ダンナは蟹が嫌いだ。
なのに。出張の土産にと、今回も
律儀に蟹を買ってきた。
ダンナんちと、姉宅にも、そつなく
宅配で手配した。
ダンナは、新選組や、百年以上も昔の男などに何の興味もない。
なのに。私が行きたい所なら、
どこへでも付き合うという。
会津まで…子ども達を付き合わせたら悪いからと私がいえば。
僕が付き合うから。子ども達は置いていけばいいという。
「家族の中で誰が一番好き?」
幼い頃、一番に自分の名前を言ってほしくて、子ども達が競って聞いた。
布団の中で、長女と一緒の時は長女が一番。
まる子と一緒の時はまる子が一番。
調子のいい嘘と分かっていても、子ども達はそれで安心した。
家族4人が一緒の時は…。
「一番はお母さん。お母さんが一番大事」
照れもせず、子ども達の前で、当然のようにダンナは言う。
「ふーん。…だったらお母さんは?」
ちょっと膨れっ面の子どもからの問いに、私は答えられずに笑ってた。
一番は… どこまでいっても… 自分だから。
昨夜。2時頃、遅くに風呂に入り、出てきたら携帯にメールが入っていた。
また急な仕事の交代か…、と、ボタンを押した。
「今夜も待ちぼうけ…」
件名だけの短いメール。2階、布団の中にいるダンナからだった。
30分オーバー。もう鼾をかいて寝ているだろうか。
20年間。何と情の細やかな優しい人だろう…。
これが腹の出た、おじさんと、おばさんでなかったら、素敵な恋愛ドラマだ。
なのに。素直にダンナの横にいこうとしない私がいる。
ただ、一人になりたいために。くだらない遊びの思考をするために。
どうして。嘘の一つ、可愛い演出の一つ、出来ないんだ。おまえ。
人の情に甘えた嫌な女。いつかきっとバチがあたる。
Sako