京のいけず日記
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2005年08月06日(土) |
通勤文庫 地虫鳴く 木内昇 |
夏の甲子園、高校野球が始まりました。 テレビの下半分に写ったコマーシャル。 あぁ、夏ですね。
ヒロシマ、ナガサキ、終戦記念日、大文字…。 暑い、暑いと言っている内に、 今年の夏がまた過ぎていきそうです。
こんな風に、あたりまえのように思えるのは、 あと何回ぐらいあるのでしょうね。
…恒例の子どもアニメ大会、 中学生のまる子ちゃんはまだ見ています。
通勤文庫 「地虫鳴く」 著者/木内昇 河出書房新社 @2,000円(税別)
読み終えて、「地虫鳴く」のタイトルに納得した。 従来の新選組モノとも少し違う読後感。小説を読んだな…、と思った。
話の芯になっているのは、阿部(高野十郎)という元御陵衛士の一隊士。 彼の屈折した暗い内面をえぐる心理描写が秀逸だ。
何でこんなにひねくれているのか、やさぐれているのかと思ったが、 殻に閉じこもっていた若い頃を思い出し、私には共振する部分が多かった。
阿部同様に入れ替わり登場する、近藤や、土方、伊東を取り巻く脇の人々。 監察の尾形や、篠原、谷ら、…一人一人を拾うように丁寧に描いている。
伊東甲子太郎などは、この本で、初めて人となりを知った気がした。 時には伊東の危うさに苛立ちながらも、命運を共にすることに戸惑いながらも、彼を見守る盟友、篠原泰之進。そして伊東の実弟、三木三郎。 一人一人がそれぞれのものを求めて生きていた。
試衛館メンバーでは、とりわけ、阿部や、尾形に絡む斉藤一が魅力的だ。 醒めた感性、剣士としての不気味さ、独特の優しさが描かれている。 無垢の恐さを見せる沖田も絶妙。
とーぜん。土方も、脇として、随所に登場しています。 冷徹な副長像に加えて、垣間見せる「らしさ」がたまらなく愛しい。 中でも、源さんと居る時の、素を見せている土方が好きやなぁ。
印象に残ったのは「背中」
小説より引用----
羽織が同じような拍子を取って揺れている。昔、黒谷で見た背中だった。 背中はあの時となんら変わらぬものを放っている。 どこか泥臭く、ひどく異質だ。 ------------
監察、尾形から見た近藤、土方の二人の後姿の印象なのですが…。 一度目の描写は、優雅で品格のある伊東と並び、黒谷へ向かうシーンで。 二度目の描写は王政復古後の転げ落ちる坂道の途中で。
背中フェチ(笑) 私って、やっぱ。…変、なんでしょうか。 (^_^.)
冒頭の「羽織が同じような拍子を取って揺れている」で、ビビビッ。 「どこか泥臭く」(もう一方の描写では「どこか崩れており」)で、ズッキン。
胸が痛くなるぐらい。うーーん。後姿、想像するだけで切ないよう。痛い。
今、同作者の「幕末の青嵐」を読んでいますが、二作品を比べると、 (手法も違うのですが)こちらの「地虫鳴く」の方が好きです。
もしも、まれに読み始めて、「ん?」と違和感を持った方(→じつは私)は、 そのままもう少し読み進めて下さい。
きっと、この本を選んだことを後悔しないはずです。(…たぶん。ハイ)
Sako
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