京のいけず日記
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総司「土方サ〜ン。何をそんなに熱心に読んでるんですか?」
勇「そりゃ、日本外史だろう。総司」 新八「いや、いや、きっとあの人のこった。兵書だぜ」
左之助「馬琴の南総里見八犬伝じゃねえか?ほら、何だっけな、犬塚信乃あたり…」
勇「なんだ?」 左之助「女装の美剣(犬)士!…させてみてえ。プッ」
総司「うーん。絶対ね、エロ草紙ですって。むっつり助平なんだから、あの人は。みなさん賭けますか?」
(馬鹿野郎、俳句の本だ…。←それも恥ずかしい人)
あらゆるジャンルの本も、今やネット書店で、 人知れず、匿名で、手に入れることも可能になった。
そんな時が来るとは思わなかった時代。 顔から火が出るほど、手に入れるのに恥ずかしかった本 あるいは寸前で手に入れることができなかった本
ワタシ的に恥ずかしい、そんな本たちの思い出話を少し------。
夢も希望もある懐かしの昭和30年代後半から40年代前半 貸し本屋というものがあった。
薄暗くて、狭い店内の壁いっぱいに雑多な本が並んでいる。 隅っこには小ちゃな机、そして店番のおばちゃんが座っていた。
当時の漫画といえば 貸し本から、週刊、月刊雑誌などへの過渡期(しみじみ古いなぁ…)
白土三平や、さいとうたかを、楳図かずお(へび女〜コワイ♪)、石森章太郎、小島剛夕、水木しげる、つげ義春などなど。
少女漫画なら、水野英子や、わたなべまさこ、牧美也子などが登場し、手塚治虫や、ちばてつや、などが、少女向けの漫画も描いていた。
小学生のワタシが借りる本といえば漫画の本ばかりだったが、 ある日、ふと、1冊の小説に目がとまった。
タイトルまでは忘れたが、 表紙を見ただけで、エロ、倒錯ものと分かるようなシロモノで。
薄暗い店内で盗み読みしてしまったワタシは、 胸の鼓動が聞こえるほどコーフンしつつ、 勇気を出して、おばちゃんのところへ持っていった。
何冊かの子供向けの漫画本の下にそっとしのばせて。 …早よしてえな、おばちゃん。ワタシとおばちゃんの仲やろ。
ところが、勝手に味方と思っていた、おばちゃんは、 その本を見るなり、じっとワタシを見つめた。
さらに、 じっと穴があくほど見つめた。
「…おじょうちゃんが読むの?」
店内には他にも客がいて、ふりそそぐ視線を感じた。
「あ、は、あ…いえのひ…」
「これは大人の本。おじょうちゃんの読む本やないよ」
おばちゃんはいつもの愛想笑いもせずに、冷たく言った。
たちまちワタシの顔は噴火火山。涙目のまま、店を飛び出し、 その後、その貸し本屋通いはやめた。
世の中が変わり、貸し本そのものが廃れていく中。 大人の本というものを、そして、境界線と、 罪悪感という自虐にも似た甘美な気持ちを教えてくれた、その店も、 しばらくして通りから消えてしまった。
昨年、実家から引き取ってきた、ダンボールの中の本を眺めながら、 そんなことを、ふと、思い出しています、今。
さて、さて。アナタ的「恥ずかしい本」の思い出は??
・・・いつかに続く。おやすみなさい。 ※ 本屋で見てしまった「壬生の銀狼」恥ずかしくてまだ買えない・・・(T_T)
Sako
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