V字経営研究所・酒井英之の4行日記 DiaryINDEX|past|will
学園祭のビジネスコンテストの審査員は全部で5人。私以外は全員経営者だった。中でも審査委員長を務めてくださったのはサークルKサンクスの土方清会長。大変な大人物と審査員仲間として一日ご一緒でき、山ほど学ばしていただいた。やわらかい物腰、周囲をまとめて巻き込む力、言葉を選んで話す話し方、否定的表現より肯定的表現を多数用いる努力…私もあのように気配りできる人になりたい。
大学生の学園祭が主催するビジネスコンテストに、審査員として2度目の参加。今回のお題は牛めしの「松屋フーズ」の業績拡大だった。そこで優勝したチームが提案したのが「食券機」の利用。吉野家にはない「食券機」を同社の強みと捉え、食券機でさまざまなチケットやくじなどを売るという可能性を示唆した提案だった。実現可能性はともかく学生らしい自由な発想、意外な着眼点に拍手を送りたい。
中小企業が優秀な右腕社員を持とうと思ったら、まともに募集してもまず来ない。来る理由があるとしたらただひとつ、社長の惚れることである。社長に惚れせさせるには、社長の働きざまを社長のすぐ近くで見せるしかない。社長が魅力的になれば、その下には魅力的な人材が集まる。私の仕事は地場の中小企業を元気にすること。それには、社長を厚い心と熱い行動力を持った魅力的な人にすることだ。
村上塾では受講者からこんな質問が飛んだ。「ニッチトップの経営者たちは、何でその事業に絞ることができたのか?」。これに対し村上氏は「それを選んだのではない。それしかなかったんじゃないか」と答えた。これは村上さん自身の体験から出た言葉でもあろう。経営者がもうだめだ…と感じたとき、すがるのは「お客様の声しかない」。コンサルタントになった。その初心を忘れてはいけないと思った。
元経営者向け雑誌の編集長で、現在は独立してランチェスター経営のジャーナリストとして活躍している村上透氏を名古屋に招いて講演会。招いたのは本当に心のおける友達約30人。村上氏は自分が取材した会社零細企業4社がニッチトップへと成長していく事例を丁寧に語ってくれた。誰もが崖っぷちからの成功者。その生き様と創意工夫は、いい経営をしたいと思う人たちの胸を打った。
映画『悪人』を観た。映画のテーマである「大切な人がいる人が少なすぎる」がグサリと突き刺さった。主人公も被害者も誰かに思いっきり抱きしめられたことがない。金や地位を持つものが、大切なものまで持っていると勘違いする。それが観ていてとても悲しかった。「俺にはお前が大切だ!」とひとこと言って上げられたり、抱きしめたりするだけで救われる。自分はそういうことができる人になりたい。
「みほこかね運動」なるものを聞いた。「認める」「誉める」「肯定する」「感謝する」「ねぎらう」の頭文字をとったもの。組織風土改革の一環として導入する会社があるという。すばらしい運動だが、これができるのは「ひとつのものに向かってガンバロー!」と言える組織。皆で同じ夢にまい進する組織だけだ。皆が企業に夢を求めるのは、本当はこういう環境を作りたいからかもしれない。
子供の野球を見ながら、野球はつくづくカバーのスポーツだと思う。バッターがサードゴロを打つ。レフトがカバーに入る。サードが取って一塁に。キャッチャーとライトがカバーに入る。エラーがない限り、それらの動きは基本的に徒労に終わる。そしてこの徒労が繰り返される。何回に1回しかないエラーに備えて…この備える感覚を養うのが野球。所属するチームが強くなくても、そこが学べたら凄いと思う。
昨日の若社長の会社では、社員はこんな言葉を連発すようになったという。「俺は知らないよ」「俺ばっかりが忙しい」「余計なことはしなくていいよ」「俺の仕事を取るな」「あいつは駄目だ」「この会社には夢も希望もない」。これらの言葉には、建設性は何もない。無責任とエゴがあるだけだ。助け合おうとして否定され、それを納得しようとして無理やり考え方を変えた結果だろう。社員が悪いわけではない。
ある若社長の話を聞いた。この社長のお父さんの経営スタイルは「何でも俺が決める」「すべてはトップダウンで」「会議は時間の無駄」「教育費はロス」「有給休暇はなるべく取らせるな」「残業は減らせ」「交際費は使うな」。不況脱出時のマネジメントが、ずっと続いてしまったのだ。が、それが日常では息が詰まってしまう。経費は削っても未来への投資は削ってはいけない。その違いがわからない経営者は、社員から見捨てられる。
