京のいけず日記 もくじ|前の日|次の日
![]() そろばん塾の近くにあった小学生御用達の「お好み焼き屋」のおっちゃん。彼が掻く氷の山は、いつ崩れ落ちるだろうか、と、見ている私をドキドキさせた。 「おっちゃん。イチゴとレモン、ダブルでかけてえな」 チューリップハットのようなフニャフニャの食べられる器。イチゴとレモンが混ざってメロンになる面白さ。 露天では、氷の山は暑さにすぐに溶け始める。それと競争するように口に運ぶ。 フルーツもアイスクリームも何の飾りもないけれど、ジリジリする暑さの中で、汗だくで食べる氷の味は格別だった。 子どもの頃に食べた「カキ氷」は何で、あんなに美味しかったんだろう? 冷房のガンガンに効いた店で震えながら、 お洒落で豪華なデコレーションの氷を前にしながら、いつも思う。 宵山で屋台の粗い氷の粒を舌に転がし、ストローのスプーンをしがむ。 豪華でも、使い捨てでもなかった、あの頃の味が懐かしい。 肉屋のコロッケ、ほんの指先ほどの肉がついた串しカツ。 ちくわとキャベツが少し入っただけの駄菓子屋のお好み焼き。 ○辺の粉末ジュースの素。一度は当てたかった、あてもんの 「ひも付き▽形のアメ」の一番でっかいやつ…。 我が家では、年に数えるほどのすき焼きと、カレーがご馳走だった。 とんがらしとチリメンジャコのたいたん。ナスとニシンのたいたん。生節し。 ほとんど手の込んだ料理をしなかった母の、舌に残る数少ない味。 母の49日が近い。 母にも劣る、だめ親の私は子ども達にどんな味を残せるだろう? お姉ちゃんや、まる子ちゃんが、無事に大人になった時、 この子らが思い浮かべる、思い出のTaste。 たくさん、たくさん、あるといいなぁ。 (…んじゃ。ごはん。ちゃんと作りましょう…)
Sako
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