井口健二のOn the Production
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2024年04月28日(日) 幽霊はわがままな夢を見る

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※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※
※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※
※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※
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『幽霊はわがままな夢を見る』
下関出身で2017年12月10日付題名紹介『巫女っちゃけん。』
などの在日韓国人グ・スーヨン監督が、同じく下関出身の俳
優深町友里恵と出会って作ったご当地ムーヴィ。
深町が演じる主人公は俳優を目指して上京したものの夢破れ
て故郷に舞い戻った31歳の女性。止むなく父親が運営する地
元FM局でレポーターの仕事を始めるが、一朝一夕で上手く
行くものではない。そんな彼女にとある幽霊が憑りつく。
一方、FM局の経営状況が芳しくない父親は大口スポンサー
の女性からラジオドラマの制作を命令される。その命令に逆
らえない父親は地元にゆかりの怪談「耳なし芳一」のラジオ
ドラマ化を企画するが…。

共演は、監督と深町との出会いをアレンジしたという2019年
6月30日付題名紹介『影に抱かれて眠れ』などの加藤雅也。
他に2008年5月紹介『グーグーだって猫である』などの大後
寿々花。舞台俳優でオーディションで抜擢された西尾聖玄。
さらに小泉八雲の朗読をライフワークにしているという佐野
史郎。南海キャンディーズの山崎静代らが脇を固めている。
挫折して都会から舞い戻った主人公や、経営が難しくなった
FM局。さらにスポンサーによるパワーハラスメントなど、
いろいろな行き詰まりを感じさせる現代を象徴するような要
素が盛り込まれた作品と言える。
そこに平家の没落を象徴するような「耳なし芳一」が織り込
まれるのは、地元のゆかりという以上の象徴的な意味合いが
込められているとも言えるだろう。そんな現代社会へのメッ
セージの籠った作品とも言えそうだ。
とは言うものの、「耳なし芳一」と現代社会とのテーマとし
ての繋がりが少し弱いかな。そこに主人公に憑りついた幽霊
の存在があるものだが、それが証拠物の発見というだけでは
少し物足りない感じがした。
ここにはもっと幽霊本人のそこに至った経緯みたいなものが
描かれていても良かったのではないかな。これは決してサブ
ストーリー的に描かれる程度のものではない。そんなことも
考えてしまったものだ。
またそれとは逆に、もっと下関の観光映画的な要素があって
も良かったのではないかな。劇場パンフレットに掲載された
ロケマップにはいろいろ紹介されていたが、映画では本当に
点描的でしかなかったのも物足りなかった。

公開は6月29日より、東京地区は渋谷ユーロスペース他にて
全国順次ロードショウとなる。
なおこの紹介文は、作品を配給する株式会社cinepos の招待
で試写を観て投稿するものです。


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井口健二