A Thousand Blessings
2004年1月〜最新|ひとつ前に戻る|ひとつ先に進む
ブライアン・イーノの新作が久々のヴォーカル・アルバムだということで、 ファンの間では話題になっている。 CDショップで数曲試聴した。 イーノを現時点でも「先鋭的なアーチスト」と信じたい連中にとっては、 心温まる作品になるのかもしれない。 僕は、正反対。イーノを先鋭的と感じたのはロキシー・ミュージック在籍時まで なので、その後のソロアルバムや様々なプロデュース活動からは むしろ先鋭よりも洗練(ワザという言い方がいいかも)を感じていた。 破綻する危険性を極力避けた音楽、とでもいうべきか? もう少し、いじわるな言い方をすれば、冒険心の欠如。保守化。 誰もやらないことを目指すのではなく、誰もがやることの中で 一番を目指す方向へのシフト変換。 つまり、これこそがイーノが当時壁にぶちあたった事の証左なのだが。 世間(もちろん僕も)はそのことに気づかずに、イーノの新たな一面 に驚き感動し賞賛の拍手を浴びせた。 彼の声を聞きたいという欲求は、「イーノの先鋭性のアナザーサイドを聞きたい」 という欲求に他ならない。 しかし、「先鋭性から遠ざかったイーノ」のアナザーサイドなんていうものは 実は存在しなくて、僕らは彼の声に幻想を抱いていただけ。 さて、もう一度君たちにイーノの声を与えてあげよう!といわれても 鼻白んでしまうわけで(苦笑) でも、世の中は上手く出来ていて、昔からのイーノファンは熱烈歓迎してしまう。 「天才」イーノのあの「声」が聞ける!素晴らしい!と。 もちろんイーノのあの声もあのメロディも決して悪くはないと思うが、 飛びぬけて優れたものではない。 しかも新作の曲は明らかに以前のものより品質が落ちている気がする。 年をとったということかもしれない。 同じブライアンでももうひとりの天才とは大きく違うなぁ。 そういえば、あとひとりいたなー、ブライアン。 ブライアン・フェリーは何をしているんだろう? 彼の限界は思ったより早く訪れたなー。
若い人は知らないかもしれないが、 イーノが日本で最初に紹介された時は 「イーノ」ではなくて「エノ」だった。トリビア、ということで。
響 一朗
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