GARTERGUNS’雑記帳

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師父ギルツ(OVA)対実父ラーサー(TV)
2005年06月19日(日)

※ギルツ=OVA版、ラーサー=TV版


勇猛にして業深き戦士たちの魂が集う冥府で、二人の剣士が激しく切り結んでいる。
一人は黒騎士ギルツ。もう一人は聖騎士ラーサー。
魔王や邪竜をも恐れさせる存在である彼らはそれぞれ使い込まれた鎧を身に纏い、手には長剣を握り締めていた。
方や劫火に祝福された聖剣。方や流星を操る精霊剣。
剣として優れるのみならず、人智を超える力をも秘めた業物である。
だが……もしくは、「だからこそ」……互いに致命傷を与える事は叶わず、ただ火花と甲高い響きのみを限りなく生み出し続けている。

鬼気と殺気うず巻く中、ラーサーが叫ぶ。
「お前は力に溺れ、騎士道を捨て、覇道に絶望した果てにアデューを利用した!
 そんなお前がアデューの『父』だなどと認める訳にはいかない!!」

鋭い一撃を受け流し、ギルツが反駁(はんばく)する。
「確かに私はアデューを利用した……だがそれは、アデューに対し無限の可能性を信じていたからこその決断だった!!
 貴様こそ、赤子のアデューを見失って以来まともに顔も合わさず、アデューを導くという勤めを放棄していたではないか!!
 そんな貴様がアデューの『父』を名乗るなど、笑止極まりない!!」
「違う!俺はゼファーを通じて、常にアデューの傍に居た……
 例えこの身は離れていても、魂は常にアデューと同じ『騎士としての道』の上に立っていたんだ!!」

頬を掠るきらめきにも怯まず、ラーサーはその強い眼差しを黒騎士へと向けた。
ギルツもまた、己が鷹の目で真っ向から聖騎士を睨みつけた。

数瞬とも永劫ともつかぬ静寂。
それを不意に破ったのは、ギルツであった。
彼は剣を下ろし、低く呟いた。

「聖騎士ラーサー、貴殿の眼差しにはアデューと同じものを感じる。
 揺ぎ無く、強い光だ。……『騎士としての道』を逸脱した私には、その光は強すぎる」

そして静かに首を振った。束ねた黒髪がマントの上で揺れる。
ラーサーもまた剣を下ろし、表情を緩めた。

「だが、道半ばで斃れたという点で俺と貴方は同格だ、黒騎士ギルツ。
 それに考えてみれば、貴方の望んだ『覇道の終焉』も俺の望んだ『騎士道の成就』も、突き詰めれば『アデューを其処へと導いていたのみ』という点で合致する。
 俺たちが誇るものは全て、最終的にアデュー自身が選んで実らせたものだった」

其処で二人ははっと息を呑んだ。

「ならば、今回の我々のいさかいも同じではないだろうか」
「確かに……いくら俺たちが望んでみたところで、実際にそれを叶えるのはアデューなのだから」

二人は暫し黙り込んだ後、互いの剣を鞘に収めて苦笑いを浮かべた。

「無益な争いだった」
「まったく……だが、お互いに『アデューを思う気持ち』が痛いほど伝わったんじゃないだろうか」
「ああ……全くの互角だったな」
「この気持ちがアデューに伝わっていれば良いんだが」
「きっと伝わるさ、きっと……」

そして、どちらからともなく呟いた。

「アデューは『父の日祝い』にどちらを選んでくれるだろうか……」







その頃アデューは、義姉フローラやその仲間達との盛大な宴会でもって、海に眠る養父ビルフォードの『父の日』を祝っていた。
宴会が済めば次はパフの父セラナンに挨拶に行かねばならない。
仲間から次々注がれる酒を飲み干しながら、父の日っていうのは楽しいけど忙しいものだなあとしみじみ思うアデューであった。

<完>





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