2023年08月20日(日) |
コカイン・ベア、うかうかと終焉、市子 |
※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ ※このページでは、試写で観せてもらった映画の中から、※ ※僕に書く事があると思う作品を選んで紹介しています。※ ※なお、文中物語に関る部分は伏字にしておきますので、※ ※読まれる方は左クリックドラッグで反転してください。※ ※スマートフォンの場合は、画面をしばらく押していると※ ※「全て選択」の表示が出ますので、選択してください。※ ※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※※ 『コカイン・ベア』“Cocaine Bear” 密輸犯が投下したコカインを野生のクマが食べてしまったと いう1985年に起きた実話に基づくとされる作品。 開幕は、森林地帯を飛ぶ小型機から男が麻薬の詰まった多数 のカバンを機外に投げ落とす姿。やがて男はパラシュートを 身に着けカバンの後を追おうとするのだが、投降口に頭をぶ つけ気を失ったまま墜死してしまう。 一方地上では、麻薬組織のボスが投下されたカバンを回収す るべく待機していたが、投下した男が墜死したためにその位 置が判らなくなる。それでもボスは配下に森に入って回収す ることを命じるが…。 その他にもその森には、森林警備隊や麻薬組織の壊滅に執念 を燃やす刑事、さらに幻の滝の写生に向かった小学生とその 後を追う母親など様々な人間が立ち入っていた。そしてその 人々を麻薬を食べてハイになったクマが襲い始める。 出演は、2016年11月紹介『ニュートン・ナイト自由の旗をか かげた男』などのケリー・ラッセル。2014年10月紹介『天国 は、ほんとうにある』などのマーゴ・マーティンデイル。そ れに2022年5月26日に他界したレイ・リオッタ。 他にオールデン・エアエンライク、オシェア・ジャクソン・ Jr. 、クリストファー・ヒビュ、ブルックリン・プリンス、 イザイア・ウィットロック・Jr. 、アヨーラ・スマートらが 脇を固めている。 脚本は2020年にマックG監督『ザ・ベビーシッター キラー クイーン』という作品も手掛けているジミー・ウォーデン。 監督は2018年9月9日付題名紹介『ピッチ・パーフェクト』 の第2作を手掛け、2019年『チャーリーズ・エンジェル』の リブートも手掛けたエリザベス・バンクスが担当した。 上映はR15+指定になるようで、いやはやかなり強烈な作品。 実話では薬物の過剰摂取で死亡したクマが発見されたという 程度で、人的な被害は報告されていない(巻頭の墜死は実話) ようだが、事件から40年近くを経てかなり大胆な脚色が行わ れたものだ。 そしてそれを『LOTR』などのニュージーランドWETA のCGIで見事に再現している。このリアルさによって本作 がただのパニック映画ではなく、寓意に満ちた作品に昇華し ていることは確かだろう。 公開は9月29日より、東京地区はTOHOシネマズ日比谷、渋谷 シネクイント他にて全国ロードショウとなる。
『うかうかと終焉』 京都大学卒業でNHKエンタープライズに所属する太田雄史 監督が、社会人演劇ユニットを結成してその第1回公演で上 演、第23回日本劇作家協会新人賞を受賞した戯曲の映画版。 物語の舞台は、東京本郷界隈と思われる場所に建つ学生寮。 その入り口には「退去期限まであと…」と書かれたカウント ダウンを告げる看板が置かれている。そして残り日数が6日 となった日から物語は始まる。 築100年とされるその寮には自治会もあって、大学側との 交渉も続いているようだが、入居10年という先代自治会長と 男女数人の友人たちは、徐々に引っ越しの準備も進めている ようだ。しかし先代自治会長にはある思いがあった。 そんな中、退寮者は最後に一言書き残すというルールに従っ て引っ越して行く学生らが様々な文言を壁に書いて行く。