京のいけず日記
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2004年08月19日(木) |
北風と曇天の太陽(新選組!32回目の妄感) |
どいつも、こいつも、勝手にしろ ------ ● 新選組!第32回目の妄想的感想 「山南脱走」● ------
演出:伊勢田雅也
幹部会議に伊東甲子太郎が加わって 「また俺の苦手な男が現れた」と隣の総司に耳打ち。 …ったく。あんたは子どもですか。
てなことは、ほっといて。
冒頭、近藤さんが土方をいきなり殴りつけるシーンで始まります。
原因は、近藤の留守中に、土方が隊士に対して下した処罰。 建白書がらみの一件で、 「俺に任せろ」と事態を収拾したつもりの近藤だけに怒り心頭。 他にも独断的な土方に対して日頃の不満があったのでしょうね。
「おまえは俺の留守中に…勝手なことばかりをする」 「あんたに心配かけたくないだけだ」 と、山本歳三さん言い返していましたが。 そう取れないのが、良くも、悪くも、大河の子どもっぽい土方さん、かな♪
ところで。
締め付けで隊士をまとめることができるのか、という近藤。 烏合の衆の結束を守るために、力、処罰による管理が必要と言う土方。
飴と鞭、古今東西からの問題だけど、どっちが正しいのかな。 土方が間違ってるというのは容易いけれど…。 たぶん、どっちが正しいというような問題ではないけれど…。
イソップ物語に「北風と太陽」という話がある。 北風は風を起こして旅人のマントを剥ぎ取ろうとし。 太陽は旅人をぽかぽかと暖め、マントを自ら脱がすように仕向ける。 結果はご存知、太陽の勝ち。
だけど、大河の太陽は雲が多く、太陽に徹しきれていない。 徹しきれてない分、北風のほうが強く、いっそ潔い。
北風に吹きさらされた者はマントを脱ぐどころか、 やがて凍えて死んでいくだろうか。
それでも。信じて吹き続ける北風は悲しい。 結果が分かっていても、北風は北風でしかありえない。 舞台を降りない限り。止むことはできても。
…俺がいなければ会社は潰れる、と自負して、働いて、 会社に潰された人がいる。
ある日、その人が居なくなった。会社は平常通り動いていた。 世の中は変わらない。空いた椅子には誰かが座る。
その人はたぶん分かっていた。 自分が居なくなっても何も変わらないことを。 ただ認めるのが怖かったのだ。
だから。しがみついた。必死に働いた。 家庭も自分も仕事への自負心の下に押さえつけた。
? …あれ。何を書いてんだろ。戻そう。
徹しきれていない、もう一人の男といえば、山南さん。
人望もあり、言ってる事ももっともで。だけど。 理想もあるのに、自分では動けない、人を動かせない人…。 その上、大河の山南さんは賢く計算ができる。
永倉と原田に打ち明けたり、土方の注意をひく旨、頼んだり…。 そのくせ、ほんとに逃げる気があったのかなぁという、明里との道行きで 山南さんの描き方に、少々、違和感も感じたが…。
実在の山南敬助がどんな人物だったのか、 近藤や土方ほどには伝わっていない。 一説に病気説がある。
それが本当ならば、自分が役に立たないと知っていたとしたら このまま組にいること自体、苦痛であっただろう。
言われているように土方との確執もあったのかもしれない。 年齢も近く、故に年が離れていればごまかせることも相容れず 反目しあっていたかもしれない。
嫌いではないが、好きでもない。 大河での土方も、山南も、肌が合わないと感じつつも 互いのことは一目置いている、認めている、 そんな風に描かれていると思う。
だから自分がくさすにはいいが、他人から言われると腹が立つ。 谷原甲子太郎が山南を批判するシーン。 (谷原さん、一癖ありの伊東を好演ですね)
もし、逆だったとしても、きっと。 山南さんは土方のことを庇ったんじゃないかなぁ。
山南を評して、伊東曰く、 沈着を装って、案外、情に動かされる方ではないか。 これって、歳三さんに当てはまると思うわ、うふっ。
土方に相手にされないところへ持って、同じ理論派、物知りの伊東の加入。 光明を得ようと訪れた先の坂本竜馬も、 あほくさ。どうでもええ。と腐り気味のところで。 みんな疲れてる。
自分の進む道を見失った山南は途方に暮れ、土方に暇乞いをする。 むろん土方は承知しない。
「あんたの進む道は俺が知っている」 なんでやねん。やい、土方。何様や、ちゅうねん。
怒れ、山南!そこで穏便に、笑ってる場合とちゃうで。 強さで太刀打ちできないのなら、弱さをさらけだせ、山南さん。
怒りや、不満も、人に向けずに、自分の中に抱え込んで解決しようとする。 土方も、そんな山南だから、まさか、そこまで 追い詰められているとは思ってもいなかったのかもしれない。
「案外、山南さんを買ってるんだ」と、総司につっこまれて、 「悪いか」などとカッコつけてるし…。 脱走が分かって、将棋盤は蹴っ飛ばすし。
「己の信ずるところ、道は自分で決めろ」 と、山南さんは、自分に出来ないことを近藤さんに言っていた。
分かってはいても、人には言えても、 自分のことになると出来ない人がいる。 土方のせいじゃない。山南さん自身も分かっていたのでは。
行き詰って明里にあたる山南さん、そんでええねんて。 屯所でも、土方に対して、まわりに対して、 そんな風に喜怒哀楽を、自分を、見せていたら、 命を絶つなどと、淵まで追い込まれなくてもすんだかもしれない。 意外と気の弱い土方などオロオロしていたかもしれない。
わがまま放題、やり放題、駄々っ子で、土方を慌てさす、山南さん。 お人よしで、人に振り回されているばかりの、気弱で優しい歳三さん。 あんたが大将のえばりんぼうの近藤さん。 こんな新選組だったら、どうかしら?…と妄想の中でよく遊ぶ。
どんな人だったか。 自分のことですら、ウン十年、未だ掴めていないのに 他人のことなど…心の中など分からない。
だから、永遠に恋焦がれる。想像する。
「富士山さんが見たい」と明里が言う。 山南の心はもう踏みとどまれなくなったんだろうな。
次回、切腹シーン。涙。 フォローが入るかなぁ…。九尾の狐はなさそうだし…。
近藤と土方のアイコンタクトも色々な意に取れるけれど。 ここは素直に。
脱走は切腹だ。だが追手を仕向けても 「見つからなければ仕方がない」 総司、暗に逃がせ。 という意味に取っておきたいのだけど、違うのかな…?
「総司なら山南は斬れない。屯所で腹を切らせることが出来る」 だったりして。うーん。うーん。なくはない…ぞ…。どやねん。歳三さん。
だけど、近藤さんの方は、この期に及んで、 「連れ戻せ。会って話を聞こう」だったかもしれません。 ここでも近藤と土方、通じてるようで、微妙にズレが生じてるのかも…。
不器用な山南に「馬鹿やろう!」と、 将棋台をひっくり返して、怒った土方の姿が救いでした。
ところで、ひでさん。 おおっ。いつのまにか女の顔だ。びっくりした。
Sako
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