GARTERGUNS’雑記帳

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ガルさんデンちゃん千日前そぞろある記
2003年11月21日(金)

しし座流星群に関する小説を三年前から書いているものの、今回もUPする機会を失ったTALK-Gですこんばんは。
今日は寄席の手伝いをする為ワッハ上方(大阪府立上方演芸資料館)まで行って来たのですが。
ワッハ上方というのは千日前にありまして。
その千日前辺りは、夕刻から深夜にかけて、実に魅力的な夢の世界となるのです。

―――――

「センニチマエのアーケード」というのは、ちょっと余所見をしていると、すぐに人にぶつかる。
だからまっすぐ前を向いて歩かないと、と思うのだけれど、ごちゃごちゃ立ち並ぶ店のネオンの眩しさや、その店から吐き出される人と喧騒、流れてくる匂い。そんなもの全てが、やけに神経を刺激して。

「あっ」

もう何度目か、目前に迫った人影にガルデンが思わず声を上げた瞬間。
ごく軽く、けれど衝突を避けるには十分な強さで腕を引かれた。
ぽす、と後ろに倒れそうになったのを受け止める、男の腕。

「そんなに夜の街が珍しいか?」

上から覗き込んでくる顔は、面白がっている様な薄い笑みを浮かべている。

「……こんなごちゃごちゃした街は歩きにくい。それだけだ」

むっとして起き上がり、腕を振り払おうとするのを

「そうか。では、その歩きにくい道を、この私がエスコートしてやろう」

男は微笑んで躱し、強引に自分のコートの中に抱き寄せる。

「こ、こら、止めろ!恥ずかしいだろう!」
「あっちふらふらこっちふらふらで人にぶつかりまくるのと、どちらが恥ずかしい?」

暴れるガルデンをぎゅうと押さえつけ、笑み交じりに問う男。
ガルデンはぴたりと暴れるのを止め、マフラーに埋もれた頬を赤く染めて、その翠の目で男を睨み上げる。

「………せめてもう少し離れろ」

やがて呟かれた言葉に男はまた笑い、ガルデンを放した後、腕を差し出した。
ガルデンはそれに眉間を寄せた後、如何にも不承不承といった感じで、その腕に腕を絡めた。


怪しげな成人向けの映画館や、アダルトグッズ、下着にコスプレ衣装等を取り扱う店、キャバレー、テレクラ、ランパブ、ビデオ試写室、エトセトラエトセトラ。
ガルデンが耳まで赤くなるのを尻目に、男はそんな下品で直接的で歯に衣着せないけばけばしいネオンの海を、実に優雅に泳いでいく。
小憎らしい程に悠然と、赤絨毯で姫君をエスコートする貴族の様に。
どうやら此処が彼の庭だと言うのは、本当らしい。
その証拠に。

「久し振り、社長サン」
「今日は寄ってかへんの?そんな可愛い子連れて」

……こんな風に、店から出てきたりホテル裏で立っている女達に声を掛けられるのも、一度や二度ではない。

「ああ、アルマ。久し振りだな」
「また今度寄らせて貰う。その時はお前を指名するから予定を空けておけ、リリィ」

それだけならまだしも、男は、その声を掛けてきた人々を、一度も間違いなく名前で呼び返していた。


「お前は一体……普段、此処で、何をしているんだ?」
「何って、遊んでいるだけだが」
「嘘だ。……ただ遊んでいるだけであんな店の者が、あそこまで親しく、何の打算も無く声を掛けてくる筈が無い」
「いつも派手に遊ぶからな。お得意様への笑顔という奴だろう」
「百歩譲ってそうだとしても、お前があれだけの数の人の名前を、完璧に呼び返しているのは如何いう事だ。単に遊び回っているだけで、そんな懇意になれるものなのか」

問い詰めると、男は苦笑した。
その蒼い目には普段の飄々としたシニカルさではなく、出来の良い目の前の少年を慈しむ様な光があった。

―――――

一応「ガルデン→TV版ガルデン」「男→漫画版ガルデン」のつもりで。
TVガルデンは受験生で、大学受験の為に大阪に来るのですが、泊まる予定だったホテルは手違いで部屋が取れず、その他のホテルも満室で。
困り果てたその時、随分昔に会った事があるだけの従兄(漫画ガルデン)が大阪に住んでいる事を思い出し、押しかける事にしたのですが、電話でその旨を使用人(TVシュテル)に伝えたら何故か物凄い勢いで反対されて、それでカチンと来て電話を叩き切って(シュテル号泣)、意地でも従兄の家に行ってやろうと朧気な記憶を頼りに大荷物抱えて大阪の街を行くのですが、案の定と言うか何と言うか道に迷ってですね。と言うかTV版のガルデンってOVAや特典CD3巻を見る限り方向音痴っぽいのですが如何なんでしょうかその辺。
……ええと、何処まで話したでしょうか。そうそう、ガルデンが従兄の家を求めて彷徨うところですね。……で、彷徨う内に変な歓楽街に踏み込んでしまってですね。
派手だし煩いし人は多いし歩き回って足は痛いしで、すっかりくたびれて道の端にへたり込んでしまいます。
やっぱり実家のシュテルに電話して、何とかして貰おうかとションボリ考え始めた時。
バンホーテンの缶ココアがすっと目の前に差し出されるのです。
驚いて顔を上げると、其処には、面白がっているような笑みを浮かべている男。
「探しているのは私か」
囁きと共に、冷たくなったガルデンの頬に温かい缶ココアをくっ付ける男。
彼は紛れも無く、探していた従兄で、ガルデンは喜んで(シュテルに電話を掛けようとしていたのも忘れて)立ち上がるのですが―――――

その従兄が実は物凄い「遊び人」で。
ガルデンを迎えに来た時も派手な身なりの美女(イドロ)を連れていて、あまつさえガルデンの目の前で恥ずかしげも無くその美女と熱烈なキスを交わしたりして。
千日前も梅田も道頓堀も彼の庭で。
愛人達の家やホテル(ファッションホテル含)を漂泊していて。
そりゃあもう、真面目な優等生で温室育ちのガルデンは呆れるしかない程の放蕩ぶりで。
ガルデンは漸く、シュテルが彼に会うのに猛反対した理由を知るのですが、結局頼れるのはこの人しか居らず。
何時も薄く笑っていて何を考えているか判らない、はっきり言って大変苦手なタイプのこの従兄と、暫くの間一緒に暮らす事になる……

みたいな話を書きたいと思ったのですが(いきなり何を言っているのか)

いえ、漫画版のガルデンって、千日前の様な歓楽街(漫画で言うならモンゴックとか?)にも縄張りをもってそうだなあと思いまして。
で、TV版のガルデンは、そういうネオン輝く街に対する免疫ゼロ。
そんな二人が一緒に大阪の街を彷徨ったら楽しそうだなあ、と。

で、最初は従兄の放蕩ぶりに呆れていたガルデンも、その「放蕩」に理由がある事を知ったり、彼自身ただの遊び人ではない事を知ったり、ふとした拍子に彼の素顔を垣間見てしまったりする内に、段々彼の事を好きになってしまうという……。


それは漫画版ガルデン×TV版ガルデンという事じゃろうか。


誰か止めてください。



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