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V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
ある経営者が、好業績に転換した要因を、会社に朝早く、一番に来たことだと語った。朝早く来ると、出勤してくる社員の顔が見える。このときの社員の顔が一番素直な顔で、生き生きとしているかどうかを図るバロメーターになるという。社員顔が暗い時は、自分の顔が暗いとき。自分の心がとっちらかっているときだと社長は言う。社員は自分を映す鏡。毎朝鏡を見るように社員を見る。そして自分を改める。すごい社長だと思う。
・不良品を廃棄、手直し、造り直しすること
・必要以上のモノの移動、仮置き、積み換え等のこと
・必要以上のモノの移動、仮置き、積み換え等のこと
・動作のムダは、探す、しゃがむ、持ち替える、調べる等の人の動きの中で付加価値を生んでいない不要な動きのこと
・手待ちのムダとは、在庫をすることがなく、手が待ち状態のことを言う
・造りすぎのムダは、7つのムダの中でも一番悪いと言われているムダ。絶対に削除しなければならない。
・在庫とは材料、部品、仕掛かり品、完成品など全てが対象。
・加工とは、機械加工、溶接作業、仕上げ作業、検査作業等のこと。
トヨタの7つのムダをポスターにしている会社があった。備忘録的にメモしておく。1.加工のムダ 2.在庫のムダ 3.造りすぎのムダ 4.手待ちのムダ 5.動作のムダ 6.運搬のムダ 7.不良手直しのムダ これらを「ぼーっと作業してんじゃねーよ!」というチコちゃんの怒った顔の下に描いてあった。思わず吹き出してしまった。
「かがやき」で話を聞くうちに、次世代の聴診器の話を聞いた。聴診器がスマホと繋がって、データ(音)を飛ばすことができ、離れた場所でも心臓の音を聞くことが出来るという。もちろん、自分自身でその音を聴くこともできる。今の遠隔医療は、カメラで表情を見るだけだ。が、ここに心臓の鼓動が加わり、医師から「綺麗な音ですね」と言われたら、患者はどれだけ安心するだろう。遠隔医療もカメラで写しただけではつながってる感に乏しいが、音が伝わるのであればその安心感はとても強くなるだろう。このような医療機器が早く開発されればいいなと思った。
経営の中で最も大事なことの一つが「やらないことを決めること」だ。やらないことを決めておくと、やるべきことに集中できるからだ。その点、医療法人「かがやき」はとても明確だ。「他の人ができることはやらない。必要なのに地域にないことをやる」。これこれも平凡な言葉ではあるがとても深い。同法人が目指しているのが、「法人の利益の最大化ではなく地域の資源(しあわせ)の最大化」だ。地域のしあわせを最大化するには、前述の地域交流のように、「必要なのに地域にないことをやる」ことが大切なのだ。
医療法人「かがやき」は、建物3/4を地域に開放している。半年間の土日合計50日のうち、43日でイベントが開催され、そのうち25日で地域の人が主催するイベントを行なっている。休みの日の鍵の管理は、地域の人(キーマスター)に任せている。また、月に1回の「子ども食堂」や年に1回の「かがやき秋祭り」など、地域の住民であれば誰でも参加できるイベントを開催している。健康な地域と人との接点を持つことは、短期的な利益にはつながらない。が、将来的にこのイベントに参加した人たちが「かがやき」で働き、地域医療に支えてくれる可能性がある。200年構想はそうした想いを育んでいる。
医療法人「かがやき」で教えてもらった言葉で、とても印象に残っている言葉がある。それが「健康第一、家族第二、仕事第三」だ。確かに健康あってこそ、仕事に打ち込むことができる。また、家族あってこその仕事である。家族に不安があるとき、仕事に集中することは難しい。同社の医師は大変に忙しい。その医師も年に2回9連休を取れるような体制を整えている。優先順位を明確に示しそれが体感できる体制を整えているのは大変に素晴らしい。
医療法人「かがやき」では、プロフェッショナルの自律性を生かすために、研修に関しては常勤20万円、非常勤10万円の研修費を支給し、自ら学びたいことを学ぶ原則を貫いている。研修費は学会や医療に携わる研修だけでなく、法人の活動に資するもので個人が必要と考えるものであれば、事前申請なしでも使うことができる。活動後にはその学びを全体にメールで報告する仕組みとなっている。この自由な研修制度を活用して、事務スタッフがヘルパーの資格を取り、看護師の訪問に同行したり、海外からの視察受け入れや海外助成金獲得につながっている。各スタッフの学びの機会を主体的に獲得し可能性が広がっている。このような自由な活動を通じて全国の有力な事業所との交流が深まり、交流を通じての知恵の交換・業務改善が可能になっている。
