirl」でも“Everything, Everything”をぜえぜえ息きらしながら唄ってるひともいて(笑・あれブレスしようがないもんね)、あと“アイスクリームアイスクリーム”ね(笑)。お、面白い!と言うか新鮮!UNDERWORLDで大合唱!これは楽しかったー。

自分もかなり唄ってもうた…そして終始ぎゃーとかきゃーとか言ってたから喉が嗄れた。UNDERWORLDで喉が嗄れるとは。

そしてリックがゴキゲンで出て来るなりぴょんぴょん跳ねて手を振った…手拍子とか。リックが手拍子促してる、そりゃ応えます、がんばります。入りがズレてドカンとくるところの筈がドガガッてなったりするところも毎度のご愛嬌だ!むしろああホントにライヴで操作してるんだって思って嬉しかったりした!

後ろの方のモニターに、ステージ後方にLEDで映し出される映像パターンが同時に流れていて、LEDだと隙間が多くて何を映しているのか判らなかった素材が何かわかって面白かった。照明もバッキバキに派手だったなー。もうまさにポケモンのあれみたいな…危なそうなので、その時には意識的に瞬きを増やしました(笑)。

あーもう支離滅裂だがとても楽しかった…そして自分もうだうだしている場合ではないと思った!時間は待ってはくれないのだ、どんどん行ってしまうのだ!焦る訳ではないけど時間の無駄遣いはしてはいかんと思った!二度と戻ってこないことなのだから、なにごともだいじにしようと思いました。とりあえず部屋を片付けようと思います(そこか)。

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セットリスト

01. Downpipe
02. Always Loved A Film
03. Nu Train
04. Two Months Off
05. Scribble
06. Bird 1
07. Cowgirl/Rez
08. Between Stars
09. Diamond Jigsaw
10. King of Snake
11. Born Slippy Nuxx
encore
12. Dirty Epic
13. Moaner

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2010年10月03日(日)
『ガフールの伝説』

『ガフールの伝説』@新宿バルト9 シアター3

ふくろう目当てで。いやーストーリーがふくろうによる9.11以降の代理戦争みたいな内容でどんより……。しかもなんてえの、ボクたちにも良心があるんですよアピールがウザいことこのうえない。は〜イライラするわ〜(笑)。もうね、教訓を与えようとかそういうのイヤ!しかもふくろうで!あざとい!家族連れも多かったがこどもはどう思うのかね……。

しかしストーリー以外はすごくよかった!予想以上に楽しめました。ザック・スナイダーが監督???(だって『300』とか『ウォッチメン』のひとですよ)と思っていたら、これがよくてですね。アクションシーンの切り替えとかハイスピード部分とか、すごく格好いい映像に仕上がっていました。今回初めて3Dで観たんですが、3Dで観てこそのサービスショットと思われるシーンも満載で楽しかった。そしてとにかく美しい…さ、さわりたい!と思わず手が伸びそうになるふくろうの羽毛ふわふわとかの質感、翼の羽ばたきの迫力、もうたまりませんでしたよ。

3Dで字幕見ると疲れそう、と思い吹き替え版を観たのですが、頻繁に出てくる「さのう」を「左脳」とずっと解釈していた。しかし流れからすると感情とか感覚的なことについて話しているので、「ええ、それなら右脳じゃないの?」と思っていた。帰って調べてみたら「砂のう」だった…鳥の胃袋のことだそうで、人間のこころや魂にあたるところ、とのこと。ええーだから胃袋で感じろ!とか言ってたのか……とり好きならすぐピンとくるのか、「さのう」って?



2010年10月02日(土)
BOOM BOOM SATELLITES JAPAN TOUR 2010 2nd STAGE

BOOM BOOM SATELLITES JAPAN TOUR 2010 2nd STAGE@幕張イベントホール

としよりのご多分に漏れず昔話をすると、ブンブンを初めて観たのはLIQUIDROOMがまだ新宿にあった頃。ウォールオブサウンドのイヴェントで、セカンドフロアの方が客多いんじゃねえの(ロビーでもDJやってた)って感じのひっそりした真夜中のメインフロアで、何の演出だかビニール人形が飛び交っていて、客少ないからその人形も床に落ちがちで(笑泣)ライヴはすごくどんくさかった…CDではあんなに格好いいのに何故だ!とショックを受けたんだった……。

その頃ブンブンはビッグビートの枠に入れられがちで、その手のパーティに出てもすごく浮いていた。『Joyride』がメインのレパートリーだったから、BPMが速いものもないしアッパーなサウンドでもないし(でもすごく好きなんだこのアルバム。今でもいちばん好きかも知れない)、アブストラクトな立ち位置も含めなかなかしっくり来るイヴェントがなかった。『OUT LOUD』が出て、ワンマンが増えてからもライヴには長い間苦戦していた。しかし海外ツアー含め地道にじっくり、周囲からなんやかや言われたんだろうけど頑固に鍛錬してきたんだと思う。方向性も結構変わった。それを成長と言うか迎合と言うか、意見は分かれるだろうけど、どちらにしろ昔の音も今鳴らしている音も、ブンブンにしか出せない音なのは確か。

そして!ここ迄!!きましたよ!!!最近ではフジでのホワイトトリやグリーンPTA前、サマソニのマリンNIN前と結構プレッシャーな現場もあったでしょうが、単独でこの広さは初めてです。よ、ようがんばった!(泣)セットリストもステージ構成も練りに練った、詰めに詰めたと感じられる(感じられちゃうとこが青いと言うひともいるかも知れんがそれはまあいいじゃないか!そういうとこもブンブンなんだよ!)とてもいいライヴでした。感無量だ…いろいろ走馬灯が見える勢いですよ……。もうね、靴をなくした新宿リキッドとか、中野くんが謝った激ロウなAXとか、オール明けの歌舞伎町とか、いろいろ思い出した!最後ちょっと泣いた!