部下育成に必要なことは何か…あるコンサルタントの先生と話す。彼女曰く「よく話を聞いてあげること。そしたら自分の話も聞いてもらえるのに…」「一貫性を保つこと…そしたら威厳が保てるのに…」それを聞きながら、上司に必要な要素って名著『影響力の武器』に出てくる他人に影響を及ぼす六大要素と同じではないかと気がついた。六大要素とは他に「権威」「好意」「社会手証明」「希少性」。
他人と協力関係を築くには、お互いが「共感」できることが不可欠である。では「共感」とは何か、なかなか上手く説明できなかった。そんなときヒントをくれたのが『食の理想と現実』(福島徹著・幻冬舎)のまえがき。そこにはこう記されていた。『小さな街のスーパーマーケットが見つけた、理想と現実を振り子のように行き来する「食」との関係のあり方について、何か共感していただけるものがあれば望外の喜びです』。共感というのは、理想と現実の間でいろいろ考えて、辛いけどどこかで割り切って、なんとかひとつの方向に進もうとするその人の生き様が生むものではないか…この前書きを読んでそう感じた。
またしてもソフトバンクホークスがCSで敗退してしまった。日本シリーズに出場するのは3位ロッテ。もしセのCSを巨人が勝ち抜くと3位のチーム同士の日本シリーズとなり、どっちのチームが優勝してもリーグ3位から日本一チームが出ることに。それじゃ余りにも理不尽だ、となればセの1位の中日がセリーグ代表となり、そのまま日本一に成るしか収まりの良い結末はない。ガンバレドラゴンズ!
熊の民家への出没が報道されている。根本原因はオオカミを絶滅させたこと。それにより猿や鹿の増加。一方で山林開発により、絶対的に餌が無くなる。そこで市民の田畑まで熊が降りてきた…という構図。食物連鎖の頂点がいなくなるとその影響は長い年月を経てジワジワと広がる。猟友会の増員などの対処両法ではなく、意図的に餌場を作るなど熊の行動そのものを変えるような対策が必要だ。
中国の成都で反日デモが起きているとの報道。警官隊や軍隊が鎮圧に当たっているが、なんとも不自然な映像である。警官隊や軍隊が大規模で「鎮圧力」を誇示しているようだ。「市民の暴動はこのように抑えています。我々政府が日本と上手くやっていきたい気持ちを理解してください」といわんばかり。わざと市民にデモを起こさせて、官が押さえ込み、世界に官の姿勢をアピールする自作自演のように見える。
息子の少年野球チームが最終回に大逆転されて負けてしまった。原因は大量リードに安心し、ベンチでスコアラーをしていた私の油断にある。第一に試合開始時間を正しくチェックしていなかったために、試合時間が後8分あると思い込んでいた(実際には2分しか残っていなかった)。第二に先発投手の累積投球数を数えておらず、監督に投手交代を促せなかった。シーズン最後に味わった大ショック。油断大敵が骨身に染みた。
直木賞作家・車谷長吉氏は「灘のけんか祭り」を行う町の隣町出身。そのため彼はこの祭に参加しても参加できなかった。そこで彼はこの祭にこんな文章を書いていた。「従って私は血が滾る(たぎる)経験をしたことが無いのである。神事にかなうことをしたことがないのである。いつも傍観者として灘祭りを見ていた。傍観者でなく、実行者になりたかった。あるとき、実行犯になりたいと決心した。それが私にとっては小説を書くことだった」。伝統に参加できないことは、参加できない人にとってはコンプレックスを生む。そのコンプレックスこそが、人をつい動かすエネルギー源なのだ。
姫路市で「灘のけんか祭り」を見る。いくつもの神輿を激しくぶつけ合うこの祭は死者やけが人が出るというが、まさに血が滾る(たぎる)祭だった。ところがこれほどユニークで勇壮な祭でありながら、観光客を取らないという。場所が狭いこともあるが、地元の人の地元の人による地元の人のための祭を維持したいというのがその理由。益々人気が出そうな祭だが、今の規模を維持してい欲しい。
手袋で世界第2位のショーワグローブの訪問で感激したことがもうひとつ。見学者に対するおもてなしである。バスで本社に訪問したとき、何人かのスタッフが入り口に並んで出迎えてくれた。また、本社や工場を出るときも何人もの人が見送ってくれた。単なる儀礼でなく、その一人ひとりに歓送迎の表情があった。お客様を「今、金を出して買う人」以上の存在として捉えていないとできることではない。
