ある六月の夕暮れ。
会社の帰り道。
宵闇にくるまれた風が
私の頬を撫でて行く。
風は
梅雨の香りに満ちていた。
湿った空気と排気ガスのにおいと蛙の鳴く声が
私の感覚器官を穏やかに刺激する。
こんな街中で。
したたかに生きる小さな命たちに称賛の念を込め
私は顔を上げた。
視線の先にあったのは小学校だった。
なるほどここでならば蛙たちも
平穏に歌を歌いつづけることができるだろう。
安らかな気持ちで私は家路を急いだ。
よく見たらそこ小学校のプールで
子供たちは平穏じゃ済まねェよなとか思ったんだけど、ま、いいや。
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