あー前置き長い。

いやもうね…普段穏やかでロウ気味な川島さんが、あんだけ感情を表に出したように見えたのもうわ!となったし、でもMCとなると「有難う」しか出ない(本編最終曲のアウトロだけで4回は言った・笑)ところにもなんかもう…ライヴは派手になったけどシューゲな心意気は変わらないのねと思ったりして……なんだろう、あの性格(ってそんな、このひとたちの人間性とか知らないけど。印象としてね)であんだけアッパーなステージやるのって結構たいへんなことだと思うんです。でもやりたいことはこれなんでしょう。で、音にはそれが出せる。音でしかそれを表現出来ないのでMCは朴訥、と言うかおぼこい。MCで「おめーら盛り上がってるかー!」「まだまだ行くぜー!」とか言えば会場はうわーっとなるし即効性もあるんだけど、そうじゃないところがまたブンブンらしいなーと思ったのです。前述の「川島さんが感情を表に出した」のも、MC部分ではなくあく迄歌の部分だし。そういうところがまた胸に迫りました。

いやでも川島さんよく動くようになったよね…昔はおきもののようだったもの。「マイクスタンドと一体化していた」(@どるさん)もの(笑)。

意地悪な意味ではなくて、14年一緒にやってきた平井さんの音を思い出す箇所も多々あった。Yokoさんがレコーディングから参加している曲は意識せず聴けたが、それより前の曲には時々ハッとさせられる。「Rise and Fall」「FOGBOUND」が顕著だった。同期ものが重要な位置を占めるものになるとなかなか厳しい。しかし「MORNING AFTER」辺りのしっかりした4つ打ちや8ビート、そして中野くんが彼女はこれ、と推していたブラストものには、ああこれはYokoさんじゃないと生まれなかったリズムだろうな、と思わせられた。明らかに違うタイプのドラマー。そして、今のブンブンが必要としているのはYokoさんの音なのだな、と思った。ヴォーカルから入るヴァージョンになった「DIG THE NEW BREED」はこれ迄随分変化を遂げてきた曲だけど、リズムが変わったことでまた印象が変わった。

中盤に最新作の曲を続けざまにやったんだけど、この辺りの緩急がすごくよかった。フジでは肉肉肉!灰汁とりません!なアゲアゲ連発で、あれれ?もっといろんな表情があるバンドなのに…と思ったんだけど、今回の流れはとてもよかったなー。「STAY」〜「FOGBOUND」間、ステージとフロアを遮った紗幕に投影された映像がとても美しかった。スタンド最後列から観ていたので、世界に引き込まれた。それに見とれていたのでひょっこりブンブン島(@どるさん)が出現するさまを見逃した。痛恨。

そう、ステージがせり出してきたんですよ…お、おおじかけ!最初はステージ中央に花道がありまして、盛り上がるところでフライングVを抱えた中野くんが駆け込んでギャーン!とか弾いたりして、その後ろを川島さんがしずしず追ってちょっと端っこでギャーンとかやってたんですが(ヴォーカルなのにおくゆかしい。それがいいのかもしれん)、そこ迄ステージ全体が出てきました。花道周辺とフロアの間が変に空いていて、なんであそこ迄客入れないんだろうと思ってたんだけどこういうことだったのか。ビックリした!ビックリした!

中野くんのファッションについてはいろいろ思うことがあり過ぎて逆に言葉になりません(笑)いや、似合ってるんだけどね…そしてキングオブ小顔、トランジスタグラマー(まちがい)。フライングVが大きく見えるので、それを振り回して踊るさまはパンキッシュなガールズバンドのようでした。かわいいねー(無礼)。コンパクトなスタインバーガー使ってた時は自分の身体に合っていて扱いやすいんだろうなと思ってたんだけど、ここ数年決して音がいいとも言えないフライングV使ってるのはやっぱりロックをやるんだと言う姿勢の現れなんでしょうか。初期に川島さんがフライングV使い続けていた時期があったけど、それとも違う意思表示に見える。まあ思ったまま進めばいい…好きにやればいい……。

ホントここ迄来られてよかったね……よくがんばったー!(泣)しかしこれで終わりではないのです。アンコールで「集まってくれて有難う」「学ぶことが多いツアーでした」等謙虚と言うかツアーをやり遂げたと言う解放感が感じられないMCだったのも、彼ららしいなあと思った。これは通過点。USツアーもすぐにスタートする。そのちょっとの間だけでも、ゆっくり休んでほしいです。おつかれさまでした、本当に。何度も何度も深くお辞儀をするふたりに、いやいやお礼を言いたいのはこっちの方だ!とジーン。

そして帰宅後あのステージせり出しの仕掛けが手動だったと知りビックリ。アナログ!(笑)いやはやスタッフの方有難うございますー!うわーん!

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セットリスト

01. BACK ON MY FEET
02. MORNING AFTER
03. Moment I Count
04. DRAIN
05. UNDERTAKER
06. TO THE LOVELESS
07. STAY
08. FOGBOUND
09. Rise and Fall
10. EASY ACTION
11. Kick It Out

encore1
12. LOCK ME OUT
13. Dive For You
14. DIG THE NEW BREED

encore2
15. DRESS LIKE AN ANGEL

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