A Thousand Blessings
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2005年10月26日(水) |
『 NON VINTAGE / 林立夫セレクション』 感想文 by 墨田妖児 |
林立夫はジム・ケルトナーが大好きなんですかぁー! もう我が意を得たり!膝叩きまくりです。 しかも、バーナード・パーディなんかも好きだそうで、もう僕は自分の好みとの完全一致に、 やはり「耳」は同じ周波数の電波をキャッチするもんだ!と一人、ほくそえむ今この時。幸せ。
稀代の名ドラマー・林立夫のセレクション→■ 拙い文章ではありますが、僕が感じたことをできるだけ短くまとめてみました。 初めて林立夫の演奏に接する方のちょっとした参考になれば幸いです。
『NON VINTAGE / 林立夫セレクション』10月26日発売 (2枚組) 選曲 by 林立夫
【DISC−1】
1 ピンク・シャドウ/ブレッド&バター from「Barbecue」1974年 僕が林立夫のドラミングに求めるものが、全て詰め込まれた超傑作。 いわゆるハネのビート こそが林立夫の真骨頂なのですが、 ハネながら、ストンと落とすタイミングのズレを微妙に利用していることに お気づきだろうか?僕が林立夫ベストセレクションを作っても この曲を冒頭に持ってきます。山下達郎のライブ「It's A Poppin Time 」に収録されたヴァージョン (ドラムスは村上秀一)と聴き比べると面白いですよ。全然ちがうから。優劣はつけられません。
2 かたおもい/吉田美奈子 from「Flapper」1976年
変則セカンドライン(ニューオリンズ音楽の伝統的リズム)ですね。 大滝詠一や細野晴臣の曲でもお馴染みです。 林立夫は、リズムのアクセントの位置をずらしたりして、彼独特の 不思議なセカンドライン・ドラミングを作り出しました。 このオリジナリティは特筆すべきだと思いますが、いわゆる本場志向のリスナー にはこの臭みが駄目かもね(笑)。
3 GPTANDA/Manna from「Chabako Trick」1979年
エド・グリーンばりの切れ味鋭いハイハット。ベースとのからみに、 明らかにスティーリー・ ダンのアルバム「AJA」からの影響が伺えます。 楽曲のせいもありますが、一歩間違うと、よくあるフュージョンに突入する危険な世界です(笑) それを回避するのは歌ごころだけです。もちろん回避しています。
4 帰れない二人/井上陽水 from「氷の世界」1973年
林立夫にしてはめずらしく、ハネの少ない演奏になっています。 ゆえに、当時の僕はこのドラムスが林立夫だとは気づかなかったんですねー。 CDのライナーに「ポリドールスタジオの音してます」と書かれていますが、 そういわれると、確かに。 ちょっと感動的なくらい盛り上がる部分で、 僕はジーンときちゃいました。こういう林立夫もあるんです。 細野晴臣のベースは天才的!アイデアの宝庫。脱帽。
5 流星都市/小坂忠 from「ほうろう」1975年
林立夫の16ビートに対する考え方ですね。これは多分ジェームズ・ギャドソンから学んだのではないかと。70年代のフュージョン連中の多くが、スティーブ・ガッド的な16ビートを 志向したことは至極残念なことです。全体が16ビートで突き進んでいく無味乾燥さ。 基本はどこまでいったって8ビートなんだから。(これは僕の考え) 8を感じさせる16>16を感じさせる16 ってことです。くどいすか?(笑)
6 海へ帰ろう/桐ヶ谷仁 from「My Love For You」1979年
桐ヶ谷仁の荒木一郎を彷彿とさせる素晴らしい声に感動。100%林立夫印の演奏です。 この演奏スタイルをユーミンが荒井由実の時代に、彼は完成させました。 2小節聴いて林立夫だとわかります。しかし、本人が大好きな歌だという理由で これを選曲した彼の歌に対するアンテナの感度の良さには驚かされます。 さりげなく、しかし効果的に使われる短いスネアーロールに胸キュンです。
7 THE LAST LETTER/ブレッド&バター from「Late Late Summer」1979年
再び、変則セカンドライン。アクセントをずらして不思議な間を作り出すことに 成功しています。 言うまでもなく、これはポール・サイモンの名曲“恋人と別れる50の方法”のパクリ(オマージュ?)です(笑)。本家のドラムスはスティーヴ・ガッド(ガッドにしては名演かも)、 林立夫ヴァージョンを聴くと、本家は非常に聴きやすくやはりフュージョンの匂いが多少、漂います。