医療法人「かがやき」には評価制度はがないため、出た利益の分配方法は極めて単純だ。利益は全員で出してもだから、利益の1/3は決算賞与としてスタッフで山分けしているのだ。全体がチーム一体として良い結果を出せば、それが個人にリターンされる。そうすることで一人一人は自ずと全体最適を求めて行動をするようになる。ところがもしここに評価制度があると、社員は最も高く評価される項目ばかりに走ってしまい、結果的に部分最適の追求ばかりで、全体最適を追求することがなくなる。全体最適を追求するために、あえて評価制度入れないのだ。
院長曰く「評価は『核心的な』発言を抑制してしまう。ひょっとしたら他のメンバーから歓迎されない耳の痛い話であっても組織としては拾い集め、改善に活かすべきである。評価されることになれば評価者に対して厳しい提案をすることができなくなる。活発な意見交換を促すのであれば、その発言も含めて評価がされない安全な場所が提供されなければならない。評価をやめることは、自由な意見を言うことの出来る重要な要素である」。人は忖度する生き物だ。誰にでも同じように発言できる人は限られている。評価者の報復を恐れて発言できないのは、当たり前のこと。黙り込む会議の愚をなくすために、評価をなくす。英断だと思う。
院長曰く「評価基準がプロフェッショナルの仕事を損なう。評価の基準を設ければ、それが見えやすい形で追求されてしまい、本来のアウトプットに必要な項目がおろそかになることがある。そういう形式的な評価指標は、知識労働者が行う複雑な現場には向かないと考えている」。これも慧眼だ。例えば受注金額を評価基準としたら、必要ない薬を飲ませてしまうに違いない。また入院が必要な人を無理やり退院させることもあるだろう。私たちコンサルタトとも同様に受けたくもない仕事を受けることをしかねない。大変すばらしいと思う。
院長曰く「そもそも評価が困難である。それぞれの職種がプロフェッショナルとして取り組んでいることは、複雑な背景によって最適解としてそれぞれが提案している活動である。それを他の職種や上長が一つ一つ判断することは困難である。また多くのプロフェッショナルは外から評価できない部分(陽の当たらない部分)に腐心し、準備している。それを正しく評価することもまた難しい」。これを聴いて、知的労働者の端くれである自分は密かに感動した。「日の当たりらない部分に腐心し、準備してくれる」。そういうところに考えが及ぶのは素晴らしい人間力だと思う。
人事評価は真っ当な会社ならどこでも整備しているものだ。ところが、ほとんどの会社が相対評価で、頑張っているけど高く評価できない人がいることに悩んでいる。相対評価をするぐらいだったら人事制度などない方が良いのではないかと思うのだが、それを実践しているのが医療法人「かがやき」だ。市橋院長は、評価制度は知識労働者には向かないのではないかと言う。その根拠として3つの理由を上げている。明日以降に詳しく解説する。
名著『ビジョナリーカンパニー2』の中で、経営にとって最も大事なことは「誰をバスに乗せるのかだ」と述べている。「価値観の合わない人を会社に入れないことが大事だ」という意味だ。その点、医療法人「かがやき」の採用の仕方は独特だ。採用されるのは、すでに勤務しているすべてのメンバーから承認された候補者だけ。一人でも反対意見があれば、採用されない。つまり、すべてのスタッフに拒否権があるのだ。これには、どれだけ忙しくても、「頭数合わせで採用をしない」強い意志が必要だ。あえて売上目標を作らないからこそ採用を焦る必要もないのだ。理事長が連れてきた人材でも、拒否権が発動されて入社に至らなかったこともあるそうだ。
医療法人「かがやき」は理念しかない会社だから、一般の法人に見られるような売上目標はない。人事評価制度もない。それは市橋理事長がリカルドセムラーの『奇跡の経営』を読んで二つの仮説を立て、それを確かめるように経営しているからだ。第一は「人は完全に満ち足りた状態であれば。自分の仕事を天職として働けるのではないか」というもの。第二は、「管理のいらない自律的な人材が集まれば、ルールは最低限で良いのではないか」というものだ。そしてこれを確かめるように新しい組織の形態を追求している。
