TOM's Diary
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S氏は夜中に突然目がさめた。 軽い偏頭痛がする。 ぼんやりと天井を眺めながら、痛みのある部分に意識を集中する。 ふと目の隅になにかが動くのを感じる。
天井の端の方だ。そちらに目を向けると昆虫のような形をした金属のまるでロボットのようなものが見える。どこから侵入したのだろうか?長い足を動かしながら天井の中心方向に移動する様子はまるで蜘蛛のようだ。
よく出来たロボットだ。S氏は目を凝らして観察する。おそらく胴体の全長は1cmかそこらだろうか?足はそれだけで1.5cmくらいあるように見える。それを巧みに動かしている。どのように制御されているのか?
脚の制御についてだけ単純に考えても、本体のバランスを取る機能と支える機能、移動させる機能などが必要である。つまり、8本の脚を巧みに使って、本体のバランスよく支えつつ移動も出来なければならない。天井のようにまっさかさまな場合もあればデコボコ道もあるだろう。 それらの機能を、例えばバランス機能を制御する部分と移動機能を制御する部分がお互いに矛盾する動作を脚にさせようとして、全体の動作がおかしくなってしまうことがないよう、上手く協調制御してやらねばならない。そのためにはそれらの機能を、外部からの情報(各種センサからの情報)を基に協調させていく為のメイン処理部が必要になってくる。
S氏は頭のなかでプログラムの構成やメカ機構部の設計をしたところで、動力源をどうするかで悩んでしまった。わずか1cmかそこらの本体にバッテリーが入るだろうか?S氏は、もう一度じっくりと蜘蛛ロボットをよく観察する。すでに天井の中心、S氏の真上まで来ている。先ほどより近づいているせいだろうか?体長は5cmほどの大きさに見える。バッテリーも十分入れられそうだ。
足の制御がまずいのか?バランスを崩したようだ。 いや、バランスを崩した弾みに足を滑らしたようだ。 まっすぐにこちらに落ちてくる。 落ちるに従ってどんどん巨大になってくる。 巨大な鉄の塊が今まさにS氏を押しつぶさんとしている。 とっさのことで避けることも出来ない。 もうダメだ!S氏は思わず目をつむった。
巨大な蜘蛛ロボットはとっさに糸を吐き出したのだろう、S氏はかろうじて命拾いをした。S氏は安心したのもつかの間、糸を吐き出させる仕組みを考えていないことに気がついた。S氏は書棚から繊維に関する参考書を取り出し、糸を吐き出させる仕組みを考え始めた。
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