8 雨のウェンズデイ/大滝詠一 from「A Long Vacation」1981年
吉田保(吉田美奈子のお兄さん)のミキシングが苦手な僕。 このようにバスドラとスネアの音の録音レベルが高く、スネアーに過剰なエコーがかかり、 ハイハットやシンバルが遠くに引っ込むミキシングが、どうしても好きになれません。 たとえば、フィル・スペクターもハル・ブレインのスネアーにエコーをかけまくりましたが、 あのワイルドなエコーに比べると、吉田保のエコーはずっと濁りが少なくちょっとこもり気味。 そのあたりが苦手な原因かも。 確かにいい演奏をしているのですが、別に青山純が叩いてもいいジャン、 なんて非国民な発言をしたりして(笑) 音って重要ですよね。 むしろ、鈴木茂のギターソロに耳を奪われちゃいます。 元ネタはイーグルスですよね?曲名思いだせません。
9 SWEET MEMORIES/松田聖子 from single「ガラスの林檎」1983年
ずーーと、このドラムスは村上秀一だと思ってました。 だって、BIGINのデビュー曲“恋しくて”とそっくりな曲調だから(笑) ついでに言わせてもらうと“恋しくて”の村上秀一はすごいすよ。 やはりスネアーが80年代の音をしています。うーむ、残念だなぁ。非常に抑制の効いた 歌ごころあふれる演奏なので、できればスタジオの中か副調整室で聴いてみたいです。
10 やさしさに包まれたなら/荒井由実 from「ミスリム」1974年
これは僕もベストセレクションに入れますね。実際に複雑な事は何にもしていません。 正確に回転するエンジンのようなドラミング(喩えが下手だ・・・)ですが、 決して無機的ではありません。ブラッシュワークとアコースティックギターとの相性は抜群! ぜひ、ヘッドホーンで聴いて欲しいな。後半(2分27秒)に出てくる“あの一瞬の”スネアーロールを みんな楽しみにしてたんですよねー。
11 摩天楼のヒロイン/南佳孝 from「摩天楼のヒロイン」1973年
よくここまで自分を抑えられる人だと、つくづく感心します。 おそらく、テクニックの誇示には何の興味もない人なんでしょうね。それよりも ここのシンバルの一打、あそこのハイハットの切れにこだわる。何でもできる人が 何にもしないとき、リスナーはそこに演奏家の思いや願いを読み取らなければ いけないと思います。部屋の明かりを消して、瞑想しながら聴くべき演奏でしょう。
12 8分音符の詩/鈴木茂 from「Lagoon」1976年
松本隆の最高傑作タイトルでは? ハイハットのアクセントの置き方、ハイハットからタムに移るタイミング、 ハイハットとバスドラを瞬間シンクロさせて、ひとつの「音」を作り出す粋な計らい、 これらのわざが、歌との同時録音ではなく、インスト別録りで発揮されるという事実。 スタジオミュージシャンって、何て、ストイックで孤独な仕事なんでしょう。
13 フェアウェルパーティー/ハイファイセット from「ハイ・ファイ・ブレンド・パート1」1977年
一連の荒井由実レコーディングで何度も使われたパターンのドラミングですね。 ここでもさりげなく、さまざまなわざが散りばめられています。 3分01秒後の思いもかけないバスドラの連打。 リスナーは最後まで耳を離せませんよ。実は、このバスドラマジックは、 今回初めて気が付きました。やったぁー!見っけ^!
14 赤いスイートピー/松田聖子 from single「赤いスイートピー」1982年
昨日の日記を参照→■
15 恋するふたり/大滝詠一 from single「恋するふたり」2003年
これもミキシングは吉田保でしょ?2003年の録音です。80年代とは 音の創り方をを変えていますね。ドラムスの音がずっとシャープで肉感的になっています。 大滝詠一の大好きなハル・ブレインよりもジム・ゴードンに近い印象を受けます。 林立夫はジム・ゴードンをどう評価しているのでしょう?好きですよね?好きに決まってるよね? 誰に話し掛けてる・・・おれ。
【DISC−2】
1 LOVE AFFAIR/ロニー・バロン from「The Smile Of Life」1978年
ボズ・スキャッグスがよく試みるニューオリンズ音楽の都会的展開みたいな。 サビの部分でバスドラがリズミカルに遊んでいますね。楽しいな。 こういう遊びを探し出す喜び。林立夫のドラミングは最後の一音まで聞き逃せません。 スピーカーで楽しみ、ヘッドホーンで楽しむ、これが正式な鑑賞法です。
2 WALK DON’T RUN/矢野顕子 from「Reverv」2002年
