あたしと彼のこと
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今日は電話をしてしまった。
「恋人同士は、たまに電話するもの」という、私が生まれた時から 持たされている無駄な教科書のようなものに書いてあったので そうしてしまった。用件なども無く、本当に電話したい心持ちでは ないのに、してしまった。
私は「あなたの声を聞きたかった」ようなそぶりで話してしまった。 そんな気もないのに、とりつくろうなんて、と、自分を持て余した。
わたしは電話が苦手なようだ、なにより言葉だけなので困る。 だからといってテレビ電話が普及したとしても、たぶん困る。
電話は相手との温度差が強い、テンションの差というものだろうか たとえ目の前に顔が写るモニタがあっても距離はやはり埋まらない 私にとっての「会話」というのは、空気を匂い、温もりを感じ 変化を見ることであり、言葉というのは沢山ある情報のなかでも カケラ程度のもののようだ、電話は離れているというのを実感する のに終始してしまう。
会話ものらず、ほんの数分でおやすみと言って切った。 義理チョコをあげるのをためらって、あげてしまった時のような もどかしいようなヘンな気持ちを思い出した。 意味のない事をするのは、やはりしんどいものだ。 自分に嘘はつけないな。
私は心にしまってあるその教科書を開いて、電話の欄にバツを うっておいた。本当は教科書自体を捨ててしまおうかと思いもしたが これはこれでとっておこうと思う。 きっといまにバツ帳になる筈だから、そのとき捨てることにする。
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