加藤のメモ的日記
DiaryINDEX|past|will
| 2018年06月28日(木) |
ホーキング博士が残したこと �� |
「車いすの天才学者」、英国のスティーブン・ホーキング博士が3月14日、76歳で亡くなった。宇宙に関する一般向けの本が世界的ベストセラーになり、SFドラマにも出演。これほど広く知られた物理学者はアインシュタイン以来だろう。一方、一方、研究業績は難解で、あまり知られていない。振り返っておきたい。
ブラックホール蒸発予言
初期の業績は「特異点定理の証明」。重力を記述する一般相対性理論に基づけば、宇宙は、物質の密度や宇宙の曲率が無限大となる「特異点」から始まらなければならないことを証明した。それ以前も特異点から始まる宇宙の理論的モデルはあった。だが自然界に無限大が現れることはない。そこで多くの研究者は、特異点から始まらないような宇宙モデルの構築を追及していた。
「ホーキングさんはそれが不可能であり、宇宙は特異点から始まると言ったわけで、当時の物理学者の夢を打ち砕いてしまった」と佐藤雄彦・東京大名誉教授は語る。最もホーキングさんは後にこれを否定し、より深い理論を使って特異点から始まらない宇宙モデルを提案した。特異点定理の証明には、相対論と並ぶ20世紀の物理学の柱、量子論が使われていなかった。相対論に量子論を加味したらどうなるか。それが次の研究につながっていく。
驚くべき結論
原子や分子の世界を記述する量子論と重力を時空の曲がりとして記述する相対論を統一する理論を作ることは、現代物理学の大きな夢だ。ところが、この二つの理論の相性はひどく悪い。自然界には電磁気力と重力のほか、素粒子の間に働く「強い力」と「弱い力」が存在する。このうち重力だけは、いまだに量子論と両立する形で扱うことができない。ホーキングさんは、強い重力のため光をも内部に閉じ込めてしまう不思議な天体「ブラックホール」に興味を持ち、その周辺の現象に量子論を使うことを試みた。
まず量子論を考えない場合、ブラックホールは物を吸い込み一方的に成長するという「表面積増大測」を証明。古典物理学である熱力学の法則に似ていることを示した。次に量子論を加味し、ブラックホールはエネルギーを放出して小さくなり、やがて「蒸発」するという、驚くべき結論に達した。それは、ブラックホールに温度があることを意味するのだ。
量子論によると、何もないはずの真空でも、様々な粒子と、その反対の電気を帯びた反粒子のペアが、生まれては出会い、共に消滅する現象が絶えず起きている。ブラックホールの周辺で粒子と反粒子のペアが生まれ、片方がマイナスのエネルギーをもって落ちることでブラックホールの質量が減り、もう片方はブラックホールのエネルギーを外へ。そんなメカニズムを考えたのだ。
なお謎は残る
当時、若手研究者だった佐藤さんは「最初に開いたとき、物を吸い込むブラックホールがなぜ消えるのかと、きょとんとした思いだった」と振り返る。「一貫性があり、きれいな理論だったので、皆、納得したのだと思う。ホーキングさんの一番大きな仕事です」
「ホーキング放射」と呼ばれるこの現象は実在すのか。検証は難しい。前田恵一・早稲田大教授によると、普通のブラックの蒸発には今の宇宙の年齢(138億年)よりもはるかに長い時間がかかる。小惑星程度の質量を原子核のサイズに詰め込んだ小さな「原始ブラックホール」が宇宙の初期にできていたなら、今超蒸発している時期だという。
「蒸発で高エネルギーの現象が起これば観測できるかもしれないが、見つかっていない。観測が進むと、手掛かりが得られるかもしれない」蒸発を説明できるかどうかは相対論と量子論の統一論の試金石だと、大栗博司・米カリフォルニア工科大教授は言う。統一理論の有力候補の一つは「超弦理論」。物を構成する最小単位である「素粒子」を点ではなく、ひものようなものとみる理論で、ブラックホール蒸発の説明にはほぼ成功している。「だが、まだ謎を完全には解明できていない。ホーキングさんの提示した『統一理論への壁』は依然として大きな課題だ」
『西日本新聞』5.3
対立から対話へ
トランプ米大統領と北朝鮮の金・正恩国務委員長が12日、シンガポール南部のセントラーザ島で会談した。長年敵対してきた両国の首脳による直接会談は歴史上初めて。対立から対話に大きく歴史が動いた。
長年敵対し、ついこの前まで一触即発の状態だったアメリカと北朝鮮の首脳が初めて会談し、緊張局面を転換した。歴史的な大きな出来事である。朝鮮半島は、戦前は日本から侵略・植民地支配を受け、戦後は分断され朝鮮戦争で何百万もが亡くなり、国土は焦土と化した。韓国の人たちは、この地で再び軍事衝突が起こることを望んではいない。朝鮮半島の平和と安定を実現す上で、今回の会談は重要である。
共同声明が具体的でないとか踏み込む不足などという批判もある。しかし、朝鮮半島の非核化や永続的で安定した平和体制の構築は、相当時間もかかる。今回の会談は「始まりの始まり」で、問われるのは両首脳のこれからの行動である。韓国はもちろん、中国、ロシア、日本がどう協力するかも問われる。
北東アジアに真の非核・平和体制が確立されるならば、世界に与える影響は測りしれない。在日・在韓米軍、沖縄の米軍基地もその存在理由が根本から問い直されるだろう。日本はこれまでの圧力一辺倒の姿勢ではなく、「非核化」「平和体制」を促進するために、自ら考えて積極的に行動すべきである。
『週刊朝日』6.17
|