うわー、こんなぶっ飛んだ“ウォーク・ドント・ラン”は聴いたことありません。 矢野顕子でしたかー。僕としたことが、このアルバム未聴です・・・。反省。 思うんですが、このドラミング、もちろんジム・ケルトナーのからの影響が はっきり伺えますが、本家よりもカッコよくありません?うひゃー、ジム・ケルトナーは この演奏を聴いたのかな?俺よりすごい!って思うかもよ。絶対に聞かせなきゃ! 速く叩く、超正確に叩く、デカイ音で叩く、驚くほどの手数で叩く・・・ そんなものとは次元が違うとでもいいますか、一音一音の意味を深く考えて叩くことが このような演奏を可能にするのでしょうか。
3 行け柳田/矢野顕子 from「いろはにこんぺいとう」1977年
もし高橋幸宏が叩けば、推進力はずっと増すでしょう。 しかし、それは同時にクラヴィネットの微妙なニュアンスとか矢野顕子の 独特な崩し唱法を置き去りにする危険性も秘めているのです。 ドラムスは聴き手の耳を奪わなければいけませんが、決して聴き手から 大切な情報(聴くべきもの・聴かなければいけないもの)を奪ってはいけません。 やはり、ここは林立夫のバックビートが効いたドラミングがぴったり。 バックビートには何かを聴き手に考えさせる微妙な間がありますから。 REMIXしてもう少しドラムスの音量を大きくすれば、さらにLIVE感が加わると思います。
4 安里屋ユンタ細野晴臣 from「はらいそ」1978年
林立夫はここまで出来ちゃうのかー、と発表当時も感心しまくったナンバーです。 レゲエビートを基調にしているのですが、2拍子的な性急なイメージの演奏が 実にオリエンタルチックでレイドバックしてなくて、どことなく可笑しみがあって、 思わず笑みがこぼれてしまいます。細野晴臣が林立夫を好む理由がわかります。 細野晴臣のアルバム「はらいそ」で、林立夫は間違いなく頂点に達したのでしょうね。
5 あの海へ帰りたい/宮沢和史 from「Spiritek」2004年
こういうバラードを叩かせたら抜群に上手いドラマーは、 林立夫、村上秀一、渡嘉敷祐一、江口信夫。かな、今は。 文句のつけようがない演奏ですが、宮沢和史に思い入れが無い僕には さほど感動的ではありませんでした。・・・すみません。
6 銀色のジェット/ナイアガラ・フォール・オブ・サウンド・オーケストラ from「Niagara Songbook 2」1984年
ほんとうだ。林立夫自身の解説どおり、パーシー・フェイスですね。 「スリンガーランドのスネアは音色が太くて、こういうサウンドの中に 混じっても揺るぎない」と語っておられますが、そっかー、やっぱり林立夫は 80年代の吉田保サウンドが好きなのかぁ・・。ちょっと複雑な心境(笑)
7 ラムはお好き?/吉田美奈子 from「Flapper」1976年
名曲です!アレンジが素晴らしい!細野晴臣最高! ゴムが伸び縮みするかのような自由自在でリズミカルなドラミングがとにかく 気持ちよい。もうほとんどパーカッション化していますが。 ひとりアンドリューシスターズの吉田美奈子がかわいい。こんなこと思ったのは初めて(笑)
8 乗り遅れた男/松任谷正隆 from「夜の旅人」1977年
ジェフ・マルダーばりの松任谷正隆。レコーディングの時はメロディを 口ずさみながら演奏するという林立夫。これはもう大人の音楽ですね。 Under 40には申し訳ないが、理解できない世界でしょう。 スティックを頭上でクルクル廻すのもドラミング。一音一音に思いを込めて スティックの先っぽとスネアーの皮の間数ミリの空気圧にまで神経を張り巡らせるのも ドラミング。どちらを選ぶも自由ですよ。
9 七夕の夜 君に逢いたい/CHAPPIE from single「水中メガネ」1999年
Chappieは何人かいて、この曲では森高千里がChappieを演じてます。 バスドラとタムタムとハイハットのみで演奏されてます。一聴するとループの ように感じますが、実はそうではありません。僕も下手なドラムを叩いていた時 よくこのようなスネア抜きの演奏をしてました。すごく楽しんですよ。 タムタムを叩く強さにこだわったりしてね。ちょっとずつ変化させたり。 こういう演奏の良さに気づくのは、やはりOver 40・・・。
10 東京ラッシュ/細野晴臣 from「はらいそ」1978年
“東京ラッシュ”に関しては、何も語る事はできません。あんまりにも リスペクトしすぎてて、多くを語ると嘘になってしまう、、って、かっこいいすか?(笑) 当然、「僕が選ぶ林立夫ドラミングベスト10」に入る曲。残り9曲は・・・・
ブレッド&バター/ピンク・シャドー 南正人/午前4時10分前 荒井由実/返事はいらない 荒井由実/やさしさに包まれたなら 小坂忠/ほうろう 大滝詠一/ロックンロール・マーチ 南沙織/夏の感情 キャラメル ママ/Jackson 細野晴臣/東京Shyness Boy
