昨日のとある絵画教室で、
輪郭の線は描かないんですか?と聞いたら。
髪の毛ほどの細い線を筆できれいに描けるようになったらね。
まぁ。10年はかかるわね。
とにこやかに言われた。
えぇー? 10年もですか!?
相手が喜ぶような、大袈裟なリアクションをしてみたものの、
心の中はまったく反対だった。
10年経ったら…。
10年ヘタでも描き続けたら…。
日本画の手法で
好きな人の絵が描ける。
…いや。10年経っても、ヘタレは、やっぱりヘタレでしょう(笑)不思議に10年という時間が、とっても優しく、穏やかに感じられた。
今まで、10年という単位は、途方もなく、嫌になるぐらい長かった。
10年後などと言われたら、そんな先の話など、したくもないと思った。
そして。その夜。
歴史スペシャル番組を見ていて、また妙な時間の感覚にとらわれた。
過去から遡って時代を追っていく。
2100年。逆算する。その時代に私はいない。
たった95年のちの世界に、私は存在しない。
もっとも。95年どころか明日だって分からないし。
寿命が延びて150ぐらいまでは永らえる世界になっているかもしれないが。
遠くない未来、確実に私はこの世界から居なくなっている。
ああ。そうなんだ、と思う。
悲しいとか、淋しいとか、死にたくないとか、生きててたまるか、とか、
そんな感覚とはまた違う。
今まで追いかけるばっかりの、追われるばっかりの、そんな相手に、
通りすがりにポンと肩を叩かれてしまったような、奇妙な錯覚がした。
穏やかで、静かな、確かな時間が過ぎていく。
とっても優しい顔に見えたよ。奴の顔は。
えー。…絵画教室には続きがあります。
先生。野菜シリーズの次は、人物を描きたいんですが?
やっぱり実際にデッサンしてから描くんですね?
もちろんよ。
(以下、頭の中での会話)
あのぉ。写真じゃ駄目ですか?
その人は、もう、この世にはいらっしゃらないんですが…。
あら…まぁ…。お身内の方?
は…ま…その… 好きな… ひ、ひっ… ひぃおじいちゃん!?
言えへんぞ。
さて。11月から3ヵ月。出稼ぎ家業のスケジュール確認があった。
仁義なき2足のわらじを履いて3年目。また忙しくなるなぁ。時間と鬼ごっこだ。
Sako