2023年10月29日(日) |
パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー、エクソシスト信じる者、最悪な子どもたち、フジヤマコットントン |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『パウ・パトロール ザ・マイティ・ムービー』 “PAW Patrol: The Mighty Movie” 2013年に本国のカナダで放送開始、現在では全世界 160カ国 以上で放送されているという幼児向けテレビアニメーション の劇場版。因に日本では2019年からテレビ東京系列にて放送 されているようだ。 物語はリーダー格の人間の少年と、様々なアイテムを活用し て活動する6匹の子犬が活躍し、人間社会のいろいろな危機 を解決する「レスキュー・アクション・アドヴェンチャー」 と称されている。 そして本作では、最初にスクラップ置き場を襲う危機に立ち 向かうパウパトの活躍が描かれる。しかしそれはある陰謀の 始まりだった。その犯人は現場から強奪した巨大磁石で隕石 を誘導し、ある物質を手に入れようとしていたのだ。 ところが街に落下した隕石からその物質を先に手にしたのは パウパト。その物質はパウパトの能力を拡大する作用を発揮 する。こうして新たな能力を手に入れたパウパトは活動の幅 を広げるが…。 陰謀の犯人は、かつてパウパトと対立した街の元市長らとも 共謀し、パウパトに最大の危機が訪れる。 試写会は日本語吹き替え版で行われたが、その声優陣は潘め ぐみ、石上静香、小市眞琴、井澤詩織、松田颯水、小堀幸、 矢作紗友里のレギュラーに加えて、安倍なつみ、さらに仲間 由紀恵らが担当している。 映画では太陽系外の彗星の巣のようなものも描写され、それ なりに科学的なところもある。その一方で、あのサイズの隕 石が激突したら、この程度の災害では済まないよな…とか。 いろいろ突っ込みどころは満載の作品。 とは言うものの、描いているのはパウパト同士の友情や能力 の優劣に対する感情などそれなりに考えられて作られていた ものだ。それはお子様向けのレヴェルではあるけれど、大人 の目で見てもそれなりに納得できる話にはなっていた。 まあこれはこれでいいだろう…と思える程度には完成されて いたものだ。小さい子供を連れて観に行けば、親もそれなり には楽しめる作品だ。 公開は12月15日より全国ロードショウとなる。 なお本作の一般公開では「ドーラとまぼろしの生き物」とい う短編アニメーションが同時上映されることになっており、 2本併せての上映時間が82分となっている。
『エクソシスト信じる者』“The Exorcist: Believer” 1973年公開で同年度の全米No.1興行記録に輝いたホラー映画 の、ある意味正当な続編と言える作品。 その物語は13年前にカメラマンの夫と身重の妻を襲った地震 から始まる。その災害で妻は瓦礫に埋まり、命を救えるのは 母体か胎児かの一方のみという究極の選択が夫に迫られる。 そこで妻は夫に子供だけは守ってと懇願するが…。 それから13年後、男手一つで娘を育て上げた主人公は、娘が 友だちと共に行方不明になるという事態に遭遇する。そして 3日後に帰ってきた娘には3日間の記憶がなく、それに続い て不可解な出来事が周囲を襲い始める。 やがてその出来事には悪魔の存在が関っているとの推論がな され、一緒に行方不明になった友人の家族や地元の教会と共 に悪魔払いの儀式が準備される。しかしそれはキリスト教会 だけの問題に留まらなかった。 脚本と監督は2023年3月紹介『ハロウィン THE END』などリ ブート3部作を手掛けたデヴィッド・ゴードン・グリーン。 製作も同作や2015年6月紹介『パージ』なども手掛けたジェ イソン・ブラムが担当している。 出演はトニー賞受賞者で、2020年2月23日付題名紹介『ハリ エット』などのレスリー・オドム Jr.、2013年5月紹介『コ ンプライアンス−服従の心理−』などのアン・ダウト。他に ジェニファー・ネトルズ、ノーバート・レオ・バッツ。 さらにリディア・ジュエット、オリヴィア・オニール。そし てエレン・バースティンが1973年作でオスカー候補になった のと同じ役柄で再登場する。 物語は娘に悪魔が憑いて、そこから如何にして我が子を取り 返すかという点に尽きるが、その同じ話をオリジナルでは悪 魔祓い師の側から描いたのに対して今回は家族の側から描い たという感じかな。 それがバースティンの再登場にも繋がる訳で、その辺は現代 の潮流というような感じもする。それにオリジナルではキリ スト教に特化されていたが、今回はその他の宗教への言及も あって、共通の敵になっている点も納得できた。 と言いながら監督らのオリジナルへの想いも相当なもので、 随所にオマージュというより正しくリスペクトという感じの シーンが登場する。それが怒涛の如く襲い掛かるのは、オリ ジナルを知る者には最高のプレゼントだった。 公開は12月1日より、全国ロードショウとなる。 なお消費者庁の要請で本作の紹介記事には、「東宝東和から 試写会に招待された」こと及び#エクソシスト信じる者とい う2点を特記する必要があるようだ。
