あたしと彼のこと
DiaryINDEX|前の日|次の日
なにさ、やっぱり仕事、また忙しくなってきたじゃん。 こんな状態でほんとに部署無くしていいのかしら、とか思っていたら上司 に思ってもいないことを指示された。
「キミのやってきた仕事、○○さんに引き継ぎをするように」
・・・はぁ?(しばし呆然)
事業から手をひくから部署消失するんじゃなかったのか・・・ は、でも、私の仕事を1ヵ月やそこらで引き継ぎできる人なんて社内に居 ないぞ。やろうとしたら、数あるソフトの習得から教えなきゃならん。 専門知識を要するのにそこから教えろというのかしら。なによそれ。
しかし案の定、なんにも知らない人が引き継ぎすることになった。 引き継ぎを兼ねた新規物件のミーティングをしたのだが、気が滅入った。 とにかく横暴ぶりが聞いて呆れる。そして空しくなってしまった。 社内でその点に関して唯一の技術を持っている私なのに、簡単に人を入れ 替えても出来るだろうと言うこの扱い。私の技術はさして重要視されてな かったのか。悔しい。そして腹立たしい。
会社から帰って、空しさで一杯になってしまって、いつの間にか彼の家に 脚を運んでいた。
家に着いたものの、突然押しかけてしまって、どんな顔をされるだろう。 ドアの前で、携帯と玄関のベルを交互に見つめながら立ち往生していると ひとりでに玄関が開いた。彼だった。
「そらがくる音がしたよ」と言ってきた(車の音がしたらしい) 泣いてしまった。うれしくて涙がぽろぽろ出た。
びっくりした彼は「どうしたの、ほらほら、入って」と玄関に迎えいれて くれた。背中をすこし押されながら私は入っていった。
ひととおり話すと彼はこう言ってくれた。 「そらが悲しむ必要はない。技術やノウハウを簡単に引き継げると思って いる人達なんだよ?そんな人達が誰かの能力を正しく見極められるはずが ない。引き継ぎにしてもうまく行かないのは目に見えている。いずれ会社 が困る時が来る、そしたらその時に澄ました顔で『ほら見たことか』って 思ってればいいんだよ。」
ついつい弱気になってしまっていた私が、彼の言葉で強気を取り戻した。 確かにそうだ。誰かにそう言われると納得できる。 彼にそう言って貰いたかったのだ。そうか、だからここに来たんだ私は。
気付いてくれた彼、ありがとう。
|