そ の書き残された言葉を見ながら、残っている学生たちの様々 な思いが交錯する。 出演は1000人の応募者の中から選ばれたという西岡星汰と、 2017年12月紹介『野球部員、演劇の舞台に立つ!』などの渡 辺佑太朗。 また2019年7月紹介『いなくなれ、群青』などの松本妃代、 ドラマ『グランメゾン東京』などの三浦獠太、ドラマ『大病 院占拠』などの乃中瑞生、ドラマ『しろめし修行僧』などの 中山翔貴。 さらに中村無何有、中川可菜、大休寺一磨、コウメ太夫、後 藤剛範、森下能幸、池谷のぶえ、前野朋哉、草村礼子、平泉 成らが脇を固めている。 映画の舞台は東京大学の本郷界隈だが、監督が描いているの はやはり京都大学吉田寮なのだろう。ただこの寮に関しては 既に2020年3月紹介『ワンダーウォール』がある訳で、現実 の問題点はそちらの方がしっかりと描けていた。 それに対して本作では、中に暮らす学生の姿をより現実的に 描いているとも言えるが、今も紛争中の出来事をうやむやに するのも作品としては問題になるし、その辺を考慮して東京 にしたのかな。 それはまあより普遍的な青春の姿のようにも見えるが、先の 作品を観た眼からは少し斜に構えた作品のようにも見えてし まった。先の作品がなければストレートな青春ドラマだった のだろうが。 公開は10月13日より、東京地区はテアトル新宿他にて全国順 次ロードショウとなる。
『市子』 8月6日紹介『法廷遊戯』などの杉咲花が、現代社会の狭間 に生きる女性を強烈な印象で演じたドラマ作品。 主人公というか狂言回し的に登場するのは1人の男性。彼は 3年間同棲した女性にプロポーズするが、その翌日に彼女は 失踪してしまう。そして警察に捜索願を出すと、1人の刑事 が彼を訪ねてくる。 その刑事は彼女の写真を示し「これは誰か」と尋ねる。しか し彼には彼女の過去を全く語ることができなかった。それは 彼女が自らの過去を全く語ってこなかったからだ。彼は本当 の彼女を知らなかった。 こうして彼は警察から得たりしたいろいろな手掛かりを基に 彼女の足跡を訪ね歩き、彼女の生涯を辿って行くが…。それ は20代半ばにして壮絶としか表現のしようのない凄まじい生 き様だった。 もちろんそこには法律制度の歪みなど、社会問題とも言える ものも介在するが、それ以上の想像を超える彼女の人生が、 巧みな伏線とその回収によって見事に描き出されて行く。正 にドラマツルギーの極致とも言える作品だ。 共演は2020年2月23日付題名紹介『街の上で』などの若葉竜 也と、2007年1月紹介『しゃべれども しゃべれども』など の森永悠希。さらに『街の上で』などの中田星渚。 また2019年6月23日付題名紹介『イソップの思うツボ』など の石川瑠華、本作のオリジナルの舞台にも出演の大浦千佳。 そして渡辺大知、宇野祥平、中村ゆりらが脇を固めている。 脚本は2018年2月11日付題名紹介『ばぁちゃんロード』など の上村奈帆。監督は1983年生まれでチーズfilm代表取締役と いう戸田彬弘。監督はチーズtheater という劇団も主宰して おり、本作はその旗揚げ公演作の映画版のようだ。 2本続けて舞台からの映画化作品の紹介となったが、本作は 舞台版の題名が「川辺市子のために」ということで骨子は同 じでもかなり改編されているようだ。その舞台版のことは不 知だが、証言集のような構成だったとされる。 ということはもっと訪問先での会話が中心だったのかな。そ れに対して映画では市子という女性の生き様が映像として丁 寧に描かれていたもので、様々な環境の中で必死に生き抜い てきた姿がリアルに観客に迫ってくるものになっていた。 実はネタバレになるので詳しくは言えないが、今年観た映画 の中で最も重要な1本と言える感じのする作品だった。 公開は12月8日より、東京地区はテアトル新宿、TOHOシネマ ズシャンテ他にて全国ロードショウとなる。
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