中部マーケティング協会の仕事で手袋で世界第2位のショーワグローブの製造工場を見学した。私が感激したのが同社の整理整頓の徹底度合い。サインペンやモノサシ、消しゴムの一個一個の置き場ガ決まっていて、誰が持ち出したかがすぐに分かるようになっていた。また、ゴミ箱には「ここまでゴミが溜まったら捨てる」目安ラインが引かれていた。器具の置き場には床にテープを張り、必ずその位置に置くようになっていた。働く人の緊張感が伝わる徹底度合いだった。
大学生が主催するビジネスコンテストの審査員を務めた。空港や外食チェーン店が業績を回復するために何をすればいいかというアイデアを、4人一組の5チームが2泊3日の合宿で競い合う。正直言って魅力的なアイデアは1チームしかなかった。この結果にはガッカリしたが、面白かったのはその先。審査終了後、チーム・ミーティングが行われ、合宿期間中に見えたその人の「強み・弱み」を交換しあったのである。こうやって自分を素直に見つけて成長する姿には好感を持った。
アナウンサー志望の女子大生と話した。彼女は東京のキー局は全部滑ったという。このとき親は「マスコミはコネが無ければ入れない」と彼女を慰めたという。しかし、彼女は「それは今、一番聞きたくない言葉。私は実力がなったから落ちた」という。そして、その実力が何なのか見えずに悩んでいた。今の厳しい就職活動の中で、学生は自分の現実に向き合うことを恐れていない、むしろ望んでいるのだと感じた。
部下の女性の結婚披露宴に出席。相手は新エネルギーで走る車の設計している若者。よって私の席の隣には、彼の上司たちがズラリ。彼らにその車の開発の苦労話など聞きながら「血が騒ぎますか?」と尋ねたところ「騒ぎます」と応えた。誰もが血が騒ぐような仕事をしたいと思いながら、そのキッカケがなくて悩んでいる時代。やがて日本を変えるかの知れない仕事に挑む彼らが頼もしく見えた。
昨日紹介した会社の社員は実にまじめ。こちらは営業リーダー研修を受けた30歳代前半の男子社員から。やっぱりこんな声は嬉しい。
昨日の若手職員に早速返事を打った。若い女性にメールを打つことなどめったにないので、それも日記に書いておこう。
某社の若手社員に経営理念の大切さを説く研修を行った。同社はその設立の経緯から理念に特異性があり、それゆえにビジネスモデルもオンリーワンの会社である。その受講生からこんなメールが届いた。感激したので全文掲載してしまおう。
最近の上司の悩みのひとつが「なかなか部下を叱れない」。そこで某社の管理者研修で「どんなときに『叱ってくれた』と感じたか」を討議してもらった。「時間に遅れたとき」「道具の手入れを怠ったとき」などの意見が出た。叱られることで気づきを得て、繰り返さないようにするための手段も教えてもらう。このようなき、人は成長を実感し、叱ってくれたと感じ感謝する。だから上司は、子供を叱るように愛情込めて叱ればいいのだ。
某社の管理職研修で、「どんなときモチベーションが上がったのか」をテーマに自分の人生を振り返ってもらった。そのなかで印象に残ったのが「叱られた後でフォローされたとき」。叱られたときは自己の存在を全否定されたかのように落ち込む。そのときフォローされて感じるのが叱ってくれた人の愛情。決して全否定でなく成長のための部分否定でしかないことに気づく。だからモチベーションが上がるのだ。
中日ドラゴンズが優勝した。8ゲーム差をひっくり返しての優勝だが、勝因は投手の起用法。昨冬に落合監督の講演を聞いたが、そのときに「投手を絶対に中6日で使う。無理なフル回転はしない」といっていた。逆に「2009年の戦い方で投手が疲弊しているから来年は巨人も阪神も落ちるだろう」とも言っていた。85年や03年の阪神のように勢いで勝つだけではなく、7年も続けて強いチームを作り続ける落合監督は凄い。
ある建設会社で、営業プロセスを見直す会議を行った。社長曰く、「ここでしっかりプロセスを見直すことが今後の命運を決める」。そこで社長は、自分の発言は控え、徹底して部下に考えさせて発言させた。部下自身が作ったものでないと、部下はそのプロセスにやらさせ感を感じてしまうからである。したがって時間がかかった。昼から始めた会議が終わったのは深夜0時。終わったときは皆、疲労困憊だった。
世間で話題になっている本を読んだ。その本の中でただひとつ、その本の中のフレーズの「脱皮しない蛇は滅びる」という表現は印象に残った。いつまでも同じことを繰り返しているだけではダメだということへのメタファー。会社を発展させるためにはマーケティングとイノベーションが不可欠だとドラッカーは言ったが、この両方をやり続ける仕組みと人材の育成こそが大事なのだ。
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