TOM's Diary
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2006年05月11日(木) |
Yellow Sand |
S氏は洗車をした。 ピカピカに輝く愛車は実に素敵だ。
車庫の前にガーデンチェアを用意し、お茶をすすりながら 愛車をうっとりと眺めた。よく見ると洗車したばかりの 愛車にうっすらと砂埃がのっている。
黄砂のせいだ。
Yellow SandあるいはAsian Dustとも言う。 お隣の国の砂漠からはるばる飛んでくるらしい。 どうせならそのまま飛んでいって海にでも落ちてくれれば よいのになぜよりによってS氏の家に落ちてくるのか? もしかしてお隣の国の陰謀ではなかろうか? S氏はお隣の国に対して、少しむっとして、お隣の国の 方を睨み付けたが、そこに見えるのは自宅の塀だけであった。
S氏はお隣の国に文句を言うのを諦めて、砂埃をなんとか しようとした。毛ばたきで払ってみると、一見きれいになる のだが、完全には落ちきらない。しつこい黄砂は毛ばたき くらいでは落ちてくれないのだった。S氏はもう一度水をかけて 軽く洗車をした。ようやく新車の輝きを取り戻したかと思った 愛車だったが、ガーデンチェアに腰掛ける間に、もう、うっすらと 砂埃がのっている。
S氏はもう一度洗車をするがすぐに砂埃がやってくる。何度繰り 返しても同じことだった。それどころか砂埃がどんどん激しく なってくる。洗車するくらいでは間に合わない。洗い流すそばから 砂埃がのってくるのだ。
挙句にクルマは砂埃のせいで細かい洗車傷まで出来ていた。 S氏は激しくお隣の国に腹が立った。
S氏は砂埃がクルマに近づかないように大型のファンで砂を追い 払おうとしたが、S氏の家の周りの砂埃をかき混ぜるだけだった。 それどころか、舞い上がった砂埃で1m先も見えないような有様だった。
ようやく砂埃が舞い降りると、今度は舞い降りた砂埃でクルマが 埋もれてしまっていた。S氏は砂埃が舞い上がらないようにそっと 砂埃をかきだした。しかし作業は思うようにはかどらない。 新たな砂埃がお隣の国からどんどん飛んでくるからだ。
ついにはS氏は自分自身も砂埃に埋もれていた。もがけばもがくほど 砂埃に埋もれていく。だが、じっとしていても重力で砂埃に埋もれて いく。S氏に打つ手はなかった。ついには頭まですっぽり砂埃に 埋まってしまい、呼吸もままならなくなった。 S氏はこのまま死んでしまうのか?と不安になったそのとき、S氏は 目覚めた。
いつの間にかうたた寝していたS氏は、ガーデンチェアから転げ落ち 砂場にうつぶせになって寝ていたのだった。
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