医療法人「かがやき」の経営スタイルは独特だ。平田さんは大いなる社会実験だと言う。というのもこの医療法人、実は「理念」しかない。その理念とは、「希望する在宅生活を安心して送れるように支援します」だ。一見平凡な理念だが、実は奥が深い。「希望」と「安心」はトレードオフの関係にあることが多く、両立することが難しいからだ。例えば病気の患者さんが旅行に行きたいと言う。それは「希望」だ。が、旅行中に病気が悪化してしまうリスクがある。そうした矛盾を同時に実現する方法を考える。それが「かがやき」のプロフェッショナルの仕事なのだ。
まず目を引くのは木造の大変温かみのある建物だ。「かがやきロッジ」と呼ばれるこの建物は、平田さんによると、設計士に「200年続く建物を作ってほしい」と依頼したという。人生100年時代に、50年で建て替える建物には何の価値もない。少なくとも200年から300年先まで考えた上で、今の自分達はどうあるべきなのか考えるべきなのだ。200年構想で考えるとものさしが変わると言う。「まだたった2年しかたっていない」「あと198年かけて成果を出せばいい」と考えると、すごく楽になったと言う。短期の時間軸で考えるから気持ちが焦るし、落ち込む。どれくらいの時間軸で物事を考えるかはとても重要なことだ。
ホワイト企業大賞を受賞した在宅医療専門の「医療法人かがやき」を見学させていただいた。ホワイト企業大賞の授賞式に参加していたら、あまりに岐阜の私の家の近くの会社が受賞するのでとても驚いた。「かがやき」は東海総研時代に、よく私のことを取材してくれて記事を書いてくれた平田節子さんから「今勤めているところは大変面白いので一度来てください」と何度も誘われていた岐阜県羽島郡岐南町にある法人だ。ホワイト企業大賞の授賞式の会場で平田さんと、院長で理事長の市橋さんにご挨拶させていただいた。そして、すぐ足を運んだ。
トコロのクレド第12条に「お客様対応」があり、そこにはこう書かれている。「予約のお客様がお見えになるときは、ウエルカムボードを準備し、お名前を呼んでお迎えします。おかえりの時は、全員で感謝の気持ちを伝え、担当者の車が見えなくなるまでお見送りをします」。私たちが見学を終え、帰るとき事務所の脇を抜ける。その時も全員が立って「ありがとうございました」と感謝の言葉をくれる。さらに玄関の外まで出てきて、門から車が出やすいように誘導してくれて、見えなくなるまで手を振ってくれる。それが、書いてあるからやるのやらされ感ではなくて、皆さん嬉しそうなのだ。そうした一つ一つの動作が信頼を作り、「同じ買うならトコロから買ってみよう」という差別化になっている。今回もまたトコロの皆さんに人間力の大切さに気付かせていただいた。トコロの皆さん、本当にありがとうございました。
見学した無敵経営研究会のメンバーから、次のような質問が出た。「貴社を誇りに思うところはどのような点ですか?そして今は何を課題と感じていますか」。この問いに対し、4人のトコロの社員が答えてくれた。誇りに思う点はまちまちだったが、課題が4人とも同じだったので驚いた。逆に言えば、それだけ大事にしたいことが同じだということだ。みんなが同じ課題を感じていれば、その課題が放置されることはない。解決策を見つけるのも早いはずだ。課題がない会社はない。ただ、課題が共有できている会社は少ない。こうした危機意識が同社をさらに強くするだろう。
トコロの見学時には、いつもペットボトルが机の上に置いてある。そのペットボトルには手書きでメッセージが書かれたカードがぶら下がっている。一般にネックレスと呼ばれるものだ。今回私のペットボトルには次のようなメッセージが書かれていた。「酒井先生、この度も弊社を見学先に選んでいただきありがとうございます。今回は以前よりもより深いお話ができればと思っています。どうぞよろしくお願いします」。書いたのは「おもてなしプロジェクト」の責任者だ。この「深い話」というところが随分プレッシャーになった。 「貴社は素晴らしい」とこれまで何度も言ってきた。が、それよりさらに深い部分を見て感じて欲しい、そこのところの話しがしたいということだ。私の眼力が問われているわけだ。そしてそれを知りたがるこの社員の学ぶ姿勢にとても感動した。
トコロは見学の後に必ず見学者にアンケートをとる。その中に「私たちをほめてください」と言う欄と、「私たちに愛のムチをください」という欄がある。愛の鞭は「見学をしてもう少しこうした方がいいですよ」と指摘のことだ。外部の目から自分たちがどのように見えているのかを知り、その気づきを成長の糧にしようという姿勢である。自分たちはそれなりに努力を重ねている自信と、もっともっと良くしようという向上心が、「愛の鞭を下さい」という謙虚な姿勢を生んでいる。
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