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2005年04月02日(土)  あの日の海 (4)
その店から、今度はタクミが車を出した。
当然のように海沿いの道へ向かう。

好きだったっしょ?海。昔っから。

マチコがそう言って笑う。
ユウコは何かあったら必ず海に行ってたよねぇ。
家に行ってもいないな、って思ったら
必ずといっていいほどあそこ行ってたよね。

タクミはなんにも言わない。
でも、車は海沿いの一本道をひた走っていた。
通いなれた道。
最後にあの海を見に行ったのはもう何年前だろう?
今は、近づく夏を感じさせる日差しが降り注いで眩しい。
まだ梅雨の時期だというのに珍しく晴れた日だった。

「懐かしい」

まだオープンしていない海の家。
そして、海からの強風で砂だらけの駐車場。
すぐに車を降りて、家の間の隙間を抜けて砂浜へ降りる。
タクミが追いかけてきた。

ユウコ、慌てすぎ。
「ごめんごめん。マチコは?」
ジュース買ってから降りてくるよ。
「そか」

そう言って、黙り込む。
なにを話したらいいんだろう。
三人なら、適当なことも言えるけど、
タクミだけを相手にいい加減なことは言えない。
昔から、そう。

タクミの前ではわたしはウソはつけない。

「変わんないね、ここ」

ほんとは知りたいの。
マチコとはどうなってるの?
聞かなくても二人を見たらわかる。
でも、きちんと知らないと、わたし...

「ほんと懐かしい...ね?」
そうだな。

結婚しているのにね、へんなの。
この街に来たら、気持ちがどんどん昔に近づく。
どうにもならないとわかっているのに、
気持ちが止まらない。

「わたし、ここでね、いつも考えてたの。
何かあったからって必ずここに来てたわけじゃないわ。
ここが好きだったのもあるし、
誰も知っている人がいない場所だから、
素のままの自分の気持ちを思い出せたわ。」

波の音、太陽の光、潮のニオイのする風。
どした?ユウコ、急に。

「ちょっと昔を思い出しただけ」

タクミー!ユウコー!
ジュースを手にマチコが笑顔で砂浜へ降りてくる。
コーラを持っている手を振りながら来るから、

お前なにしてんだよ、それ炭酸だろ?

そうタクミに怒られてゴメン、って笑った。
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