リリイ・シュシュ

今日は、床屋に行ってそのまま心斎橋の映画館に行った。
岩井俊二監督の最新作、『リリイ・シュシュのすべて』をみるため。

開演からの2時間半、僕の存在は目だけになった。
岩井俊二という一人の存在が作り出した世界を目の前にして、僕はただ見つめることしかできなかった。

痛かった。

ただ、とても痛かった。

スタッフロールが流れ、スクリーンに幕が下り、会場の明かりがついたとき、僕の中に何かがあることに気がついた。
それは、澱のようで、重く、それでいて存在のみがあるような、そんな不思議なものだった。それを言葉で説明することは不可能。映画の中の世界なら、それは「エーテル」と呼ばれるものなのかもしれない。
その何かは、リリイの歌だけによって注ぎ込まれたのではなく、まさに、『リリイ・シュシュのすべて』によって僕の中に形作られた。

帰り道、僕はその何かを、ただ、「感じて」いた。

それは、今このときも僕の中に確かに存在している。
明日からまた繰り返される、怠惰で、平凡で、平和で、平坦で、そして、シビアでリアルな日常。
この何かはいつまで僕の中に存在し続けることができるのだろう。
2001年11月03日(土)

日々 / いけだ