井口健二のOn the Production
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2024年11月10日(日) ブラザー 富都(プゥドゥ)のふたり、悪鬼のウイルス

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『ブラザー 富都(プゥドゥ)のふたり』“富都青年”
2023年の第60回金馬賞で主演男優賞受賞の他、全世界16の映
画祭で19の受賞に輝くとされるマレーシア・台湾合作映画。
舞台はマレーシア・クアラルンプールにある富都地区。スラ
ム街と化したその地区に暮らすのは、不法滞在者の2世など
国籍や身分証明を持たない住人たちだ。そしてそこでは不法
滞在者を追放する警察の取り締まりも行われる。
主人公はそんな街で暮らす中華系の兄弟。兄のアバンは口の
きけない障碍を持つが、真面目に市場での荷物運びなどの仕
事を続けている。しかし警察の取り締まりには隠れなければ
ならない状況だ。
そして弟はマレーシア生まれの証明書を持ち警察の手からは
逃れられるが、やっているのは不法滞在者への仕事の斡旋な
どちょっとヤバい仕事ばかりだ。そんな弟には父親と連絡を
取り、正式な身分証明を得る道も残されていたが…。
ところがそんなふたりに突然ある悲劇が降り掛かる。そして
それはふたりの未来に暗い影を落とすことになる。

出演は台湾出身で、台湾版 Netflixで宮部みゆき原作『模倣
犯』などに主演しているウー・カンレンと、クアラルンプー
ル生まれの俳優・歌手というジャック・タン。他にタン・キ
ムワン、セレーン・リム、エイプリル・チャン、ブロント・
パララエらが脇を固めている。
脚本と監督は製作会社を運営してプロデューサーとして数多
くの作品を手掛け、本作で監督デビューを飾ったジン・オン
グ。また主題歌と劇中音楽を日本生まれでマレーシアで活動
する片山涼太が担当している。
日本人として安寧に暮らしてきた者としてはこういう状況は
なかなか理解し難いが、ロヒンギャ難民問題やクルド人問題
など、日本も早晩このような状況になって行くことにはなり
そうだ。
そこから目を逸らし続けていいものかどうかは、最近何本か
観たドキュメンタリーやドラマ作品からも考えさせられる。
こんな思いになるのも映画の重要な価値の一つだとも思わせ
てくれた。
そして後半の謎解きというか観客に提示されたものの解釈に
関しては、上手く作られたと思う反面、それが持つ哀しい結
末に愕然とする思いだった。さすが多くの受賞に輝いたとさ
れる作品だ。

公開は2025年1月31日より、東京地区はヒューマントラスト
シネマ有楽町、シネリーブル池袋他にて全国順次ロードショ
ウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社リアリーライクフィルムズの招
待で試写を観て投稿するものです。

『悪鬼のウイルス』
1985年生まれで一橋大学経済学部卒業の二宮敦人による原作
を、1999年生まれで日本大学藝術学部卒業の松野友喜人監督
が映画化した作品。
映画のプロローグは交通事故の映像。走行してきた自動車が
路上の人物を撥ねたように見えるが、運転者と同乗者が辺り
を探すものの撥ねられたはずの人の姿はなく、車はそのまま
走り去ってしまう。
そして登場するのはYouTuberと自称する男女の若者4人組。
彼らは千葉のド田舎と呼ぶ田園地帯で神隠しの都市伝説を調
査すると称して撮影を開始する。しかしその手掛かりはなか
なか見つからない。
そんな中でとある情報から教えられた道筋を進んで行くと、
そこには謎めいた門があり、その奥には外側から南京錠の掛
けられた家屋が立ち並んでいた。そして牧師姿の男と馬の仮
面を被った娘と称する人物と遭遇するが…。
そんな様子がスクリーン上では、若者たちが個々に持ってい
るスマートフォンや小型ヴィデオカメラの映像として提示さ
れて行く。これらは実際に出演者たちが撮影した映像のよう
だ。そこから事件が起きる。

出演は元HKT48でタレントの村重杏奈、2013年アミューズ
主催の舞台で俳優デビューしたという太田将熙、2022年12月
紹介『Single8』に出ていた桑山隆太、それにモデルの華村
あすか。
さらに2020年ミス・ティーン・ジャパンファイナリストで松
野監督の前作にも出演の吉田伶香。さらに大熊杏優、町田大
和、角由紀子、鳥之海凪紗。そして田中要次らが脇を固めて
いる。
物語は主人公たちが辿り着いた村に隠された状況が徐々に明
らかにされて行くというものだが、展開はド定番という感じ
で、後半にちょっと捻りはあるものの新規性などはほとんど
見えてこない。
それにチラシにも書かれた惹句の意味は自分ら「オトナ」に
はちょっと恥ずかしいよね。これが原作に書かれていたかど
うかは知らないが、まあ若者狙いということなのかな(笑)、
という作品なのだろう。
ただ設定がどんどん変わってしまうのはどうなのかな。これ
も原作通りかは知らないが。村重以下の若い俳優たちがそれ
なりに頑張っているのは良い感じではあった。それから吉田
伶香はちょっと楽しめそうだ。

公開は2025年1月24日より、全国のイオンシネマ他でロード
ショウとなる。
なおこの紹介文は、配給会社イオンエンターテイメントの招
待で試写を観て投稿するものです。


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井口健二