カレンダー通りのゴールデンウィーク。
月末の締めも無事終わり、運動がてら違う路線から帰ろうと歩いていたら、
歩道の真ん中に何やらスーパーの袋を積み上げたような白い塊が見えた。
ド近眼な私の目にはゴミ袋が散乱しているようにも見える。
それにしても何で歩道のど真ん中に…?
眉を顰め近づくとそれはゴミ袋などではなく、たくさんの白い花束の山だった。
条件反射的に親指を握り隠した。
数日前のこと、その場所で大きな事故があった。
居眠り運転の車が猛スピードで歩道の上に乗り上げ、多くの死傷者を出した。
新聞記事に載っていたように確かにその前には釣り具屋もコンビニもあった。
運転していた人も、亡くなった人も若い男性であったと記憶する。
事故を起こした車内には運転していた息子さんの両親も同乗していた。
一瞬の隙に襲い掛かる魔。
震えて足が止まりそうになる。
ましてや不謹慎にも花束の意味を不法放置のゴミ袋と勘違いするなんて。
申し訳なく冥福を祈る一方、両方の親指を強く握りしめていた。
逃げるように通り過ぎて、気づく。
…そうか。
お父ちゃんも、お母ちゃんも、もういないんだ。
霊柩車を見たら親指を隠せ。
親の死に目に会えなくなるから。
そんな迷信が全国的にあるのかどうかは知らないが。
妙に信じて子どもの頃からの癖になっていた。
死に目を看取った二親はもうこの世にはいないけれど。
たぶん、これからもそうしていくのだろうな。
親指を隠して。
Sako