2024年07月21日(日) |
ぼくの家族と祖国の戦争、シビル・ウォーアメリカ最後の日 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『ぼくの家族と祖国の戦争』“Når befrielsen kommer” 2018年7月紹介『バーバラと心の巨人』のアナス・バルター (=アンダース・ウォルター)監督が、第2次世界大戦末期の デンマーク事情を描いた実話に基づく作品。 物語の中心はデンマークの地方都市に立つ市民大学で父親が 学長を務める一家。半官半民の経営なのか父親は地元名士の 推薦でその職にあるようだ。そんな学長のいる大学に難問が 降りかかる。 それは敗色濃厚なドイツから戦火を逃れる難民がデンマーク に押し寄せ、ナチス軍の手引きで市民大学に難民の収容所が 設けられることになったのだ。当時のデンマークはドイツの 占領下でその要請は断れない状況だった。 そこで当初は 200人程度と知らされた学長は体育館を収容所 に宛てることにするが…。現れたのは 500人を越える人々。 しかもナチス軍は難民を置いたまま姿を消し、食料も医療も 届かない難民だけが学長の許に残される。 そして押し込められた収容所では疫病が蔓延、まずは子供た ちがその犠牲となり始める。この事態に学長は人道的な援助 を訴えるが、今までナチスの圧制に苦しんできたデンマーク 市民にその声は届かなかった。 出演は2017年4月紹介『ゴースト・イン・ザ・シェル』など のピルー・アスベックと、本作で長編映画デビューのラッセ ・ピーター・ラーセン。さらにデンマークで多くの受賞歴を 持つカトリーヌ・グライス=ローゼンタール。 他にデンマーク出身のモルテン・ヒー・アンデルセン、ドイ ツ出身のペーター・クルトらが脇を固めている。 戦争が市民にもたらした悲劇と言うのは多数あると思われる が、これもその一つ。平時であれば何でもなかったことが問 題視される。それが人道や正義に基づくものであっても、戦 争がそれを押しつぶす。 正直に言って特殊な事情によるものであるかもしれないが、 こうした真実が歴史の闇に埋もれてしまう。実際に本作の実 話もデンマーク市民ですら知らなかった物語だそうだ。それ は恥という面も含めてそういうことなのだろう。 その辺の微妙な心情を、学長の幼い息子が揺れ動く心の変化 と共に巧みに描いている。その表現も見事と言える作品だ。 単純に誰が悪いと言える問題ではない。しかし戦争をしてい ることが悪いとは間違いなく言える。 公開は8月16日より、東京地区はヒューマントラストシネマ 有楽町、新宿武蔵野館、YEBISU GARDEN CINEMA他にて全国順 次ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社スターキャットの招待で試写を 観て投稿するものです。
『シビル・ウォーアメリカ最後の日』“Civil War” 2003年6月紹介『28日後…』や、2010年12月紹介『わたしを 離さないで』などの脚本家で、2016年『エクス・マキナ』で 監督デビューしたアレックス・ガーランドが、オリジナル脚 本で描いたアメリカが舞台の近未来物語。 物語の設定は、強権的な大統領が憲法を勝手に改正して3期 目の政権に就いているというもの。この事態に多くの州が連 邦からの離脱を宣言し、中でもテキサスとカリフォルニアは 連合軍を組織して政府軍との内戦が勃発している。 そして戦況は連合軍が有利に展開し、今やワシントンDCに 迫らんという状況だ。そんな中でニューヨーク在住ジャーナ リストの主人公らは、14か月応じていないという大統領への 単独インタヴューを狙うが…。 そこに競合紙の従軍記者らも加わってホワイトハウスへの先 陣争いが始まる。そんなジャーナリストたちの行動と共に、 戦時下のアメリカ合衆国の状況が描かれて行く。それは上で 紹介の作品とは異なる狂気に満ちた世界だ。 出演は2011年12月紹介『メランコリア』などのキルステン・ ダンストと、2024年2月紹介『プリシラ』などのケイリー・ スピーニー。さらに2013年8月紹介『エリジウム』などのワ グネル・モウラ。 他に2023年12月紹介『ボーはおそれている』などのスティー ヴン・マッキンリー・ヘンダースン、ガーランド監督作品に は常連の日系イギリス人俳優ソノヤ・ミズノ、2023年12月紹 介『ダム・マネー』などのニック・オファーマンらが脇を固 めている。 本作の日本版完成披露試写会はグランドサンシャイン池袋の 12番スクリーン(IMAXシアター)で行われたが、ここは日本で 2番目のIMAXレーザー/GTテクノロジーを設備した劇場で、 上映環境は申し分なかった。 因に本作のスクリーンサイズは全編を通して1.85:1でこれは IMAXに親和性が高いとされるもの。つまりワイド画面の中に IMAXシーンが混在する疑似作品ではなく、当初からIMAXでの 上映を目標に制作されたものだ。 従って上映では1.44:1のIMAXスクリーンの下部に黒味は生じ たが、それは上映中に変動するものではなく、却って姿勢の 正しい前席客の頭に煩わされることも無く、安定して映像を 楽しめた。本作は正しくIMAXで楽しむ作品になっている。 そして内容では、分断の激しい合衆国の未来を暗示している 感は強く、正に大統領選挙戦の最中の公開には一石を投じる 意味合いも強く感じられたものだ。とは言え監督は英国人ら しく皮肉に満ちたものであることも理解できる。 しかもそれがワシントンDCでの市街戦など、部外者から観 れば実に感心するような映像で描き尽くされていることにも 感嘆したものだ。いやはやとんでもない映画が公開されるも のだ。 公開は10月4日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷他にて 全国ロードショウとなる。 なおこの紹介文は、配給会社ハピネットファントム・スタジ オの招待で試写を観て投稿するものです。
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