京のいけず日記

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2004年08月12日(木) 好きで死ぬんじゃない(新選組!31回目の妄感)

お気に入りの歳三さん。ちょっとツリ目「はっきり言うが
 俺は好きで死ぬんじゃない」

京都新聞(4月26日付)の記事

その言葉が衝撃的で、
ずっと頭のどこかに残っていた。

23歳。
ある特効隊員の日記の一部。
「名誉の死」を前にした本音。

そして残された者への気遣いへと
日記は続く。

たった23年間。
青年の生きた言葉に泣けた。


京都新聞のバックナンバーは こちら


------ ● 新選組!第31回目の妄想的感想 「江戸へ帰る」● ------

演出:伊勢田雅也

もうすぐ山南さんの名前も消えるんやなぁ…。

ホームドラマ色の強い、香取、近藤勇でさえ、
もう試衛館のあの無邪気な時代に戻れない…。
そんなところまで来てしまいました。

池田屋以来、違和感の抜けつつある江口竜馬のことや、
久々の上総介やら(いや〜。すごいキャラやんな。おっさん)
懐かしい試衛館の面々やら色々あるんやけど。

煮詰めれば、やっぱり、土方のこのセリフだ。

「奴を殺したのは、俺と、お前(山南)だ」

香取勇さんの江戸行きも、試衛館の面々もふっとんじゃいました。
ごめんなさい。

その山南さん曰く。
「(土方君には)近藤さんのためという思いがある。
 だから、どんなことでも出来てしまう」

信じる人のために飛べる崖が、
自分のためには恐くて飛べない…。

「お国のため」「父や母のため」を信じて、
多くの人が自分を鼓舞し、奮い立たせ、慰め、死んでいった。

人のためではなく、自分のために生きる。
易しいようで、難しいのかも。

新選組崩壊の後も土方の心中には、
冥土の近藤や仲間のためにという思いがあったのだろうか。

そう思わなきゃ、生きられなかったのか。
もし、彼が、自分自身のために生きようとしていたら、
もっと、もっと、賢く、そして臆病だったはずだ。
ズルイぞ、歳三さん。


謹慎中の隊士の名前を前に考え込む山本歳三さん。
苦渋の色。

源さんに「俺も甘いな…」なんて
何、カッコつけてんねん。
そんなん言うてるバヤイか。おたんこなす。

というより。そんなセリフは言わせてほしくなかったな。
「俺はこれから鬼になる」とか、あのセリフの類で。

「源さん…」
「心中お察ししますよ」

の短いやり取りでも、山本歳三さんのいい表情が活きていたと思う。

笑いはいいんやけど、
時々、セリフのしゃべり過ぎ、を感じてしまいます(ごめんなさい)


切腹前の武八郎を静かに見つめる目。
それまでの腹立たせげに見せた子どもっぽい表情とは違い、
山本歳三さんの表情、能面のようで怖いです。

切腹する人はもちろんですが、それを見届ける人、介錯をする人
どんな気持ちだったのでしょうか。

あ。小島剛夕の「首切り朝」(劇画)名作です。
出来るものなら剛夕さんの新作が読みたいよ〜。無理やー。

そーいや。
処刑場のこと(首を落とす穴の淵)を「土壇場」と言うそうです。ふと。


その土壇場(この場合はちゃいますが)におよんで、
建白書の代筆を頼んだ「山南さんを呼んでくれ」と、
武八郎が山南の名前を叫ぶたびに、土方さん、辛かったやろね。

「恨むなら山南を恨め」と言いつつも。
山南をののしる武八郎にも、武八郎を追い込んだ山南にも。
そういう場を回避できなかった自分にも腹が立っていたと思う。

そして冒頭、土方の
「奴を殺したのは俺と、お前(山南)だ」のセリフに続きます。

次は平助…。仲の良かった総司はどう描かれるんだろう…。


気になったのが、オダギリ斉藤さん。
早やスパイ的な役割を果たしている斉藤一さん。

実直そうな島田魁さんは諸士調役兼監察。
(伏見奉行所で間諜を絞め殺したのは創作だったけ…?)
嫌な役どころ、仕事の命令主は、やはり副長だったんでしょうね。

芹沢、山南、伊東、藤堂。法度によって処断された多くの隊士達。
しょせん血みどろの内部紛争。主導権争い。

土方を恨んだこともやっぱりあったんやろなぁ。

そやけど。斉藤と、島田の、この二人。
斉藤一は会津まで、島田魁は蝦夷地まで、
近藤亡き後も、土方と共に戦い、行動している。

新選組も、副長もへったくれもない、負け戦の状況で、
唯一、信頼関係がなければ、見限っていたのではないかと思う。

生き延びた島田魁は、終生、「歳進院殿誠山義豊大居士」という
土方の戒名を書いた布を、肌身離さず持っていたという…(涙)

なぁ、歳三さん。あんた、ほんまに、どないな人やったん?
怖い人? 優しい人? 強い人? 弱い人? ずるい人? …可愛い人。


Sako