※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『本心』 1999年にデビュー作の『日蝕』で第120回 芥川賞を当時最年 少の23歳で受賞した平野啓一郎が、2021年に新聞連載で発表 した原作を、2010年2月紹介『川の底からこんにちは』など の石井裕也脚本、監督で映画化した作品。 主人公は小さな町工場で働く溶接工の男性。仕事ぶりも良く 上司からも信頼されているようだが、工場にはロボット溶接 機の導入も始まっている。そんな主人公は母子家庭の暮らし だが、母親には少し衰えも始まっているようだ。 そして主人公が同僚と飲んで遅く帰宅した日、突然の豪雨で 水嵩の増した川べりを歩く主人公が見たのは、向こう岸の水 際に立つ母親の姿。しかも視界が遮られた直後にその姿が消 えてしまう。 この事態に慌てて川に飛び込んだ主人公だったが、彼は救助 されたもののそのまま昏睡してしまう。それから1年後。目 覚めた彼を待っていたのは母親の死という現実だった。しか も母親は法制化された「自由死」を選択していた。 その状況に納得できない主人公は、AI技術を使って母親を 再現し、母親が最後に電話で話した言葉の意味を知ろうとす るが…。再現された母親は主人公の知らなかった彼女自身の 物語を語りだす。 主演は自身が監督に原作の映画化を勧めたという池松壮亮。 共演はモデル出身で2013年2月紹介『旅立ちの島唄〜十五の 春〜』などの三吉彩花。他に水上恒司、仲野太賀、田中泯、 綾野剛、妻夫木聡、田中裕子らが脇を固めている。 映画の始まりで2025年のカレンダーが描写されて物語はその 1年後。まあ近未来SFと言えなくはないが、「自由死」な んて言葉が出てくるから、現実とは少し違う平行世界かな。 因に原作の設定は2040年代だそうだ。 ただし内容的には人間自身を描くことに注力された作品で、 SF的なセンス・オブ・ワンダーを楽しむものではない。つ まり2010年12月紹介『わたしを離さないで』のカズオ・イシ グロと同様でSFのギミックを利用しただけの作品だ。 それは例えばリアル・アバターの描き方などにも顕著だが、 その一方でメインテーマのAIに関してはかなり取材もされ たようで、いろいろと示唆に富んだものになっている。ただ AIが「自然死」を知らない設定は? ここで「自然死」は法制化もされて警察の調書にもあったは ずで、それを知らないのは恣意的に削除されたとしか判断で きず、物語に謎が残る。この辺は原作ではどう扱われていた のか。これは原作を読みたくなってきたところだ。 公開は11月8日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて 全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ オの招待で試写を観て投稿するものです。
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