『最悪な子どもたち』“Les pires” 2022年第75回カンヌ国際映画祭<ある視点部門>で、日本映 画 『PLAN 75』、2023年3月紹介『Rodeo/ロデオ』、4月紹 介『青いカフタンの仕立て屋』などを抑えてグランプリに輝 いた作品。 映画の舞台は、フランス北部の裕福とは言えない層の人々が 暮らす地域。そこで1本の映画の撮影が準備されている。そ の映画の監督は、登場人物となる子供たちを現地で行うオー ディションで決めることにしている。 そこでオーディションが始まるが、集まった子供たちの中に はスターを夢見る子もいる一方で、お金のためだけに来た子 や行動に問題のある子どもも混じっていた。それでも4人が 選ばれ撮影は開始されるが…。 脚本と監督は、ソルボンヌ大学で映画を学び助監督など映画 スタッフとして業界に入ったというロマーヌ・ゲレと、大学 で心理学、演劇スタジオで演技を学んでキャスティングと演 劇コーチをしてきたというリーズ・アコア。 2人はオーディションの現場で出会い、その体験から共同監 督した短編映画によりカンヌ国際映画祭・監督週間で受賞。 さらに数本の短編や配信シリーズを共同で手掛けた後に本作 で長編デビューを飾っている。 主役には現地のオーディションで選ばれた子供たちが起用さ れ、その内のティメオ・マオーとロイック・ペッシュは児童 養護施設で、マロリー・ワネックとメリーナ・ファンデルブ ランケは2人が通う学校の校門で見出されたそうだ。 その他には、2017年『ユダヤ人を救った動物園アントニーナ が愛した命』などのヨハン・ヘルデンベルグ、2010年『あの 夏の子供たち』などのドミニク・フロらが脇を固めている。 脚本となる物語やエピソードは監督らが3年間かけてインタ ヴューなどで集めたものを再構築しているが、時間を掛け過 ぎたために最初に集まった子供たちは成長してしまったとの こと。従って本作はその脚本に併せて演技されたものだ。 つまりオーディションで集められた素人の子供たちが演技し ているということで、それはそれで凄いと言える。もちろん 演技し易いように本人に合わせた擦り合わせのようなことは 行われたのだろうが。 それにしても見事な作品だった。 公開は12月9日より、東京地区は渋谷のシアター・イメージ フォーラム他にて全国順次ロードショウとなる。
『フジヤマコットントン』 2017年7月9日付題名紹介『ひいくんのあるく町』の青柳拓 監督による第3作。因に監督はこの間に『東京自転車節』と いう作品を撮っているそうだ。 作品の舞台は山梨県、甲府盆地のちょうど真ん中の中巨摩郡 にある通所の障碍者施設・みらいファーム。そこでは障碍を 持つ人たちが花作りや稲作、綿花の栽培から機織りなど様々 な作業に従事している。 そんなみらいファームの日常を1年を掛けて記録したドキュ メンタリー。そこには現代人が忘れてしまった本来の人間の 生き方がある様にも感じるし、この生き方を何とか現代社会 の中に活かしたいという気持ちにもさせられる。 それはもちろん理想論でしかないのだし、これを維持するた めの運営側の困難などは多数あるのだろうけど、何か目標と してこんなものがあってもいいのかなあと思えるほどの素敵 な映像が繰り出されていた。 構成・プロデューサーは2022年5月紹介『ゆめパのじかん』 などの大澤一生、編集も『ゆめパのじかん』などの辻井潔。 撮影には『ひいくんのあるく町』も担当した山野目光政と、 NHKの番組などを担当し劇場作品は初めての野村真衣菜が 加わっている。 監督の前作では、自らが Uber Eatsの配達員となって東京中 を走り回る中での対人関係の闇のようなものが描かれたそう だが、本作はある意味その対極の作品と言える。監督自身が それを欲したのかな。 実は先週の『マイ・ファミリー自閉症の僕のひとり立ち』の 記事を書いているときにはすでに本作を観ていたのだが、何 かいろいろな意味で先週の作品が出した問題の回答がここに あるようにも感じてしまった。 もちろん国情の違いなどはあるのだが、これが日本の回答と 言えるのなら、それは素晴らしいとも思えたものだ。正直に 言って日本も捨てたものではないとも思えてきた。ただし本 作でも言及される植松死刑囚の問題などはあるのだが。 それにしても素敵な笑顔が満載の作品で、この笑顔がいつま でも続くものであって欲しい。そんなことも考えてしまう作 品だった。 公開は2024年初春、東京地区はポレポレ東中野他にて全国順 次ロードショウとなる。
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