11 BABY ELEPHANT WALK/パラシュート from「6Kinds 6Sizes」1980年
当時はフュージョンバンドと思われていたパラシュートですが 今こうして聴き返すと、全然軟弱ではないですね。これは新発見。 選曲(作曲はヘンリー・マンシーニ)もおもしろいし、アレンジもいいし。 ただ、ドラミングに関して言えば、これよりもずっといいものはあると 思うのですが、きっと思い入れがあるんでしょうね。
12 EASY RIDER/ハリー&マック from「Road To Louisiana」1999年
ハリー&マック(細野晴臣&久保田真琴)のこのアルバムは傑作です。 わー、、懐かしのフォージョーハーフ(1972年に結成されたカントリーロックの 名グループ。メンバーは林立夫・後藤次利・松任谷正隆・駒沢裕城)のサウンドの 再現だぁ〜!駒沢裕城と林立夫の相性はやはり良かったんですね。 どうして一緒に仕事をしなくなったんだろう。歌があってのドラムスという基本姿勢にまったく 変化がありません。3分30秒後、ハイハットのちょっとした遊びをきっかけに 粋なドラミングが約40秒間続きます。ぜひ、お聞きのがしなく。
13 緑の風/大貫妙子 from「Note」2002年
あー、この曲も初めて聴きました!2002年の録音ですかぁ。 何て素敵な曲なんでしょう。朝早く、MDでこの曲を聴きながら国道沿いを走ったら 最高でしょうね。仕事に行く重たい気持ちも消えそうです。 ニルソンの“うわさの男”(映画「真夜中のカウボーイ」の主題歌)や 加藤和彦&北山修の“あの素晴らしい愛をもういちど”(オリジナル・ヴァージョン) のドラムスに感動した方、必聴です!
14 あなたから遠くへ/金延幸子 from「み空」1972年
こういうドラムスはローラ・ニーロやジョニ・ミッチェルを かなり聞き込んでこないと叩けないでしょうね。金延幸子の個性が上記の アーチストの影響下にあるのはもちろんですが、 当時、ローラ・ニーロやジョニ・ミッチェルは、リズムセクションに対して かなり厳しい耳を持っていたように思います。そういう流れをいち早く察知し 吸収した林立夫はさすがです。
15 猫と僕と君/遠藤賢司 from「嘆きのウクレレ」1972年
遠藤賢司のバックで叩く時は、意識的にこのような極端なバックビートに しているんでしょうね。ケネス・バトレー風の隙間の多い「音」がすごく気持ちイイです。 現在はもう聞くことができなくなったサウンドです。 70年代の全てを肯定する気はありませんが、これも失ってしまった 大切なもののひとつでしょうね。エンケンのメロディの素晴らしさに 気づかせてくれる、心のこもったドラミングです。
16 Polaris/ARAGON from「Aragon」1985年
うーーん、これだけは、良さがちょっとわからん(笑) 1985年のARAGONですかー。初めて聴きました。 なんか、これを収録する意味があったのか・・・と。 ノーコメントということで・・・(苦笑)
・’゜☆。.:*:・’゜★゜
80年代に入ると、林立夫は突然僕らの前から姿を消しました。 脂の乗り切った時期だったのに・・・。 その後、会社を経営し社長として活躍していくことになるのですが これまた突然90年代の中頃に復活をするのです。 現在も、もちろん活躍中です。
CDのライナーに、林立夫自身の次のような言葉が載っています。 胸が痛みましたね・・・。
『 ミュージシャンとしての人生を終える日。とある歌い手のバックで 打ち込みドラムを差し替える仕事だった。 叩き終わり「お疲れさま」と言って終えた。この仕事を最後に スタジオミュージシャンを辞めようと少し前から決めていた。 「できあがったのを聞いたら、元の打ち込みのドラムになってたよ。 それが僕のスタジオミュージシャンとしての最後の仕事」 』
・’゜☆。.:*:・’゜★゜
ロッテ今夜も圧勝!3試合連続の10得点。 もちろん、こんなのは初めてみました。 試合終了後、レフト側外野席の一握りのロッテファン(完全アウェイだしね。 昔のロッテの応援団を思い出しました)が残っている阪神ファンと対峙(?)している 場面が映りましたが、彼らは無事に帰れるのだろうか。 みんなで団子になって帰るしかないよなー。阪神ファンはこわいでー。 ロッテファンの勇気に (* ^_^)_∀☆∀_(^o^ )乾杯♪
響 一朗
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