客先からの帰り道。電車を降りてから坂道を登る。 ビルの谷間にあるからか、無風のときはすさまじい湿気と 暑さで、酸素が少ないような錯覚に陥る。一方風のある日は すごいビル風にあおられる。
途中のビルの入り口が開いて、冷気がそよりと噴出してきた ときには、思わず目を閉じて立ち止まってしまいたくなる。
ビルとビルの間、バブルの地上げを生き残った小さな民家の 軒下に、飾り気のない風鈴が一つ。何気なく見上げると 少しきつめのそよ風が、風鈴を揺らした。
悲鳴のような風鈴の音で、涼しい気分にはならなかったが すぐ隣の喫茶の手書き看板。 「かき氷」 ちょっとはいっていこうかな。
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