あたしと彼のこと
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2002年10月27日(日) ミニギター

日曜の昼にメールが来た。彼からだった。
見せたいものがあるからこれからそっちに行くね、と言う。珍しい。

少ししたら彼は来た。
すごく嬉しそうな顔をして、手に持っていたのは小さなミニギター。
それを、なにも言わずに、笑顔で見せてくる。

どうしたの、買ったの?良いねぇ、そう言いながらポロンと弾くと
とても良い音がした。
高いんじゃないの? まえに買った練習用のもう一本はどうしたの?
そう言うと彼は、ここにあるよ、と言ってもう一本を差し出した。

新しいミニギターはどうやら、たったいま配達されて梱包をほどいた
ばかりだったらしく、まったく調弦されていなかった。
今はめっきり弾かなくなったキーボードの音にあわせて、バラバラに
なっている音をひとつづつ調節した。そして二本のギターの音の違い
を確かめたり、弾き方を教わったりした。
新しいことに二人で挑戦しているのが、とても楽しかった。


そんなときに、彼の携帯が鳴った。

なにげなく出た彼は
ああ、オレ、うん、住所は? だいたい解る・・・近くに着いたら
連絡するから、うん少ししたら出る。
そう言っている・・・どこに行くんだろう、誰と会うんだろう。

彼の耳にあてられた携帯から漏れて聞こえた声のトーンは、すこし高い
感じがした。女の人の声のようにも聞こえた。
これからその人と会うらしい。
・・・相手はあのメールの人なのだろうか。

ねぇ誰から? そう聞いてみても友達だとしか言ってくれなかった。
そして、もうそれ以上はなにも言わせないよと言わんばかりの顔で
機材を借りにいくんだと、平然と言ってきた。

そうなると私は、うん、気をつけて行ってきてね。そう言うしかない。

わたしは疑っている。以前までは「そんなことない」と思えていたこと
なのに、今はそんな根拠のない疑惑さえ、消えなくなっている。

さっきまで嬉しそうな顔して、わざわざ家に来た彼なのに
そんなふうにわたしのもとに来た人は、これからどこかに行ってしまう。
それは、女の人のところかもしれない。


なるべく悲しい顔をしないように、玄関で見送った。

彼は、練習用にしな、と言って
もう一本の練習用のミニギターを置いていってくれた。
ミニギターが彼の替わりに家に残った。

すごく嬉しいのに、悲しい。


桑田そら |MAILHomePageBBS

読んでくれてありがとう。

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