A Thousand Blessings
2004年1月〜最新|ひとつ前に戻る|ひとつ先に進む
人間は、そのほとんどが水分と思い出で出来ている。そんな話を聞いたことがある。 自分の記憶力の良さを、ちょっと恨むなぁ。 他人とは比較できないが、僕は驚くほど「忘れない(忘れることを知らない)」人間だ。 日々生産され、蓄積される記憶の地層の重みに自分自身が耐えられなくなることがある。 楽しい記憶は切なさを呼び起こし、辛い記憶は勇気を奪い、後悔の記憶は遺伝子となって 生息し続ける。なんというマイナス思考。一歩足を踏み出すためのエネルギーを過剰に 消費し、それだけで疲弊してしまう。いつでも記憶に支配されつづけ、 新しい扉を開ける手は強張り、足は震えている。
夏。 店舗経営に失敗した夏、10数年間勤務した会社を解雇された夏、 2年間勤務した会社を退職した夏、2ヶ月間勤務した会社をとび出した夏、 そして、体力の限界を思い知らされた今年の夏。 夏が嫌いだ。深遠な冬の寒さに比べて、夏の暑さはどこか軽薄で安っぽい。 というのはこじつけで、結局、夏にいい思い出が少ないから嫌いなだけなのだろう。 夏に素敵な女性と出会い、恋に落ちたりすれば、その記憶の色は 一気に輝かしいスカイブルーになったりするにちがいない。そんなもんかもな。
響 一朗
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